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第3話 初めての学校、始めての友達
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一週間が経ち、事故の後遺症もない事が確認された僕は晴れて小学校に登校する事を許された。
そして今は担任の先生に一週間遅れで入学してきた事情を説明して貰っている最中だ。
「と言う訳で咲良さんは事故で大怪我をして一週間お休みしていましたが、無事完治したので今日から皆さんと一緒にお勉強をする事になりました。皆さん仲良くしてあげてくださいね」
「「「はーい!」」」
子供達、いや同級生達が大きな声で先生に返事をする。
みんな元気で可愛らしいなぁ。
「じゃあ咲良さんはあそこの空いている席に座ってください」
そう言って先生は席決めで残っていただろう席を指さす。
「はい!」
そうして一時間目が終わったあとの休み時間では、クラスの子達に質問責めにあっていた。
「ねぇねぇ、大怪我をしたって言ってたけど、痛かった?」
「ううん、起きた時にはもう病院の先生が回復魔法で治してくれてたから、全然痛くなかったよ」
「そっかー。でも痛くなくてよかったね!」
「うん!」
といった会話を午前の休み時間の間、延々と繰り返していた。
勉強に関しては小学一年生の授業なので、多少休んだからと言って授業についていけなくなると言う事は全然なかった。
そしてようやく待ちに待った魔法の授業!
来たよこの世界にやってきた醍醐味が!!
僕だけ一週間遅れで入学したから、ちょっと心配なんだけど。
「柚木さんは皆より遅れて入学したので、今日は使える属性の確認をしましょう」
そう担任の先生に言われて、僕は皆が魔法の授業を習っている間に自分の使える属性を確認する事になった。
「ではこれから柚木さんの属性を確認します。自然、エネルギー、身体強化、呪術、回復、そして空間の6属性の魔法を一つずつ使えるか試してもらいます。この授業で自分に合う属性を見つけたら、次回からはその属性魔法を担当する先生の授業を受けて貰う事になります」
あれ? それじゃあ全部の魔法の授業を受けるんじゃなくって、一番適性の高い属性の授業を受けるシステムな訳?
何でそんなやり方なんだろ? 何か理由でもあるのかな?
ともあれ、それで納得したよ。
向こうで皆がいくつかのグループに分かれて授業を受けていたのはそういう事だったんだね。
「ではまずは属性魔法のライトから始めましょう」
うん、ライトなら問題ない。なにしろ僕が最初に覚えた魔法だもんね。
うっかり加減を知らなかったばかりに酷い目に遭ったけど。
「ライト!」
今回はちゃんと出力を調整して丁度いい光量で魔法を発動させる。
「なかなか安定していますね。柚木さんは自然魔法の適性が高いようです。とはいえ、他の属性の適正もあるかもしれませんので、一通り魔法を試してもらいます。次はエネルギー魔法を試してもらいます」
先生のレクチャーを受け、今度はエネルギー魔法を発動させる。
こうやって先生が順番に魔法を見て、一番うまく扱える魔法を見極めてくれるのかな?
「これは素晴らしい。柚木さんは二つの属性に適性があるようですね。では次は身体強化魔法です。もしかしたら3属性の適性があるかもしれませんね」
「先生、全部の属性が同じくらい上手かったらどうなるんですか?」
僕は疑問に思った事を聞いてみる。
一番適性の高い魔法の授業を集中的に受けるとなると、全部の属性が満遍なく扱える人はどうなるのか。
その場合は好きな授業を選んで良いって事なのかな?
「あはは、それはないから安心してください」
けれど先生はそれはありえないとはっきりと否定した。
この反応を見る限り、人には相性のいい魔法と悪い魔法がはっきり分かれるんだろか?
ともあれ先生から次の魔法のレクチャーを受けたので、僕は身体強化魔法を発動させる。
「さ、3属性!?」
けれどこの辺りから先生の様子が変わってきた。
どうも3属性を扱えることが予想外だったらしく、妙に驚いている。
でも教科書に載っていた魔法だし、使うだけなら普通に使えると思うんだけど?
その後も僕が次々と属性魔法を発動させていくのをみて、先生の顔がどんどんこわばっていく。
「ま、まさか4属性!? 本当に居たんですか!?」
本当に居たってどういう事だろう?
