クロヴァンの探偵日記

高松 津狼

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第一章 はじまりの時

第2話 東の道の悲鳴 と 北の酒場の資料

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「ここから東の道で悲鳴が毎晩悲鳴が聞こえる道があるんだけど、村の人が怖いって言うから調査してくれないか?」
「あぁもちろん追加でお金は払うよ?」

これは、恐らく2番目の依頼と同じ話題だろう。私はなにか解決できそうな兆しが見えてきたので眉を上げてこう返事をした。

「その道ってどこにありました?お金は後ででもいいですよ!」

私が楽しそうにそう返事しているのを見て男性は思ったのか、

「いや、お金は今払っておくよ。すぐにでも取り組んでくれそうだしね。」

男性はそういうと、1000ペル(ペル=1円)を私に渡して東の道を案内してくれた。


---東の道----

「ここがその道だよ。」

男性はそういう言うと、地面を指差す。

「毎晩この下から悲鳴が聞こえるんだ。男女問わずね。」

男性はそういうと不思議なそうな顔をする。

なるほど、ということは2つ目の依頼は怪奇現象などではないようだ。
でも周囲には建物は見当たらず、血痕や地下には空間があるようには思えない。道の両脇には林が乱立しており見通しも悪い。そのような叫び声が聞こえてるとしたら林から聞こえてくるのが普通だと思うのだが。

これに関しては調査に数日どころか数週間かかる可能性がありそうだ。

「なるほど。案内してくださってありがとうございます。この道の下から聞こえてくる悲鳴というのは、毎晩と言いますけどいつ頃から?」

私がそう聞くと男性は、眉をひそめた。

「いやこれがね、ここ1ヶ月くらい続いているんだよね。その前は全くしなかった。」

1ヶ月前?

そう言えば、1ヶ月前と言えばヒョウタン人が北部の突き当りにある酒場にやけに集まっていたけれど、実はなにか関係があったりするのだろうか。それとも偶然?

「正直、この悲鳴が時にこっちまで聞こえることがあって村の住人が怯えることがあるんだよね。だから原因が分かったら教えて欲しいんだ。」

男性は私にそういうと私の解答を待った。

「わかりました。すぐに解決出来るかはわかりませんが、調査を進めますね。」

私がそう言うと男性は満足そうにして私にこう伝えた。

「この問題。実は解決出来た人いないんだ。ここ1ヶ月近い間に複数の探偵さんに以来したんだけど、全員帰ってこなくてね...」

...!?

つまり、全員不審死を遂げているということ?
それはなにかアブナイ予感が...
少し恐怖を覚えたが、同時に探究心も刺激された。

「なるほど。じゃあ尚更私が解決してきます。とっても気になるので。」

私がそう言うと、男性はホッとしたように顔が緩んだ。

「私は噴水を作りにそろそろ帰るよ。引き受けてくれてありがとう。」

そう男性は言うと、道を戻り町に帰った。

私は道から悲鳴が聞こえてくる原因を絞り込むため、ヒョウタン帝国軍人のやり取りや書物を漁ることにした。
そしてその場所は、本来は趣味で調査する予定だった北の方にある酒場。私には一つ心当たりが...

---北にある酒場----

さて。私はヒョウタン帝国軍人が良く居る酒場に来ている。
事前の調査通り、今日は営業していない。
中に人がいる様子もなく、情報を集めるにはピッタリな条件だ。
基本的にヒョウタン人にしか入れない建物の周辺には奴隷が立ち入らないよう『監視カメラ』と呼ばれるものが置いてあるのだが・・・
この店の周辺にはそのようなものは置かれていないようだ。
私は証拠をできるだけ残さないように、手袋をしてドアを開けた。

「わー!おしゃれー!」

店に入るとカランとおしゃれなベルの音がした。
中には洒落た雰囲気の食べ物やお酒が棚に入っていた。店に入った左側にはカウンター席があり、右側にはテーブル席があった。

私が今回目当てにしているのは、ヒョウタン帝国軍人が落としていく本である。ここにはヒョウタン人しか知らない機密情報などが乗っているケースが多いので、情報を知るのには持ってこないなのだ。

私は少し店の中を見渡した後、カウンターのバケット置き場の前になにか本が立てかけてあるのを見つけた。
私はカウンターにおそるおそる近寄り、その本を手に取ろうとしたが、その瞬間にカウンターからその本がドタンと落ちた。

「わっ!」

私は少し驚いて声をあげてしまった。
そして落ちた本を取ろうとしゃがんだところ、この本には題名が書いてあった。

「帝国研究会 緑樹自治区ルシュじちく編...!」

私は嬉しさのあまり声をあげてしまった。ヒョウタン帝国軍人が本を落とすことはさほど珍しくないのだが、歴史書を落とすことは本当に珍しい。そして帝国研究会に関する資料はこれが初めてだろうか。ヒョウタン人が隠し持っている秘密がかなり乗っているだろう。

因みにこれらの資料は依頼とはなにも関係はない。私の趣味の範囲である。(おい!)
私はこのような本を見つけては、日記に書き記して、世界を覆う闇の正体について考えているのだ。

私は本を手に取り、すぐにページを開いた。

「目次...」
「3ページ...本書概要、7ページ...ヒョウタン帝国の外交...」

そして私が個人的に調査している『プレイバイトン』と『世界を覆う闇』に関する記述がありそうな項を探した。
すると、なにやらそれに該当するような項目を見つけた。

「220ページ、連木都レンムードーに関する近代史 と その周辺諸国」

連木都レンムードーは、かつてプレイバイトンの周辺にあったとされる隣の世界の一つ。かつてプレイバイトンを支配していた国とどこかの資料に書いていた。もしかするとここにプレイバイトンに関することが書かれているかもしれない。

私は興奮して本を持ちながら身震いしていた。

「おっと...」

私は興奮してるとまともに情報が得られないので、少し落ち着いた後、そのページに書いてある内容をざっと眺めた。
すると見開いたページの右下の方に、プレイバイトンに関係しそうな記述を見つけた。

そこにはこう書かれていた。

『今から1020年前、宇宙で大規模な戦争が行われた。その際我々は連木都合衆国レンムードーがっしゅうこくに宣戦布告を行い自国領として併合したが、そのうち合衆国を構成していた近方の10ヵ国は屈服したものの、合衆国を構成していた遠方の20数ヵ国は大規模に抵抗運動を起こしその後100年間続いたカオスな世界で我々の攻撃に屈することはなかった。だがその抵抗運動はやがて更に遠方にあった大球帝国という国に飲み込まれ、民族全体が虐殺されるに至った。その後大球帝国は崩壊し、再びヒョウタン帝国は自国領としての併合を試みたのだが、ゴビィー系の国家によって失敗に終わっている。

ただその一方でヒョウタン帝国は、南緑樹みなみるしゅ北緑樹きたるしゅ膨樹ぱんじゅの3つの領地は自国領として完全に統治が完了した。特に最近では反乱が起こることは非常に少なく最後に起こった反乱は800年前とされている。』

----------------


どうやら、今の状況が作られたのはおよそ約1000年前で、宇宙で大規模な戦争が行われたらしい。この"連木都合衆国レンムードーがっしゅうこく"と呼ばれる国はどうやら、連邦制の国家だったらしく内部に数十か国の国を擁していたらしいことが記述からうかがえる。特に中盤に書かれていたゴビィー族とは悪魔の民族と呼ばれていて、生まれつき戦闘民族として育てられているらしい。かつての連木都合衆国レンムードーがっしゅうこくを擁護している理由は不明だが、隣の世界では現在も紛争は続いているようだ。

「はぁ~(吐息)。なんでもっと踏み込んだ内容がないんだよ...」

もっと踏み込んだ記述を期待していた私はため息をついた。というのもこれらの内容は既に探偵だった母親から聞かされていたことであったのだ。どうせならプレイバイトンの正体とかの記述が欲しかった。隣の世界のお話は余り興味はない。

がっかりしながら少し目を閉じた後、ページをめくった。
すると、ページの左下の方に面白い文献があった。

『つい数年前まで、かの国は山羊 光やぎ ひかるという宇宙全体に影響力を持つような人物がいたが故にヒョウタン帝国は、連木都レンムードーを奪還するための作戦を行うことが出来なかったが、彼はある日突然消息を立ち、後日かの国から死亡したとの声明があった。

我々は再びかの国から連木都レンムードーを奪還するチャンスを得た。彼らにこれ以上我々の地域で"レンブット"を名乗らせてはいけない。』

と。

どうやら以前子供の頃に読んだ ”らいじんさま”に登場する山羊 光やぎ ひかるという人物は実在するようだ。本当に存在したのだとしたら、絵本で読んだ通り、反乱した人たちを自らの演説だけで鎮めたのは本当なのだろうか?100を超える異世界に渡り、その世界で多くの人を救ったのも本当なのだろうか?

私は非常に気になる。ただの物語だと思っていたのだが、それが本当に行われていたのだとしたらとても興味深いし、とてもロマンチックなものである。


私は更に情報を得るために本に読み入ろうとしていたが、外から足音らしきなにか聞こえてくる。

カン...カン...カン...カン

どうやらヒョウタン人の巡回兵が回ってきたようだ。会話が聞こえてくる。

巡回兵1「おい。あの店の中で休もうぜ。」
巡回兵2「はぁ?お前まだ10分しか巡回してないんだぞ?もう休むのか?」
巡回兵1「なにいってんだ。サボるんだよ。こんな平和な街、巡回してどうすんだよ。」
巡回兵2「確かにな。そうするか。」

まずい。間違えなくここに近づいてきている。私は急いで今読んでる本を元の状態に戻しすぐに店の中を見渡して、なにかこの状況に対して有効なものはないか探した。
すると店の奥には階段があった。
ひょっとするとこの階段から上に抜け出すことが出来るかもしれない。

私はそう思い、静かに階段を上がっていった。どうやら上は生活スペースだったらしく、ベランダがついていた。ベランダから地上までの距離は3mほど。上手く着地すれば、怪我はしないだろう。
私は不安ながらも、ヒョウタン帝国軍人が店のドアが開けた瞬間にベランダを経由して外へ降りた。

巡回兵1「なんか音がしなかったか?」
巡回兵2「気のせいだろ。たぶん金具かなんかが落ちたんだろ。」

私は部屋の中で大声で会話している巡回兵の会話を聞いてそっと肩を撫で下ろした後、音を立てずにその場を離れた。

酒場の奥には私が知らない道が続いていた。
自分の身分上の問題で、これより北は帝国軍人のみしか入れない道なのだが、きっとこの先にまだ情報があると思い更に進むことにした。
その前に、この貴重な情報を隠れながら日記に記述しておこうと思い、休める場所はないかと少しあたりを見渡すと、大き目の岩場があった。
そこには隠れるにはちょうどいいくらいの大きさの穴があり、私はそこで少し休むことにした。

私はわすがに出っ張っている岩の部分に腰を掛け、日記帳を取り出した。

私「日記にさっきのことを書き加えないと。」


--1月5日(水)--

ヒョウタン帝国軍人が良く出入りする店には、案の定誰かが落としていった、例の帝国研究会の資料が置いてあった。そこには、悪魔の民族であるゴビィー族の成り立ちについて書いてあった。特に山羊 光に関する記述は面白いものであった。が、残念だったのはプレイバイトンについては特に明記してなかったことだ。
それでも今日得られた情報は非常に有意義なものだし、帝国研究会の資料が落ちていたこと自体とても幸運なだった。

--日記 終わり--


私「家に帰ってからでいいかな。さっき見た資料についてまとめるのは。」

私は一度隠れ家に帰ろうかと思ったが、日記を描いているうちに、さっきたまたまあった帝国研究会の資料を見たときの高揚感と、新たな情報が出てくるのではないかという期待感が抑えられず、そのまま情報の探索を続けることにした。

もう一度道に出て、10分程歩いていると少し暗めの林に出くわした。
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