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第15話 魔法の杖と大会
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「今日は咲良さんにプレゼントがあるんですよ」
可憐先生と週末の魔法訓練をしていたら、鈴木さんが大きな包みを持ってやって来た。
「プレゼントって、何ですか?」
「どうぞ開けてみてください」
鈴木さんが差し出した包みを受け取り梱包をはがすと、中から大きな宝石のはめ込まれた小さな杖が出てきたんだ。
「……杖?」
杖は大体40cmくらいの長さで、魔法使いの杖というよりは少女向けアニメに出て来るステッキくらいの長さだ。
ただデザインは結構シンプルで、模様といいスポーツ用品のような雰囲気だ。
「はい。以前約束した咲良さん用の魔法の杖です」
「これが魔法の杖ですか!?」
そう言えば以前そんな約束をしていたっけ。
それにしてもイメ―ジと違うな。
もっとゲームに出て来るような魔法の杖かと思ってた。
「結構短いんですね」
「学生が持ち歩けるようになっていますから。ですが杖の長さは下のつまみで調整できますよ。後で使いやすい長さに調整してみてください」
なるほど、細かい調整が出来るようになってるんだね。
「私にも見せて見せて」
僕が杖に夢中になっていたら、可憐先生が後ろからもたれかかる様に僕の杖を覗き込んできた。
と言いますか……凄い物が当たっています。とても弾力に満ちたものが……
「うっそ、これKAGRA社の最高グレードの杖じゃない!?」
「え? 凄いんですかこれ?」
可憐先生は本気で驚いているらしく、食い入るように杖を見つめる。
「凄いわよ! 世界大会に出場するような魔法選手が使う最高級品だもの!」
「最高級品!? そんなの貰って良いんですか!?」
さすがにそんな凄いものを貰えるとは思っても居なかったので、緊張で手が震える。
だって最高級品って事は、物凄く高いって事だよね!?
「ええ、構いませんよ。といいますか、咲良さんの潜在能力を考えると、これくらいの品を用意しないと心配ですから」
「心配?」
えっと、それはどういう意味なんだろ?
「あー、そっか。咲良ちゃんの魔力は世界トップクラスだものね。そりゃ最高級品でないとマズいわ」
でも可憐先生は鈴木さんの言葉に納得したらしく、それならしょうがないと頷いている。
「それってどういう意味ですか可憐先生?」
「あのね、安物の杖って魔力を込めすぎると簡単に壊れちゃうのよ。例えば野球の試合で子供用のおもちゃのプラスチックバットを使ったら、簡単に壊れちゃうでしょ? 大人の力にも硬式ボールの硬さにも耐えられないわけ。そういう意味では大量の魔力を必要とする高等魔法なんかにも向かないわね。安い杖は魔力消費の少ない小学生か、せいぜい中学生までね」
なるほど、そう言われると納得だ。
安い物には安いなりの理由があるって事だね。
「しかも咲良ちゃんの魔力は人並み以上だから、それこそ最高級品でないと心配なのも分かるわ」
「お手数おかけします」
魔力が多いってのも良い事ばかりじゃないんだな。
あれか、体格が良すぎて市販品の服を着れないスポーツ選手みたいな感じか。
「いえいえ、お気になさらず。これは今後全属性の魔法の才能や、人並外れた魔力を持った子供が現れた時の為に役立つデータになりますから」
成る程ねぇ。でもそう言ってもらえると、こっちも安心するよ。
(……で、ほんとにアレKAGRAの製品なわけ? なんかちょっと違う感じがしたんだけど?)
(実は核の宝玉とメインフレームは軍用のパ-ツを流用した特注品です。何しろ咲良さんの魔力は規格外ですから市販品では最高級グレードでも心配なんですよ。ああ、これは咲良さんには内緒ですよ)
(分かってるって。どうせお館様の指示なんでしょ)
(ええまぁ。本当苦労したんですよ。お館様のセンスでデザインされた杖を特注するのを止めるの)
(……ご苦労様)
「あの、どうかしたんですか?」
突然先生達が隅っこに寄って内緒話を始めたから、何か問題でも起きたのかと心配になってしまう。
「ううん、何でもないわ。それよりせっかく良い杖を貰ったんだから、魔法を試してみなさいよ」
「はい!」
やったね! 正直僕もさっきから使ってみたくてウズウズしていたんだ!