なんだか複数属性を使える人間が少ないみたいな口ぶりだけど。
「つ、次は回復魔法です。今回はこちらの植物に対して回復魔法を使ってください」
「分かりました! ローヒール」
無事回復魔法が発動すると、先生の顔がかなり凄い事になっていた。
「5、5属性……そんな……信じられない……」
うーん、この反応だと、複数の属性をいくつも使える人間は珍しいんだろうか?
そして最後の空間魔法を発動させた事で、先生が卒倒した。
「せ、先生!?」
「ぜ、全属性……!? ありえない! そんなのもう伝説の……!?」
あまりにも先生の様子がおかしかった事で、離れた場所で各属性の魔法の授業を行っていた先生達が何事かとやってくる。
そして全属性の魔法を使ったら先生がこうなったと伝えると、その先生達も凄く驚いていた。
「それは本当かい? 試しにやってみてくれないか?」
言われた通りにやって見せると、これまた先生達も目を丸くして驚いた。
「嘘だろ!? 全属性を使える人間なんて存在していたのか!?」
「で、でも本当に全て使っちゃいましたよ!?」
「ど、どうするんだコレ!? 上に報告した方が良くないか!?」
先生達は上へ下への大騒ぎで、結局この日の魔法の授業は途中でお開きになってしまった。
結局全属性を使えた事にあんなに驚いていた理由を聞きそびれた。
そんな事があった為か、休み時間では沈静化してきたクラスメイト達が再び騒ぎ始めた。
「すっごーい! 咲良ちゃん全部の魔法が使えるんだー!」
「良いなぁ。私は火属性だけなのに」
そんな事を言われたもんだから、全属性を使える事で先生達があんなに驚いていた事への疑問はすっかり吹き飛んでしまい、皆から魔法を褒めれた事で嬉しくなってしまった。
これが算数や国語だったら、小学生相手に大人げないとなってしまうけど、魔法の授業は自分でも初めてなんだから、褒められて嬉しいのは仕方ない。
まあそれでも自分の中身は皆より年上の中学生な訳だし、そろそろ自重しておかないとね。
そうして昼休みの時間になってようやく人の波が緩やかになった。
「咲良ちゃん、一緒に給食食べよ!」
「うん、良いよ!」
クラスの子達に誘われ、僕は机を寄せて一緒に給食を食べる事にする。
ご飯を食べながら、好きなTV番組や玩具の話をするのは男子も女子も一緒だ。
というか……
「ねぇ、ちょっと気になってたんだけど。なんでこのクラスって男子がいないの?」
そう、この教室男子生徒が一人もいないんだよね。
「え? 何言ってるの? ウチ女子校だよ?」
「え?」
じょしこう?
「うん。正確には桜樹女学院付属小学校だよ」
「そうだったの!?」
し、知らんかった! ここ女子校だったんだ!
でも、周りを見れば確かに女子女子女子の女の子尽くし。
女子校と言えば可愛い女の子たちの秘密の花園ってイメージだったんだけど、ここは普通の小学校だよなぁ。
いや、まだ小学校だから女子校感がないってのが正しいのかな。
「でも、そっか。男子はいないんだ……」
改めて周りを見まわすと、やっぱり男子の姿は影も形も見えない。
と言うか、(中身が)男の自分が女の子の中に居るのって、やっぱり変な気分だ。
そんな事を思いながら周囲を観察していると、ふと違和感を覚えた。
「あれ? あの子……」
教室を見回していたら、女の子一人誰とも一緒にならずにご飯を食べていたんだ。
その子は離れた席から見ても分かるくらいもの凄く可愛かった。
まるで人形のように整った顔立ちだ。
でもだからこそ、あんな可愛い子が一人でいるのが疑問に思えたんだ。
それと、あの人形のような無表情も。
「ねぇ、あの子は何で一人でご飯食べてるの?」
僕が一人でご飯を食べている女の子を指さすと、一緒に給食を食べていたクラスメイトが慌てて僕の手を隠す。
「駄目だよ。あの子は噛呪院の子なんだよ!」
「噛呪院?」
また聞きなれない単語が出てきた。
「あのね、噛呪院家ってすっごい呪術魔法を使う人達の家なんだって。だから噛呪院の人に目を付けられると呪われるから近づくなってお母さんが言ってたよ」
「私も聞いた。噛呪院家の子と喧嘩した子が大怪我したって」
気が付けば皆小声で噛呪院家に関わる恐ろしい噂話に夢中になっていた。
うーん、女の子は年齢に関係なく噂話が好きなのかなぁ。
けど呪術か、確か呪術は人を呪う魔法だっけ。
厳密には他人を呪うだけじゃなく、トラップみたいに使ったり、発振器みたいに呪いを探知して泥棒を追ったりといった幅広い用途のある魔法だった筈。
でもこの子達の反応を見る限り、そこら辺は知らなさそうだなぁ。
でもなるほど。皆の反応を見る限り、この世界で呪術魔法の使い手はヤクザみたいなものという認識なのかな?
