魔法世界の幼女に転生した僕は拗らせ百合少女達に溺愛されています!?

十一屋 翠

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第16話 チーム咲良結成!

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「え? 咲良ちゃん魔法大会に参加するの?」

 放課後、いつものように魔法訓練をしながら、僕は町内の魔法大会に参加する事を燐瑚ちゃんと魅環ちゃんに伝えた。

「うん、魔法を教わってる先生から大会に参加してみないかって言われたんだ」

「凄いです。私だったら大会なんてとても参加できないです」

 僕が大会に参加すると聞いて、魅環ちゃんは大興奮だ。

「まぁ大会って言っても子供の出る大会だしね」

 中身が中学生の人間がガチ小学生の大会に参加するのはどうなんだろうとは思うけど、まぁ魔法に関しては僕も小学生レベルな訳で……

「……じゃあ私も参加する! 一緒にチーム組もっ!」

 そんな事を考えていたら、突然燐瑚ちゃんが自分も参加しだすと言い出した。

「え!? チーム? 何それ?」

「あれ? 咲良ちゃん知らないの? 大会は個人とチームの二種類があるんだよ」

「へぇ、そうだったんだ」

 てっきり皆一人で参加して戦うのかと思ってたよ。
 チーム戦なんてあるんだな。

「あっ、でも可憐先生からは実力を試す為って言われてたし、チームを組んだら実力を測れないんじゃないかな?」

 チームだと仲間の活躍なのか自分の活躍なのか分からなくなる時があるだろうし、純粋な実力を測るには向かないんじゃないかなぁ。

「でもチームで参加する人達の方が強い人が多いと思うよ。個人だとただの記念参加も多いだろうけど、チームで出る人達は勝つために色々準備や練習をしてきてるだろうから、実力を測るならチームで参加した方が良いよ」

 なるほど、確かにそういう考えもあるね。
 うーん、燐瑚ちゃんは本当に色々考えているなぁ。

「そっか、そういう事ならチームで参加するのもありかな」

「そうだよ! 私と咲良ちゃんなら優勝も目じゃないよ!」

(それに大会で目立てば、咲良ちゃんのパートナーは私だって周りに牽制できるものね)

 あはは、流石にそれは言い過ぎだよ燐瑚ちゃん。
 でも確かにやるなら優勝を目指したいところではあるね。

「なら私もチームに参加します!」

 そんな事を話していたら、今度は魅環ちゃんも大会に参加すると言い出した。

「え? 良いの?」

「はい!」

「ちょ、ちょっと! 貴女は自分には無理って言ってたじゃない! だったら無理して参加する必要はないでしょ!」

 そうしたら何故か燐瑚ちゃんが慌てた様子で魅環ちゃんの参加を止める。

「いいえ、今大会のルールを確認しましたが、チームでの参加は最低でも三人必要です。だから咲良ちゃんがチームで参加するなら、護衛である私の参加は必須です!」

 何か調べてると思ったら、大会のルールを確認していたんだ。

「人数制限なんてあったんだね。けどそれだと魅環ちゃんに迷惑かけちゃうし、やっぱり個人で出た方が良いのかな」

「い、いえ! 私は別に構わないです! と言うか、咲良ちゃんの護衛として、私もこういった人の多い場所に積極的に出る必要があるかなって思ったので!」

 自分の都合で迷惑かけるならチームで出るのは止めようかなと思ったんだけど、これは自分の為でもあると魅環ちゃんはチーム参加を主張する。

「本当に良いの?」

「はい! 一緒に戦わせてください!」

 魅環ちゃんの目は真剣そのものだ。
 付き合いで嫌々参加するってわけじゃないみたいだ。

「分かったよ! それじゃあ魅環ちゃんも一緒に大会に参加しよう!」

「喜んで!」

 よしっ! これで大会参加チーム結成だね!

「だーかーらー! 私が提案したのに何で貴女が感謝されてるの!!」

「それは日ごろの行いだと思いますよ」

 と思ったら、何故か二人が喧嘩腰になる。

「むー! 勝負よ! 咲良ちゃんのチームメイトに相応しいか試してあげる!」

「それはこちらのセリフです!」

「ちょっ、二人共!?」

「「たぁーっ!!」」

 あー、始めちゃった。
 しょうがない。落ち着くまで放っておこう。

 けどチームで魔法大会に参加か。まるで漫画みたいだ。
 ふふっ、ちょっとワクワクするな。

「ところでチーム名は何にしよう?」

 何かカッコいい名前を考えないとね。

「「チーム咲良ちゃんで!!」」

 君達、喧嘩してる最中なのに仲良すぎない……?

