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続編2 手放してしまった公爵令息はもう一度恋をする
70話 皆の優しさ
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殿下やサフィル達は、仮屋敷の方で引き続き過ごす様だ。
僕は実家でゆっくり過ごす事にしたが、巫子達のおかげでのんびり出来る筈も無く。
「今度は王都メルシアンの街に遊びに行こう!」
「皆、覚えてくれてるかなぁ?忘れられてたらショックだぁー。」
「懐かしいわぁ~。昔よく行ってたお店も寄っていい?あの店まだあるかしら。」
楽しそうに笑う巫子二人に、シルヴィアも笑っていた。
数日前の食事会で、宴もたけなわになった頃にロレンツォ殿下から言われて、思い出した。
もうすぐ、ユリウス王太子殿下とクリスティーナ・オースティン侯爵令嬢との婚姻式なのだと。
そうだったと思い出すと同時にハッと気付いたのが、シルヴィアの事だ。
彼女の前世は夢という幻想だったとはいえ、確かに生きた記憶を有している。
その彼女の婚約者で、大切に想い、愛していたであろうユリウス殿下が…他の女性と婚姻する。
その現実に、双子の妹を目の前にして……今更ながらに気が付いた。
『そっか。殿下もようやく婚姻なさるのね……良かった。』
一瞬表情を歪めたが、直ぐに切り替えた彼女は。
後で僕や巫子達に心配されても、苦笑しながら。
『気にしないで。もう大丈夫だから。……私はもう、本当はこの世界の人間じゃないもの。よく分かってるから。おめでたいじゃない、殿下も遂に結婚かぁ~。幸せになれるといいわね。』
気丈に笑う彼女を気遣い、後でカレンが寄り添ってくれている姿を目にして。
翌日には、本当にもう大丈夫!とキッパリ口にしたシルヴィアを気にしつつも、それ以上は無理に尋ねなかった。
街へ出向くと、国を挙げての婚姻式という事で、皆いつも以上に忙しくしていたけれど、懐かしい巫子様達がまた来て下さった!と行けば大歓迎されていた。
久々に出向いた馴染みの孤児院では、懐かしい面々に歓迎されて、互いの成長を喜び合っていた巫子達の笑顔を見て、僕とシルヴィアは互いに微笑み合った。
そんなある日、巫子達の再来が耳に入ったのだろうか、王宮から呼び出しがあり、共に参内する事となった。
かなり広めの応接室に通された僕らは最初首を傾げたが。
「シリル。」
「サフィル!ロレンツォ殿下、ソフィア様も。なんだ、殿下達も呼ばれていたのですか。」
「えぇ。それがやっとこちらにお越しになられたのですよ。」
そう、僕に答えてくれたサフィルが、僕らの後ろの扉に視線を向けると、また開いて。
入室して来たのは、ヴァレンティーノ王太子殿下夫妻だった。
「ヴァレンティーノ殿下!」
「あぁ、クレイン卿!良かった…記憶が戻ったんだな。」
僕の顔を目にした夫妻は、明らかに顔を綻ばせて僕の回復を喜んで下さった。
サフィル達だけでなく、ヴァレンティーノ殿下方にも多大なご心配とご配慮を頂いていたのだ。
「本当に良かったです、クレイン卿。」
「ベアトリーチェ王太子妃殿下も……ありがとうございます。」
「クレイン卿。戻ったら、父上や妹達にもその元気な顔を見せてやってくれ。きっと喜ぶ。」
「えぇ、必ずそう致します。」
以前の様に和気あいあいと話す姿に、横のサフィルは優しい目で見守ってくれて、その視線に気付き、僕はちょっと照れながらも微笑んだ。
少し離れて同じく見守ってくれていた巫子達は、ホッとした顔で呟いていた。
「本当に良かったね、シリル。」
「うん。」
小声で囁き合う巫子達の姿に気付いたヴァレンティーノ殿下は、パッと顔を上げると、そちらへ歩み寄った。
「巫子殿!シルヴィア嬢も。またこちらに来て下さったのですね。」
「王太子様。はい。シリルのピンチだ!って、シルヴィアに言われて…なんとか。」
「でも、今回も俺らは役に立たなかったみたいで、お恥ずかしいです。」
楽し気に笑みを向けて下さる王太子殿下に、カレンとカイトは苦笑したが。
「そんな事ないよ。あの中毒症状を治してくれたのは二人が救済の術を施してくれたからじゃないか。あれが治らなかったら、ずっと僕は不調のまま、前向きに記憶を取り戻したいって思えなかっただろうから。」
「シリル……。」
「僕を心配して、わざわざ異世界からまた来てくれて、感謝してる。ありがとう、カイト、カレン。」
素直に、心からの感謝を述べる僕に、二人は嬉しそうに笑ってくれた。
そして、二人の後ろに佇むシルヴィアにも。
「そしてなにより僕の危機を察知して、来てくれたシルヴィアも。ありがとう。」
「……いいのよ。本当に良かった。お兄様!」
涙を潤ませて僕の胸に飛び込んで来たシルヴィアを、優しく抱き留めた。
そうして、皆の優しさと思いやりを噛みしめていた所に、彼らはやって来た。
「この度はようこそお越し下さった。」
懐かしい、声音が部屋に響く。
