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第5話 少年・反撃
『プレイヤーコール。ライドモードを起動します』
それは何度も聞いたマシンボイスの言葉だった。
この声が聞えた次の瞬間、アリシアの胸が左右に開き、その中から円筒形の物体がせり出す。
「な、何だ?」
しかしその疑問に答える声は無く、アリシアからせり出した円筒形の物体が半分に割れた。
割れた半円形の物体に中には自分の良く知るモノに酷似する物が収められていた。
「シート? それにコンソールに……まさかこれって、コクピット!?」
そう、それはまさしくコクピットだった。
SF的な用で幻想的なデザインのシートと一体化するようにコンソールといくつものボタン、そして何より操縦幹と思しきスティックがあったのだ。
タカヤは吸い込まれるようにアリシアから出てきたコクピットのシートに座る。
するとソレを待っていたのか、コクピットが閉まりアリシアの中に吸い込まれていく。
「うわ、暗っ、明かり、明かりは?」
タカヤが明かりを求めると正面のコンソールに光が灯る。
コンソールには見た事の無い文字がならぶ。しかしタカヤにはその意味が理解できた。それは説明書であり騎体の状況を知らせるステータス画面であった。
『キングの搭乗を確認。ナイトライド、スタンバイ』
再び耳元に聞える謎のマシンボイス。
『へヴィーナイト・アリシアセットアップ。キングゲーマー・ゴーライド』
周囲の光景が一変する。目を向ければその先にはクークスの姿が見える。
タカヤは一瞬自分がコクピットの外に放り出されたのかと思った。
だがそれは違った。これは映像だ。360°全周が外部の景色を映し出している。その証拠にタカヤのしたにはコクピットシートが正面にはコンソールがあったからだ。
「な、何が起きたのだ!?」
気が付けば先程まで優勢だったはずのクークス達が自分達を見て驚愕の声を挙げている。
「き、貴様その姿は何だ!? 一体何をしたのだ!!」
タカヤにはクークス達が何を言っているのかまるで分からなかった。分かるのは相手がとてつもなく動揺していると言う事だけだった。
「た、隊長……」
騎士達がどうして良いのか分からずにクークスの指示を仰ぐ。
「か、かまわんやってしまえ。どうせこいつは死に体だ!」
「は、はい!」
慌てて騎士達がタカヤ達に向かって剣を振り下ろす。
「うわっ!」
タカヤは慌てて操縦幹を握り締めがむしゃらに動かす。
「ひぃ!」
騎士達が悲鳴を上げる。
次の瞬間、気が付けばタカヤ達は遥か上空まで飛び上がっていた。
「な!?」
下を向けば何十m下にクークス達の姿が見える。
そして今度は下に落ち始めた。異世界でも重力は同じ様に仕事をする様だ。
「おわぁぁぁぁぁ!!」
着地と共に全身に衝撃が走る。
だがそれはタカヤの想像よりも遥かに小さな衝撃だった。
「どうなってるんだ?」
「タカヤ様……なのですか?」
コンソールの両脇からアリシアの声が聞える。どうやらスピーカーが内蔵されているみたいだ。
「あ、ああ。どうやらアリシアの中に入っちまったみたいだ。ソレよりも体は大丈夫か?」
先程までの惨状を思い出しアリシアに具合を尋ねるタカヤ。
「……そういえば痛くありませんね。なんだか先程から全身に力が漲っている感じがするんです」
それはどういう事なのだろうかと考え始めるタカヤにアリシアが答える。
「でも、分かります。ええ、これは私の中に居るタカヤ様のぬくもりのお陰です。」
「あ、うん……」
ただコクピットの中に居るだけなの、やたらとエロい事をしている気分になるタカヤ。
(でも今はロボなんだよなぁ)
「と、ともかくこれで俺も戦える! 行くぞアリシア!!」
「はい! 私の体、どうぞご自由にお使い下さい!!」
その言葉を聞いて何かとんでもなくもったいない気分になるタカヤ。
コンソールを操作してアリシアの武装を確認する。
