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第5話 お友達の家に行こう
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「デ、デカい……」
放課後燐瑚ちゃんに連れられて彼女の家にやって来た僕は、その常識外れの大きさに驚愕していた。
噛呪院家が凄い家だっていうのはクラスメイトから聞いていたけど、まさかここまでの豪邸だったなんて……
だってこれもう家ってサイズじゃないよ! 遊園地とかそういう商業施設なみの広さなんだけど!?
門から家の玄関までこんなに移動する事になるとは思ってなかったよ!
「こんな豪邸に住んでる人が現実にいるんだなぁ……」
まさに別世界。異世界に来て更に異世界に来てしまうとは……
「咲良ちゃん。いらっしゃい!」
燐瑚ちゃんは玄関の前でくるりと回ってこちらを向くと、改めて僕を出迎えてくれる。
「燐瑚ちゃん、お邪魔します」
「さっ、どうぞ!」
燐瑚ちゃんに手を取られて屋敷の中に入ると、そこにはズラリと並んだメイドさん達が居た。
「「「おかえりなさいませお嬢様」」」
「ふわっ!?」
「ただいま」
驚く僕を尻目に、燐瑚ちゃんはごく普通に返事をする。
「私の部屋に行こ、咲良ちゃん」
「う、うん」
長い廊下をてくてくと歩いて燐瑚ちゃんの部屋に向かう。
というか、家の中ってこんなに歩くものなんだ……
「燐瑚ちゃんの家って、凄く大きいんだね……」
正直大きいってレベルじゃないけど。
「大きいだけだよ」
けれど燐瑚ちゃんは全然に大したことじゃないと返す。
うーん、小さいころからずっとこの家で暮らしてるから、感覚が麻痺してるんだろうなぁ。
「ここが私の部屋だよ!」
「うわっ、広っ!!」
案内された燐瑚ちゃんの部屋は驚く程広かった。
というかこの部屋、僕の家が何軒も入る広さなんですけど……
ただそれにしては……
「何もない」
そう、燐瑚ちゃんの部屋は驚く程何もなかった。
ベッドとテーブル、それに机と本棚があるだけで、あとは何もない。
まるで体育館をそのまま部屋にしているかのような光景だ。
「こちらへどうぞ」
「う、うん」
燐瑚ちゃんに促されてテーブルに座ると、そこには温かいお茶とお菓子が用意されていた。
一体いつの間に……
「どうぞ召し上がれ」
「あっ、うん、頂きます」
いかにも高価そうなカップを手に取り、僕はお茶を口にする。
「……美味しい」
ビックリだ。僕はお茶の事なんて全然分からないけど、それでも美味しいと分かるお茶だ。
「良かった。こちらのお菓子もどうぞ」
「うん!」
促されるままに僕は燐瑚ちゃんの勧めるお菓子を口にする。
「これも美味しい!」
凄い凄い! スーパーで売ってるセールのケーキとは比べ物にならない美味しさだ!
クリームが凄く滑らかで、スポンジもしっとりしていてパサパサしてない。何よりケーキ全体が甘過ぎないのが良い!!
「ふふ……」
ケーキに夢中になっていたら燐瑚ちゃんの笑い声が聞こえた。
顔を上げると、燐瑚ちゃんはこちらを見ながら凄く嬉しそうに笑っていたんだ。
「可愛い」
「えっ!?」
つい口から言葉が漏れてしまうと、燐瑚ちゃんがビックリした顔になる。
「燐瑚ちゃん今の顔凄く可愛いよ! やっぱり燐瑚ちゃんは素材が良いんだなぁ。無表情でいるよりも笑っている方が絶対可愛いよ!!」
「か、かわっ!?」
あっ、今度は照れて真っ赤になってる。
やっぱり燐瑚ちゃんは可愛いなぁ。
「えと、あの、その……お。お勉強! お勉強しよう!」
そう言うと燐瑚ちゃんは机から一冊の本を持ってくる。
本には噛呪院家呪術大全というタイトルが書かれていた。
「これ! ウチの教科書! 私もこれで呪術の勉強をしたから!」
「え? でも良いの? これ噛呪院家の秘密なんじゃ?」
「だ、大丈夫だよ。これは普通に売ってる本だから」
この世界、呪術の本が普通に売ってるのかぁ。
まぁ呪術も魔法属性の一つだから、不思議じゃないのかな。
「ウチではまず最初にこの本で呪術の基礎を学んで、それから本格的な呪術を覚えていくの。魔法ってね、基本はどこも同じで応用の段階でそれぞれの魔法使い独自の内容になっていくんだって」
へぇ、それは知らなかったなぁ。
