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57 二つ目の試練④
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『腕を切れ!』
ふっくんの声が聞こえたが、僕は躊躇してしまった。
あの腕を切ろうとするとアヤナミの首も切ってしまうじゃないか!
『竜の鱗は切れん! オオクニヌシは竜の逆鱗だ! 迷うな!』
そんなこと言われても……と思ってしまった僕の視線とアヤナミのそれがぶつかった。
物凄い力で首を絞められているのか、アヤナミの顔が赤を通り越してどす黒くなっている。
声も出せないのだろう、必死の形相で訴えかけている。
「アヤナミ! 僕を信じて!」
僕は渾身の力でヤマトタケルの腕にオオクニヌシを振り下ろした。
濃硫酸池まであと1メートルも無い。
僕の振り下ろした剣はヤマトタケルの腕を切り落とし、アヤナミはヤマトタケルを貼り付かせた枝を池に投げ捨てた。
僕たちは素早く上空に飛び、池の様子を伺った。
ジュッという音と共に、枝がゆっくりと沈んでいく。
濃硫酸といえど、物質を溶かす力は無い。
しかし枝は確実に溶けている……濃硫酸ではなくフッ化水素酸か?
だとしたら僕の爪先は……
「やったな!」
僕は爪先の確認を放棄し、アヤナミに話しかけた。
「いや、まだだ」
「えっ?」
アヤナミを見ると、首に巻きついているヤマトタケルの腕がにょろにょろと動いていた。
「どういうこと?」
僕がそう言った瞬間、腕の残骸がアヤナミの首から飛び退るように離れた。
アヤナミが僕を見てヘラっと笑ったような気がした。
ゆっくりと目を閉じて落下していくアヤナミ。
僕は一瞬何が起きたのかを理解できず、初動が遅れた。
慌てて落ちてゆくアヤナミを追って抱きかかえた。
『来た!』
僕が握っているオオクニヌシが勝手に動く。
僕はアヤナミを抱えたまま、オオクニヌシに引っ張られてしまった。
『竜は捨てろ!』
『絶対に嫌だ!』
この状態のアヤナミが地上に激突し、邪気に襲われるなど許せるものではない。
『アツタノミコ!』
『ダメだ! 絶対にダメだ!』
僕は自分の右手に激しく抵抗した。
アヤナミは完全に気を失っている。
僕の意思などお構いなしで、動き始める右手にバランスを崩された。
その瞬間、手首から先だけのヤマトタケルがアヤナミの腰からクサナギ剣を奪い逃げた。
本当に一瞬の出来事。
僕の右手は動きを止め、物凄く低い声が脳内に響いた。
『もういい。このまま地上に降りるぞ』
僕は無言のままその声に従った。
ゲートを調べるようにオオクニヌシが言うので、僕は剣を抜いて大きな岩を撫でた。
『使用された形跡はない。まだここにいるな』
オオクニヌシはそう言うと、ゲートの前に陣取ることを指示した。
アヤナミは短い呼吸を繰り返し、眼を瞑ったまま動かない。
サーフェスは石の中でじっと傷を癒している。
「クサナギさん」
僕は声に出して呼んでみた。
『あいつはそれほど弱くはない。奪われるのは想定内だ』
珍しく優しい声でオオクニヌシが慰めてくれる。
「ありがとう、ふっくん」
アヤナミの横に座り、鞄を降ろすとかなり体が軽くなった。
スプレー糊はもう無いが、石に入る前にサーフェスが取りに行くよう指示をしてくれたので、いずれ届くだろう。
どこに届くのかは知らないが……。
僕はガサゴソと鞄の中身を出した。
山菜おこわのおにぎりがまだ四つ残っている。
サーフェスとアヤナミ、クサナギさんと僕の四人の分だ。
おにぎりを見ながら僕は物凄い孤独感に襲われた。
「アヤナミ、起きろよ。おにぎり食べよう?」
その声に応えることなく、アヤナミは短い呼吸を繰り返すだけだった。
ふっくんの声が聞こえたが、僕は躊躇してしまった。
あの腕を切ろうとするとアヤナミの首も切ってしまうじゃないか!
