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無縁仏
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真一が好んで墓地を訪れるのは、そこに、多くの人が居るからである。もちろん、普通に人には、そこに居る多くの人の姿は見えない。もっとも、真一にもまた、その墓地に居る人たちの姿が、明確に見えている訳ではない。そこに居る人たちの存在を、感じることが出来る。それだけの話である。
そこに居るたちが、この世に居るのか、それともあの世に居るのか、真一にはよく分からなかった。しかし、それは、どうでも良いことでもある。彼らは、真一に、親しく話しかけて来てくれた。それは、楽しい話もあれば、悲しい話もある。
彼らが、生前、どのような人生を送ったのか。真一には、それが、手に取るようによく分かった。それは、まさに、言葉では言い表すことの出来ない感覚である。真一は、彼らの人生を体験することで、自分もまた、その人生を生きて来たような気がした。
なぜ、自分に、そのような能力があるのか。自分でもよく分からない。しかし、物心ついた頃から、そういう感覚を持っていたのは事実である。
人が留まる場所は、墓地だけに限らない。墓地ではない町の中に留まっている人も多く居る。しかし、その人たちは、あまり、幸せな人生を送っていない人が多いようである。もっとも、それは、死に方が不幸であっただけで、人生、そのものが、不幸であった訳ではないだろう。実際に、真一と話すことで、あの世に完全に消え去る人も多く居る。そういう時には、自分が、役に立った気持ちがして、真一もまた、幸せを感じた。
さて、墓地の中には、無縁仏を葬る場所があるところもある。真一は、無縁仏を見つけると、特に、意識を引かれた。やはり、話を聞いて貰いたい人が多いのだろう。何しろ、親戚縁者も無く、一人、その場所に留まっているのだから。
真一もまた、身よりの無い身である。自分が死ねば、その遺体は、他人である誰かによって処分をされ、無縁仏に葬られることになるのだろう。もっとも、他人でも、誰かによって葬られるならば、まだマシで、もしかすると、人知れず、亡くなり、誰にも、葬られることなく、この世から消え去ることになるのかも知れない。
真一は、無縁仏にある人たちを感じると、いつも、
「そのうち、私も、そちらに行くから、よろしく」
と、心の中で声をかけた。そうすれば、無縁仏にある人たちもまた、温かい感情を返してくれた。
なぜ、亡くなった人たちに、これほど引かれ、癒やされるのか。それは、恐らく、彼らに、何の悪意も、邪気も無いからに違いない。すでに、この世のしがらみの無い彼らには、全ての欲は無縁である。怨みを持って亡くなった人が、現世の人に危害を及ぼすというのは間違いである。そういった悪霊は、この世には居ない。
彼らは、みんな、自分たちがかつて生きていたこの世界を懐かしみ、この世に住む人たちの幸福を願っている。真一が感じた限り、それは、事実である。そして、それは、無縁仏に葬られた人たちも例外ではない。いや、むしろ、無縁仏に葬られた人たちほど、その思いは強い。
なぜなら、彼らは、生前に苦しい思いをした人が多いからだろう。自分の不幸を繰り返さないようにと、彼らは願っている。
しかし、彼らの願いは、なかなか、この世を生きる人たちには届かないようである。今日もまた、無縁仏の前には、彼らのことなど、何も思わない人たちがまた、多く通り過ぎているようだった。
そこに居るたちが、この世に居るのか、それともあの世に居るのか、真一にはよく分からなかった。しかし、それは、どうでも良いことでもある。彼らは、真一に、親しく話しかけて来てくれた。それは、楽しい話もあれば、悲しい話もある。
彼らが、生前、どのような人生を送ったのか。真一には、それが、手に取るようによく分かった。それは、まさに、言葉では言い表すことの出来ない感覚である。真一は、彼らの人生を体験することで、自分もまた、その人生を生きて来たような気がした。
なぜ、自分に、そのような能力があるのか。自分でもよく分からない。しかし、物心ついた頃から、そういう感覚を持っていたのは事実である。
人が留まる場所は、墓地だけに限らない。墓地ではない町の中に留まっている人も多く居る。しかし、その人たちは、あまり、幸せな人生を送っていない人が多いようである。もっとも、それは、死に方が不幸であっただけで、人生、そのものが、不幸であった訳ではないだろう。実際に、真一と話すことで、あの世に完全に消え去る人も多く居る。そういう時には、自分が、役に立った気持ちがして、真一もまた、幸せを感じた。
さて、墓地の中には、無縁仏を葬る場所があるところもある。真一は、無縁仏を見つけると、特に、意識を引かれた。やはり、話を聞いて貰いたい人が多いのだろう。何しろ、親戚縁者も無く、一人、その場所に留まっているのだから。
真一もまた、身よりの無い身である。自分が死ねば、その遺体は、他人である誰かによって処分をされ、無縁仏に葬られることになるのだろう。もっとも、他人でも、誰かによって葬られるならば、まだマシで、もしかすると、人知れず、亡くなり、誰にも、葬られることなく、この世から消え去ることになるのかも知れない。
真一は、無縁仏にある人たちを感じると、いつも、
「そのうち、私も、そちらに行くから、よろしく」
と、心の中で声をかけた。そうすれば、無縁仏にある人たちもまた、温かい感情を返してくれた。
なぜ、亡くなった人たちに、これほど引かれ、癒やされるのか。それは、恐らく、彼らに、何の悪意も、邪気も無いからに違いない。すでに、この世のしがらみの無い彼らには、全ての欲は無縁である。怨みを持って亡くなった人が、現世の人に危害を及ぼすというのは間違いである。そういった悪霊は、この世には居ない。
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なぜなら、彼らは、生前に苦しい思いをした人が多いからだろう。自分の不幸を繰り返さないようにと、彼らは願っている。
しかし、彼らの願いは、なかなか、この世を生きる人たちには届かないようである。今日もまた、無縁仏の前には、彼らのことなど、何も思わない人たちがまた、多く通り過ぎているようだった。
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