「とはいえ、流石にこれは良くないよなぁ」
うん、やっぱりこの光景は見ていて楽しいものじゃない。
僕は席を立つと、一人で給食を食べている女の子の下に歩いていく。
「さ、咲良ちゃん?」
突然席を立った僕に一緒にご飯を食べていた子達が驚くけど、今は放っておく。
「ねぇ君」
「っ!?」
突然話しかけた事で、噛呪院家の子がビクリと体を震わせる。
っていうか間近で見ると本当に可愛いなこの子!
「僕の名前は柚木咲良。君の名は?」
「え……?」
「名前、教えて」
突然名前を聞かれた事に戸惑う噛呪院家の子。
「か、噛呪院燐瑚」
「燐瑚ちゃんだね。僕の事は咲良って呼んで」
「え? あの」
燐瑚ちゃんは何が起こっているのか分からないようで、あわあわとしている。
でもそれは、この子が孤独に慣れ過ぎていたという証に他ならない。
現に他の子達はすぐに僕に話しかけてきてくれたからね。
「ねぇ燐瑚ちゃん。一緒に給食を食べない?」
「え? 何で?」
「だって一緒に食べた方が美味しいよ! ほら行こっ!」
僕はやや強引に燐瑚ちゃんを連れて元の席に戻る。
「ねぇ皆。燐瑚ちゃんも一緒に食べて良いよね?」
「「えっ!?」」
まさかの提案にクラスメート達が驚きの声を上げる。
「良いでしょ? この子もクラスメートなんだもん」
でもここは強引に押し通す。
「えっと……」
皆は互いに顔を見合わせてどうしようと視線で相談するも、すぐに噛呪院家の子だから嫌とは言えず不承不承承諾してくれた。
「い、いいよ」
「ありがと! じゃあさっそく燐瑚ちゃんの机を運ぶね!」
皆の気が変わらない内に、僕は燐瑚ちゃんの机を動かす。
「あ、あの……なんでこんなことする……の? 私は噛呪院家の人間……だよ?」
やっぱり、この子自身も自分が噛呪院家の人間である事を、ううん、呪術魔法の使い手である事に引け目を感じているんだ。
でもね、僕にはそんな事関係ないんだ。
だって小さな女の子が独りぼっちでいるなんて、見ていて気分のいい物じゃないからね。
「僕はね、燐瑚ちゃんと友達になりたいんだ!」
「と、友達!?」
「そう! ねぇ燐瑚ちゃん、僕の友達になってよ!」
「……」
僕の友達発言に、燐瑚ちゃんは目を丸くして驚いていた。
そしてしばらくして我に返ると、おずおずと彼女はこういった。
「う、うん。友達に……なって」
よーし! 孤独な少女お一名お友達です!