その時初めてコンソールに表示されているアリシアの姿と自分が見たアリシアの姿が違う事に気が付いた。
(そういえばあいつ等妙に驚いてたな。姿がどうとか。まぁいいか)
コンソールに表示されたアリシアの武器は二つ、一つは剣、スタンダードな両刃の剣だが刀身がやや細身の印象を受ける。
もう一つは左手のバックラー。どうやら先程のように射出して攻撃する武装の様だ。
「他に武器は無いのかよ」
しかしその希望もむなしく武器は二つしか表示されない。
だがコンソールをいじる事である情報に気付く。
「た、隊長、コイツ動きませんよ。やるなら今じゃないですか?」
「あ、おい、待て!」
コンソールでマニュアルを確認していた事を知らない騎士が緊張に耐えられなくなって襲い掛かる。
タカヤはすぐさま意識を戦闘に戻し、剣で応戦する。
「視界的にはFPSや3Dバトルシミュレーター系だな」
ゲームで慣れ親しんだ感覚を思い出しながら敵の攻撃を回避していくタカヤ。
それはタカヤにかつて嵌ったものの、金銭的理由でプレイし続ける事を断念した完全密閉型ゲーム筐体を思い出させた。
相手の予備動作を見極め次の攻撃パターンを予測する。
それは技術の究極であり、あらゆる武術家が目指す頂き。
タカヤの回避は先程までのアリシアにはない余裕に満ちた動きとなって騎士を翻弄した。
「な、なんだコイツの動き、さっきとまるで違うぞ!」
敵の攻撃を回避しながらアリシアの操縦方法を感覚で理解していくタカヤ。
それは幾多のゲームをプレイしてきた事で生まれた経験と直感の融合だった。
「んじゃ、そろそろやってみますか」
アリシアの操作になれたタカヤはコンソールを操作しアリシアの力を解放する。
アリシアの足にある羽根飾りが展開し中から純白の輝きが漏れ出す。
次いで背中の装甲板が左右に広がり小さな翼を髣髴させる姿となる。
「行くぞ!!」
羽根飾りと翼から純白のオーラが噴出しアリシアがジェット機のような勢いで走り出す。
「うぁっ!」
アリシアは自らの速度に反応できなかった騎士達の間を通り抜けつつ、すれ違いざまに刃を叩き込む。
そしてアリシアが通り過ぎた後に、ようやく両断された事に気付いた騎士が地面に崩れ落ちた。
「う、うわぁぁぁぁ!」
突然仲間が倒れた事に驚愕しパニックに陥る騎士。
タカヤは操縦幹を動かしてアリシアの軌道を戻し、残った騎士に向かって突き進む。
騎士は今度こそアリシアを迎撃しようとするが、尋常ではないアリシアの速さに翻弄されなす術も無く懐に潜り込まれる。
「終わりっと!」
そして騎士達は己の身に何が起こったのかも分からないまま、アリシアの超速ヒットアンドアウェイ攻撃の前に沈む事となった。
タカヤはアリシアの操縦幹を動かしクークスと真正面から向き合う。
「……戦闘に転用可能なほどのオーラ、やはりその姿はヘビーナイトクラスだと言うのか!?」
クークスはそれを口にする自分自身ですら納得が言っていないかのような口調で問いかけてくる。
「いや、あり得んあり得んあり得ん!! 戦いの最中に騎士のクラスが変わるなど絶対あり得ん! そんな馬鹿な話は聞いた事も無い!!」
遂には自分自身で自分の言葉を否定しだす始末だった。
「わ、私は誇り高き騎士なのだぞ! だというのに、だというのに何故貴様などがヘビーナイトになれるのだ!! スクワイヤだった筈の貴様などがぁぁぁぁ!!」
クークスは混乱の極みにあった。初めはただの残党狩りだと思っていたのだ。
失敗するほうが難しい任務だ。ソレを強引に理由をつけてスクワイヤクラスとはいえ騎士を三人もつけた。
だというのにそれが全滅したのだ。
理由は分からないがアリシアは自分達の調べた以上の力を手に入れていた。
部下の半数は死亡、それ所か貴重な騎士まで失う不始末。
このまま戻れば処罰は免れない。出世どころか降格さえありうる。
(わ、私は騎士だぞ! この様な任務を失敗など出来るか!! もし失敗した事が明るみに出れば他の奴らになんと言われる事か!! 下手すれば境界に左遷だ!)
