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8話 村での決着
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ヘレーナの勢いは暴風のようであった。彼女が通り過ぎた後は魔物が絶命しているか、致命傷を負ってのたうち回っていた。
「はっはっは! 弱いね! こんなもんかい! 『我が前には何者も立ち塞げない。我が前に道が出でき、進む場所が道となる』」
ヘレーナの詠唱で目の前にいた魔物達が血を流しながら吹き飛ぶ。嵐のような竜巻に飲まれた魔物達は悲鳴も上げられずに倒されていった。高笑いをしながら魔物を切り伏せていくヘレーナに、魔物達は混乱状態で逃げ惑い始める。
「凄え。なんだ、あのデタラメの強さは」
「ディモが『お姉ちゃん』と言ってたな」
「でも、あいつは天涯孤独のはずだぞ?」
ヘレーナの戦いを見ていた村人達が呆然と独り言のように呟く。非日常的な光景を眺めていた村人達の側にディモが通り掛かり全員に逃げるように伝えた。
「速く逃げて下さい! お姉ちゃんが魔物を倒している間に! 教会で他の方達と合流して魔物が全滅するまで待っていて下さい」
「逃げろって、ディモはどうするんだよ?」
「僕はけが人を治してから行きます!」
当然のように言い切ったディモに、その場にいた村人達は唖然とする。体格で言えばディモが一番劣っており、自分の子供と同じ年に見える子供に逃げろと言われた村人達は互いに目を合わせて頷くと、傷の癒えた者を担いで教会に向かった。
「まだ魔物は残ってるみたいだね。あのゴーレムが司令塔だな。軽くひねるか」
軽く駆け出しながら近くにいた魔物を倒す。その勢いで鬼人のごとく暴れ回っていたヘレーナだったが、急に立ち止まると首を貸しげる。思ったような動きが出来なくなり身体が震えだしたのである。その様子に気付いたディモが慌てた様子で近付いてきた。
「どうしたの! お姉ちゃん!」
「あっ。ディモ。ちょっと……。くっ!」
膝をついたヘレーナにディモが慌てて駆け寄る。眉をしかめていたヘレーナだったが、理由が分かったようでディモに抱き付いてきた。
「えっ? え? な、なに? お姉ちゃん? どうしたの?」
「どうやら魔力切れみたいだね。ディモは魔石を生み出せないのかい?」
困った表情で上目遣いに見てきたヘレーナにディモは思わず赤面する。だが、自分の能力が好きな時に使えない事を思い出して悲しそうな顔になった。
「ごめんなさい。僕は、この能力を自在に操れないの。こうやって魔力を集中させても……。あれ?」
ヘレーナに魔石を生み出すスキルの説明をしながら泣きそうになっていたディモが、右手に魔力を通そうとすると突然輝き出す。いつものように魔力を握りしめるようにして手を開くと、そこには魔石が生れていた。
「なんだ。出来るじゃないか。この魔石を吸収したら……。駄目か。やっぱり私の活動時間は限られているみたいだね。夜になると人型が保てないのかもしれない。最初に会った時のように私を手に取って戦ってくれるかい?」
「いいよ! お姉ちゃんが前みたいに操ってくれるんだよね? 記憶はないけど僕頑張るよ!」
「いや。今回はディモの意識を残したまま身体を操らせてもらうよ。なぜか出来る気がするんだよね。じゃあ、魔物達がこちらを警戒して動かない間に始めようか?」
ヘレーナの姿が一瞬揺らぐと剣の姿になる。ディモは真剣な表情で剣を手に取ると意識があるのにもかかわらず、身体は動かないくになった。
「じゃあ、二幕目を始めようかね。ディモは意識はあるかい?」
『あるよ。身体は動かないけど。しっかりとお姉ちゃんを応援するよ!』
「ははっ! それは心強いね! まずはディモは私の動きをしっかりと覚えるようにしておきな。さっき産み出してくれた魔石は上等だったよ。これでしばらくは戦えそうだね。早速行くよ!」
『うん!』
ディモの身体を操りながらヘレーナはユックリと敵を倒し始める。まるで剣術のお手本のような動きで戦う姿は演舞を行っているようであり、逃げ始めていた村人達が歓声を上げながら応援していた。
