僕の魂は君と出会うためだけに存在していたんだ

志波 連

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48 アヤナミの秘策

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 ドサッと音を立てて目の前にアヤナミが座った。

「もう飲まんのか?」

 クサナギさんが肩を竦めて見せた。

「長いこと神らしい生活をしていなかったからかな、どうも酒に弱くなったみたいだ」

「そうか、飲まねばならんものでもなし。ずっと思っていたのだが、おぬしは死ぬ気か?」

 僕は慌てて顔を上げた。

「僕のこと?」

「ああ、国をひっくり返すほどの戦を控えているというのに、まったく準備が進んでいないように見える。本当にお前に俺の逆鱗が扱えるのかと思ってな」

「自分でもそう思うよ。でも何をどうすればいいのかさっぱりわからないんだ」

「なるほどな。よし! 秘策を授けてやろう」

「秘策?」

「ああ、とにかく突きに専念することだ。突きの極意は背筋にある。腹筋に力を使うと体が固まるから腕が伸びないんだ。背筋で剣を固定して体ごとぶち当たるつもりで突っ込んでいけ。相手に体が当たる瞬間に腕を伸ばす。これが極意だ」

「背筋ってどこに力を入れればいいの?」

「腹」

「それって腹筋じゃないの?」

「う~ん。センスがない奴だ」

「悪かったね」

「お前、丹田ってわかるか?」

「うん、聞いたことはある」

「丹田は三つある。上と中と下だ。そこを同時に意識して腹に力を溜めるんだ」

 アヤナミはそう言うと僕の額と鳩尾と下腹を順番に指先で突いた。
 下腹を触られたときくすぐったくて体を捩ると変な顔をされてしまった。

「まあまあ、トオル君。覚えておくだけでも随分違うよ、そんなに急にできるものでもないさ」

 クサナギさんがフォローしてくれる。
 アヤナミはそんなクサナギさんを見て楽しそうに笑った。

「弟の方は兄とは違って随分優しいのだな」

「優しい?私が?」

「ああ、おぬしは優しい心の持ち主と見た。その優しさが仇とならぬことを祈っている。さて、良ければ一緒に風呂に行かないか?」

 僕は慌ててアヤナミを止めた。

「アヤナミさあ、酔って風呂に入るのは危険だって前にも言っただろ?ほら、ウサギ姫達が必死で止めてくれただろ?最初の時」

「え?あれは止めていたのか?俺はなぜ抱きついてくるのかと思ったが。そうか、止めていたのか。そうか……惚れて縋っているのではなかったのか」

「惚れてって?ちょっと自惚れが過ぎないかい?」

「そうか?俺に侍りたい女は掃いて捨てるほどいたから、あのウサギ姫もてっきりそうなのだと思っていた」

「掃いて捨てる?」

「ああ、それは物凄く面倒なほどだった。実際掃いて捨てたこともある」

 僕は無言を貫いた。
 アヤナミはニヤッと笑ってクサナギさんを見た。

「おぬしもそうだろ?」

 クサナギさんはチラッと僕を見て口角を上げた。

「そうだね。まあそんな感じ?」

 そうだよね、クサナギさん。
 僕の母さんもその一人だったんだもんね。
 ああ……なんかとても複雑な心境だ。

「風呂! 風呂に行こう!」

 僕は立ち上がった。
 二人も一緒に行くことになり、まだ教授と一緒にワケのわからない踊りを舞っていたサーフェスに言うと、一緒に行くと言い出した。
 お祖父様と教授は明日に備えて寝るというので、四人で離れの露天風呂に向かった。
 男同士の裸の付き合いって言えばそれまでなんだけど、僕以外は神だ。
 緊張するのは許してほしい。
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