故に、少しでも処罰を軽くする為にせめて任務だけは完遂しなければならない。 なんとしてでもファーコミンの領地を王に差し出さなければならない。
「死ねぇぇぇぇぇ!!」
結果、無謀な、何の策も感じさせない特攻を選択するクークス。
「ヤケになったか?」
だがその考えを即座に否定するタカヤ。ゲームでは大抵ダメージを受けたボスキャラは攻撃パターンを激化させてプレイヤーを倒そうとしてくる。
だとしたら、目の前の敵も何か奥の手を使ってくるに違いない。
なんとも緊張感のない考えだが、この時に限ってはそれが功を制した。
「はぁぁぁぁ!!」
クークスの槍が紫のオーラがに包まれアリシアに向かって投げられる。
「うぉっ!」
槍の石突きに集中したオーラがクークスの手を足場にしてロケットの様に射出される。
それはクークスの放った必殺の一撃だったが、ソレが来る事を予測していたタカヤにとってはテレフォンパンチに等しく、余裕で回避される。
「それがお前の必殺技か。ならこっちの必殺技も見せてやるぜ!」
必殺技には必殺技で。それはどうしようもないロマンゲーマーのサガだった。
タカヤの操縦に従いアリシアが腰を落として剣を構える。
全身を漲るエネルギーが目視可能なまでに高まり、その中でも特に剣と足飾りに輝きが集中する。
「おお……」
全力を出し尽くして棒立ちとなったクークスが感嘆の溜息を漏らす。
それは焦がれる様に、憧れる様に。
「『闘技 閃影』!!」
アリシアの体が光となる。
世界が止まったように感じその中で自分だけが普通に動ける。
己の体を光と化して超速の一撃を叩き込む。
それこそがヘビーナイトアリシアの闘技『閃影』だった。
クークスへの攻撃が終わった直後、タカヤとアリシアは元の世界に返って来る。
普通の音の世界に。
そしてアリシアが振り替えった時には真っ二つに断ち切られたクークスの姿があった。
崩れ落ちるクークス。
そして戦場に立つ者はアリシアだけとなった。
◆
「き、騎士様達が負けちまった。……に、逃げろ! 逃げろぉぉぉぉぉぉ!!」
離れた所から戦況を見守っていた雑兵達が逃げ出し始める。
しかしタカヤはそれを追おうとはしなかった。いや、追えなかったのだ。
突然、言い様の無い疲労感に包まれたタカヤにとって逃げ出す雑兵の事など胴でもいい事だった。
ただ、荒い息を吐きながらその光景を見つめる。
「か、勝ったのか?」
「みたいです……」
アリシアも心ここにあらずと言った様子で答える。
ソレを聞いてようやくタカヤは安堵のため息を漏らした。
◆
「あー、確かに変わってるわ」
アリシアのコクピットから降りたタカヤは変化したアリシアの姿をみてようやくクークス達が動揺した理由に納得がいった。
その姿は最初のアリシアよりも大きく、25mほどに巨大化していた。
さらに全身がより強固な鎧に覆われ、騎士らしさが上がっている。
そして特に違うのが全身を覆う薄く白いオーラだった。
「これがヘビーナイトって奴か」
タカヤは考えていた。自分が乗り込んだ事でアリシアがパワーアップした。
それは間違いない。だがその理由が分からない。多分アリシアに聞いても無駄だろうと。
なにしろ己の中に存在していたコクピットの事すら知らなかったのだから。
などと考えていると突然アリシアの姿が消えた。
「えっ!?」
目の前で消えたアリシアの巨体を捜すタカヤ。
「タカヤ様ぁぁぁぁぁぁ!」
アリシアの声が聞えた。
見れば先程まで巨大な騎士であったアリシアの足があった場所から見知った姿のアリシアが走ってくる。
それは巨大な鉄の鎧ではなく元の少女の姿に戻ったアリシアだった。
「私勝ちましたぁぁぁぁぁ!!」
止まる事無くタカヤの胸に飛び込んでくるアリシア。
「おおおおおおぉぉぉ!?」
当然の事ながら、軟弱なタカヤにその勢いを受け止めきれる筈も無く、あっさりと地面に押し倒された。同然その豊かな胸も押し付けられる。
「あ、ああ。大丈夫っパイ。っていうかさ……」