「ウチだけじゃなくて、他の大きな魔法大家も、自分達が独自に作った魔法参考書を売ってるよ」
「そ、そうなんだ」
魔法参考書って、受験勉強の参考書みたいだなぁ。
あ、いや、この世界の魔法は授業にあるし、受験で魔法を習ってもおかしくないのか。
「最初はね、呪術の仕組みについて説明するね」
そう言って燐瑚ちゃんはページをペラペラとめくって、呪術の仕組みについて書かれたページを開く。
そこに書かれていたのは……
「あっ、これ教科書に載ってるのと同じだね」
そう、呪術大全に書かれていたのは、学校の教科書に書かれていた呪術のページと同じないようだった。
「え? でもここはまだ習ってない筈だよ」
「うん。でも僕魔法の教科書は全部読み終わったから」
「全部!?」
何故か燐瑚ちゃんは僕が教科書を読み終えたと聞くとビックリとしていた。
「うん。全部読んだよ。あと一年生の魔法は全部使えるようになった」
そうなんだよね。学校を休んでいる一週間、ひたすら魔法の教科書を読み漁っていたから、一年の魔法授業の内容は全部マスターしちゃったんだ。
一年生に教える内容だから、元中学生の読解力なら簡単だし、内容も簡単なものばかりだったからね。
「す……凄い! 凄いよ咲良ちゃん!!」
燐瑚ちゃんが頬を紅潮させながら凄い凄いと連呼する。
「私、一年生の分の呪術を覚えるのに2か月もかかったよ!」
「え? ホント!?」
っていうか、リアル小学一年生で一年分の勉強を呪術だけとはいえ2ヶ月で終わらせるの凄くない?
いや実際にはそれ以前の年齢でだよね、多分。
「ま、魔法だけだから。他の勉強は普通だから」
実際には遊び半分で読んでたからなぁ。
「じゃあここは?」
燐瑚ちゃんは呪術大全のページをめくっていき、僕がどこまで学んだのかを確認する。
「これも読んだ」
「ここも?」
「うん、これもだね」
「凄い! 丁度一年生で学ぶ呪術ピッタリ!」
燐瑚ちゃんが学校とは別人のようにキャッキャとはしゃいでいる。
「じゃあ咲良ちゃんには二年生からの分を教えれば良いんだね」
「うん、よろしくね!」
やったー! 教科書には載ってない範囲が勉強できるぞ!
何せ一年生の分を読み終えたらもう読むものが無くてこまってたんだよね。
でも燐瑚ちゃんは呪術の大家である噛呪院のお嬢さんだから、もっと先の学年の分まで進んでいる筈。
呪術だけとは言え、魔法の勉強ができるぞー!
◆
「あっ、もうこんな時間だ」
気が付けば窓の外は暗くなっていた。
魔法の勉強が楽しくてついつい時間を忘れていたよ。
「そろそろ帰らないと」
「もう帰るの?」
「うん、これ以上遅くなったら迷惑になるからね」
さすがに初対面の相手の子の家に長居しすぎたよ。
「……全然迷惑じゃないのに」
「え? なに?」
「ううん、何でもない」
僕はノートを鞄に仕舞うと、帰り支度を済ませる。
「ねぇ咲良ちゃん。今日はウチに泊まっていかない?」
「え?」
「え、えっとね! 変な意味はないの! でも咲良ちゃんに教えていた所が中途半端だったから、ちゃんと切りの良い所まで教えないと良くないかなって! 呪術って使い方を誤ると大変だから! 次にいつ咲良ちゃんが遊びに来るか分からないし! その間にもしも呪術を使わないといけない時が来るかもしれないし!」
と、燐瑚ちゃんが一気にまくしたてる。
でもそうか、確かに呪術、呪いだもんね。
中途半端な知識で使うのは他の魔法よりも危険かもしれない。
「でも家の人に迷惑じゃない?」
「だ、大丈夫だよ! ウチの家族は滅多に顔を見せないから!」
「そうなんだ」
小学一年生で親と滅多に遭えないって、寂しいんじゃないかなぁ。
それに学校でのやり取りを見てると、仲の良い友達もいないだろうし……
「うーん、じゃあお母さんに電話してオッケー貰えたらね!」
「うん!」
結果、母さんからはあっさりとOKが出た。
どうも一週間入学が遅れた僕に友達が出来た事が嬉しかったみたいだ。
心配させてごめんよ母さん。
そんな訳で、今夜は燐瑚ちゃんの家でお泊りとなったのでした。
放課後燐瑚ちゃんに連れられて彼女の家にやって来た僕は、その常識外れの大きさに驚愕していた。
噛呪院家が凄い家だっていうのはクラスメイトから聞いていたけど、まさかここまでの豪邸だったなんて……
だってこれもう家ってサイズじゃないよ! 遊園地とかそういう商業施設なみの広さなんだけど!?