「よろしくね燐瑚ちゃん!」
こうして僕は燐瑚ちゃんを自分達のグループに引き入れる事に成功した。
皆は青い顔をしているけど、仲良くなれば誤解だと理解してくれると信じたいところだ。
それまでは僕が皆をフォローしよう。
僕は皆の緊張を和らげるため給食を食べながら話題を提供する……といっても女の子の好きそうな話題は思いつかないので、自然と授業の話になっていった。
その頃には皆もある程度落ち着いてきたのか、こちらが話題を提供すればリアクションを返してくれるまでに回復していた。
「でも咲良ちゃん凄いよね。全部の属性の魔法が使えるなんて。先生が驚いてたよ」
午前中の魔法の授業で全ての属性の魔法を披露した事を思い出し、由香里ちゃん達がうっとりした顔になる。
小さい子達にとって、全属性の魔法を使える人間はちょっとしたヒーロー扱いみたいだ。
「咲良ちゃん良いな……」
と、そこで初めて燐瑚ちゃんが言葉を発した。
「私も他の魔法が使えればよかったのに……」
どうやら燐瑚ちゃんのコンプレックスは、自分の魔法特性が呪術だけなのもあるみたいだね。
「あっ、そうだ! ねぇ、今度燐瑚ちゃんの家で呪術を教えてよ!」
「ふえっ!? 何で!?」
自分がコンプレックスにしている呪術を学びたいと言われ、燐瑚ちゃんが目を丸くして驚く。
「呪術だよ? 怖くないの? 人を呪う魔法なんだよ? 皆怖がるんだよ?」
「でも燐瑚ちゃん家、解呪魔法も凄いんでしょ!」
「え? なんで解呪魔法?」
突然解呪魔法という単語が出てきて、皆が首を傾げる。
解呪魔法とは、名前の通り呪いを解く魔法の事だ。
「だって呪術を一番よく知っているのは呪術魔法を使う人だもん。当然呪術魔法を使う人が一番解呪が上手なんだよ」
「言われてみればそう……なのかな?」
「へぇー、全然気づかなかった」
「もしかして燐瑚……ちゃんの家って凄いの?」
よしよし、皆の呪術のイメージが少し変わって来たぞ。
まぁでもこれは教科書の受け売りなんだけどね。
呪術は人を呪う恐ろしい魔法だけど、元々は色んな呪いを解呪する為の技術を研究する為に発展したらしい。
ただその技術の悪い部分だけが有名になっちゃったから、呪術が怖いものだってイメージが付いちゃったみたいなんだよね。
「……」
「ねっ、今度燐瑚ちゃんの家に呪術を教えて貰いに行って良い?」
「えっ、あっ……」
燐瑚ちゃんは暫く悩んでいたみたいだけど考えがまとまったのか顔を上げる。
「うん、良いよ」
「やったー!」
よっし! これで呪術の先生ゲットだ!
燐瑚ちゃんも誤解が解けて友達が出来たし幸先のいいスタートだね!
そして今は担任の先生に一週間遅れで入学してきた事情を説明して貰っている最中だ。
「と言う訳で咲良さんは事故で大怪我をして一週間お休みしていましたが、無事完治したので今日から皆さんと一緒にお勉強をする事になりました。皆さん仲良くしてあげてくださいね」
「「「はーい!」」」
子供達、いや同級生達が大きな声で先生に返事をする。
みんな元気で可愛らしいなぁ。
「じゃあ咲良さんはあそこの空いている席に座ってください」
そう言って先生は席決めで残っていただろう席を指さす。
「はい!」
そうして一時間目が終わったあとの休み時間では、クラスの子達に質問責めにあっていた。
「ねぇねぇ、大怪我をしたって言ってたけど、痛かった?」
「ううん、起きた時にはもう病院の先生が回復魔法で治してくれてたから、全然痛くなかったよ」
「そっかー。でも痛くなくてよかったね!」
「うん!」
といった会話を午前の休み時間の間、延々と繰り返していた。
勉強に関しては小学一年生の授業なので、多少休んだからと言って授業についていけなくなると言う事は全然なかった。
そしてようやく待ちに待った魔法の授業!
来たよこの世界にやってきた醍醐味が!!
僕だけ一週間遅れで入学したから、ちょっと心配なんだけど。
「柚木さんは皆より遅れて入学したので、今日は使える属性の確認をしましょう」
そう担任の先生に言われて、僕は皆が魔法の授業を習っている間に自分の使える属性を確認する事になった。
「ではこれから柚木さんの属性を確認します。自然、エネルギー、身体強化、呪術、回復、そして空間の6属性の魔法を一つずつ使えるか試してもらいます。この授業で自分に合う属性を見つけたら、次回からはその属性魔法を担当する先生の授業を受けて貰う事になります」
あれ? それじゃあ全部の魔法の授業を受けるんじゃなくって、一番適性の高い属性の授業を受けるシステムな訳?
何でそんなやり方なんだろ? 何か理由でもあるのかな?
