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しおりを挟む慌てて声を出すダッキィ宰相。
「お待ちください王太子妃殿下。まだ幼い子供のしたことでしょう? それにあなたが庇う話じゃないはずだ」
その言葉に切れたルルーシアが声を大きくした。
「痴れ者が! 妻が庇わずして誰が夫を支えると申すか!」
動かない夫に代わって妻が娘の手を引いた。
怯える娘の横に立ち、おそるおそる口を開く。
「王太子妃殿下、どうぞご容赦くださいませ。あの日の事を忘れたことなどございません。あの後すぐに娘を領地に向かわせましたのも、全て反省の姿勢を示すためでございました」
ルルーシアが宰相の妻に向かって言った。
「反省の姿勢を示す? 示しただけで、どうやら内容は伴っていないようですね。ただのパフォーマンスではまったく意味がないですよ。先ほどの発言は聞いたでしょう? あなたの娘は全く反省していないのでは?」
「……」
「さあ、カリス嬢。さっさとここに来なさい!」
激高するルルーシアを止めたのは、父親であるメリディアン侯爵だった。
「王太子妃殿下、祝いの席でございます。事情のわからぬ者たちが気付く前に、場を改めては如何ですか?」
国王が頷いて立ち上がった。
「私が時間を稼ごう。そこにいるものは全員別室に連れて行きなさい」
近衛騎士たちに囲まれて控えの間へと移動する宰相一家を見送ったアリアがルルーシアに駆け寄った。
「かましてやれ!」
力強く頷いたルルーシアがアマデウスに声をかける。
「殿下? 頑張れますか?」
頷くアマデウスだが、まだ蟀谷を手でおさえて震えている。
「うん、ごめんねルル。また情けないところを見せちゃった」
「いいえ、そのようなことはございません。それほど殿下が抱えてきた傷が深いということです。殿下の代わりに私がドカンとかましてやりますわ」
「ドカン……かます……ルルが?」
「ええ、私が」
苦笑いを浮かべるアマデウスをアランとマリオが支えた。
アマデウスに駆け寄ろうとするカレンの腕を握ったままアリアが言った。
「さあ、執務室で待機しましょうね」
「えっ……待機?」
「そうよ。あなたは待機。私はルルの友人として見届けてくるわ」
「だったら私も」
「何の権利で?」
「私は……殿下の友人だから……」
「あなたはカレン・ウィンダムでしょ? 友人じゃなく側近よ。間違えないでちょうだい。殿下の友人だったサマンサは死んだの」
「でも!」
「あら? 今からでもサマンサ・フロレンシアに戻る? そういえばサマンサの実家って大変らしいわね。今日にでも破産しそうなんだって? 戻れば売られるわよ? それに側近試験を偽りの身分で受けたことで、お咎めもあるわ。王家を謀ったのだもの、良くて幽閉、悪くて……」
「そんな! あれはあなたが!」
「私? 何のこと?」
カレンはグッと唇を嚙みしめた。
アリアが近くにいた近衛騎士を呼ぶ。
「殿下の側近カレン・ウィンダムを殿下の執務室に連れて行ってください。必ず部屋に入るのを確認し、中にいるメイドに私から言われて送ってきたと伝えてください。これはとても重要な案件ですので、確実に遂行してください」
「畏まりました」
騎士ふたりがカレンについてその場を去って行く。
控えの間に行こうとするアリアの側にキリウスが来た。
「見事だね。では私も見物させていただこうかな」
そう言うとアリアに手を差し出した。
「お手をどうぞ、アリア・ロックス侯爵令嬢」
「お供いたしますわ、キリウス・ローレンティア王弟殿下」
フロアの真ん中では、国王と王妃が優雅にワルツを踊っている。
それを囲んでいる貴族たちは、何が起こったのかなど知る由もなく、うっとりとした顔でこの国のトップ夫妻を見つめていた。
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