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登場人物が動き始める
レオンハルトと初登場のユルク
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「ああ。これからのお茶会は極力減らず。そして人選も慎重に吟味してくれ。これからライネワルト侯爵家との交流比重を高めていく。だからといってライネワルト侯爵家自体に肩入れする事はない。だがユーファと揉めそうな家柄は最初に抑えておきたい」
「かしこまりました。そのように取り計らいます」
恭しく礼をして去って行く老執事を眺めていたレオンハルトだったが、近くに居た文官を捕まえると、次の指示を出し始めた。
「それと私の個人資産からギュンターの事業に投資する手続きを。偽名で投資するように。ただしギュンターには偽名の件は伝えておいてくれ。毎月の事業報告も必ず提出させろ。それを元に今後も継続していくか判断する」
「か、かしこまりました! すぐに着手します」
「ああ、頼む」
先ほどとは違い慌てた様子でレオンハルトの指示を実行する為に走り去った文官を、レオンハルトは無言で見送っていた。王城に戻ったレオンハルトは、それ意義にも次々に指示を出していく。まだ10才の少年だが、行動は大人顔負けであり、その指示を必死で書き留めながら文官達が推敲する為に退出していく。一段落したのか、レオンハルトは椅子に座ると、そっと紅茶が目の前に置かれた。
「そう言えば、あれほどライネワルト侯爵家に行くのを嫌がっておられたのに楽しそうに帰ってこられましたね。そして戻ってきたと思ったら、次々とライネワルト侯爵家を保護するような策に、事業協力までされるなんて」
「ああユルクか。そうだな。ギュンターから聞いたままの話なら、速攻で帰っただろう。ましてや噂にまでなっていたわがまま侯爵令嬢なら、今後の付き合いを断っただろう。例え、友人のギュンターから頼まれたとしてもね」
ユルクと呼ばれたユルク = デーベライナーと呼ばれた青年が面白そうな顔をしていた。普段は年齢に相応しい行動や言動をしている王子が、仮面を被るのを忘れて次々と部下達に指示を出しているのである。あまり有能だと表に出さなかったので、配下となっているのも二流どころが多かった。
だが、ユルクは、レオンハルトが産まれた頃から側に居る執事であり、10才年上の彼は有能な部下であり、頼りがいのある兄であり、そしてレオンハルトの真の姿を知っている友人でもあった。
「いいのですか? 15才になって学院に入るまでは大人しくしていると決めていたじゃないですか」
「ああ、そのつもりだったんだけどね……」
ユルクの言葉にレオンハルトは頷きながらも楽しそうな顔をする。久しぶりに見た、心から笑っている主人に軽く驚きながらも、両手を広げて肩をすくめるとレオンハルトの前の席に座った。
「気が変わったんだね。じゃあ、お兄ちゃんにその理由を教えてくれるかい? レオンがそこまで楽しそうにしている理由を」
「ふふ。珍しいね。ユルクがその喋り方をするなんて。いいよ。弱った時はお兄ちゃん役をしてくれるユルクになら説明をするよ。その前に……紅茶のお代わりと、ユルクの分も用意してよ。お菓子はユーファからもらったクッキーがあるからね」
「へえ。甘いものが苦手なレオンがクッキーを嬉しそうに取り出すなんてね。それはそれは」
鞄からいそいそとクッキーを取り出しているシーンを希が見れば鼻血を出して喜んだであろう。レオンハルトの顔は満面の笑みを浮かべており、兄として慕っているユルクには心から気を許しているようであった。まるで初めて好きな女の子が出来たような表情を浮かべているレオンハルトに、ユルクは優しい眼差しを向けながら紅茶の用意をする。
ここにセバスチャンが居れば感動の表情を浮かべて、そして弟子入りを志願したであろう。それほどユルクの動作は洗練されており、またその動き一つ一つに技術の高さが伝わってくる。そんな流れるような動作を見ながら、レオンハルトは嬉しそうにしていた。
「やっぱり、ユルクはレベルが違うね。ユーファの所にいた執事も頑張っているのは分ったけど、実力は全く付いてこなかったからね。形から入っているのは好感が持てたね。まずは動きをマスターするのが一番の近道だから。それと主人を一番に考えて行動していたのはいいね」
