23 / 100
23
「マリア? それに母上まで」
ニコニコと笑いながら、ポカンと口を開けたアラバスの膝に座るマリア。
「お……おい!」
「遊ぼう? アシュ」
「ちょっと待て! 俺は仕事中だぞ」
それに異を唱えたのは王妃陛下だった。
「何が仕事中ですか! 見るからにティータイムのようだけれど? それにどういうことなのかしら? お菓子をこんなに散らかして! マリアと一緒に幼児マナーの授業を受けさせないといけないわ」
「は……母上……これは……」
王妃の援護射撃を始めるマリア。
「そうだよ、アシュ。お菓子はひとつじゅちゅ、ゆっくり食べないとダメなんだもん。それに、お菓子で遊ぶのはもっとイケない事なんだもん!」
「お菓子で遊ぶって……では料理で遊ぶのは良いのか?」
全員が『突っ込むのはそこじゃない』と思ったが、誰も口を開かなかった。
「お料理でもダメなの! 食べるものはおもちゃじゃないよ?」
アラバスがマリアの髪を撫でながら、ニヤッとアイロニカルな笑みを浮かべる。
「料理もダメだと? では、昨夜お前がわざと茸のソテーを落としたのは何なのだ?」
「うっ……」
言い淀むマリア。
「あれは……落ちたんだよ? ホントだよ?」
「そうかぁ?」
「そうだもん!」
アラバスの膝の上で体をずらし、声の主の方に向き直って足をバタつかせるマリア。
「おい! そこで……動くな」
「なあぜ?」
「なぜって……どうしてもだ! あっ……だから動いちゃダメだって」
不思議そうな顔のマリアを手招きしながらトーマスが言う。
「それはいろいろと、男の事情というものだ。マリアはこちらに座りなさい」
アラバスはマリアを離すまいと手を伸ばしたが、一歩遅かった。
「さあ、兄さまの横に来なさい。良い子だね、マリアは」
「うん、マリアは良い子なの。だから遊ぼう?」
「遊びたいけれど今はダメなんだ。夕食の後で絵本を読んであげよう。ね? わかった?」
マリアは返事をせずに王妃陛下の顔を見た。
チッと小さな音をさせた王妃の口が開く。
「まあ、仕方がないわね。でもそのお菓子はちゃんと四人で全部食べなさい」
使用人達が顔を真っ赤にして笑いを堪えている。
「分かったら返事!」
「はいっ!」
返事をしたのはカーチスだけだ。
王妃がギロッと俯く三人を見回す。
「へ・ん・じ!」
「はい」
「はい」
「はい」
満足した王妃がマリアの方に手を伸ばすと、ニコッと笑ったマリアがその手をとった。
「さあ! 見ていてあげるから早く食べなさい。ねえ、そこのあなた。お茶を淹れなおしてやってくれる? クッキーもタルトタタンも喉に詰まり易いから」
王妃に命じられた侍女が恭しく頷いてお茶の準備を始めた。
優しいのか厳しいのか分からない王妃陛下に見張られている四人は、渋々とテーブルの上に散らばっているお菓子に手を伸ばす。
「本当に勿体ないわ! ねえ? マリア」
「うん、もっちぇないねえ」
その言葉にアレンがパッと顔を上げた。
「お! マリアちゃん! なんだか祝福の予感がするぞ? 今夜あたりかもしれない。早めにお風呂に入って食事も済ませておいた方がいいかもしれないよ?」
マリアが驚いた顔でトーマスを見た。
「あ……ああ……そうだな……なんだかそんな雰囲気?」
王妃陛下が満面の笑みで言う。
「今夜なの? やっと……やっとなのね……助かったわ」
使用人たちの間にも安堵の空気が流れる。
アラバスが自分の膝から逃げたマリアを悔しそうな顔で見た。
「今日の夕食はマリアの大好きなチキンソテーだが茸のソースらしいぞ」
「ゲッ……」
王子然とした兄のあまりにも幼稚な復讐に、せっかく口に入れたクッキーを噴き出してしまったカーチスだった。
ニコニコと笑いながら、ポカンと口を開けたアラバスの膝に座るマリア。
「お……おい!」
「遊ぼう? アシュ」
「ちょっと待て! 俺は仕事中だぞ」
それに異を唱えたのは王妃陛下だった。
「何が仕事中ですか! 見るからにティータイムのようだけれど? それにどういうことなのかしら? お菓子をこんなに散らかして! マリアと一緒に幼児マナーの授業を受けさせないといけないわ」
「は……母上……これは……」
王妃の援護射撃を始めるマリア。
「そうだよ、アシュ。お菓子はひとつじゅちゅ、ゆっくり食べないとダメなんだもん。それに、お菓子で遊ぶのはもっとイケない事なんだもん!」
「お菓子で遊ぶって……では料理で遊ぶのは良いのか?」
全員が『突っ込むのはそこじゃない』と思ったが、誰も口を開かなかった。
「お料理でもダメなの! 食べるものはおもちゃじゃないよ?」
アラバスがマリアの髪を撫でながら、ニヤッとアイロニカルな笑みを浮かべる。
「料理もダメだと? では、昨夜お前がわざと茸のソテーを落としたのは何なのだ?」
「うっ……」
言い淀むマリア。
「あれは……落ちたんだよ? ホントだよ?」
「そうかぁ?」
「そうだもん!」
アラバスの膝の上で体をずらし、声の主の方に向き直って足をバタつかせるマリア。
「おい! そこで……動くな」