ともあれ、それで納得したよ。
向こうで皆がいくつかのグループに分かれて授業を受けていたのはそういう事だったんだね。
「ではまずは属性魔法のライトから始めましょう」
うん、ライトなら問題ない。なにしろ僕が最初に覚えた魔法だもんね。
うっかり加減を知らなかったばかりに酷い目に遭ったけど。
「ライト!」
今回はちゃんと出力を調整して丁度いい光量で魔法を発動させる。
「なかなか安定していますね。柚木さんは自然魔法の適性が高いようです。とはいえ、他の属性の適正もあるかもしれませんので、一通り魔法を試してもらいます。次はエネルギー魔法を試してもらいます」
先生のレクチャーを受け、今度はエネルギー魔法を発動させる。
こうやって先生が順番に魔法を見て、一番うまく扱える魔法を見極めてくれるのかな?
「これは素晴らしい。柚木さんは二つの属性に適性があるようですね。では次は身体強化魔法です。もしかしたら3属性の適性があるかもしれませんね」
「先生、全部の属性が同じくらい上手かったらどうなるんですか?」
僕は疑問に思った事を聞いてみる。
一番適性の高い魔法の授業を集中的に受けるとなると、全部の属性が満遍なく扱える人はどうなるのか。
その場合は好きな授業を選んで良いって事なのかな?
「あはは、それはないから安心してください」
けれど先生はそれはありえないとはっきりと否定した。
この反応を見る限り、人には相性のいい魔法と悪い魔法がはっきり分かれるんだろか?
ともあれ先生から次の魔法のレクチャーを受けたので、僕は身体強化魔法を発動させる。
「さ、3属性!?」
けれどこの辺りから先生の様子が変わってきた。
どうも3属性を扱えることが予想外だったらしく、妙に驚いている。
でも教科書に載っていた魔法だし、使うだけなら普通に使えると思うんだけど?
その後も僕が次々と属性魔法を発動させていくのをみて、先生の顔がどんどんこわばっていく。
「ま、まさか4属性!? 本当に居たんですか!?」
本当に居たってどういう事だろう?
なんだか複数属性を使える人間が少ないみたいな口ぶりだけど。
「つ、次は回復魔法です。今回はこちらの植物に対して回復魔法を使ってください」
「分かりました! ローヒール」
無事回復魔法が発動すると、先生の顔がかなり凄い事になっていた。
「5、5属性……そんな……信じられない……」
うーん、この反応だと、複数の属性をいくつも使える人間は珍しいんだろうか?
そして最後の空間魔法を発動させた事で、先生が卒倒した。
「せ、先生!?」
「ぜ、全属性……!? ありえない! そんなのもう伝説の……!?」
あまりにも先生の様子がおかしかった事で、離れた場所で各属性の魔法の授業を行っていた先生達が何事かとやってくる。
そして全属性の魔法を使ったら先生がこうなったと伝えると、その先生達も凄く驚いていた。
「それは本当かい? 試しにやってみてくれないか?」
言われた通りにやって見せると、これまた先生達も目を丸くして驚いた。
「嘘だろ!? 全属性を使える人間なんて存在していたのか!?」
「で、でも本当に全て使っちゃいましたよ!?」
「ど、どうするんだコレ!? 上に報告した方が良くないか!?」
先生達は上へ下への大騒ぎで、結局この日の魔法の授業は途中でお開きになってしまった。
結局全属性を使えた事にあんなに驚いていた理由を聞きそびれた。
そんな事があった為か、休み時間では沈静化してきたクラスメイト達が再び騒ぎ始めた。
「すっごーい! 咲良ちゃん全部の魔法が使えるんだー!」
「良いなぁ。私は火属性だけなのに」
そんな事を言われたもんだから、全属性を使える事で先生達があんなに驚いていた事への疑問はすっかり吹き飛んでしまい、皆から魔法を褒めれた事で嬉しくなってしまった。
これが算数や国語だったら、小学生相手に大人げないとなってしまうけど、魔法の授業は自分でも初めてなんだから、褒められて嬉しいのは仕方ない。
まあそれでも自分の中身は皆より年上の中学生な訳だし、そろそろ自重しておかないとね。
そうして昼休みの時間になってようやく人の波が緩やかになった。
「咲良ちゃん、一緒に給食食べよ!」
「うん、良いよ!」
クラスの子達に誘われ、僕は机を寄せて一緒に給食を食べる事にする。
ご飯を食べながら、好きなTV番組や玩具の話をするのは男子も女子も一緒だ。
というか……
「ねぇ、ちょっと気になってたんだけど。なんでこのクラスって男子がいないの?」
そう、この教室男子生徒が一人もいないんだよね。
「え? 何言ってるの? ウチ女子校だよ?」
「え?」
じょしこう?