『竜の鱗は切れん! オオクニヌシは竜の逆鱗だ! 迷うな!』
そんなこと言われても……と思ってしまった僕の視線とアヤナミのそれがぶつかった。
物凄い力で首を絞められているのか、アヤナミの顔が赤を通り越してどす黒くなっている。
声も出せないのだろう、必死の形相で訴えかけている。
「アヤナミ! 僕を信じて!」
僕は渾身の力でヤマトタケルの腕にオオクニヌシを振り下ろした。
濃硫酸池まであと1メートルも無い。
僕の振り下ろした剣はヤマトタケルの腕を切り落とし、アヤナミはヤマトタケルを貼り付かせた枝を池に投げ捨てた。
僕たちは素早く上空に飛び、池の様子を伺った。
ジュッという音と共に、枝がゆっくりと沈んでいく。
濃硫酸といえど、物質を溶かす力は無い。
しかし枝は確実に溶けている……濃硫酸ではなくフッ化水素酸か?
だとしたら僕の爪先は……
「やったな!」
僕は爪先の確認を放棄し、アヤナミに話しかけた。
「いや、まだだ」
「えっ?」
アヤナミを見ると、首に巻きついているヤマトタケルの腕がにょろにょろと動いていた。
「どういうこと?」
僕がそう言った瞬間、腕の残骸がアヤナミの首から飛び退るように離れた。
アヤナミが僕を見てヘラっと笑ったような気がした。
ゆっくりと目を閉じて落下していくアヤナミ。
僕は一瞬何が起きたのかを理解できず、初動が遅れた。
慌てて落ちてゆくアヤナミを追って抱きかかえた。
『来た!』
僕が握っているオオクニヌシが勝手に動く。
僕はアヤナミを抱えたまま、オオクニヌシに引っ張られてしまった。
『竜は捨てろ!』
『絶対に嫌だ!』
この状態のアヤナミが地上に激突し、邪気に襲われるなど許せるものではない。
『アツタノミコ!』
『ダメだ! 絶対にダメだ!』
僕は自分の右手に激しく抵抗した。
アヤナミは完全に気を失っている。
僕の意思などお構いなしで、動き始める右手にバランスを崩された。
その瞬間、手首から先だけのヤマトタケルがアヤナミの腰からクサナギ剣を奪い逃げた。
本当に一瞬の出来事。
僕の右手は動きを止め、物凄く低い声が脳内に響いた。
『もういい。このまま地上に降りるぞ』
僕は無言のままその声に従った。
ゲートを調べるようにオオクニヌシが言うので、僕は剣を抜いて大きな岩を撫でた。
『使用された形跡はない。まだここにいるな』
オオクニヌシはそう言うと、ゲートの前に陣取ることを指示した。
アヤナミは短い呼吸を繰り返し、眼を瞑ったまま動かない。
サーフェスは石の中でじっと傷を癒している。
「クサナギさん」
僕は声に出して呼んでみた。
『あいつはそれほど弱くはない。奪われるのは想定内だ』
珍しく優しい声でオオクニヌシが慰めてくれる。
「ありがとう、ふっくん」
アヤナミの横に座り、鞄を降ろすとかなり体が軽くなった。
スプレー糊はもう無いが、石に入る前にサーフェスが取りに行くよう指示をしてくれたので、いずれ届くだろう。
どこに届くのかは知らないが……。
僕はガサゴソと鞄の中身を出した。
山菜おこわのおにぎりがまだ四つ残っている。
サーフェスとアヤナミ、クサナギさんと僕の四人の分だ。
おにぎりを見ながら僕は物凄い孤独感に襲われた。
「アヤナミ、起きろよ。おにぎり食べよう?」
その声に応えることなく、アヤナミは短い呼吸を繰り返すだけだった。
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