58 / 63
58 孤独
しおりを挟む
自分一人ではないけれど、独りぼっちで暗闇の中じっとしているのはかなり辛い。
アヤナミの呼吸は比較的安定してきて、時々漏れていた呻き声も聞こえない。
原因はこの地の邪気だとはわかっていても、忘れたころに揺れる地面に生きた心地はしなかった。
「アヤナミ」
声に出して呼んでみる。
どこかの木々が風に揺れて心を泡立たせた。
静かすぎて耳の奥でキーンという音が煩い。
歌でも口ずさめば少しはこの緊張がほぐれるだろうか?
僕はアヤナミの首を握りつぶそうとしていたあの黒い手首を思い出した。
僕の振るったオオクニヌシは、見事に命中してヤマトタケルの魂を分断したはずだ。
手首以外のそれは、黒い邪気の粒子と一緒に禍々しいあの池に沈んだ。
魂って溶けるんだろうか?
それにしてもフッ化水素酸らしきあの池が蒸気を発していなくて助かった。
もし気温が高い状態だったらマジでヤバかった。
それにしてもアヤナミは平気で池の様子を見てきたよな?
竜神って不死身か?
だったらなぜ今これほどまでにアヤナミは弱っているんだ?
そんなことを考えていた僕の脳の中にふっくんの声が響いた。
『怪しい気配だ。小さすぎて掴み切れんが殺気が漂っている』
僕はオオクニヌシ剣を握りしめた。
アヤナミだけはどうやっても守って見せる。
僕はそう決心していた。
ふと後ろで何かが動く気配がした。
真っ暗すぎて何も見えないのは分かっているのに、僕は反射的に振り返った。
何かが僕の首を掴んだ。
く……苦しい……
「手を……は……はな……せ」
獣の様な気配だ。
僕はのびている何かを両手で掴み引き剝がそうとした。
びくともしない。
『飛べ!』
オオクニヌシの声に僕は渾身の力で飛び上がった。
首をつかんでいる何かも一緒に飛んでいる。
粒子が巻き付いている感じではないから、他の生命体?
でも飛べるということは神の血を持っているということだ。
今この次元に個体として存在しているのは僕を含めて3人だ。
ヤマトタケルは手首から先しかないはず……。
「アヤナミ……」
すごい力で掴まれてはいるが、絞め殺そうとしているような掴み方ではない。
どちらっかと言うと首根っこを掴まれているような?
歯を食いしばり飛び続ける僕の目に、山際を染める朝日が映った。
もう少し我慢できれば正体が掴める……そう思ったとき、オオクニヌシの声が聞こえた。
『竜神だ。手を伸ばして吾を握れ。竜神を刺し貫け』
「嫌だ! アヤナミは友達だ! 絶対に嫌だ」
『そんな甘いことを言っているからこのような目に合っているということが分からんのか。先の争いの時に、お前がそこな竜神を落としておれば良かったのだ』
「うるさい! うるさい! うるさい!」
僕の首を絞めている手の力が徐々に弱まってきた。
一気に反転すれば振り解けるかもしれない。
僕は体を丸めて空中で前転をした。
緩んでいた手が僕から離れた瞬間、僕は足を後ろに伸ばして蹴りあげた。
「アヤナミ……なぜ?」
「ぐっ……」
アヤナミが腹をさすりながらこちらを睨んでいる。
「どうしたんだ! アヤナミ! お前……目が……」
アヤナミの金色だった目が真っ赤に染まり、血の涙を流している。
背負っている大剣はそのままに、クサナギ剣を握っているアヤナミ。
呆然とする僕の眼前に、アヤナミが突撃してきた。
「アヤナミ!」
寸でのところで回避して、体を反転させた僕は叫んだ。
「正気に戻れ!」
「……ぐっ……ぐっ」
アヤナミは物凄く苦しそうな顔をしている。
僕はオオクニヌシを構えた。
アヤナミの突き出す攻撃はマジで鋭い。
冗談や遊びではなく、本気で僕を殺そうとしているんだ……アヤナミ?
『やらなければやられるだけだぞ?アツタノミコ』
この期に及んで僕の魂に揺さぶりをかけるオオクニヌシ。
僕はこいつが嫌いかもしれない。
「黙ってろ!」
アヤナミは喉から血を流している。
ヤマトタケルに首を絞められたときの傷か?
だらだらと流れ出ているアヤナミの血は、僕が知っているものと違い真っ黒だ。
竜神の血って黒いんだ?
そんな事を考えている場合じゃない!
僕は迫りくるアヤナミの攻撃を躱し続けた。
「ちょっと待てよ!」
おかしい。
僕の知っているアヤナミはこんなに弱くないはずだ。
何度もクサナギ剣を繰り出してくるが、その太刀筋には素人の僕でも分かるほど鋭くない。
なぜだ?
アヤナミの喉から流れる血は止まる気配がない。
このままでは失血死するんじゃないか?