「一年生なら自然魔法の送風を覚えてるわよね。それを使ってみなさい」
「はい! 送風!」
僕は杖を持って送風の魔法を発動させる。
この魔法は一年生で覚える自然魔法の中でも最初に覚えるだけあって、そよ風を起こすだけの簡単な魔法だ。
本当に弱い風だからドライヤー代わりにもならないんだけど、だからこそ小学生が初めて使うのにちょうどいいんだろうね。
火のように危なくないし、水のように室内を水浸しにもしない。土のように地面がある場所でなくても使えるから。
「おっ」
魔法を発動する瞬間に感じる魔力が減る感じはほとんどなく、更に魔力の制御も驚く程あっさりと組みあがる。
なるほど確かにこれは便利……っ!?
ゴオッ!!
そう思った次の瞬間、杖の先端から物凄い勢いの突風が生まれたんだ。
「うわっ!?」
「きゃっ!」
「こ、これは!?」
杖から放たれた突風は凄い勢いで近くの木にぶつかり、青々とした葉っぱを大量に吹き飛ばす。
「ビ、ビックリしたぁ……魔法の杖ってこんなに魔法が使いやすくなるんですね」
っていうか今の、もう送風じゃなくて突風ってレベルの威力だったよね?
「え、ええ。ちゃんと使いこなせたようでなによりですね……」
(ね、ねぇ、KAGRAの杖って魔法の威力増幅効果なんてあったっけ?)
(ありませんよ! 普通の魔法の杖は魔法の精度向上と魔力消費の軽減が基本です。咲良さんの杖も教育に悪影響を与えないように、ベーシックな設定にしている筈です!)
(それってつまり、咲良ちゃんが効率的に魔法を使うと、送風でもちょっとした突風並みの出力になるって事?)
(どうやらそのようです。これは今まで以上に魔法の出力制御を頑張ってもらったほうが良さそうですよ)
(分かった。皆にも言っておくわ)
「あの先生? 何かまずかったですか?」
杖を使った魔法を見た先生達がまた内緒話を始めたので、何かまずい事をしてしまったんじゃないかと不安になる。
「い、いえ、そんなことないわ。ただ咲良ちゃんは問題なく杖を使いこなせるみたいだから、練習に使う時間を繰り上げて訓練メニューの見直しをしようかって話していたの」
「あっ、そうだったんですね」
どうやら杖を使うにもある程度慣れが必要だったみたいだ。
うん、確かに今の威力を考えると、うっかりいつもの調子で魔法を使ったら大変なことになるからね。これは放課後の特訓でも杖を安全に使う訓練をしないといけないなぁ。
「ともあれ、これなら大会に出れるレベルかもしれないわね」
「大会?」
可憐先生の漏らした大会と言う言葉に僕は首を傾げる。
一体何の大会だろう。
「ええ、魔法大会の事よ」
「魔法大会!? そんなのあるんですか!?」
それってもしかして魔法の大会!?
「あれ? 知らなかった? 大抵どこの町でも魔法大会はあるものだけど」
「町で大会が!?」
全国どころか市町村レベルで魔法の大会なんかあるのこの世界!?
「咲良ちゃんも小学生の部で参加してみる?」
「参加したいです!」
可憐先生の提案に僕はすぐに飛びつく。
魔法の大会! 凄く興味あるよ!
「ふふっ、いい返事ね」
「ちょっと待ってください。町の大会とはいえ、高学年の生徒も参加するんですよ? さすがに咲良さんを参加させるのは……」
あっ、そうか。小学生の部って事は同学年だけじゃなくて高学年も出るのか。
うーん、流石に自分よりも沢山の魔法を扱える上級生相手に勝てる気はしないなぁ。
「良いじゃない。咲良ちゃんの実力を測るいい機会だわ」
けど可憐先生は乗り気のようで、勝つ事よりも大会に参加する事を重要視している感じだ。
「ですがまだ使える魔法の数が……」
「それは私達が教えれば良いのよ。なんだったら大会までは平日も教えるってのはどうかしら? 学校が終わった後でも咲良ちゃんなら一日一個は魔法を覚える事が出来ると思うわよ」
「平日も魔法を教えて貰えるんですか!?」
おおーっ! 新しい魔法を沢山覚える事が出来る! これはチャンスだね!