「なあぜ?」
「なぜって……どうしてもだ! あっ……だから動いちゃダメだって」
不思議そうな顔のマリアを手招きしながらトーマスが言う。
「それはいろいろと、男の事情というものだ。マリアはこちらに座りなさい」
アラバスはマリアを離すまいと手を伸ばしたが、一歩遅かった。
「さあ、兄さまの横に来なさい。良い子だね、マリアは」
「うん、マリアは良い子なの。だから遊ぼう?」
「遊びたいけれど今はダメなんだ。夕食の後で絵本を読んであげよう。ね? わかった?」
マリアは返事をせずに王妃陛下の顔を見た。
チッと小さな音をさせた王妃の口が開く。
「まあ、仕方がないわね。でもそのお菓子はちゃんと四人で全部食べなさい」
使用人達が顔を真っ赤にして笑いを堪えている。
「分かったら返事!」
「はいっ!」
返事をしたのはカーチスだけだ。
王妃がギロッと俯く三人を見回す。
「へ・ん・じ!」
「はい」
「はい」
「はい」
満足した王妃がマリアの方に手を伸ばすと、ニコッと笑ったマリアがその手をとった。
「さあ! 見ていてあげるから早く食べなさい。ねえ、そこのあなた。お茶を淹れなおしてやってくれる? クッキーもタルトタタンも喉に詰まり易いから」
王妃に命じられた侍女が恭しく頷いてお茶の準備を始めた。
優しいのか厳しいのか分からない王妃陛下に見張られている四人は、渋々とテーブルの上に散らばっているお菓子に手を伸ばす。
「本当に勿体ないわ! ねえ? マリア」
「うん、もっちぇないねえ」
その言葉にアレンがパッと顔を上げた。
「お! マリアちゃん! なんだか祝福の予感がするぞ? 今夜あたりかもしれない。早めにお風呂に入って食事も済ませておいた方がいいかもしれないよ?」
マリアが驚いた顔でトーマスを見た。
「あ……ああ……そうだな……なんだかそんな雰囲気?」
王妃陛下が満面の笑みで言う。
「今夜なの? やっと……やっとなのね……助かったわ」
使用人たちの間にも安堵の空気が流れる。
アラバスが自分の膝から逃げたマリアを悔しそうな顔で見た。
「今日の夕食はマリアの大好きなチキンソテーだが茸のソースらしいぞ」
「ゲッ……」
王子然とした兄のあまりにも幼稚な復讐に、せっかく口に入れたクッキーを噴き出してしまったカーチスだった。
あなたにおすすめの小説
【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
【完結】あなたを忘れたい
やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。
そんな時、不幸が訪れる。
■□■
【毎日更新】毎日8時と18時更新です。
【完結保証】最終話まで書き終えています。
最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)
ジェリー・ベケットは愛を信じられない
砂臥 環
恋愛
ベケット子爵家の娘ジェリーは、父が再婚してから離れに追いやられた。
母をとても愛し大切にしていた父の裏切りを知り、ジェリーは愛を信じられなくなっていた。
それを察し、まだ子供ながらに『君を守る』と誓い、『信じてほしい』と様々な努力してくれた婚約者モーガンも、学園に入ると段々とジェリーを避けらるようになっていく。
しかも、義妹マドリンが入学すると彼女と仲良くするようになってしまった。
だが、一番辛い時に支え、努力してくれる彼を信じようと決めたジェリーは、なにも言えず、なにも聞けずにいた。
学園でジェリーは優秀だったが『氷の姫君』というふたつ名を付けられる程、他人と一線を引いており、誰にも悩みは吐露できなかった。
そんな時、仕事上のパートナーを探す男子生徒、ウォーレンと親しくなる。
※世界観はゆるゆる
※ざまぁはちょっぴり
※他サイトにも掲載
一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む
浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。
「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」
一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。
傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
牢で死ぬはずだった公爵令嬢
鈴元 香奈
恋愛
婚約していた王子に裏切られ無実の罪で牢に入れられてしまった公爵令嬢リーゼは、牢番に助け出されて見知らぬ男に託された。
表紙女性イラストはしろ様(SKIMA)、背景はくらうど職人様(イラストAC)、馬上の人物はシルエットACさんよりお借りしています。
小説家になろうさんにも投稿しています。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。