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「アマデウス・ローレンティア王太子殿下、客間にどうぞ」
頷いたアマデウスが、階段の前に立っているルルーシアに駆け寄り花束を差し出した。
「君に花を贈ることがこれほど嬉しいなんて、自分でも驚いているよ」
「ありがとうございます」
受け取った花束をキャロラインに渡し、自室に飾るように言ったルルーシアは、少し迷いながらも差し出された腕に手を掛けた。
「この手を二度と離したくないな」
客間に入り、自分の横にルルーシアを座らせようとしたアマデウスだったが、スッと手を離され正面に座られてしまう。
悲しそうな顔をしつつも、邸に入れただけでも良しとしなくてはと思い直して、大人しくそのままソファーに座った。
「ルルーシア、僕はとんでもない間違いを犯していたようだ。これもすべて僕の不徳の致すところだよ。そのせいで君を途轍もなく傷つけたことは万死に値する行為だった。心から謝罪したい」
真正面からそう言われたルルーシアは頷くしかなかった。
「サマンサ嬢には大変なご事情があったのだと理解しました。どうか殿下のお心のままになさってくださいませ」
アマデウスが体を乗り出した。
「理解してくれたの? ではこのまま僕の花嫁になってくれるんだね?」
「はい、国益になる婚姻だと承知しております」
「そうじゃなくて! 国は置いておいてくれ。僕という男の花嫁になるという意味だよ」
「ですから……」
アマデウスが大きなため息を吐いた。
「先日メリディアン侯爵が王宮に来られて、ものすごい剣幕で父上と母上と僕を怒鳴ったんだ。でも父上が国益のために結婚は譲れないと頭を下げた……するとメリディアン侯爵が条件をつけられてね。僕はそれを飲んだ。ルルと別れないためには飲むしかなかったんだ」
「まあ! 父が条件を?」
「結婚は承諾するが、ルルの気持ちが落ち着くまで婚儀はしないと言われた。要するに婚約期間の延期ということだね。しかも無期延期……」
「無期延期ですか」
「うん、期限は決めないという事さ。ルルの気持ち次第ってことだ」
「私の気持ち?」
「ねえルル。今更だけれど君が嫌がるなら僕は二度とサマンサと話をしない。天体観測もやめる。僕が自分の趣味のことを言えなかったのは心が弱かったからだ。ルルにバカにされたらどうしようって思って……」
ルルーシアが悲しそうな顔をした。
「ご趣味を諦める必要などございませんわ。それに……サマンサ嬢を側妃にというのは決定でございましょう? もう話をしないなんて、それは不可能です」
「でも! 何を失ってもルルを失うよりいい!」
「殿下、私は予定通り婚儀を行うことに同意いたします。父は命を賭けて婚儀の延期をもぎ取ってくれたのでしょう。でも私にはその話をしませんでした。きっと私が予定通り嫁ぐ決意をしていることに気づいていたからだと思います。おそらく逃げ道だけは確保してくれたのでしょう。処分覚悟で国王に対し延期を要求した……これほどの愛を私は知りません。それだけで十分です」
「侯爵は心からルルを愛しているね。でも僕も……」
アマデウスの言葉を遮るようにルルーシアが続ける。
「ですから、ご趣味の天体観測もどうぞお続け下さい。私はバカにすることも嫌うこともございませんわ。それはそうと、側妃となるサマンサ嬢は高位貴族のマナーを学ぶ必要がございましょう? 教育は王宮でなさいますの? 王宮でならもうお部屋を?」
「ルル?」
ずっと黙っていたアリアが立ち上がった。
「殿下、今日はここまでです」
「えっ……」
「まだ辛いのです。どうぞお察しくださいませ」
アリアと目配せをしたアランがアマデウスを促がして部屋を出た。
「ルル! 明日も来るよ。明後日もその次も!」
その声にルルーシアが反応することは無かった。
頷いたアマデウスが、階段の前に立っているルルーシアに駆け寄り花束を差し出した。
「君に花を贈ることがこれほど嬉しいなんて、自分でも驚いているよ」
「ありがとうございます」
受け取った花束をキャロラインに渡し、自室に飾るように言ったルルーシアは、少し迷いながらも差し出された腕に手を掛けた。
「この手を二度と離したくないな」
客間に入り、自分の横にルルーシアを座らせようとしたアマデウスだったが、スッと手を離され正面に座られてしまう。
悲しそうな顔をしつつも、邸に入れただけでも良しとしなくてはと思い直して、大人しくそのままソファーに座った。
「ルルーシア、僕はとんでもない間違いを犯していたようだ。これもすべて僕の不徳の致すところだよ。そのせいで君を途轍もなく傷つけたことは万死に値する行為だった。心から謝罪したい」
真正面からそう言われたルルーシアは頷くしかなかった。
「サマンサ嬢には大変なご事情があったのだと理解しました。どうか殿下のお心のままになさってくださいませ」
アマデウスが体を乗り出した。
「理解してくれたの? ではこのまま僕の花嫁になってくれるんだね?」
「はい、国益になる婚姻だと承知しております」
「そうじゃなくて! 国は置いておいてくれ。僕という男の花嫁になるという意味だよ」
「ですから……」
アマデウスが大きなため息を吐いた。
「先日メリディアン侯爵が王宮に来られて、ものすごい剣幕で父上と母上と僕を怒鳴ったんだ。でも父上が国益のために結婚は譲れないと頭を下げた……するとメリディアン侯爵が条件をつけられてね。僕はそれを飲んだ。ルルと別れないためには飲むしかなかったんだ」
「まあ! 父が条件を?」
「結婚は承諾するが、ルルの気持ちが落ち着くまで婚儀はしないと言われた。要するに婚約期間の延期ということだね。しかも無期延期……」
「無期延期ですか」
「うん、期限は決めないという事さ。ルルの気持ち次第ってことだ」
「私の気持ち?」
「ねえルル。今更だけれど君が嫌がるなら僕は二度とサマンサと話をしない。天体観測もやめる。僕が自分の趣味のことを言えなかったのは心が弱かったからだ。ルルにバカにされたらどうしようって思って……」
ルルーシアが悲しそうな顔をした。
「ご趣味を諦める必要などございませんわ。それに……サマンサ嬢を側妃にというのは決定でございましょう? もう話をしないなんて、それは不可能です」
「でも! 何を失ってもルルを失うよりいい!」
「殿下、私は予定通り婚儀を行うことに同意いたします。父は命を賭けて婚儀の延期をもぎ取ってくれたのでしょう。でも私にはその話をしませんでした。きっと私が予定通り嫁ぐ決意をしていることに気づいていたからだと思います。おそらく逃げ道だけは確保してくれたのでしょう。処分覚悟で国王に対し延期を要求した……これほどの愛を私は知りません。それだけで十分です」
「侯爵は心からルルを愛しているね。でも僕も……」
アマデウスの言葉を遮るようにルルーシアが続ける。
「ですから、ご趣味の天体観測もどうぞお続け下さい。私はバカにすることも嫌うこともございませんわ。それはそうと、側妃となるサマンサ嬢は高位貴族のマナーを学ぶ必要がございましょう? 教育は王宮でなさいますの? 王宮でならもうお部屋を?」
「ルル?」
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「えっ……」
「まだ辛いのです。どうぞお察しくださいませ」
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「ルル! 明日も来るよ。明後日もその次も!」
その声にルルーシアが反応することは無かった。
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