「うん。正確には桜樹女学院付属小学校だよ」
「そうだったの!?」
し、知らんかった! ここ女子校だったんだ!
でも、周りを見れば確かに女子女子女子の女の子尽くし。
女子校と言えば可愛い女の子たちの秘密の花園ってイメージだったんだけど、ここは普通の小学校だよなぁ。
いや、まだ小学校だから女子校感がないってのが正しいのかな。
「でも、そっか。男子はいないんだ……」
改めて周りを見まわすと、やっぱり男子の姿は影も形も見えない。
と言うか、(中身が)男の自分が女の子の中に居るのって、やっぱり変な気分だ。
そんな事を思いながら周囲を観察していると、ふと違和感を覚えた。
「あれ? あの子……」
教室を見回していたら、女の子一人誰とも一緒にならずにご飯を食べていたんだ。
その子は離れた席から見ても分かるくらいもの凄く可愛かった。
まるで人形のように整った顔立ちだ。
でもだからこそ、あんな可愛い子が一人でいるのが疑問に思えたんだ。
それと、あの人形のような無表情も。
「ねぇ、あの子は何で一人でご飯食べてるの?」
僕が一人でご飯を食べている女の子を指さすと、一緒に給食を食べていたクラスメイトが慌てて僕の手を隠す。
「駄目だよ。あの子は噛呪院の子なんだよ!」
「噛呪院?」
また聞きなれない単語が出てきた。
「あのね、噛呪院家ってすっごい呪術魔法を使う人達の家なんだって。だから噛呪院の人に目を付けられると呪われるから近づくなってお母さんが言ってたよ」
「私も聞いた。噛呪院家の子と喧嘩した子が大怪我したって」
気が付けば皆小声で噛呪院家に関わる恐ろしい噂話に夢中になっていた。
うーん、女の子は年齢に関係なく噂話が好きなのかなぁ。
けど呪術か、確か呪術は人を呪う魔法だっけ。
厳密には他人を呪うだけじゃなく、トラップみたいに使ったり、発振器みたいに呪いを探知して泥棒を追ったりといった幅広い用途のある魔法だった筈。
でもこの子達の反応を見る限り、そこら辺は知らなさそうだなぁ。
でもなるほど。皆の反応を見る限り、この世界で呪術魔法の使い手はヤクザみたいなものという認識なのかな?
「とはいえ、流石にこれは良くないよなぁ」
うん、やっぱりこの光景は見ていて楽しいものじゃない。
僕は席を立つと、一人で給食を食べている女の子の下に歩いていく。
「さ、咲良ちゃん?」
突然席を立った僕に一緒にご飯を食べていた子達が驚くけど、今は放っておく。
「ねぇ君」
「っ!?」
突然話しかけた事で、噛呪院家の子がビクリと体を震わせる。
っていうか間近で見ると本当に可愛いなこの子!