門から家の玄関までこんなに移動する事になるとは思ってなかったよ!
「こんな豪邸に住んでる人が現実にいるんだなぁ……」
まさに別世界。異世界に来て更に異世界に来てしまうとは……
「咲良ちゃん。いらっしゃい!」
燐瑚ちゃんは玄関の前でくるりと回ってこちらを向くと、改めて僕を出迎えてくれる。
「燐瑚ちゃん、お邪魔します」
「さっ、どうぞ!」
燐瑚ちゃんに手を取られて屋敷の中に入ると、そこにはズラリと並んだメイドさん達が居た。
「「「おかえりなさいませお嬢様」」」
「ふわっ!?」
「ただいま」
驚く僕を尻目に、燐瑚ちゃんはごく普通に返事をする。
「私の部屋に行こ、咲良ちゃん」
「う、うん」
長い廊下をてくてくと歩いて燐瑚ちゃんの部屋に向かう。
というか、家の中ってこんなに歩くものなんだ……
「燐瑚ちゃんの家って、凄く大きいんだね……」
正直大きいってレベルじゃないけど。
「大きいだけだよ」
けれど燐瑚ちゃんは全然に大したことじゃないと返す。
うーん、小さいころからずっとこの家で暮らしてるから、感覚が麻痺してるんだろうなぁ。
「ここが私の部屋だよ!」
「うわっ、広っ!!」
案内された燐瑚ちゃんの部屋は驚く程広かった。
というかこの部屋、僕の家が何軒も入る広さなんですけど……
ただそれにしては……
「何もない」
そう、燐瑚ちゃんの部屋は驚く程何もなかった。
ベッドとテーブル、それに机と本棚があるだけで、あとは何もない。
まるで体育館をそのまま部屋にしているかのような光景だ。
「こちらへどうぞ」
「う、うん」
燐瑚ちゃんに促されてテーブルに座ると、そこには温かいお茶とお菓子が用意されていた。
一体いつの間に……
「どうぞ召し上がれ」
「あっ、うん、頂きます」
いかにも高価そうなカップを手に取り、僕はお茶を口にする。
「……美味しい」
ビックリだ。僕はお茶の事なんて全然分からないけど、それでも美味しいと分かるお茶だ。
「良かった。こちらのお菓子もどうぞ」
「うん!」
促されるままに僕は燐瑚ちゃんの勧めるお菓子を口にする。
「これも美味しい!」
凄い凄い! スーパーで売ってるセールのケーキとは比べ物にならない美味しさだ!
クリームが凄く滑らかで、スポンジもしっとりしていてパサパサしてない。何よりケーキ全体が甘過ぎないのが良い!!
「ふふ……」
ケーキに夢中になっていたら燐瑚ちゃんの笑い声が聞こえた。
顔を上げると、燐瑚ちゃんはこちらを見ながら凄く嬉しそうに笑っていたんだ。
「可愛い」
「えっ!?」
つい口から言葉が漏れてしまうと、燐瑚ちゃんがビックリした顔になる。
「燐瑚ちゃん今の顔凄く可愛いよ! やっぱり燐瑚ちゃんは素材が良いんだなぁ。無表情でいるよりも笑っている方が絶対可愛いよ!!」
「か、かわっ!?」
あっ、今度は照れて真っ赤になってる。
やっぱり燐瑚ちゃんは可愛いなぁ。
「えと、あの、その……お。お勉強! お勉強しよう!」
そう言うと燐瑚ちゃんは机から一冊の本を持ってくる。
本には噛呪院家呪術大全というタイトルが書かれていた。
「これ! ウチの教科書! 私もこれで呪術の勉強をしたから!」
「え? でも良いの? これ噛呪院家の秘密なんじゃ?」
「だ、大丈夫だよ。これは普通に売ってる本だから」
この世界、呪術の本が普通に売ってるのかぁ。
まぁ呪術も魔法属性の一つだから、不思議じゃないのかな。
「ウチではまず最初にこの本で呪術の基礎を学んで、それから本格的な呪術を覚えていくの。魔法ってね、基本はどこも同じで応用の段階でそれぞれの魔法使い独自の内容になっていくんだって」
へぇ、それは知らなかったなぁ。
「ウチだけじゃなくて、他の大きな魔法大家も、自分達が独自に作った魔法参考書を売ってるよ」
「そ、そうなんだ」
魔法参考書って、受験勉強の参考書みたいだなぁ。
