僕の魂は君と出会うためだけに存在していたんだ

志波 連

文字の大きさ
23 / 63

23 竜神①

しおりを挟む
「ごめん!ボーッとした」

「黒い霧のせいだ。早く抜け出せ」

 僕はクサナギを振り回して霧をはねのけた。
 隙間から見えるのは地面だった。
 このままでは落下激突即死の一択だ。
 僕は頭を上に向けた。
 ふわっと体が反転し、足が地面についた…危機一髪だ。

「ふんっ!残念だったな。楽に死ねたのにな」

 頭上からヤマトタケルの声がした。

「精神攻撃か?卑怯な手を使わずに力で来いよ!」

「望むところだ!」

 ヤマトタケルが頭上からまっすぐ僕に向かって飛んできた。
 僕は後ろに飛び下がり、一撃目をぎりぎり躱した。
 池を背にして仁王立ちとなったヤマトタケルは腹が立つほど落ち着いている。
 しかしその手に持っているレイピアはボロボロであと数度の衝撃で折れそうな状態だ。
 チラッとヤマトタケルが森に竜神を引っ張り込もうとしているウサギ兵を見た。
 奴は新しい剣を狙っているのだろうと気づいた僕は森を背にして立ちふさがった。
 
 祠の前に数匹のウサギ兵が転がっている。
 血まみれですでに息をしていないことは一目でわかった。
 僕はブワッと怒りが込み上げた。
 全身の血が滾る。
 こいつは剣を奪うためだけにウサギの命を散らしたのだ。

「おのれ…」

 僕は奥歯を嚙みしめ、クサナギを握りしめた。
 ヤマトタケルは片方だけ口角を上げてレイピアを構えた。
 切っ先を僕に向け全身で突いてくるつもりだ。
 腰を落として地面を蹴ったヤマトタケルが突進してきた。
 僕はまた上空に逃げることを考えたが踏みとどまった。
 体をずらしクサナギの鍔で奴の剣を受け止めた。

「竜神は渡さない」

 僕は奴の耳元で言った。

「ふんっ気づいたか。残念だが仕方がない。お前を殺して奪うまでよ」

 そう言って構えなおしたヤマトタケルの後ろで水柱が上がった。
 凄まじい量の水滴がヤマトタケルの黒い霧を蹴散らした。
 あたりがぼうっと暗くなった。
 影の正体は巨大な竜だった。

「何をしているのかと思えば…」

 くぐもったような低い声でそう言うと、巨大な竜が首を延ばして酔った竜に近寄った。

「酒の匂いがするが?」

 ウサギ姫も兵たちも恐怖で気を失う瞬前だ。
 仕方なく僕が返事をした。

「ええ、僕が飲ませました」

「子供に酒を?」

「はい、すみません。まさか子供だと思わなくて」

「酔わせてどうするつもりだったのか?」

「えっと…」

「フンッ!小賢しい真似を。それで?あの邪気の塊は何だ?」

「奴は竜神の逆鱗を狙って…」

 僕が言い終わる前にドンという衝撃が地面を揺らした。
 
「逆鱗だと?まだ幼き我が息子の育ち切ってもおらぬ逆鱗を狙うだと?」

 ものすごい迫力だ。
 ヤマトタケルはしれっとした顔で薄ら笑いを浮かべている。

「邪悪なる欠けた魂の持ち主などが欲して良いものではない!」

 巨大な竜は凄まじい鼻息をヤマトタケルに吹きかけた。
 黒い霧は消え去り半分透明な体だけが辛うじて残っている。

「ならば親龍の逆鱗を手に入れるまでだ」

 ヤマトタケルは僕から竜に狙いを変えた。

「笑わせる…」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

処理中です...