『しっかりと私の動きを覚えるんだよ。最終的には私の助け無しで魔物と戦えるようになってもらうからね』
「分かったよ! お姉ちゃん」
ヘレーナが動かす自分の身体を意識しながらディモは少しでも多くの事を学ぼうとした。魔物達の大半は逃げ始めており、ディモを始めとした村人達は戦闘の終わりを感じていた。だが、ヘレーナだけは剣を構えたまま前方に意識を向けており不思議に思い声を掛ける。
『どうしたの?』
「最後のボスが残っているよ。さっき、ゴーレムがいたと誰かが言っていただろ?」
ヘレーナの声に反応するようにゴーレムが姿を現す。ユックリとした動きのように見えたゴーレムだったが、ヘレーナの姿を確認すると急に動きを速くして殴りかかってきた。
「いいねぇ! その動きはディモの練習にはもってこいだ!」
寸前で攻撃を躱したヘレーナはいったん間合いを取る。そして剣を構え直すと真剣な表情で防御主体に切り替えた。ゴーレムは人型のような姿だが動きは人の動きではなく、見た目に惑わされると死角からの攻撃に晒される可能性があった。
『うわぁ!』
「相手の姿に惑わされたら駄目だよ! こういったゴーレムの姿は仮だから、どんな動きをするかは様子を見ながら確認するんだ。だが、完全に分かった気になっても駄目だよ。たとえば……。ほら!」
『にゃぁぁぁぁぁ!』
突然、腕を投げつけてるトリッキーな動きでディモを翻弄するゴーレム。悲鳴を上げているディモが独力で戦っていたなら一瞬で挽肉になっていただろう。腕が立つと言われるレベルの兵士でも倒された可能性があるほど、この村を襲ったゴーレムは高性能だった。魔族男が別働隊として村を襲わせる為に用意したゴーレムであり、『魔物を率いて村を滅ぼせ』と命令されていた。
「そろそろディモ身体も悲鳴を上げてきたら止めを刺そうかね。いいかい。これから第一階位の魔法を使うからしっかりと感覚を掴むんだよ。『我は炎を求める。燃やせ。立ちふさがる敵を』」
詠唱を唱えると剣に炎が纏われる。燃えさかる炎は波打っており、ディモの顔を美しく映し出していた。ゴーレムの動きを軽やかに躱しながら一瞬で懐まで入り込み、下からの蹴上げるようなすくい上げ攻撃で足を切断し倒れたところを動力となる魔石を破壊するのだった。
「はっはっは! 弱いね! こんなもんかい! 『我が前には何者も立ち塞げない。我が前に道が出でき、進む場所が道となる』」
ヘレーナの詠唱で目の前にいた魔物達が血を流しながら吹き飛ぶ。嵐のような竜巻に飲まれた魔物達は悲鳴も上げられずに倒されていった。高笑いをしながら魔物を切り伏せていくヘレーナに、魔物達は混乱状態で逃げ惑い始める。
「凄え。なんだ、あのデタラメの強さは」
「ディモが『お姉ちゃん』と言ってたな」
「でも、あいつは天涯孤独のはずだぞ?」
ヘレーナの戦いを見ていた村人達が呆然と独り言のように呟く。非日常的な光景を眺めていた村人達の側にディモが通り掛かり全員に逃げるように伝えた。
「速く逃げて下さい! お姉ちゃんが魔物を倒している間に! 教会で他の方達と合流して魔物が全滅するまで待っていて下さい」
「逃げろって、ディモはどうするんだよ?」
「僕はけが人を治してから行きます!」
当然のように言い切ったディモに、その場にいた村人達は唖然とする。体格で言えばディモが一番劣っており、自分の子供と同じ年に見える子供に逃げろと言われた村人達は互いに目を合わせて頷くと、傷の癒えた者を担いで教会に向かった。
「まだ魔物は残ってるみたいだね。あのゴーレムが司令塔だな。軽くひねるか」
軽く駆け出しながら近くにいた魔物を倒す。その勢いで鬼人のごとく暴れ回っていたヘレーナだったが、急に立ち止まると首を貸しげる。思ったような動きが出来なくなり身体が震えだしたのである。その様子に気付いたディモが慌てた様子で近付いてきた。
「どうしたの! お姉ちゃん!」
「あっ。ディモ。ちょっと……。くっ!」
膝をついたヘレーナにディモが慌てて駆け寄る。眉をしかめていたヘレーナだったが、理由が分かったようでディモに抱き付いてきた。
「えっ? え? な、なに? お姉ちゃん? どうしたの?」
「どうやら魔力切れみたいだね。ディモは魔石を生み出せないのかい?」
