どうぞご勝手になさってくださいまし

志波 連

文字の大きさ
44 / 77

44

 アリアの立てた作戦通り、サマンサ・フロレンシア伯爵令嬢は原因不明の熱病により儚くなった。
 原因が分からないため数名の医師が立ち会って荼毘に付され、その灰は実家であるフロレンシア家に届けられる。

 暗殺だと騒ぎ立てるフロレンシアを黙らせるために、結納金として支払った5億ルぺは見舞い金として返納は求めないと言うと納得したので、今後一切異議を申し立てないという書類にもサインをさせた。

 アリア一人では大変だということで、予定通り追加の側近が募集されることになり、20名の男女が応募してきた。

「思ったより多いな。サ……カレンは大丈夫か?」

 アマデウスの言葉にアリアが答える。

「彼女の名前はカレン・ウィンダムで、サカレンではありません」

「あっ……ああ、気をつけよう」

「少し業務から離れてもよろしいでしょうか」

「もちろんだ」

「では幼馴染として申し上げますわ……そんなことだからルルも初夜を先延ばしにしてるんだっていい加減に理解しなさい! このままじゃアンタ、30歳過ぎるまで童貞で妖精になっちゃうよ?」

「あっ……はい。すみません」

「ホント頼むよ?」

「うん、わかったってば」

 アリアはアマデウスを睨みつけたあとで、静かに言った。

「それでは業務に戻ります。三か月後のロマニア王国大使との定例会議の件ですが……」

 ルルーシアの執務室でも同じような会話が始まっていた。

「そう……ではその会議編出席は王太子殿下だけで良いのね?」

「はい、もし何らかの理由で殿下のご出席が叶わない場合は、こちらに回ってきますので、資料だけは頭に入れておいてください」

 マリオがメモ帳を見ながら言った。
 アランが追加情報を口にする。

「この会議は年に2度開催される定例のものです。かなり形骸化しているようですね」

 ルルーシアが頷いていた時、丁度キリウスが執務室に顔を出した。

「ねえ、ルルちゃん。今夜の予定は? もし無いならちょっと付き合ってくれないか?」

「どうなさったのですか?」

「うん……ねえそう言えばこの前渡した本は読んだ?」

「ああ、オペラの原作ですわね? ええ、拝読いたしました」

「どうだった?」

「あれほど情熱的な恋情は想像もできませんが、最後には別れてしまうのですね。家のためとはいえ悲しい結末でしたわ」

「そうだよね。でね、そのオペラが今日から始まるんだ。観に行こうよ」

「まあ! 一度舞台というものを観てみたいと思っておりましたので、とてもうれしいですわ。ではさっそく殿下に許可をいただいて……」

「言わなくていいさ。あいつは今夜宰相との会議が入っているだろ?」

「ええ、今夜は遅くなるし夕食は共にできないと伺っております。でも……知らないうちに私だけ遊んでいたとなると、ご機嫌が悪くならないかしら」

「関係ないよ。もし怒ったら、お前も同じことしてただろうが! って怒鳴ってやればいい。それに趣味は大事だよ? アランとマリオは予定はある?」

 二人が同時に首を振る。

「甥の嫁とはいえ2人だけで行くと噂雀に餌をやるようなものだ。君たちも来なさい」

「畏まりました」

「ではあとで迎えに来るよ。ドレスコードは伯爵家のパーティー程度で大丈夫だ」

「わかりました。楽しみにしております」

 機嫌よく出て行くキリウスを見送りながら、ルルーシアがアランに言う。

「何を企んでおいでなのかしら」

 アランは指先を額に当てて小さく溜息を吐いた。
感想 972

あなたにおすすめの小説

彼の過ちと彼女の選択

浅海 景
恋愛
伯爵令嬢として育てられていたアンナだが、両親の死によって伯爵家を継いだ伯父家族に虐げられる日々を送っていた。義兄となったクロードはかつて優しい従兄だったが、アンナに対して冷淡な態度を取るようになる。 そんな中16歳の誕生日を迎えたアンナには縁談の話が持ち上がると、クロードは突然アンナとの婚約を宣言する。何を考えているか分からないクロードの言動に不安を募らせるアンナは、クロードのある一言をきっかけにパニックに陥りベランダから転落。 一方、トラックに衝突したはずの杏奈が目を覚ますと見知らぬ男性が傍にいた。同じ名前の少女と中身が入れ替わってしまったと悟る。正直に話せば追い出されるか病院行きだと考えた杏奈は記憶喪失の振りをするが……。

【本編完結】独りよがりの初恋でした

須木 水夏
恋愛
好きだった人。ずっと好きだった人。その人のそばに居たくて、そばに居るために頑張ってた。  それが全く意味の無いことだなんて、知らなかったから。 アンティーヌは図書館の本棚の影で聞いてしまう。大好きな人が他の人に囁く愛の言葉を。 #ほろ苦い初恋 #それぞれにハッピーエンド 特にざまぁなどはありません。 小さく淡い恋の、始まりと終わりを描きました。完結いたします。

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

不倫をしている私ですが、妻を愛しています。

ふまさ
恋愛
「──それをあなたが言うの?」

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。

ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。 ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。 対面した婚約者は、 「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」 ……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。 「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」 今の私はあなたを愛していません。 気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。 ☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。 ☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。