全てを諦めた公爵令息の開き直り

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第5章

171話 尊い

「はぅ~最っ高……っ!」
「うん。マジ最高……」
「…………最悪。」
「シリル様、お美しいです…っ」

巫子達二人は感嘆の溜息をつき。
僕は真逆の反応を示し、実に負のオーラを漂わせたが。
テオは巫子達と同じく、うっとりした顔で見て来る。

……勘弁してくれ。
一体、何の罰ゲームだよ。

僕は大鏡に映る自分の、有り得ない姿に茫然とするしかなかった。
その僕の後ろから、額の汗を拭う仕草をして、レイラは満面の笑みを見せる。

「はー!頑張りました!我ながら会心の出来…っ!!」

巫子達と一緒になって喜ぶレイラと違い、ミストラルは憐れむ様な視線を僕に向けて来て。

「シリル様も大変ですね。」

……と。

僕はと言えば、げんなりした顔で再度鏡に映る自身を見やった。

短い筈の銀色の髪は、付け髪を付けられて三つ編みのハーフアップにされ、煌びやかな髪飾りを付けられて。
残りの垂らした髪は、丹念に櫛を通された。
顔はほんの少しの白粉と頬紅、唇には淡い色だか口紅まで塗られた。

そして、着せられたのが華やかなドレスで。
淡い薄水色を基調とした、ふんわりとした印象のシュミーズドレスだ。
最初、女性が着けるコルセットを男の僕にも着付けようとされて、締め殺す気か!と本気で怒ったら。
カレンとレイラから実に残念そうな顔をされながら、コルセット無しで着られるこのドレスを寄越されたという訳だ。

心底嫌な顔をして振り向いたのに。
鏡越しでなく正面から向かい合った巫子達二人は、一瞬固まったが、それから更にテンションがおかしくなってしまった。

「はわわ…シルヴィアたん…まじシルヴィアたんだぁ…!尊い…尊過ぎる!!」
「また意味の分からん事を……。おい、カイト!お前のこの残念な姉君をどうにかしてくれ。」
「会ってみたかったシルヴィアちゃんがここに…!ちょっと待って、マジ尊みが過ぎる。」
「カイト、お前もか。」

手が付けられず、明後日の方向を向く僕などお構いなしに。
短い裾のスカートと背中に小さな羽を付けた奇抜な衣装を着たカレンと、真ん中にコミカルな髑髏の刺繍が施された三角帽子を被った海賊を思わせる衣装を纏ったカイトの二人に挟まれて、僕は両側からキャーキャー黄色い歓声を受けていた。
……本当にうるさい。

「はぁ……まさかこんな格好をさせられる羽目になるとは。」
「もう本当にお美しいです…。」
「テオまで勘弁してくれ。」
「本当に良いんですか、シリル様。会場へのエスコートが俺なんかで。」

学院へ向かう馬車の中でもまだキャーキャーうるさい巫子達二人を無視し、まだ未練がましく文句をぼやいている僕に、テオは半分ぼーっとしながら問うて来たが。

「……頼むよ。二人のこの反応を見てると、なんか身の危険を感じるから。」

うんざりした顔で答える僕に、テオは苦笑している。
僕はひと月前の自分の愚かさを思い出しながら、深い溜息をついた。

殿下に自分の褒美を願い出たカレンは、あれからずっと準備に奔走していた。
王宮でのパーティーは嫌がる癖に、自分が企画したパーティーには並々ならぬ気合を入れていた。
時々、王太子や学院の教師などにも協力を仰いでいる姿も目にしたが。
僕が手伝おうかと一応声を掛けると。

「シリルはいいの!ビックリさせたいから、楽しみに待ってて♡」

と、凄い勢いに圧されて、僕はおずおずと了解した。
それが……いけなかったな。
どうせカレンの事だから、皆でどんちゃん騒ぎ出来る様なものを企画しているのかなぁ?と思ったが、関わらなかった僕は、あまり深く追求しなかった。

ま、準備頑張って。
と、他人事の様に言っていたのだが。

先日、全校生徒を集めた大広間でカレンから。
救世の巫女として、この学院の生徒達への日頃の感謝と礼を軽く述べ、この度、国王陛下と王太子殿下からのお許しがあり、無礼講の仮装パーティーを行う旨を大々的に発表していた。
その堂々たる態度だけで、本当に凄い度胸だなぁ~と感心していたが。

誰がどんな仮装をするのか、くじを引く様に言われ……。
僕は“高貴な令嬢”と書かれた紙を引いてしまい。
それを目にした途端、しばらく固まってしまった僕に対して、主催者のカレンは滅茶苦茶嬉々とした顔をしていたから。

(絶対不正してるだろ、コレ。)

僕はそう確信した。

本来なら学院の中には入る事を許されていないテオだったが。

「テオさんだってめっちゃ功労者だもん!殿下にお願いして、特別に参加OKもぎ取ったの♪」

テンションが高いままカレンはそう言って、有無を言わさずテオもこのパーティーに参加させる事になった。

本当にやりたい放題やっているな、カレンは。
しかし、主催者のカレンだけでなく、カイトも女装した僕と目を合わせては、最高…と馬鹿みたいに呟いている。
頭のネジがどっかに飛んで行ったんだろう。
いっそ嗤ってくれた方が、どれだけ気が楽な事か。

テオ、お前だけが頼りなんだ。
しっかり僕をエスコートしてくれよ。

僕は不安しかないパーティー会場へ乗り込んだ。
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