「ですがそれは……」
「分かってるって。他の先生方には私から聞いておくわ。まぁ皆二つ返事で引き受けてくれると思うけどね」
「いやそうではなく……」
鈴木さんは何か問題があるのか、なおも食い下がる。
うーん、鈴木さんにはお世話になってるし、あんまり迷惑かけるのも悪いかなぁ。
「あの、鈴木さん……」
「はい、何でしょうか咲良さん?」
「僕、迷惑なら諦めますよ」
さすがに人に迷惑をかけてまで大会に参加する気はない。
ただでさえ鈴木さんは忙しいみたいだし。
「うっ!?」
そう思って鈴木さんに迷惑なら諦めると告げたんだけど、何故か鈴木さんは苦しむように胸を抑える。
「あらあら~、咲良ちゃんに悲しい顔させちゃ駄目じゃない」
「でも迷惑をかける気はないんです」
「い、いえ。迷惑ではないですよ。ただ咲良さんが怪我をしないか心配だっただけで……」
「そうなんですか?」
「は、はい……」
そっか、迷惑って訳じゃなかったんだ。
でも確かに僕はまだ入学して間もない新米魔法使いだもんね。心配になって当然だ。
「なーに、心配ないって! 大会中は大事故が起きないように審判たちが監視してくれてるし、万が一怪我をしても回復魔法使いが待機しているもの!」
へぇ、町の大会って割にはしっかりした大会なんだね。
「そして咲良ちゃんは鈴木さんが心配しない様にどんどん強力な魔法を覚えましょうか!」
「はい!!」
可憐先生の言う通りだ。まずは僕自身が鈴木さんを心配させないように強くならないと!!
「目指せ史上最年少で優勝よー!!」
「おーっ!!」
こうして僕は、可憐先生指導の下、魔法大会に挑むことになったのだった。
(ふふふふっ、業界の連中の目ん玉飛び出る姿を見るの楽しみだわぁ)
「うう、胃が……」
可憐先生と週末の魔法訓練をしていたら、鈴木さんが大きな包みを持ってやって来た。
「プレゼントって、何ですか?」
「どうぞ開けてみてください」
鈴木さんが差し出した包みを受け取り梱包をはがすと、中から大きな宝石のはめ込まれた小さな杖が出てきたんだ。
「……杖?」
杖は大体40cmくらいの長さで、魔法使いの杖というよりは少女向けアニメに出て来るステッキくらいの長さだ。
ただデザインは結構シンプルで、模様といいスポーツ用品のような雰囲気だ。
「はい。以前約束した咲良さん用の魔法の杖です」
「これが魔法の杖ですか!?」
そう言えば以前そんな約束をしていたっけ。
それにしてもイメ―ジと違うな。
もっとゲームに出て来るような魔法の杖かと思ってた。
「結構短いんですね」
「学生が持ち歩けるようになっていますから。ですが杖の長さは下のつまみで調整できますよ。後で使いやすい長さに調整してみてください」
なるほど、細かい調整が出来るようになってるんだね。
「私にも見せて見せて」
僕が杖に夢中になっていたら、可憐先生が後ろからもたれかかる様に僕の杖を覗き込んできた。
と言いますか……凄い物が当たっています。とても弾力に満ちたものが……
「うっそ、これKAGRA社の最高グレードの杖じゃない!?」
「え? 凄いんですかこれ?」
可憐先生は本気で驚いているらしく、食い入るように杖を見つめる。
「凄いわよ! 世界大会に出場するような魔法選手が使う最高級品だもの!」
「最高級品!? そんなの貰って良いんですか!?」
さすがにそんな凄いものを貰えるとは思っても居なかったので、緊張で手が震える。
だって最高級品って事は、物凄く高いって事だよね!?
「ええ、構いませんよ。といいますか、咲良さんの潜在能力を考えると、これくらいの品を用意しないと心配ですから」
「心配?」
えっと、それはどういう意味なんだろ?