「僕の名前は柚木咲良。君の名は?」
「え……?」
「名前、教えて」
突然名前を聞かれた事に戸惑う噛呪院家の子。
「か、噛呪院燐瑚」
「燐瑚ちゃんだね。僕の事は咲良って呼んで」
「え? あの」
燐瑚ちゃんは何が起こっているのか分からないようで、あわあわとしている。
でもそれは、この子が孤独に慣れ過ぎていたという証に他ならない。
現に他の子達はすぐに僕に話しかけてきてくれたからね。
「ねぇ燐瑚ちゃん。一緒に給食を食べない?」
「え? 何で?」
「だって一緒に食べた方が美味しいよ! ほら行こっ!」
僕はやや強引に燐瑚ちゃんを連れて元の席に戻る。
「ねぇ皆。燐瑚ちゃんも一緒に食べて良いよね?」
「「えっ!?」」
まさかの提案にクラスメート達が驚きの声を上げる。
「良いでしょ? この子もクラスメートなんだもん」
でもここは強引に押し通す。
「えっと……」
皆は互いに顔を見合わせてどうしようと視線で相談するも、すぐに噛呪院家の子だから嫌とは言えず不承不承承諾してくれた。
「い、いいよ」
「ありがと! じゃあさっそく燐瑚ちゃんの机を運ぶね!」
皆の気が変わらない内に、僕は燐瑚ちゃんの机を動かす。
「あ、あの……なんでこんなことする……の? 私は噛呪院家の人間……だよ?」
やっぱり、この子自身も自分が噛呪院家の人間である事を、ううん、呪術魔法の使い手である事に引け目を感じているんだ。
でもね、僕にはそんな事関係ないんだ。
だって小さな女の子が独りぼっちでいるなんて、見ていて気分のいい物じゃないからね。
「僕はね、燐瑚ちゃんと友達になりたいんだ!」
「と、友達!?」
「そう! ねぇ燐瑚ちゃん、僕の友達になってよ!」
「……」
僕の友達発言に、燐瑚ちゃんは目を丸くして驚いていた。
そしてしばらくして我に返ると、おずおずと彼女はこういった。
「う、うん。友達に……なって」
よーし! 孤独な少女お一名お友達です!
「よろしくね燐瑚ちゃん!」
こうして僕は燐瑚ちゃんを自分達のグループに引き入れる事に成功した。
皆は青い顔をしているけど、仲良くなれば誤解だと理解してくれると信じたいところだ。
それまでは僕が皆をフォローしよう。
僕は皆の緊張を和らげるため給食を食べながら話題を提供する……といっても女の子の好きそうな話題は思いつかないので、自然と授業の話になっていった。
その頃には皆もある程度落ち着いてきたのか、こちらが話題を提供すればリアクションを返してくれるまでに回復していた。
「でも咲良ちゃん凄いよね。全部の属性の魔法が使えるなんて。先生が驚いてたよ」
午前中の魔法の授業で全ての属性の魔法を披露した事を思い出し、由香里ちゃん達がうっとりした顔になる。
小さい子達にとって、全属性の魔法を使える人間はちょっとしたヒーロー扱いみたいだ。
「咲良ちゃん良いな……」
と、そこで初めて燐瑚ちゃんが言葉を発した。
「私も他の魔法が使えればよかったのに……」
どうやら燐瑚ちゃんのコンプレックスは、自分の魔法特性が呪術だけなのもあるみたいだね。
「あっ、そうだ! ねぇ、今度燐瑚ちゃんの家で呪術を教えてよ!」
「ふえっ!? 何で!?」
自分がコンプレックスにしている呪術を学びたいと言われ、燐瑚ちゃんが目を丸くして驚く。
「呪術だよ? 怖くないの? 人を呪う魔法なんだよ? 皆怖がるんだよ?」
「でも燐瑚ちゃん家、解呪魔法も凄いんでしょ!」
「え? なんで解呪魔法?」
突然解呪魔法という単語が出てきて、皆が首を傾げる。
解呪魔法とは、名前の通り呪いを解く魔法の事だ。
「だって呪術を一番よく知っているのは呪術魔法を使う人だもん。当然呪術魔法を使う人が一番解呪が上手なんだよ」
「言われてみればそう……なのかな?」
「へぇー、全然気づかなかった」
「もしかして燐瑚……ちゃんの家って凄いの?」
よしよし、皆の呪術のイメージが少し変わって来たぞ。
まぁでもこれは教科書の受け売りなんだけどね。
呪術は人を呪う恐ろしい魔法だけど、元々は色んな呪いを解呪する為の技術を研究する為に発展したらしい。
ただその技術の悪い部分だけが有名になっちゃったから、呪術が怖いものだってイメージが付いちゃったみたいなんだよね。
「……」
「ねっ、今度燐瑚ちゃんの家に呪術を教えて貰いに行って良い?」
「えっ、あっ……」
燐瑚ちゃんは暫く悩んでいたみたいだけど考えがまとまったのか顔を上げる。
「うん、良いよ」
「やったー!」
よっし! これで呪術の先生ゲットだ!
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男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
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ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
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ハイエルフの幼女に転生しました。
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ネグレクトで、死んでしまったレイカは
神様に転生させてもらって新しい世界で
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ゆっくり書いて行きます。
感想も待っています。
はげみになります。
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