 ◆

 あの後、二人が喧嘩をしている間に可憐先生に確認のメールをしてみたら、意外にもあっさりと許可が出た。

「いいんじゃない? 確かにチーム戦の方が経験豊富な選手と戦う機会があるだろうから、実力を試すには丁度いいわ」

 との事だった。

 そして今日は燐瑚ちゃんの家にやって来ている。
 ちなみに魅環ちゃんも一緒だ。
 いつもなら燐瑚ちゃんと二人で呪術の勉強をするところなんだけど、今日は魔法大会の対策会議の為に集まってたんだ。

「何で貴女まで……」

 けれど魅環ちゃんの姿を見た燐瑚ちゃんが露骨に嫌そうな顔をする。

「私は咲良ちゃんの護衛ですから。咲良ちゃんが誰かに悪さをされないようにお守りする義務と権利があります!」

「あら、私には貴女の方が危ないと思うんだけど?」

「その言葉をそっくりそのままお返しします」

「「……ぐるるるっ」」

 この二人、本当に相性が悪いんだなぁ。
 魔法の属性が相性の悪さに影響したりしてるのかな?

「二人共、今日は対策会議の為に集まったんだよ。喧嘩するなら僕は帰るからね」

「「ごめんなさい!」」

 僕が窘めると、二人はあっさりと喧嘩を止める。

「でも会議って言っても何をする訳?」

「基本は自分の得意な魔法を使った戦い方を練りあげ、チームメイトと連携訓練を行うそうです」

 おー、いかにも特訓って感じの内容だ。

「魅環ちゃん詳しいね!」

「わ、私の家は身体強化魔法を使う人間が生まれやすいので、人と競う大会に参加する人が多いんですよ。だから家に大会関係の資料があるんです」

 なるほど、確かに自分の体を強化する身体強化魔法はスポーツと相性が良さそうだもんね。

「それも良いけど、実際の大会がどんなものかを実際に見た方が早いと思うわ」

「見るってどうやって?」

「これよ」

 そう言って燐瑚ちゃんが取り出したのは、一枚のディスクだった。

「ウチの使用人の家族が大会に参加した事があったらしくて、その時のビデオを借りてきたの。個人での参加だけど、これを見れば大会の空気がつかめると思うわ」

 なるほど! 確かに過去の大会の内容を見るのが一番てっとり早いよね!

「ありがとう燐瑚ちゃん!」

「っ! ど、どういたしまして……」

 僕が感謝の言葉を伝えると燐瑚ちゃんは顔を真っ赤にして照れてしまった。
 燐瑚ちゃんは恥ずかしがり屋さんだなぁ。

「ニヤリ」

「っ! 咲良ちゃん、そんなの見なくても、こちらの方が良いですよ」

 それじゃあさっそく大会のビデオを見ようと思ったんだけど、魅環ちゃんも同じようにディスクを鞄から取り出す。

「それは?」

「これは全国大会のチーム戦の映像記録です。私の家にあったのを持ってきました」

「全国大会のチーム戦!? よくそんなもの用意できたね!」

「優秀なライバルを研究するのはごく当然の事ですから……ニヤリ」

「っ!!」

「「……っ」」

 なるほど、魅環ちゃんの家はスポーツ選手が多いみたいだから、ライバルの試合を研究するのは当然か。
 ところで何でさっきから二人は噛みつかんばかりに睨みあっているんだろう?

「二人共なにしてるの? 早く見ようよ」

「咲良ちゃん! どっちを見るの!?」

「咲良ちゃん! どっちを見るんですか!?」

 どっちをって……ああ、どっちを先に見るかって事か。

「両方で良いんじゃない? 燐瑚ちゃんのビデオで町の大会の雰囲気を見て、魅環ちゃんのビデオでチーム戦の戦い方を見れば」

「……そうだね」

「……そうですね」

 何故か二人がションボリしているけれど、まずは燐瑚ちゃんの用意してくれたビデオから見る事にする。

 さっそく映像が始まると、テレビの画面に会場の光景が映し出された。
 試合会場は運動場のような野外で行われているらしく、選手たちは白線で描かれた10mほどの四角の枠の中で試合をしていた。
 
「これは小学生用の小さな試合枠ですね。小学生が使う魔法は射程が短いですから、あまり広い舞台だと目立たなくなるみたいです。逆に魔法が複雑になってくる中学生以降だと、間合いを確保する為にもっと広い試合枠になるそうですよ」

