僕の魂は君と出会うためだけに存在していたんだ

志波 連

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47 双子神と双子剣 

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 クサナギさんはサーフェスを見ながら口を開いた。

「兄上は私に先に選べと言ったんだ。そして私はクサナギ剣を選んだ。理由なんてないよ。強いて言うならなぜか惹かれたって感じかな。私がクサナギ剣に入るとき、兄上は私に聞いたんだよ。本当に良いのかってね」

「どういう意味?」

 僕の質問には答えず、悲しそうな顔をしてクサナギさんは続けた。

「私は頷いて兄上の手を離した。兄上の温もりが指先から消えたとき……何て言うかな。切なかったっていうのが一番近いかな。私と兄上は双子神だったから。ずっと一緒にいたんだよ。呆れるくらい長い時間を一緒に過ごしたんだ」

 サーフェスがチラッとこちらを見て手を振った。

「仲良かったんですね」

「ああ、仲が良いというより一緒にいるのが当たり前だったし、兄上は僕をとても大事にしてくれた。僕も兄上のことをとても大切に思っていたよ。でもあの時、そうだよ。あの双子剣を見たとき、どうしようもなく惹かれてしまった。僕はあれを形代にしたいと兄上に言った。兄上は珍しく難色を示したんだ。それでは別々に生きることになるぞ?それでも良いのかってね」

「サーフェスはくさなぎさんと別れたくなかったんでしょうね」

「私だって別れたくは無かったさ。でもあの剣に魅せられたんだと思う。今思えば何か邪悪なものの計らいがあったのだろう。どうしてもあの剣に入らなくてはいけないという衝動?まあ、そんな感じ」

「それで、選んだ」

「うん、兄上はお前がそこまで言うなら私も剣を形代にしようと言ってくれた。それで僕が先に選んだのがクサナギだ」

「そして残った剣がオオクニヌシ……」

「そうだね。形代を選ぶと使命が科せられるんだ。私は神国の五穀豊穣の神としてこの地に留まることになった。兄上は神の世界に戻って天界の守護神となる事が決まったんだ。そして私は国主の手に渡り神刀となったんだよ。儀式のときには宝物殿から出されるけれど、後はずっと鎮座していればよかったから、私は時々抜け出してこの国を見て回った」

「古代日本ですよね?何年くらいの事ですか?」

「日本史的に言うと400年位かな、天皇で言えば11代位かな?私が伊勢で大人しくしていたのはそう長くは無いよ。すぐにヤマトタケルに持ち出されちゃったから」

「想像ができない……」

「あの頃の日本はまだ私たちの時空と行き来があったから、なかなか素敵な国だったよ。継承権というのはね、時空を行き来する方法を唯一伝授される人間のことを言うんだ。次代の継承者が選ばれると必ず儀式がおこなわれる。しかも本人しか入ることができない密室だ。君も知っているだろう?」

「大嘗祭ですね?」

「そう、一世一度だけの儀式だね。昔はおおにへまつりって言ってたんだよ。そこで神から与えられたものを食べる。すると時空を超える能力が発現するんだ。まあ、君も持っちゃったけどね」

「ポテチ……」

「だからね、今の国主も持っているんだよ。でも儀式が形骸化して能力は授かるのに使い方は知らない。いつからだったかな?800年位かな?もっと前か?随分昔のことだから忘れちゃった」

「では今の国主も使い方が分かれば時空を超えられるんですか?」

「うん、そうだね」

「今更教えない方が良いですよね。世界中が大パニックを起こしてしまう」

「ははは!面白そうだけど?」

 僕は楽しそうに笑うクサナギさんの横顔を見ながらぽつっと言った。

「クサナギさん、行かないでください」

「なかなか魅力的なお誘いだ。でもね、そこに僕の意志は無いんだよ。言っただろう?惹かれてしまう。どうしようもないんだ。まあ精一杯抗ってはみるけど」

「サーフェスはなぜクサナギ剣を鍛えるようにお祖父様に言ったのでしょうね。あのままならヤマトタケルも使い物にならないと判断して諦めたんじゃないかしら」

「う~ん。きっと諦めはしなかっただろうね。ヤマトタケルに神刀クサナギを渡したのは、ヤマトヒメノミコトってことになってるけど、本当はヤマトタケルが勝手に持ち出したんだよ。ヤマトヒメはヤマトタケルの叔母さんにあたるんだけど、初代伊勢神宮の斎宮だったんだ。彼女はあまりにも乱暴者で親からも疎まれていたヤマトタケルが可哀想だと思っていたんだろうね。盗んだってことを隠してやって、自分が渡したって言ったんだ」

「なんか日本史がひっくり返ってません?」

「だってほとんど噓っぱちだもん」

「そ……そうですか」

「それで盗んだクサナギがあまりにもぼろかったから、アツタノミコに研ぎを依頼した。その時にミヤズヒメを見染めたんだよ。で、無理やり奪った」

「酷いな」

「そうだよね。酷いよね。でも彼はなかなかいい男だったんだぜ?少なくとも私にはとても優しかったよ……ははは」

 楽しかった昔の思い出を懐かしむような顔で、クサナギさんは悲しそうに笑った。
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