始まりは最悪でも幸せとは出会えるものです

夢々(むむ)

文字の大きさ
21 / 110
第1章 迷々の森

18.妖狼くん○化しました!

しおりを挟む
本日の2話目です(^^♪

────────────────



あれから、自衛強化が始まってから一年…二年と過ぎていき、今では成人まであと二年な14歳となりました。

そんなリアは少々…いやだいぶ欲求不満だったりします。

なぜなら───




「この四年間、一切家事魔道具シリーズを増やせてない!」



そう、自衛強化にロド兄に巻き込まれてお料理研究することになったり、ティア兄がどこからか調達してきたお洋服を着せ替え人形のごとくたくさんさせられたり、と魔道具作りの時間が作れなかったのだ。

なので、いい加減魔道具作りを再開したい!

そう思っていたのだけれど……妖狼くんの体調が思わしくなく、心配で家事魔道具なんてあっちへポイッ状態になった。

だって最初の出会い時以来、怪我や病気とはご縁がなかったから……すごくすごく心配です。




「ロド兄、妖狼くんがぐったりしていて元気がないの…。

私、どうしたらいい?」



「んー?

どれどれ…………




あぁ、なるほどのぅ。

もう、そんな時期じゃったかー。

そうじゃよなー、リアだってあともう少しでそうじゃもんなぁ……。

ほんに時が過ぎるのが早いのぅ」




なんだか1人で納得しているが、こちらはさっぱりわからないので説明を早くしてほしい。

頭を撫で撫でする手を、どかしたかったが優しい眼差しでしてるもんだから、どうにも出来なかった…。

ロド兄の、あの眼差しってちょっとズルいよね。




「あの妖狼の状態は、身体が成人を迎えるのに準備しておるんじゃよ。

苦しそうに見えるかもしれんが、病気ではないのじゃ。

これは、どうしても通過しなくてはいけないことじゃから、我々は傍で騒がす静かに見守るのみじゃ」



「うん…私、見守る」











      *  *  *









妖狼くんが、ぐったりしているのを発見した朝だったが、もう辺りは暗く夜中になっていた。

いつもならもう夢の中なのだか、心配で目がさえていて眠気が全然ない。

ティア兄もさっきまで一緒にいたけど、眠気に負け部屋へと戻っていった。

今ここにいるのは、妖狼くんとロド兄とリアの三人だ。



「リアや、わしちょっとお手洗い行ってくる。

もし、変化が起きたら妖狼から目をそらすのじゃぞ。

それから、静かになったところでこれをそっと差し出すんじゃ。

差し出す時も決して見てはならんよ?

じゃ、行ってくるでのぅ」



「……見たら最後に何か起こるの?

そして、この袋に入ってるの何だろう?」



とても気になるが…………見ませんよ?

とは言いつつも、袋に目がいってしまいます。



この時リアは、袋に意識が向いていて妖狼くんの変化を始まったのを、見逃してしまっていた。



そしてどんなに見てもわからないので諦めて妖狼くんの方に目を向ければ────



襟足が少し長めの黒髪をした、精悍でいて整った顔つきの10代後半の男の人が、膝立ちしながら自分の両手の平を見ているところだった……………………服を一切身に付けていない状態で。



「あ、リア見てくれ…俺────」



「いっにゃあああ────!!」



……袋など気にせず妖狼くんを見ていれば、ロド兄の言い付け通りに従い目をそらし裸体を見ることもなかったのに、と後悔した。









      *  *  *








あの騒ぎから少し落ち着き、ロド兄とティア兄も同席し服を着た男の人と、食卓テーブルで改めて対面していた。

まだ少し目が泳いだり、頬がほんのり赤いことは指摘しないでくださいませ…。



「さぁーて、お約束なことをリアはしちゃったが……なるべく気にせんことじゃな。

それと、リアは少し鈍いところがあるから言っとくが…この男は〝妖狼くん〟じゃからな?」



……なんですと?

この男の人があの〝妖狼くん〟だって??

確かに妖狼くんがいた所にこの人がいたけど…。

目の雰囲気は妖狼くんっぽい、けど…。

いまいち信じていないのを感じ取って、男の人が椅子から立ち上がり椅子に座っているリアの横に移動してきた。




「リア、獣化するからよそ見せずちゃんと見ていてくれ」



言われたからにはちゃんと見てます…今度こそ。

じっと見つめていたら、男の人の姿がぼやけていき別の姿がハッキリとしてきた。




「本当に…妖狼くんだったんだね」




久々に異世界あるあるだぁー…とか思っちゃった。








      *  *  *







再び人化した妖狼くんに、真名ではない名前『アヴィルト』を教えてもらいました。

今、彼は初めて人化した疲れもあり休んでいて、ティア兄も眠気がぶり返したようで部屋へと戻っていった。



「妖狼くんって、人になれるようになる種族だったんだねー…。

だから、昔からロド兄は妖…じゃなかったアヴィとお風呂に一緒に入るのだめって言ってたんだね」



「そうじゃよ。

というか、リアも知っていたはずなんじゃが…妖精族狼種は成人すると人化すると種族図鑑に書いてあるのを読んで、覚えていると思っておったんじゃが?」



「ああ!

妖狼くんは妖精族狼種…レアだった!



あ~…レアだっていうの忘れてすっかり違う種族だと思いこんでたやー…」



「ほんにリアはうっかりさんだのぅ。

ホッホッホッ」



「あー…実際にうっかりで違うと思い込んでたから言い返せない~。

あうー…」



この日は恥ずかしいやら裸体のショックから、なかなか寝付けずベットの上でゴロゴロし続けた。


















『ロドクス、リアのうっかりをわかっていてあえて言わなかったわね』



『うん、ワザと、言わ、なかった』



『リア…がんば…』



次の日、リア大好きな精霊たちがロドクスにささやかないたずらを仕掛け、これからも気づかずにいるリアの代わりにほんのちょっとだけ復讐を果たしたのだった。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

姉が美人だから?

碧井 汐桜香
ファンタジー
姉は美しく優秀で王太子妃に内定した。 そんなシーファの元に、第二王子からの婚約の申し込みが届いて?

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ハイエルフの幼女に転生しました。

レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは 神様に転生させてもらって新しい世界で たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく 死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。 ゆっくり書いて行きます。 感想も待っています。 はげみになります。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

処理中です...