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第4話 燐瑚の気持ち
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◆燐瑚◆
「「「「お帰りなさいませお嬢様」」」」
屋敷に帰ると、使用人達が私を出迎える。
いつも通りの光景。
家族である筈の人達の姿はなく、赤の他人が私の世話をする。
そして私も彼等など存在しないかのように振舞う。
これが噛呪院家の当たり前。
呪いを扱う呪術魔法の使い手は自らが呪われる危険もあるから、家族であっても近づく事は少ない。
それは家族に呪いが伝染しないようだったり、逆に家族に呪われない様にと警戒しているから。
だから、私にとってこの屋敷は誰も居ないのと同じ。
大きすぎる屋敷にめったに出会わない家族は、私の心を凍り付かせるには十分過ぎた。
でも、今日は違った。
「ただいま」
「「「「えっ!?」」」」
初めて私が返事をした事に、使用人達が驚きの声をあげる。
ほんのわずかな気まぐれ。
ただ返事をしただけ。
けれど、たったそれだけなのに、使用人達は驚く、少しだけ嬉しそうな顔を見せた。
私はその一言だけを告げると、後は無言で自分の部屋に戻る。
私の部屋はとても広く、寒々しい。
でも心は温かい。
「|柚木咲良……ちゃん」
その名を呼ぶだけで私の心が温かくなる。
呪術魔法の家系に生まれたというだけで周りから怖がられ、避けられてきた私。
私に近づく人は噛呪院の呪術を利用したい人達ばかりだった。
「でも、あの子は違った」
そう、咲良ちゃんの目には、私を蔑む意思は見えなかった。
あの子にあったのは、ただただ純粋な魔法への興味。
私の呪術への興味だった。
「あんな子初めて」
咲良ちゃんは、私の手を取ってくれた。
私が近づいただけで呪われそうって言わなかった。
「咲良ちゃん……好き」
咲良ちゃんの名前を呟くだけで胸が高鳴る。
「咲良ちゃん……」
私は机の引き出しを開け、呪術道具を取り出す。
「咲良ちゃんは私が守ってあげる。どんな呪いからも、どんな敵意からも……」
◆
今日も元気に登校すると、なんだかいつもより人の数が少なかった。
どうしたんだろうなと首を傾げていると、燐瑚ちゃんが教室に入って来る。
「おはよう燐瑚ちゃん!」
「お、おはよう……咲良……ちゃん」
燐瑚ちゃんは少しだけ躊躇いながらも僕の名前を呼んでくれた。
よしよし、こうやって少しずつ仲良くなっていけば、燐瑚ちゃんもクラスの皆と仲良くなれる筈!
「ねぇ咲良ちゃん」
と思ったらさっそく燐瑚ちゃんから話しかけてくれた。
「あのね、今日学校が終わったら私の家に来ない?」
「え? 良いの?」
「うん、昨日呪術を勉強してみたいって言ってたでしょ? 咲良ちゃんさえよかったら」
「行く行く!! 絶対行く!」
まさかのお誘いにはびっくりしたけど、これで呪術の勉強ができるぞー!
楽しみだなぁ。
あとは他の子達も会話に加わってくれればいいんだけど、何故か今日はまだ登校してこないんだよね。
そろそろ授業が始まるのに、最近の小学生は朝遅いのかな?
「はーい、授業を始めるから席についてー」
と思っていたら先生が教室に入って来た。
「じゃあまた後でね燐瑚ちゃん」
「うん、咲良ちゃん」
全員が席に着くと、先生が出席を取り始める。
「今日は蒲公英さんと向日葵さん、それに澄玲さん、雛菊さんが風邪でお休みです。四月はまだ寒い日もあるから、皆も体に気を付けてね」
皆風邪で休んでたのか。
せっかく皆も燐瑚ちゃんと仲良くなれればって思ってたんだけどな。
まぁいいや。まずは僕が燐瑚ちゃんと仲良くなって、皆との橋渡しをしよう!