「あー、そっか。咲良ちゃんの魔力は世界トップクラスだものね。そりゃ最高級品でないとマズいわ」
でも可憐先生は鈴木さんの言葉に納得したらしく、それならしょうがないと頷いている。
「それってどういう意味ですか可憐先生?」
「あのね、安物の杖って魔力を込めすぎると簡単に壊れちゃうのよ。例えば野球の試合で子供用のおもちゃのプラスチックバットを使ったら、簡単に壊れちゃうでしょ? 大人の力にも硬式ボールの硬さにも耐えられないわけ。そういう意味では大量の魔力を必要とする高等魔法なんかにも向かないわね。安い杖は魔力消費の少ない小学生か、せいぜい中学生までね」
なるほど、そう言われると納得だ。
安い物には安いなりの理由があるって事だね。
「しかも咲良ちゃんの魔力は人並み以上だから、それこそ最高級品でないと心配なのも分かるわ」
「お手数おかけします」
魔力が多いってのも良い事ばかりじゃないんだな。
あれか、体格が良すぎて市販品の服を着れないスポーツ選手みたいな感じか。
「いえいえ、お気になさらず。これは今後全属性の魔法の才能や、人並外れた魔力を持った子供が現れた時の為に役立つデータになりますから」
成る程ねぇ。でもそう言ってもらえると、こっちも安心するよ。
(……で、ほんとにアレKAGRAの製品なわけ? なんかちょっと違う感じがしたんだけど?)
(実は核の宝玉とメインフレームは軍用のパ-ツを流用した特注品です。何しろ咲良さんの魔力は規格外ですから市販品では最高級グレードでも心配なんですよ。ああ、これは咲良さんには内緒ですよ)
(分かってるって。どうせお館様の指示なんでしょ)
(ええまぁ。本当苦労したんですよ。お館様のセンスでデザインされた杖を特注するのを止めるの)
(……ご苦労様)
「あの、どうかしたんですか?」
突然先生達が隅っこに寄って内緒話を始めたから、何か問題でも起きたのかと心配になってしまう。
「ううん、何でもないわ。それよりせっかく良い杖を貰ったんだから、魔法を試してみなさいよ」
「はい!」
やったね! 正直僕もさっきから使ってみたくてウズウズしていたんだ!
「一年生なら自然魔法の送風を覚えてるわよね。それを使ってみなさい」
「はい! 送風!」
僕は杖を持って送風の魔法を発動させる。
この魔法は一年生で覚える自然魔法の中でも最初に覚えるだけあって、そよ風を起こすだけの簡単な魔法だ。
本当に弱い風だからドライヤー代わりにもならないんだけど、だからこそ小学生が初めて使うのにちょうどいいんだろうね。
火のように危なくないし、水のように室内を水浸しにもしない。土のように地面がある場所でなくても使えるから。
「おっ」
魔法を発動する瞬間に感じる魔力が減る感じはほとんどなく、更に魔力の制御も驚く程あっさりと組みあがる。
なるほど確かにこれは便利……っ!?
ゴオッ!!
そう思った次の瞬間、杖の先端から物凄い勢いの突風が生まれたんだ。
「うわっ!?」
「きゃっ!」
「こ、これは!?」
杖から放たれた突風は凄い勢いで近くの木にぶつかり、青々とした葉っぱを大量に吹き飛ばす。
「ビ、ビックリしたぁ……魔法の杖ってこんなに魔法が使いやすくなるんですね」
っていうか今の、もう送風じゃなくて突風ってレベルの威力だったよね?
「え、ええ。ちゃんと使いこなせたようでなによりですね……」
(ね、ねぇ、KAGRAの杖って魔法の威力増幅効果なんてあったっけ?)
(ありませんよ! 普通の魔法の杖は魔法の精度向上と魔力消費の軽減が基本です。咲良さんの杖も教育に悪影響を与えないように、ベーシックな設定にしている筈です!)
(それってつまり、咲良ちゃんが効率的に魔法を使うと、送風でもちょっとした突風並みの出力になるって事?)