「今日は本当にどうされたので? レオンがそれほど人を心から褒めるなんて珍しいね」
「ああ、味は及第点にすら到着していなかったが、ユーファが喜ぶために私をもてなそうと一所懸命な気持ちは伝わってきたからね。じゃあ、留守番をしていたユルクに、ライネワルト侯爵家での話をしようか」
指先まで色気に満ち溢れているユルクが小さく微笑みながらレオンハルトの前に紅茶を置く。そして自分の分も入れると、ユックリと飲みながらレオンハルトからの話を聞いていた。そしてライネワルト侯爵家の異常さに気付く。
「ちょっとまって! 一瞬で作物が出来上がる? 薔薇を使った料理? 2人揃って畑を耕していた? それに……ふふっ。父親から土地をもらっただって? それも落花生事業の為に? ふふふふ。……ちょっと待って、お腹痛い」
レオンハルトから話を聞いていたユルクだったが、貴族らしくなく突拍子もない行動をしているライネワルト侯爵家の子供達に笑いが止まらなくなる。ユルクの知っている貴族は、レオンハルトを除き、自己顕示欲を満たす為だけに行動している者が多い。特に王都で暮らしている貴族ほど、その傾向が強く長年レオンハルトに伝えているユルクにとって、貴族とは「プライドを食べて生きている未知なる生物」にしか見えなかった。
「あーおかしかった。それにしても、ギュンター様は何度も会った事があるけど、そこまでおかしな行動はしていなかったよね? それにユーファちゃんも面白い子だね」
「おい。ユルク」
楽しそうにしているユルクにレオンハルトが眉にしわを作りながら半眼で睨んでくる。
「ユーファネートをユーファと呼んで良いのは家族と俺だけだ」
「おお、それはそれは。愛されていますなユーファネート様は」
年齢相応な表情を浮かべながら抗議しているレオンハルトを見て、ユルクは一度ユーファネートに会ってみたいと思うのだった。
【新しい情報が追加されました】
ユルク ・デーベライナー
「君☆(きみほし)」で、レオンハルト・ライネルトの後ろに常に控えている執事です。メインストーリーには関係しないキャラクターですが、レオンハルトイベントを発生させる為には、ある程度の交流が必要です。レオンハルトには兄のように慕われており、ユルクの機嫌を損ねる事は避けましょう。紅茶を淹れる事にかけては王城でも右に出る者は居ないと噂されています。
「かしこまりました。そのように取り計らいます」
恭しく礼をして去って行く老執事を眺めていたレオンハルトだったが、近くに居た文官を捕まえると、次の指示を出し始めた。
「それと私の個人資産からギュンターの事業に投資する手続きを。偽名で投資するように。ただしギュンターには偽名の件は伝えておいてくれ。毎月の事業報告も必ず提出させろ。それを元に今後も継続していくか判断する」
「か、かしこまりました! すぐに着手します」
「ああ、頼む」
先ほどとは違い慌てた様子でレオンハルトの指示を実行する為に走り去った文官を、レオンハルトは無言で見送っていた。王城に戻ったレオンハルトは、それ意義にも次々に指示を出していく。まだ10才の少年だが、行動は大人顔負けであり、その指示を必死で書き留めながら文官達が推敲する為に退出していく。一段落したのか、レオンハルトは椅子に座ると、そっと紅茶が目の前に置かれた。
「そう言えば、あれほどライネワルト侯爵家に行くのを嫌がっておられたのに楽しそうに帰ってこられましたね。そして戻ってきたと思ったら、次々とライネワルト侯爵家を保護するような策に、事業協力までされるなんて」
「ああユルクか。そうだな。ギュンターから聞いたままの話なら、速攻で帰っただろう。ましてや噂にまでなっていたわがまま侯爵令嬢なら、今後の付き合いを断っただろう。例え、友人のギュンターから頼まれたとしてもね」
ユルクと呼ばれたユルク = デーベライナーと呼ばれた青年が面白そうな顔をしていた。普段は年齢に相応しい行動や言動をしている王子が、仮面を被るのを忘れて次々と部下達に指示を出しているのである。あまり有能だと表に出さなかったので、配下となっているのも二流どころが多かった。
だが、ユルクは、レオンハルトが産まれた頃から側に居る執事であり、10才年上の彼は有能な部下であり、頼りがいのある兄であり、そしてレオンハルトの真の姿を知っている友人でもあった。