困った表情で上目遣いに見てきたヘレーナにディモは思わず赤面する。だが、自分の能力が好きな時に使えない事を思い出して悲しそうな顔になった。
「ごめんなさい。僕は、この能力を自在に操れないの。こうやって魔力を集中させても……。あれ?」
ヘレーナに魔石を生み出すスキルの説明をしながら泣きそうになっていたディモが、右手に魔力を通そうとすると突然輝き出す。いつものように魔力を握りしめるようにして手を開くと、そこには魔石が生れていた。
「なんだ。出来るじゃないか。この魔石を吸収したら……。駄目か。やっぱり私の活動時間は限られているみたいだね。夜になると人型が保てないのかもしれない。最初に会った時のように私を手に取って戦ってくれるかい?」
「いいよ! お姉ちゃんが前みたいに操ってくれるんだよね? 記憶はないけど僕頑張るよ!」
「いや。今回はディモの意識を残したまま身体を操らせてもらうよ。なぜか出来る気がするんだよね。じゃあ、魔物達がこちらを警戒して動かない間に始めようか?」
ヘレーナの姿が一瞬揺らぐと剣の姿になる。ディモは真剣な表情で剣を手に取ると意識があるのにもかかわらず、身体は動かないくになった。
「じゃあ、二幕目を始めようかね。ディモは意識はあるかい?」
『あるよ。身体は動かないけど。しっかりとお姉ちゃんを応援するよ!』
「ははっ! それは心強いね! まずはディモは私の動きをしっかりと覚えるようにしておきな。さっき産み出してくれた魔石は上等だったよ。これでしばらくは戦えそうだね。早速行くよ!」
『うん!』
ディモの身体を操りながらヘレーナはユックリと敵を倒し始める。まるで剣術のお手本のような動きで戦う姿は演舞を行っているようであり、逃げ始めていた村人達が歓声を上げながら応援していた。
『しっかりと私の動きを覚えるんだよ。最終的には私の助け無しで魔物と戦えるようになってもらうからね』
「分かったよ! お姉ちゃん」
ヘレーナが動かす自分の身体を意識しながらディモは少しでも多くの事を学ぼうとした。魔物達の大半は逃げ始めており、ディモを始めとした村人達は戦闘の終わりを感じていた。だが、ヘレーナだけは剣を構えたまま前方に意識を向けており不思議に思い声を掛ける。
『どうしたの?』
「最後のボスが残っているよ。さっき、ゴーレムがいたと誰かが言っていただろ?」
ヘレーナの声に反応するようにゴーレムが姿を現す。ユックリとした動きのように見えたゴーレムだったが、ヘレーナの姿を確認すると急に動きを速くして殴りかかってきた。
「いいねぇ! その動きはディモの練習にはもってこいだ!」
寸前で攻撃を躱したヘレーナはいったん間合いを取る。そして剣を構え直すと真剣な表情で防御主体に切り替えた。ゴーレムは人型のような姿だが動きは人の動きではなく、見た目に惑わされると死角からの攻撃に晒される可能性があった。
『うわぁ!』
「相手の姿に惑わされたら駄目だよ! こういったゴーレムの姿は仮だから、どんな動きをするかは様子を見ながら確認するんだ。だが、完全に分かった気になっても駄目だよ。たとえば……。ほら!」
『にゃぁぁぁぁぁ!』
突然、腕を投げつけてるトリッキーな動きでディモを翻弄するゴーレム。悲鳴を上げているディモが独力で戦っていたなら一瞬で挽肉になっていただろう。腕が立つと言われるレベルの兵士でも倒された可能性があるほど、この村を襲ったゴーレムは高性能だった。魔族男が別働隊として村を襲わせる為に用意したゴーレムであり、『魔物を率いて村を滅ぼせ』と命令されていた。
「そろそろディモ身体も悲鳴を上げてきたら止めを刺そうかね。いいかい。これから第一階位の魔法を使うからしっかりと感覚を掴むんだよ。『我は炎を求める。燃やせ。立ちふさがる敵を』」
詠唱を唱えると剣に炎が纏われる。燃えさかる炎は波打っており、ディモの顔を美しく映し出していた。ゴーレムの動きを軽やかに躱しながら一瞬で懐まで入り込み、下からの蹴上げるようなすくい上げ攻撃で足を切断し倒れたところを動力となる魔石を破壊するのだった。
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