僕の魂は君と出会うためだけに存在していたんだ

志波 連

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16 はざまの時空へ

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 僕は平坦な場所を探し出してそこを見続けた。
 もうすぐ地面に到着するというとき、このままでは顔から突っ込むと気づいたが時すでに遅しだ。

「痛あぁぁぁ」

「ははは~ごめんごめん。着地するときには足から降りるようにした方が良いよ?」

「早く言ってよ…」

「さっきの練習で見た方向に頭が向くって理解したと思ったんだけど?トオルって運痴君かな?」

「そうだよ。カラキシさ」

「まあ、これも慣れだ。このまま進もう」

 その時になって初めて僕は気づいた。

「サーフェス?どこにいるの?」

「ここに居るよ」

 顔の下から声がしたような気がして俯くが、見えるのは自分のつま先だった。

「どこ?」

「ここだよ」

 じわっと胸が熱くなった。
 慌てて手で触れるとサーフェスにもらった光る石を入れた小袋に触れた。

「そう、ここに入ってる。僕は君の守護神であり、神刀オオクニヌシの魂だ」

「サーフェスって…神様だったの?」

「おいおい!今更って感じだが?」

「僕は…タメグチで良いの?」

「うん、良いよ?神って別に偉いわけじゃないからね。長生きだから物知りなだけさ。そもそも神って奴らはかなり荒っぽいしね。それは君たちにも伝承として受け継がれているだろう?」

「あ…神の枕詞だね?ちはやふるは『いちはやぶ』だ。荒々しいっていう意味だよね」

「そうだ。あの頃はヒノモトにリゾート気分でやってきては、そりゃもうやりたい放題だったからね~酒池肉林ってやつさ」

「マジかよ…」

「ははは!だからそれほど恐れ奉るほどのものではないんだ。まあ、それは置いといて、君は今からヤマトタケルを探さなくてはいけない。奴はオオクニヌシの形代を盗んで人間界に降りた。そして自分を殺したミヤズヒメが埋葬された場所でオオクニヌシを砕いたのだと思う」

「ミヤズヒメの埋葬場所?」

「そうだ。君が一度お祖父様と一緒に掃除をした所だよ。そこにはヤマトタケルに返り討ちにあったミヤズヒメの遺体と一緒にオオクニヌシが埋葬されているんだよ」

「でも…」

「そう、オオクニヌシはミヤズヒメの魂と一緒に僕たちの時空に輪転した。埋葬されたのは刃先の欠けた形代だ」

「でも君の時空でも現物があったのでしょう?」

「あったよ。だから形代なんだよ。形代は何でも良いんだ。魂がそこに入ればそれが本体となる。僕の手元にあったオオクニヌシは短刀のような形で銅製の古代剣だった」

「でも盗まれたのでしょう?」

「ヤマトタケルの手に落ちる前にオオクニヌシの魂は抜けたんだ。そして近くに居た僕の中に入ってきた。だから僕の中には二つの魂が存在しているんだ」

「わかったような?わからないような?」

「まあそのうちわかるよ。それとこの世界はハザマと呼ばれる世界だ。どちらの時空にも属していないから、ちょっと変な時間軸だと感じるだろうけれど全て現実だから。怪我をすれば痛いし、切られたら死ぬ。気を引き締めて行こう」

「どこに?」

「ヤマトタケルはここに引っ張られて来ているはずさ。どうしても切り裂かなくてはいけないオオクニヌシの魂である僕がここにいるからね。そして今君が手にしているクサナギ、それはもともと奴の剣だ」

「なぜここにあるの?」

「クサナギは刃こぼれしていたんだ。それを鍛えなおすために奴はクサナギを造ったアツタノミコのもとを訪れていた。その時に彼の妻であったミヤズヒメに懸想して無理やり関係を持ったんだ」

「酷い奴だな」

「うん、その時ミヤズヒメは二番目の子を身籠っていた。自分の体ばかりか腹の子も汚されたことに絶望したミヤズヒメは、クサナギを預けて旅立とうとしていたヤマトタケルに一太刀を浴びせたんだ。その時にミヤズヒメが握っていたのがオオクニヌシだよ。でもミヤズヒメは奴に返り討ちにされてしまった。奴は素手でミヤズヒメを縊り殺したんだ。腹の子と一緒にね」

 僕はまっすぐ草原を歩きながらサーフェスの話しに耳を傾けていた。
 なぜだろう…涙が溢れて仕方がない。
 怒りで頭がどうにかなりそうだ。

「ここからどう動くかは君が決めてくれ。君の魂が導いてくれる」

 サーフェスの言葉に僕の頭は真っ白になった。
 この有り得ない状況の中、僕は丸投げされてしまったのだ。
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