「いいのですか? 15才になって学院に入るまでは大人しくしていると決めていたじゃないですか」
「ああ、そのつもりだったんだけどね……」
ユルクの言葉にレオンハルトは頷きながらも楽しそうな顔をする。久しぶりに見た、心から笑っている主人に軽く驚きながらも、両手を広げて肩をすくめるとレオンハルトの前の席に座った。
「気が変わったんだね。じゃあ、お兄ちゃんにその理由を教えてくれるかい? レオンがそこまで楽しそうにしている理由を」
「ふふ。珍しいね。ユルクがその喋り方をするなんて。いいよ。弱った時はお兄ちゃん役をしてくれるユルクになら説明をするよ。その前に……紅茶のお代わりと、ユルクの分も用意してよ。お菓子はユーファからもらったクッキーがあるからね」
「へえ。甘いものが苦手なレオンがクッキーを嬉しそうに取り出すなんてね。それはそれは」
鞄からいそいそとクッキーを取り出しているシーンを希が見れば鼻血を出して喜んだであろう。レオンハルトの顔は満面の笑みを浮かべており、兄として慕っているユルクには心から気を許しているようであった。まるで初めて好きな女の子が出来たような表情を浮かべているレオンハルトに、ユルクは優しい眼差しを向けながら紅茶の用意をする。
ここにセバスチャンが居れば感動の表情を浮かべて、そして弟子入りを志願したであろう。それほどユルクの動作は洗練されており、またその動き一つ一つに技術の高さが伝わってくる。そんな流れるような動作を見ながら、レオンハルトは嬉しそうにしていた。
「やっぱり、ユルクはレベルが違うね。ユーファの所にいた執事も頑張っているのは分ったけど、実力は全く付いてこなかったからね。形から入っているのは好感が持てたね。まずは動きをマスターするのが一番の近道だから。それと主人を一番に考えて行動していたのはいいね」
「今日は本当にどうされたので? レオンがそれほど人を心から褒めるなんて珍しいね」
「ああ、味は及第点にすら到着していなかったが、ユーファが喜ぶために私をもてなそうと一所懸命な気持ちは伝わってきたからね。じゃあ、留守番をしていたユルクに、ライネワルト侯爵家での話をしようか」
指先まで色気に満ち溢れているユルクが小さく微笑みながらレオンハルトの前に紅茶を置く。そして自分の分も入れると、ユックリと飲みながらレオンハルトからの話を聞いていた。そしてライネワルト侯爵家の異常さに気付く。
「ちょっとまって! 一瞬で作物が出来上がる? 薔薇を使った料理? 2人揃って畑を耕していた? それに……ふふっ。父親から土地をもらっただって? それも落花生事業の為に? ふふふふ。……ちょっと待って、お腹痛い」
レオンハルトから話を聞いていたユルクだったが、貴族らしくなく突拍子もない行動をしているライネワルト侯爵家の子供達に笑いが止まらなくなる。ユルクの知っている貴族は、レオンハルトを除き、自己顕示欲を満たす為だけに行動している者が多い。特に王都で暮らしている貴族ほど、その傾向が強く長年レオンハルトに伝えているユルクにとって、貴族とは「プライドを食べて生きている未知なる生物」にしか見えなかった。
「あーおかしかった。それにしても、ギュンター様は何度も会った事があるけど、そこまでおかしな行動はしていなかったよね? それにユーファちゃんも面白い子だね」
「おい。ユルク」
楽しそうにしているユルクにレオンハルトが眉にしわを作りながら半眼で睨んでくる。
「ユーファネートをユーファと呼んで良いのは家族と俺だけだ」
「おお、それはそれは。愛されていますなユーファネート様は」
年齢相応な表情を浮かべながら抗議しているレオンハルトを見て、ユルクは一度ユーファネートに会ってみたいと思うのだった。
【新しい情報が追加されました】
ユルク ・デーベライナー
「君☆(きみほし)」で、レオンハルト・ライネルトの後ろに常に控えている執事です。メインストーリーには関係しないキャラクターですが、レオンハルトイベントを発生させる為には、ある程度の交流が必要です。レオンハルトには兄のように慕われており、ユルクの機嫌を損ねる事は避けましょう。紅茶を淹れる事にかけては王城でも右に出る者は居ないと噂されています。
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