僕の魂は君と出会うためだけに存在していたんだ

志波 連

文字の大きさ
22 / 63

22 対決②

しおりを挟む
 一度はバラけていた黒い霧が再び集まって人型を形成した。

「おお!そこにあるのは我がクサナギではないか!」

 ヤマトタケルとなった黒い霧がニヤニヤと笑いながら手を伸ばしてきた。

「お前のクサナギだと?」

「ああ俺のだ。返してくれ」

「ふざけるな」

 そう叫んだ僕の耳にサーフェスの声が届いた。
 
「最悪渡しても問題ない。命を粗末にするな」

 僕は頷くだけの返事をした。

「そうだよ?俺のだ。研ぎに出していたんだ。まあいろいろあって引き取れなかったが俺の剣ということは間違いない」

 僕はヤマトタケルが握っている剣に目をやった。
 小柄なウサギ兵が使う剣だけあって、細くて短い上に装飾過多で実践向きでは無い。
 まるでロールプレイングゲームで見たレイピアの小型版だ。

「自分のだと言い張るなら証拠を示せよ。果たして剣が応えるかな?」

「ふんっ!笑わせるな。証拠など必要ない!奪うまでよ」

 ヤマトタケルはレイピアの切っ先をまっすぐ僕に向けて突っ込んできた。
 この攻撃は横に体をずらして叩き落すんだったかな?
 僕は週末ごとに朝まで興じていたゲームを思い出してた。

 カキンッ!

 レイピアを叩き落す。
 なるべく鍔元を狙ったつもりだったが、なかなかうまくは行かないようだ。
 レイピアは折れず、反対にクサナギに小さな刃こぼれが生じてしまった。

「ほぉ?心得があるようだな」

「バカにするなよ?ラスボスを十回は倒しているんだ!」

 ヤマトタケルは意味が分からないという顔で僕を見た。
 わかってたまるか!僕がどれほど小遣いを注ぎ込んで課金し続けたと思っている!
 山下さんに本気で怒られたんだぞ!
 僕は心の中で叫んだ。

「まあいい、それならそのようにお相手するまでだ。お前の言うラスボスというのがどれほどかは知らないが、俺も神殺しという二つ名をもつ男だ。せいぜい楽しませてくれよ」

 背中に心臓が移動したかのようにズキズキと痛む。
 腕に力が入らないが、ここで引いてはダメだと本能が告げていた。
 チラッと後ろを振り返ると、ウサギたちは竜神の救助に成功していた。
 竜神を二十匹近いウサギが引き摺っている。
 竜神は完全に酩酊していて気持ちよさそうに眠っていた。
 
 カキンッ!カキンッ!

 ヤマトタケルは鋭い突きで容赦なく僕の心臓を狙ってくる。
 僕は空中に活路を見出し高く飛んだ。
 ニヤッと笑って追いかけてくる黒い霧に包まれた。
 痛みで集中力が欠けていたのか、僕は霧を少し吸い込んでしまった。
 目の前がいきなり反転し、暗闇に引きずり込まれる。

「ほぎゃほぎゃほぎゃ」

 赤ちゃんの泣き声が聞こえ、目を開けると白い壁の小部屋が見えた。

「よくやった!頑張ったね…ありがとう!ありがとう!」

 生まれたばかりの赤子を抱いているのは…父さんだ。
 ベッドの上で嬉しそうに笑っている母さんもいる。

「小さかったから心配だったけど、元気に生まれてくれたわ」

「うん、君も無事で本当に良かった」

「名前は決めたの?」

「ああ、トオルにしようと思う」

「あら素敵ね」

 母さんらしきその女の人は赤子に手を伸ばして、愛おしそうに頬に触れた。
 僕は愛されていたのか?そう思った瞬間激しい頭痛がして場面が切り替わった。
 ものすごく荒れた室内の隅っこで小さな子供が怯えながら立ち竦んでいる。

「あんたが!あんたが浮気するからこんなことになるんでしょうが!」

「煩い!お前こそ遊びまわりやがって!俺の稼いだ金だぞ!」

「遊んでるって?遊んでるのはあんたでしょう!」

「飯ぐらい作れよ!トオルのことも放置して何やってんだ!お前は!」

「うるさいうるさいうるさいうるさい!この浮気男!」

 ああ…あの怯えている子は僕か。
 三歳くらいかな?この頃からあの夫婦はこんな感じだったのか…。

「トオル!しっかりしろ!」

 サーフェスの声が現実に引き戻す。
 僕は数回頭を振って意識を取り戻した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

処理中です...