僕の魂は君と出会うためだけに存在していたんだ

志波 連

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24 竜神②

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 竜神はぎっとヤマトタケルを睨むと、徐に口を開いた。
 白いような黄色いような煙がうっすらと吐き出される。
 僕も、恐らくはヤマトタケルもこれから何が始まるのか理解してはいなかった。
 理解していたのはウサギたちだけ。
 彼らは咄嗟にハンカチで口と鼻を覆った。
 僕も慌ててそれに倣う。

 ぶろろろろろろ

 辺りが霧に包まれ視界が奪われた。
 僕は反射的に目をきつく閉じてじっと時が過ぎるのを耐えた。
 後ろの方でゴホゴホと咳き込む声がする。
 薄目を開けて振り返ると、何匹かのウサギ兵がむせていた。
 見上げると巨大竜がヤマトタケルが立っている方を睨んでいる。
 ヤマトタケルを見ると…いなかった。

「えっ!消えた!」

「フン!逃げ足だけは早い」

 どうやら奴は逃げたようだ。

「今度はお前だ。なぜ我が息子を狙う?お前も逆鱗狙いか?」

「えっと…最初はウサギのお姫様が可哀想だと思って…」

 僕はしどろもどろながら今までのいきさつを話した。
 サーフェスは完璧なまでに気配を消している。

「生贄など望んではおらん。その方らが勝手に連れてきて勝手に池に落としたのであろう?」

「そうなんですか?」

「まあこちらも神として供物を供えてもらわねばならぬ立場ではあるが、供物がないことと国が亡びることは関係ない。国が亡びるのも栄えるのもその国の長たるものの器次第だ」

「では生贄になった姫たちは…無駄死?」

「そうだな。大きな石に括りつけられて池に放り込まれたら…死ぬな」

「そんな!」

「我らは人の営みには関知しない。自分らの愚かさを神の責任にすり替えて、無駄に娘らの命を散らした愚かな祖先を恨むが良い」

「でも皇太子は…」

「皇太子?あの大きなウサギ面の男か?あいつはその森に生えている毒草を喰っただけだ」

「へぇっ?」

「そんなことはどうでもよい。なぜ逆鱗が欲しいかは理解したが逆鱗に見合うほどのものを示せ」

「条件ですか…」

「息子の逆鱗はまだ抜け変わらぬのでな。息子のは諦めよ。我が逆鱗なら何度も抜け変わっておるし、抜けた逆鱗は保存してある。一本位ならやらぬでもないが…己が知恵を示して見せよ」

「知恵?」

「ああ、楽しみにしているぞ」

 そう言うと巨大竜は酔った息子を連れて池の中に戻って行った。

「知恵ってなんだよ…」

 サーフェスは応えてくれない。
 僕は震えているウサギたちに視線を移した。

「大丈夫?」

 真っ青なまま震え続けているウサギ姫に声を掛けた。

「だ・だ・だ・だ・だ・だいじょ・うぶ・ですわ」

 絶対大丈夫じゃないやつだな。

「馬車に戻ろう。君はもう生贄ではない」

「えっ!でもそれでは国が…」

「竜神はさっきの大きい方だね。僕はもう少しこの国に留まって対策を考えるよ」

「…先ほどの小さい方の竜神様が呟いておられて」

「何か言われたの?」

「早く逃げろと…」

「逃げろ?」

「ええ、池に落とされたら助けてやるから逃げろと言われました。お酒臭かったでけど」

「そうか…あの子は君を助けるために来ていたのか…」

 僕は顎に手を当てて暫し考えた。
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