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他には何も要らないから

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やっと会えたけど、此処では待つ人がいなくなった場合、すぐに生まれ変わらないといけない。
待つ人がいないのに留まると、魂が消滅してしまう。
葉月が来てくれたから、生まれ変わる手続きをしに行くことになった。

「また、優雨と離れちゃうのか」

「別に寂しくないでしょ?」

「寂しいよ。もう離れたくない」

俺もだよ。離れたら、素直になれない俺より、優しくて素直で可愛い人と一緒になっちゃうかもしれないのに。
離れたくないよ。

「俺は別に寂しくなんか」

「寂しいですよね。また会えるか心配だし」

手続きの職員がいきなりそう言った。

「はぁ!?」

「実は此処の職員、心が読めるんです。それにしても本当に言ってることと思ってること逆ですね」

何それ、聞いてない!恥ず過ぎる!

「強がりも行き過ぎると葉月様が可哀想ですよ」

分かってるよ。でも、本当に思ってることが言えない。
葉月を前にするとどうもダメだ。

「大丈夫だよ。優雨、分かってるから」

「本当にいい人と出会えましたね。優雨様、葉月様は本当にそう思っています。思ってることを素直に言ってる人は珍しいですし、優雨様のように強がり過ぎてしまう方を愛してくれる人なんて、葉月様くらいですよ」

「僕以外にも、優雨の魅力に気づいちゃう人はたくさんいますよ。だから、僕を選んでくれて本当幸せです」

「盲目にも程がありますよ」

本当に盲目だよ。俺を一生愛してくれるなんて葉月しかいないって思う。好きさえ言えない俺でも、ずっと一緒いてくれるなんて、相当、盲目だよ。
俺も言えないけど。

「次はもっと長く一緒にいれると良いですね」

来世では好きって絶対に言う。
だからね、来世も好きでいてね。
我儘かもしれないけど、絶対に言うから。

「絶対に優雨のこと好きになるから、来世もさ僕のこと見つけてね」

「見つけられるか分かんないよ」

「そしたら、僕が見つけるよ」

「素直じゃなくても良い?」

「うん」

「きっと、葉月と同じ言葉返せないよ。また言えないかもしれないよ」

「そんなのいらないよ。側にいてくれるだけで幸せなんだよ」

「葉月のこと置いてっちゃうかも」

「そしたら、また来世で一緒にいてくれるでしょ」

何でそんなに俺を信じてくれるの?
どうしてそんなに好きでいてくれるの?

「そんなの分からないよ。葉月が別の人を好きになっちゃうことだってあるのに」

俺なんていつ愛想を尽かされてもおかしくない。
生きていた時だって、キスされても顔を背けたりしたし、他もしてもらうばかりで何もしてあげられなかった。

「優雨以外好きになれないよ」

本当にそうだったらいいのに。

「そろそろ出発の時間です。悔いのない来世を送ってくださいね」

覚えて無くてもきっとまた葉月を好きになる。
だから、神様、来世でも葉月に出会わせてください。
葉月以外他には何も要らないから。
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