(どうやらそのようです。これは今まで以上に魔法の出力制御を頑張ってもらったほうが良さそうですよ)
(分かった。皆にも言っておくわ)
「あの先生? 何かまずかったですか?」
杖を使った魔法を見た先生達がまた内緒話を始めたので、何かまずい事をしてしまったんじゃないかと不安になる。
「い、いえ、そんなことないわ。ただ咲良ちゃんは問題なく杖を使いこなせるみたいだから、練習に使う時間を繰り上げて訓練メニューの見直しをしようかって話していたの」
「あっ、そうだったんですね」
どうやら杖を使うにもある程度慣れが必要だったみたいだ。
うん、確かに今の威力を考えると、うっかりいつもの調子で魔法を使ったら大変なことになるからね。これは放課後の特訓でも杖を安全に使う訓練をしないといけないなぁ。
「ともあれ、これなら大会に出れるレベルかもしれないわね」
「大会?」
可憐先生の漏らした大会と言う言葉に僕は首を傾げる。
一体何の大会だろう。
「ええ、魔法大会の事よ」
「魔法大会!? そんなのあるんですか!?」
それってもしかして魔法の大会!?
「あれ? 知らなかった? 大抵どこの町でも魔法大会はあるものだけど」
「町で大会が!?」
全国どころか市町村レベルで魔法の大会なんかあるのこの世界!?
「咲良ちゃんも小学生の部で参加してみる?」
「参加したいです!」
可憐先生の提案に僕はすぐに飛びつく。
魔法の大会! 凄く興味あるよ!
「ふふっ、いい返事ね」
「ちょっと待ってください。町の大会とはいえ、高学年の生徒も参加するんですよ? さすがに咲良さんを参加させるのは……」
あっ、そうか。小学生の部って事は同学年だけじゃなくて高学年も出るのか。
うーん、流石に自分よりも沢山の魔法を扱える上級生相手に勝てる気はしないなぁ。
「良いじゃない。咲良ちゃんの実力を測るいい機会だわ」
けど可憐先生は乗り気のようで、勝つ事よりも大会に参加する事を重要視している感じだ。
「ですがまだ使える魔法の数が……」
「それは私達が教えれば良いのよ。なんだったら大会までは平日も教えるってのはどうかしら? 学校が終わった後でも咲良ちゃんなら一日一個は魔法を覚える事が出来ると思うわよ」
「平日も魔法を教えて貰えるんですか!?」
おおーっ! 新しい魔法を沢山覚える事が出来る! これはチャンスだね!
「ですがそれは……」
「分かってるって。他の先生方には私から聞いておくわ。まぁ皆二つ返事で引き受けてくれると思うけどね」
「いやそうではなく……」
鈴木さんは何か問題があるのか、なおも食い下がる。
うーん、鈴木さんにはお世話になってるし、あんまり迷惑かけるのも悪いかなぁ。
「あの、鈴木さん……」
「はい、何でしょうか咲良さん?」
「僕、迷惑なら諦めますよ」
さすがに人に迷惑をかけてまで大会に参加する気はない。
ただでさえ鈴木さんは忙しいみたいだし。
「うっ!?」
そう思って鈴木さんに迷惑なら諦めると告げたんだけど、何故か鈴木さんは苦しむように胸を抑える。
「あらあら~、咲良ちゃんに悲しい顔させちゃ駄目じゃない」
「でも迷惑をかける気はないんです」
「い、いえ。迷惑ではないですよ。ただ咲良さんが怪我をしないか心配だっただけで……」
「そうなんですか?」
「は、はい……」
そっか、迷惑って訳じゃなかったんだ。
でも確かに僕はまだ入学して間もない新米魔法使いだもんね。心配になって当然だ。
「なーに、心配ないって! 大会中は大事故が起きないように審判たちが監視してくれてるし、万が一怪我をしても回復魔法使いが待機しているもの!」
へぇ、町の大会って割にはしっかりした大会なんだね。
「そして咲良ちゃんは鈴木さんが心配しない様にどんどん強力な魔法を覚えましょうか!」
「はい!!」
可憐先生の言う通りだ。まずは僕自身が鈴木さんを心配させないように強くならないと!!
「目指せ史上最年少で優勝よー!!」
「おーっ!!」
こうして僕は、可憐先生指導の下、魔法大会に挑むことになったのだった。
(ふふふふっ、業界の連中の目ん玉飛び出る姿を見るの楽しみだわぁ)
「うう、胃が……」
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