目を見開いてその声を辿ると。
扉の前に立っていたのは。
ユリウス王太子殿下とオースティン侯爵令嬢だった。
僕は実家でゆっくり過ごす事にしたが、巫子達のおかげでのんびり出来る筈も無く。
「今度は王都メルシアンの街に遊びに行こう!」
「皆、覚えてくれてるかなぁ?忘れられてたらショックだぁー。」
「懐かしいわぁ~。昔よく行ってたお店も寄っていい?あの店まだあるかしら。」
楽しそうに笑う巫子二人に、シルヴィアも笑っていた。
数日前の食事会で、宴もたけなわになった頃にロレンツォ殿下から言われて、思い出した。
もうすぐ、ユリウス王太子殿下とクリスティーナ・オースティン侯爵令嬢との婚姻式なのだと。
そうだったと思い出すと同時にハッと気付いたのが、シルヴィアの事だ。
彼女の前世は夢という幻想だったとはいえ、確かに生きた記憶を有している。
その彼女の婚約者で、大切に想い、愛していたであろうユリウス殿下が…他の女性と婚姻する。
その現実に、双子の妹を目の前にして……今更ながらに気が付いた。
『そっか。殿下もようやく婚姻なさるのね……良かった。』
一瞬表情を歪めたが、直ぐに切り替えた彼女は。
後で僕や巫子達に心配されても、苦笑しながら。
『気にしないで。もう大丈夫だから。……私はもう、本当はこの世界の人間じゃないもの。よく分かってるから。おめでたいじゃない、殿下も遂に結婚かぁ~。幸せになれるといいわね。』
気丈に笑う彼女を気遣い、後でカレンが寄り添ってくれている姿を目にして。
翌日には、本当にもう大丈夫!とキッパリ口にしたシルヴィアを気にしつつも、それ以上は無理に尋ねなかった。
街へ出向くと、国を挙げての婚姻式という事で、皆いつも以上に忙しくしていたけれど、懐かしい巫子様達がまた来て下さった!と行けば大歓迎されていた。
久々に出向いた馴染みの孤児院では、懐かしい面々に歓迎されて、互いの成長を喜び合っていた巫子達の笑顔を見て、僕とシルヴィアは互いに微笑み合った。
そんなある日、巫子達の再来が耳に入ったのだろうか、王宮から呼び出しがあり、共に参内する事となった。
かなり広めの応接室に通された僕らは最初首を傾げたが。
「シリル。」
「サフィル!ロレンツォ殿下、ソフィア様も。なんだ、殿下達も呼ばれていたのですか。」
「えぇ。それがやっとこちらにお越しになられたのですよ。」
そう、僕に答えてくれたサフィルが、僕らの後ろの扉に視線を向けると、また開いて。
入室して来たのは、ヴァレンティーノ王太子殿下夫妻だった。
「ヴァレンティーノ殿下!」
「あぁ、クレイン卿!良かった…記憶が戻ったんだな。」
僕の顔を目にした夫妻は、明らかに顔を綻ばせて僕の回復を喜んで下さった。
サフィル達だけでなく、ヴァレンティーノ殿下方にも多大なご心配とご配慮を頂いていたのだ。
「本当に良かったです、クレイン卿。」
「ベアトリーチェ王太子妃殿下も……ありがとうございます。」
「クレイン卿。戻ったら、父上や妹達にもその元気な顔を見せてやってくれ。きっと喜ぶ。」
「えぇ、必ずそう致します。」
以前の様に和気あいあいと話す姿に、横のサフィルは優しい目で見守ってくれて、その視線に気付き、僕はちょっと照れながらも微笑んだ。
少し離れて同じく見守ってくれていた巫子達は、ホッとした顔で呟いていた。
「本当に良かったね、シリル。」
「うん。」
小声で囁き合う巫子達の姿に気付いたヴァレンティーノ殿下は、パッと顔を上げると、そちらへ歩み寄った。
「巫子殿!シルヴィア嬢も。またこちらに来て下さったのですね。」
「王太子様。はい。シリルのピンチだ!って、シルヴィアに言われて…なんとか。」
「でも、今回も俺らは役に立たなかったみたいで、お恥ずかしいです。」
楽し気に笑みを向けて下さる王太子殿下に、カレンとカイトは苦笑したが。
「そんな事ないよ。あの中毒症状を治してくれたのは二人が救済の術を施してくれたからじゃないか。あれが治らなかったら、ずっと僕は不調のまま、前向きに記憶を取り戻したいって思えなかっただろうから。」
「シリル……。」
「僕を心配して、わざわざ異世界からまた来てくれて、感謝してる。ありがとう、カイト、カレン。」
素直に、心からの感謝を述べる僕に、二人は嬉しそうに笑ってくれた。
そして、二人の後ろに佇むシルヴィアにも。
「そしてなにより僕の危機を察知して、来てくれたシルヴィアも。ありがとう。」
「……いいのよ。本当に良かった。お兄様!」
涙を潤ませて僕の胸に飛び込んで来たシルヴィアを、優しく抱き留めた。
そうして、皆の優しさと思いやりを噛みしめていた所に、彼らはやって来た。
「この度はようこそお越し下さった。」
懐かしい、声音が部屋に響く。
目を見開いてその声を辿ると。
扉の前に立っていたのは。
ユリウス王太子殿下とオースティン侯爵令嬢だった。
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