止血しないと……。
僕は無意識のようにポケットをまさぐった。
アヤナミの呼吸は比較的安定してきて、時々漏れていた呻き声も聞こえない。
原因はこの地の邪気だとはわかっていても、忘れたころに揺れる地面に生きた心地はしなかった。
「アヤナミ」
声に出して呼んでみる。
どこかの木々が風に揺れて心を泡立たせた。
静かすぎて耳の奥でキーンという音が煩い。
歌でも口ずさめば少しはこの緊張がほぐれるだろうか?
僕はアヤナミの首を握りつぶそうとしていたあの黒い手首を思い出した。
僕の振るったオオクニヌシは、見事に命中してヤマトタケルの魂を分断したはずだ。
手首以外のそれは、黒い邪気の粒子と一緒に禍々しいあの池に沈んだ。
魂って溶けるんだろうか?
それにしてもフッ化水素酸らしきあの池が蒸気を発していなくて助かった。
もし気温が高い状態だったらマジでヤバかった。
それにしてもアヤナミは平気で池の様子を見てきたよな?
竜神って不死身か?
だったらなぜ今これほどまでにアヤナミは弱っているんだ?
そんなことを考えていた僕の脳の中にふっくんの声が響いた。
『怪しい気配だ。小さすぎて掴み切れんが殺気が漂っている』
僕はオオクニヌシ剣を握りしめた。
アヤナミだけはどうやっても守って見せる。
僕はそう決心していた。
ふと後ろで何かが動く気配がした。
真っ暗すぎて何も見えないのは分かっているのに、僕は反射的に振り返った。
何かが僕の首を掴んだ。
く……苦しい……
「手を……は……はな……せ」
獣の様な気配だ。
僕はのびている何かを両手で掴み引き剝がそうとした。
びくともしない。
『飛べ!』
オオクニヌシの声に僕は渾身の力で飛び上がった。
首をつかんでいる何かも一緒に飛んでいる。
粒子が巻き付いている感じではないから、他の生命体?
でも飛べるということは神の血を持っているということだ。
今この次元に個体として存在しているのは僕を含めて3人だ。
ヤマトタケルは手首から先しかないはず……。
「アヤナミ……」
すごい力で掴まれてはいるが、絞め殺そうとしているような掴み方ではない。
どちらっかと言うと首根っこを掴まれているような?
歯を食いしばり飛び続ける僕の目に、山際を染める朝日が映った。
もう少し我慢できれば正体が掴める……そう思ったとき、オオクニヌシの声が聞こえた。
『竜神だ。手を伸ばして吾を握れ。竜神を刺し貫け』
「嫌だ! アヤナミは友達だ! 絶対に嫌だ」
『そんな甘いことを言っているからこのような目に合っているということが分からんのか。先の争いの時に、お前がそこな竜神を落としておれば良かったのだ』
「うるさい! うるさい! うるさい!」
僕の首を絞めている手の力が徐々に弱まってきた。
一気に反転すれば振り解けるかもしれない。
僕は体を丸めて空中で前転をした。
緩んでいた手が僕から離れた瞬間、僕は足を後ろに伸ばして蹴りあげた。
「アヤナミ……なぜ?」
「ぐっ……」
アヤナミが腹をさすりながらこちらを睨んでいる。
「どうしたんだ! アヤナミ! お前……目が……」
アヤナミの金色だった目が真っ赤に染まり、血の涙を流している。
背負っている大剣はそのままに、クサナギ剣を握っているアヤナミ。
呆然とする僕の眼前に、アヤナミが突撃してきた。
「アヤナミ!」
寸でのところで回避して、体を反転させた僕は叫んだ。
「正気に戻れ!」
「……ぐっ……ぐっ」
アヤナミは物凄く苦しそうな顔をしている。
僕はオオクニヌシを構えた。
アヤナミの突き出す攻撃はマジで鋭い。
冗談や遊びではなく、本気で僕を殺そうとしているんだ……アヤナミ?
『やらなければやられるだけだぞ?アツタノミコ』
この期に及んで僕の魂に揺さぶりをかけるオオクニヌシ。
僕はこいつが嫌いかもしれない。
「黙ってろ!」
アヤナミは喉から血を流している。
ヤマトタケルに首を絞められたときの傷か?
だらだらと流れ出ているアヤナミの血は、僕が知っているものと違い真っ黒だ。
竜神の血って黒いんだ?
そんな事を考えている場合じゃない!
僕は迫りくるアヤナミの攻撃を躱し続けた。
「ちょっと待てよ!」
おかしい。
僕の知っているアヤナミはこんなに弱くないはずだ。
何度もクサナギ剣を繰り出してくるが、その太刀筋には素人の僕でも分かるほど鋭くない。
なぜだ?
アヤナミの喉から流れる血は止まる気配がない。
このままでは失血死するんじゃないか?
止血しないと……。
僕は無意識のようにポケットをまさぐった。
1
あなたにおすすめの小説
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる