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志波 連

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 すみませんがご了承ください
 なんだか自由掲示板化してますので、読んでいてとても楽しいのですが
 作業が追い付かない状態です

 志波 連





 キリウスがガタンと音をたてて立ち上がった。

「サマンサを呼ぶのか? 呼ぶなら所長への取り次ぎは無しだ。どうする?」

「サマンサは……呼びません」

 キリウスが満足そうに頷いた。

「わかった。もしも今後一切サマンサと会わないというなら、お前への特別授業を続けるよう所長に言ってやる。考えておけ」

「叔父上……なぜそこまでサマンサを嫌うのですか? 彼女には友情しかありません。なぜみんなわかってくれないのでしょう」

 キリウスが大きな溜息を吐いた。

「嫌っているわけではないよ。好き嫌いを言えるほど知りもしないさ。お前は本当に何が問題なのかわからんのか? それはサマンサが女ということだ。そしてお前は男だ。男と女が夜にふたりだけで会うということが何を意味するかわらん年でもあるまい? やろうがやるまいが関係ないんだ。そこに愛があろうがなかろうが関係ない。いい加減に大人になれ! もしかするとお前自身が自分の恋心に気付いていないのかもしれんぞ? よく考えてみろ。もし少しでも婚約以外に惹かれているのであれば、ルルちゃんを手放してやれ。交易のことならお前があちらに婿入りでもすればいいだけさ」

「……」

 そのままキリウスは出て行き、アランと2人だけになったアマデウスがポツリと言う。

「性別が違うと友人にはなれないのだろうか」

 アランが静かに答える。

「当事者同士は友人だという認識しかないとしても、まわりはそうは思わないというのは事実です」

「そういうものか……」

 アランは辛そうな目をしてアマデウスを見た。
 それから1時間ほどでやってきた王立天体観測所の所長と一緒に、北の森の天文台に立ったアマデウスは、大空に浮かぶルルーシアの守り星座を切なそうに見上げている。
 その姿を後ろから見ていたアランは父親の言葉を思い出していた。

『お前がこのままの行動を続けるなら私が動くぞ。お前とサマンサという女を結婚させる。お前は命を賭けて王太子を守るんじゃなかったのか? 守るという意味をはき違えるな! 命を守るだけがお前の仕事ではない! それがわからんのなら側近など辞退しろ!』

 父親の言葉を何度も嚙みしめるアランは、5億ルぺという借金を抱え、側近という仕事を失った上に、サマンサを妻にするなど自死した方が良いと感じている自分に驚いた。
 アランはその時初めてルルーシアの絶望に気付いたのだった。

「鈍いにもほどがある……」

 王太子を守るという本当の意味を理解していなかった自分に腹がたって仕方がなかった。

「次は春の大三角形についてお話ししましょう。いやぁ、王太子殿下が天体に興味をお持ちとは露知らず、キリアン殿下には感謝しかありませんな」

「春の大三角形ですか。それは大変興味深いですね。先生の解説を私一人で聞くには惜しいような気もします」

 アマデウスはサマンサの顔を思いうかべたが、すぐに打ち消した。

「星仲間がおられるのでしたらお声掛けになっても私は構いませんよ。仲間が増えるのは嬉しいことですからな」

「そ……そうですか。そうですよね……仲間は多い方が良いですよね」

 なぜこの趣味を隠してきたのかと後悔の気持ちが沸き上がったが、あの幼い日の光景が苦みと共に湧き上がる。

『男のくせに星なんて見て喜んでいるなんて軟弱だわ。男なら剣を持たなくちゃ。女々しい趣味をお持ちなんて将来が思いやられますこと』

 言葉は覚えているが、誰に言われたのかさえ思い出せないほど幼い頃の記憶。
 自分でも情けないとは思うが、あの日の屈辱が忘れられない。

「所長、男性でも天体に興味を持つという人は多いのですか?」

 王太子の問いに不思議そうな顔をする所長。

「我が観測所の職員のほとんどは男性ですよ。しかしそうですなぁ、私の経験で言うと、男性は天体の成り立ちやその微細な変化などに惹かれ、女性は星座が持つ神話や伝説に惹かれる傾向が強いでしょうか」

「神話や伝説ですか」

「ええ、太古から星を眺め続けていた人たちは、そこに壮大なロマンを求めたのでしょう。私に言わせれば、それはただの作り話だが、それで心が救われた人がいたのも事実でしょう」

 表門に待たせていた馬車まで所長を送ったアマデウスがアランに言った。

「ルルは星座が持つ神話に興味があるだろうか」

「私には分かりかねます。ご自身で聞いてみられてはいかがでしょうか」

 ギュッと掌を握ったアマデウスが、小さな声で言った。

「婚約者を繋ぎとめるには、友を捨てねばならんのだろうか……」

「友はサマンサ嬢だけではないと存じます。今日お会いになった所長のところに行けば、殿下と同じ趣味を待った男たちがたくさんいるのではないでしょうか」

「そうだな、私の視野が狭すぎたようだ。これもすべて私がつまらない傷に拘ったせいだろうな。なあ、アラン。君は人生をやり直せるとしたらいつに戻りたいかい?」

 少し考えたアランが口を開いた。

「学園入学前でしょうか」

「なぜか聞いても?」

 しかしアランは俯いて答えることを避けた。
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