状況に困惑しつつも、アリシア達が変身した騎士の姿について聞き出そうとしたタカヤの脳裏に再びあの声が聞えた。
『敵戦力を撃退した事で領地を獲得しました。アリシア=ディクスシスのステータスがUPしました』
「え?」
その声はまるでゲームのアナウンスの様に告げた。
それは何度も聞いたマシンボイスの言葉だった。
この声が聞えた次の瞬間、アリシアの胸が左右に開き、その中から円筒形の物体がせり出す。
「な、何だ?」
しかしその疑問に答える声は無く、アリシアからせり出した円筒形の物体が半分に割れた。
割れた半円形の物体に中には自分の良く知るモノに酷似する物が収められていた。
「シート? それにコンソールに……まさかこれって、コクピット!?」
そう、それはまさしくコクピットだった。
SF的な用で幻想的なデザインのシートと一体化するようにコンソールといくつものボタン、そして何より操縦幹と思しきスティックがあったのだ。
タカヤは吸い込まれるようにアリシアから出てきたコクピットのシートに座る。
するとソレを待っていたのか、コクピットが閉まりアリシアの中に吸い込まれていく。
「うわ、暗っ、明かり、明かりは?」
タカヤが明かりを求めると正面のコンソールに光が灯る。
コンソールには見た事の無い文字がならぶ。しかしタカヤにはその意味が理解できた。それは説明書であり騎体の状況を知らせるステータス画面であった。
『キングの搭乗を確認。ナイトライド、スタンバイ』
再び耳元に聞える謎のマシンボイス。
『へヴィーナイト・アリシアセットアップ。キングゲーマー・ゴーライド』
周囲の光景が一変する。目を向ければその先にはクークスの姿が見える。
タカヤは一瞬自分がコクピットの外に放り出されたのかと思った。
だがそれは違った。これは映像だ。360°全周が外部の景色を映し出している。その証拠にタカヤのしたにはコクピットシートが正面にはコンソールがあったからだ。
「な、何が起きたのだ!?」
気が付けば先程まで優勢だったはずのクークス達が自分達を見て驚愕の声を挙げている。
「き、貴様その姿は何だ!? 一体何をしたのだ!!」
タカヤにはクークス達が何を言っているのかまるで分からなかった。分かるのは相手がとてつもなく動揺していると言う事だけだった。
「た、隊長……」
騎士達がどうして良いのか分からずにクークスの指示を仰ぐ。
「か、かまわんやってしまえ。どうせこいつは死に体だ!」
「は、はい!」
慌てて騎士達がタカヤ達に向かって剣を振り下ろす。
「うわっ!」
タカヤは慌てて操縦幹を握り締めがむしゃらに動かす。
「ひぃ!」
騎士達が悲鳴を上げる。
次の瞬間、気が付けばタカヤ達は遥か上空まで飛び上がっていた。
「な!?」
下を向けば何十m下にクークス達の姿が見える。
そして今度は下に落ち始めた。異世界でも重力は同じ様に仕事をする様だ。
「おわぁぁぁぁぁ!!」
着地と共に全身に衝撃が走る。
だがそれはタカヤの想像よりも遥かに小さな衝撃だった。
「どうなってるんだ?」
「タカヤ様……なのですか?」
コンソールの両脇からアリシアの声が聞える。どうやらスピーカーが内蔵されているみたいだ。
「あ、ああ。どうやらアリシアの中に入っちまったみたいだ。ソレよりも体は大丈夫か?」
先程までの惨状を思い出しアリシアに具合を尋ねるタカヤ。
「……そういえば痛くありませんね。なんだか先程から全身に力が漲っている感じがするんです」
それはどういう事なのだろうかと考え始めるタカヤにアリシアが答える。
「でも、分かります。ええ、これは私の中に居るタカヤ様のぬくもりのお陰です。」
「あ、うん……」
ただコクピットの中に居るだけなの、やたらとエロい事をしている気分になるタカヤ。
(でも今はロボなんだよなぁ)
「と、ともかくこれで俺も戦える! 行くぞアリシア!!」
「はい! 私の体、どうぞご自由にお使い下さい!!」
その言葉を聞いて何かとんでもなくもったいない気分になるタカヤ。
コンソールを操作してアリシアの武装を確認する。