 成る程、子供用の浅いプールと高学年の入る深いプールみたいなもんか。

「っていうか、何で二人共密着してくるの?」

 何故か、燐瑚ちゃんと魅環ちゃんが僕にべたーっとくっついてくる。

「だって一緒に見るんだから、近くに居た方が感想を話しやすいし」

「それに解説するにも近い方がいいでしょうから」

 それにしたってくっつき過ぎなんじゃ……

「あっ、咲良ちゃん、はいお菓子。あーん」

 そんな事を思っていたら、燐瑚ちゃんが僕にお菓子を差し出してきた。

「あっ、狡いですよ! 咲良ちゃん、こっちの方が美味しいですよ! はい、あ、あーん」

 そして何故か魅環ちゃんまで対抗意識を燃やしたのか、こちらもお菓子を差し出してくる。

「むがっ」

 二人のお菓子が同時に口に突っ込まれる。
 かたや甘いお菓子、かたやしょっぱいお菓子。
 うーん、口の中でお菓子の味がフュージョンして絶妙に喧嘩している。
 お願いだから片方ずつ食べさせて欲しいかな。

『白組ゆうき君、赤組たつや君』

 などとやっていたら、テレビに撮影者の家族らしき子供と対戦相手が現れる。
 画面の二人は小学校低学年らしく、かなり緊張しているのが良く分かる。

 頭にはそれぞれ白いハチマキと赤いハチマキを撒いており、それがチーム分けのアイテムなんだろう。
 あと気になったのは、二人共右胸に弓道の胸当てみたいな形の変則的な三角形の板を取り付けていた事か。

『始めっ!』

 二人が試合枠の中に入ると、審判の合図と共に試合が始まる。
 ゆうき君とたつや君は一斉に魔法で攻撃を始める。

「ファイヤーボール!」

「ウインドカッター!」

 ゆうき君は炎の玉を、たつやくんは風の刃をそれぞれ放ち、互いの攻撃が中央でぶつかって爆発する。

「おおっ、結構派手に戦うんだ。でもこれ怪我とか危なくない?」

 何しろ火の玉とかを飛ばしてる訳だし、当たったら間違いなく怪我をする。

「大丈夫です。参加者は空間魔法を応用した結界魔法具を装着していますから、怪我をする可能性は低いです」

「結界魔法具?」

 そんなものもあるんだ!

「胸のところに着けている三角形のだよ」

 燐瑚ちゃんの説明を聞いて、さっきの胸当てがそれだと気付く。

「ああ、あれか」

「試合中に攻撃を受けた場合はアレがダメージを肩代わりしてくれます。ただ、受けたダメージの量が多すぎると魔法具が壊れます。なので一定ポイント以上のダメージを負うか、魔法具が壊れると負けになります」

 なるほど、魔法具が勝手にダメージ計算して勝敗を決めてくれるわけだね。

「あれ? でも魔法具が壊れる程のダメージって危なくない?」

 何しろダメージを肩代わりしてくれる魔法具がぶっ壊れる程のダメージだ。吸収しきれなかったダメージを喰らってしまう危険もある。

「大丈夫ですよ。この魔法具は壊れる際に吸収しきれなかった余剰ダメージが装着者に向かない様に、自分が壊れる事で相殺する機能があるんです。ええと、車が壊れる事で乗っている人を守る仕組みと同じなんだとか」

 ああそれは聞いたことがある。日本の車は壊れる事でショックを吸収するんだよね。
 そうこう話しているうちと、たつや君が魔法を放つのを止めてしまった。

「あっ、魔力切れだね。これはもう勝負ありかな」

 燐瑚ちゃんの言う通り、その後の試合はゆうき君が一方的に魔法を放ち続け、試合はゆうき君の勝利で終わった。
 そしてビデオは泣きながら帰ってくるたつや君を迎えて終わったのだった。

「あっという間に終わっちゃったね」

 うーん、ちょっと拍子抜けな内容だったな。

「子供の部なのでこんなものですよ。中等部の試合ならもっと考えて戦うので、実はたつや君の魔力切れは誘いで相手が油断した所で温存していた魔力を使って一発逆転、なんて展開もあったんですけどね」

 おお、それは確かに熱い展開だ!

「今回は町内大会で皆がどんな風に戦うのかが分かっただけで良いのでは?」

 なるほど、確かにそういう割り切り方もありか。

 ただ、僕には一つ気になった事があった。
 ……このビデオ、撮影したのは多分たつや君の親だと思うんだけど……これ、たつや君の負け試合を撮影して、それを赤の他人に嬉々として貸し出したんだよなぁ……
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