あ、いや、この世界の魔法は授業にあるし、受験で魔法を習ってもおかしくないのか。
「最初はね、呪術の仕組みについて説明するね」
そう言って燐瑚ちゃんはページをペラペラとめくって、呪術の仕組みについて書かれたページを開く。
そこに書かれていたのは……
「あっ、これ教科書に載ってるのと同じだね」
そう、呪術大全に書かれていたのは、学校の教科書に書かれていた呪術のページと同じないようだった。
「え? でもここはまだ習ってない筈だよ」
「うん。でも僕魔法の教科書は全部読み終わったから」
「全部!?」
何故か燐瑚ちゃんは僕が教科書を読み終えたと聞くとビックリとしていた。
「うん。全部読んだよ。あと一年生の魔法は全部使えるようになった」
そうなんだよね。学校を休んでいる一週間、ひたすら魔法の教科書を読み漁っていたから、一年の魔法授業の内容は全部マスターしちゃったんだ。
一年生に教える内容だから、元中学生の読解力なら簡単だし、内容も簡単なものばかりだったからね。
「す……凄い! 凄いよ咲良ちゃん!!」
燐瑚ちゃんが頬を紅潮させながら凄い凄いと連呼する。
「私、一年生の分の呪術を覚えるのに2か月もかかったよ!」
「え? ホント!?」
っていうか、リアル小学一年生で一年分の勉強を呪術だけとはいえ2ヶ月で終わらせるの凄くない?
いや実際にはそれ以前の年齢でだよね、多分。
「ま、魔法だけだから。他の勉強は普通だから」
実際には遊び半分で読んでたからなぁ。
「じゃあここは?」
燐瑚ちゃんは呪術大全のページをめくっていき、僕がどこまで学んだのかを確認する。
「これも読んだ」
「ここも?」
「うん、これもだね」
「凄い! 丁度一年生で学ぶ呪術ピッタリ!」
燐瑚ちゃんが学校とは別人のようにキャッキャとはしゃいでいる。
「じゃあ咲良ちゃんには二年生からの分を教えれば良いんだね」
「うん、よろしくね!」
やったー! 教科書には載ってない範囲が勉強できるぞ!
何せ一年生の分を読み終えたらもう読むものが無くてこまってたんだよね。
でも燐瑚ちゃんは呪術の大家である噛呪院のお嬢さんだから、もっと先の学年の分まで進んでいる筈。
呪術だけとは言え、魔法の勉強ができるぞー!
◆
「あっ、もうこんな時間だ」
気が付けば窓の外は暗くなっていた。
魔法の勉強が楽しくてついつい時間を忘れていたよ。
「そろそろ帰らないと」
「もう帰るの?」
「うん、これ以上遅くなったら迷惑になるからね」
さすがに初対面の相手の子の家に長居しすぎたよ。
「……全然迷惑じゃないのに」
「え? なに?」
「ううん、何でもない」
僕はノートを鞄に仕舞うと、帰り支度を済ませる。
「ねぇ咲良ちゃん。今日はウチに泊まっていかない?」
「え?」
「え、えっとね! 変な意味はないの! でも咲良ちゃんに教えていた所が中途半端だったから、ちゃんと切りの良い所まで教えないと良くないかなって! 呪術って使い方を誤ると大変だから! 次にいつ咲良ちゃんが遊びに来るか分からないし! その間にもしも呪術を使わないといけない時が来るかもしれないし!」
と、燐瑚ちゃんが一気にまくしたてる。
でもそうか、確かに呪術、呪いだもんね。
中途半端な知識で使うのは他の魔法よりも危険かもしれない。
「でも家の人に迷惑じゃない?」
「だ、大丈夫だよ! ウチの家族は滅多に顔を見せないから!」
「そうなんだ」
小学一年生で親と滅多に遭えないって、寂しいんじゃないかなぁ。
それに学校でのやり取りを見てると、仲の良い友達もいないだろうし……
「うーん、じゃあお母さんに電話してオッケー貰えたらね!」
「うん!」
結果、母さんからはあっさりとOKが出た。
どうも一週間入学が遅れた僕に友達が出来た事が嬉しかったみたいだ。
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