そんな風に気合を入れていたのだけれど、その姿を燐瑚ちゃんがこっそり見つめていた事に僕は気づいていなかった。
「ふひっ、これで今日一日咲良ちゃんを独占できる……」
こうして、僕の知らぬ間に一人のヤンデレ少女が誕生してしまったのだった。
「「「「お帰りなさいませお嬢様」」」」
屋敷に帰ると、使用人達が私を出迎える。
いつも通りの光景。
家族である筈の人達の姿はなく、赤の他人が私の世話をする。
そして私も彼等など存在しないかのように振舞う。
これが噛呪院家の当たり前。
呪いを扱う呪術魔法の使い手は自らが呪われる危険もあるから、家族であっても近づく事は少ない。
それは家族に呪いが伝染しないようだったり、逆に家族に呪われない様にと警戒しているから。
だから、私にとってこの屋敷は誰も居ないのと同じ。
大きすぎる屋敷にめったに出会わない家族は、私の心を凍り付かせるには十分過ぎた。
でも、今日は違った。
「ただいま」
「「「「えっ!?」」」」
初めて私が返事をした事に、使用人達が驚きの声をあげる。
ほんのわずかな気まぐれ。
ただ返事をしただけ。
けれど、たったそれだけなのに、使用人達は驚く、少しだけ嬉しそうな顔を見せた。
私はその一言だけを告げると、後は無言で自分の部屋に戻る。
私の部屋はとても広く、寒々しい。
でも心は温かい。
「|柚木咲良……ちゃん」
その名を呼ぶだけで私の心が温かくなる。
呪術魔法の家系に生まれたというだけで周りから怖がられ、避けられてきた私。
私に近づく人は噛呪院の呪術を利用したい人達ばかりだった。
「でも、あの子は違った」
そう、咲良ちゃんの目には、私を蔑む意思は見えなかった。
あの子にあったのは、ただただ純粋な魔法への興味。
私の呪術への興味だった。
「あんな子初めて」
咲良ちゃんは、私の手を取ってくれた。
私が近づいただけで呪われそうって言わなかった。
「咲良ちゃん……好き」
咲良ちゃんの名前を呟くだけで胸が高鳴る。
「咲良ちゃん……」
私は机の引き出しを開け、呪術道具を取り出す。
「咲良ちゃんは私が守ってあげる。どんな呪いからも、どんな敵意からも……」
◆
今日も元気に登校すると、なんだかいつもより人の数が少なかった。
どうしたんだろうなと首を傾げていると、燐瑚ちゃんが教室に入って来る。
「おはよう燐瑚ちゃん!」
「お、おはよう……咲良……ちゃん」
燐瑚ちゃんは少しだけ躊躇いながらも僕の名前を呼んでくれた。
よしよし、こうやって少しずつ仲良くなっていけば、燐瑚ちゃんもクラスの皆と仲良くなれる筈!
「ねぇ咲良ちゃん」
と思ったらさっそく燐瑚ちゃんから話しかけてくれた。
「あのね、今日学校が終わったら私の家に来ない?」
「え? 良いの?」
「うん、昨日呪術を勉強してみたいって言ってたでしょ? 咲良ちゃんさえよかったら」
「行く行く!! 絶対行く!」
まさかのお誘いにはびっくりしたけど、これで呪術の勉強ができるぞー!
楽しみだなぁ。
あとは他の子達も会話に加わってくれればいいんだけど、何故か今日はまだ登校してこないんだよね。
そろそろ授業が始まるのに、最近の小学生は朝遅いのかな?
「はーい、授業を始めるから席についてー」
と思っていたら先生が教室に入って来た。
「じゃあまた後でね燐瑚ちゃん」
「うん、咲良ちゃん」
全員が席に着くと、先生が出席を取り始める。
「今日は蒲公英さんと向日葵さん、それに澄玲さん、雛菊さんが風邪でお休みです。四月はまだ寒い日もあるから、皆も体に気を付けてね」
皆風邪で休んでたのか。
せっかく皆も燐瑚ちゃんと仲良くなれればって思ってたんだけどな。
まぁいいや。まずは僕が燐瑚ちゃんと仲良くなって、皆との橋渡しをしよう!
そんな風に気合を入れていたのだけれど、その姿を燐瑚ちゃんがこっそり見つめていた事に僕は気づいていなかった。
「ふひっ、これで今日一日咲良ちゃんを独占できる……」
こうして、僕の知らぬ間に一人のヤンデレ少女が誕生してしまったのだった。
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