その時初めてコンソールに表示されているアリシアの姿と自分が見たアリシアの姿が違う事に気が付いた。
(そういえばあいつ等妙に驚いてたな。姿がどうとか。まぁいいか)
コンソールに表示されたアリシアの武器は二つ、一つは剣、スタンダードな両刃の剣だが刀身がやや細身の印象を受ける。
もう一つは左手のバックラー。どうやら先程のように射出して攻撃する武装の様だ。
「他に武器は無いのかよ」
しかしその希望もむなしく武器は二つしか表示されない。
だがコンソールをいじる事である情報に気付く。
「た、隊長、コイツ動きませんよ。やるなら今じゃないですか?」
「あ、おい、待て!」
コンソールでマニュアルを確認していた事を知らない騎士が緊張に耐えられなくなって襲い掛かる。
タカヤはすぐさま意識を戦闘に戻し、剣で応戦する。
「視界的にはFPSや3Dバトルシミュレーター系だな」
ゲームで慣れ親しんだ感覚を思い出しながら敵の攻撃を回避していくタカヤ。
それはタカヤにかつて嵌ったものの、金銭的理由でプレイし続ける事を断念した完全密閉型ゲーム筐体を思い出させた。
相手の予備動作を見極め次の攻撃パターンを予測する。
それは技術の究極であり、あらゆる武術家が目指す頂き。
タカヤの回避は先程までのアリシアにはない余裕に満ちた動きとなって騎士を翻弄した。
「な、なんだコイツの動き、さっきとまるで違うぞ!」
敵の攻撃を回避しながらアリシアの操縦方法を感覚で理解していくタカヤ。
それは幾多のゲームをプレイしてきた事で生まれた経験と直感の融合だった。
「んじゃ、そろそろやってみますか」
アリシアの操作になれたタカヤはコンソールを操作しアリシアの力を解放する。
アリシアの足にある羽根飾りが展開し中から純白の輝きが漏れ出す。
次いで背中の装甲板が左右に広がり小さな翼を髣髴させる姿となる。
「行くぞ!!」
羽根飾りと翼から純白のオーラが噴出しアリシアがジェット機のような勢いで走り出す。
「うぁっ!」
アリシアは自らの速度に反応できなかった騎士達の間を通り抜けつつ、すれ違いざまに刃を叩き込む。
そしてアリシアが通り過ぎた後に、ようやく両断された事に気付いた騎士が地面に崩れ落ちた。
「う、うわぁぁぁぁ!」
突然仲間が倒れた事に驚愕しパニックに陥る騎士。
タカヤは操縦幹を動かしてアリシアの軌道を戻し、残った騎士に向かって突き進む。
騎士は今度こそアリシアを迎撃しようとするが、尋常ではないアリシアの速さに翻弄されなす術も無く懐に潜り込まれる。
「終わりっと!」
そして騎士達は己の身に何が起こったのかも分からないまま、アリシアの超速ヒットアンドアウェイ攻撃の前に沈む事となった。
タカヤはアリシアの操縦幹を動かしクークスと真正面から向き合う。
「……戦闘に転用可能なほどのオーラ、やはりその姿はヘビーナイトクラスだと言うのか!?」
クークスはそれを口にする自分自身ですら納得が言っていないかのような口調で問いかけてくる。
「いや、あり得んあり得んあり得ん!! 戦いの最中に騎士のクラスが変わるなど絶対あり得ん! そんな馬鹿な話は聞いた事も無い!!」
遂には自分自身で自分の言葉を否定しだす始末だった。
「わ、私は誇り高き騎士なのだぞ! だというのに、だというのに何故貴様などがヘビーナイトになれるのだ!! スクワイヤだった筈の貴様などがぁぁぁぁ!!」
クークスは混乱の極みにあった。初めはただの残党狩りだと思っていたのだ。
失敗するほうが難しい任務だ。ソレを強引に理由をつけてスクワイヤクラスとはいえ騎士を三人もつけた。
だというのにそれが全滅したのだ。
理由は分からないがアリシアは自分達の調べた以上の力を手に入れていた。
部下の半数は死亡、それ所か貴重な騎士まで失う不始末。
このまま戻れば処罰は免れない。出世どころか降格さえありうる。
(わ、私は騎士だぞ! この様な任務を失敗など出来るか!! もし失敗した事が明るみに出れば他の奴らになんと言われる事か!! 下手すれば境界に左遷だ!)
故に、少しでも処罰を軽くする為にせめて任務だけは完遂しなければならない。 なんとしてでもファーコミンの領地を王に差し出さなければならない。
「死ねぇぇぇぇぇ!!」
結果、無謀な、何の策も感じさせない特攻を選択するクークス。
「ヤケになったか?」
だがその考えを即座に否定するタカヤ。ゲームでは大抵ダメージを受けたボスキャラは攻撃パターンを激化させてプレイヤーを倒そうとしてくる。
だとしたら、目の前の敵も何か奥の手を使ってくるに違いない。
なんとも緊張感のない考えだが、この時に限ってはそれが功を制した。
「はぁぁぁぁ!!」
クークスの槍が紫のオーラがに包まれアリシアに向かって投げられる。
「うぉっ!」
槍の石突きに集中したオーラがクークスの手を足場にしてロケットの様に射出される。
それはクークスの放った必殺の一撃だったが、ソレが来る事を予測していたタカヤにとってはテレフォンパンチに等しく、余裕で回避される。
「それがお前の必殺技か。ならこっちの必殺技も見せてやるぜ!」
必殺技には必殺技で。それはどうしようもないロマンゲーマーのサガだった。
タカヤの操縦に従いアリシアが腰を落として剣を構える。
全身を漲るエネルギーが目視可能なまでに高まり、その中でも特に剣と足飾りに輝きが集中する。
「おお……」
全力を出し尽くして棒立ちとなったクークスが感嘆の溜息を漏らす。
それは焦がれる様に、憧れる様に。
「『闘技 閃影』!!」
アリシアの体が光となる。
世界が止まったように感じその中で自分だけが普通に動ける。
己の体を光と化して超速の一撃を叩き込む。
それこそがヘビーナイトアリシアの闘技『閃影』だった。
クークスへの攻撃が終わった直後、タカヤとアリシアは元の世界に返って来る。
普通の音の世界に。
そしてアリシアが振り替えった時には真っ二つに断ち切られたクークスの姿があった。
崩れ落ちるクークス。
そして戦場に立つ者はアリシアだけとなった。
◆
「き、騎士様達が負けちまった。……に、逃げろ! 逃げろぉぉぉぉぉぉ!!」
離れた所から戦況を見守っていた雑兵達が逃げ出し始める。
しかしタカヤはそれを追おうとはしなかった。いや、追えなかったのだ。
突然、言い様の無い疲労感に包まれたタカヤにとって逃げ出す雑兵の事など胴でもいい事だった。
ただ、荒い息を吐きながらその光景を見つめる。
「か、勝ったのか?」
「みたいです……」
アリシアも心ここにあらずと言った様子で答える。
ソレを聞いてようやくタカヤは安堵のため息を漏らした。
◆
「あー、確かに変わってるわ」
アリシアのコクピットから降りたタカヤは変化したアリシアの姿をみてようやくクークス達が動揺した理由に納得がいった。
その姿は最初のアリシアよりも大きく、25mほどに巨大化していた。
さらに全身がより強固な鎧に覆われ、騎士らしさが上がっている。
そして特に違うのが全身を覆う薄く白いオーラだった。
「これがヘビーナイトって奴か」
タカヤは考えていた。自分が乗り込んだ事でアリシアがパワーアップした。
それは間違いない。だがその理由が分からない。多分アリシアに聞いても無駄だろうと。
なにしろ己の中に存在していたコクピットの事すら知らなかったのだから。
などと考えていると突然アリシアの姿が消えた。
「えっ!?」
目の前で消えたアリシアの巨体を捜すタカヤ。
「タカヤ様ぁぁぁぁぁぁ!」
アリシアの声が聞えた。
見れば先程まで巨大な騎士であったアリシアの足があった場所から見知った姿のアリシアが走ってくる。
それは巨大な鉄の鎧ではなく元の少女の姿に戻ったアリシアだった。
「私勝ちましたぁぁぁぁぁ!!」
止まる事無くタカヤの胸に飛び込んでくるアリシア。
「おおおおおおぉぉぉ!?」
当然の事ながら、軟弱なタカヤにその勢いを受け止めきれる筈も無く、あっさりと地面に押し倒された。同然その豊かな胸も押し付けられる。
「あ、ああ。大丈夫っパイ。っていうかさ……」
状況に困惑しつつも、アリシア達が変身した騎士の姿について聞き出そうとしたタカヤの脳裏に再びあの声が聞えた。
『敵戦力を撃退した事で領地を獲得しました。アリシア=ディクスシスのステータスがUPしました』
「え?」
その声はまるでゲームのアナウンスの様に告げた。
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・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
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