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6 本当のこと
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家に帰った杏奈は、シャワーを浴びてから身支度を整えようと鏡の前に立った。
きっと彼のことだから、またドレスコードが必要なお店に行きそうな気がする。だが今は服の心配だけでなく、キスマークを隠す必要もあった。
悩みに悩み、リボンタイがついたパフスリーブのシフォンブラウスとくすみブルーのややタイトなレーススカートを選んだ。
これなら体を隠せるし、隙を見せない女にも見えるはず。
その時に高臣の言葉がふと頭を過ぎる。
『心配なら着替え一式とメイク道具を持ってきた方がいいかもね』
昨夜彼に与えられた熱を思い出し、頬が赤くなるのと同時に悔しさが込み上げて唇を噛み締める。
私がまた流されると思っているのかしら。昨日はたまたまそうなってしまったけど、今日は絶対に食事を終えたら家に帰る。もう流されたりしないんだから。
紗理奈と話したことで、少し冷静になって物事を捉えられるようになった。自分自身がこの展開に納得出来ていないのに、心を開くには早すぎる。
大丈夫。ご飯を食べて話をするだけ。食べ終えた後にレストランのドアを開けて外に出たら、猛ダッシュで駅に向かおう--そう自分に言い聞かせながらメイクを済ませると、スマホを手に取り画面を開いた。指でスクロールさせ、表示された高臣の連絡先をしばらく見つめる。
この名前が連絡先に入っているだけでも困惑するのに、今から由利高臣にメッセージを送って迎えに来てもらうだなんて、悪い夢でも見ているようだ。
杏奈は意を決して、『準備が出来ました』とメッセージを打ち込んでから、躊躇いがちに送信ボタンを押す。
するとすぐに既読がつき、『今から向かう。十分くらいで着くと思う』と返事が届く。
それを見た瞬間、急に緊張感に襲われた。それは今までの怖さや嫌悪感とは違い、キュンと胸が苦しくなるような感覚。
杏奈は大きく深呼吸をすると、荷物を持って家を出た。
きっと彼のことだから、またドレスコードが必要なお店に行きそうな気がする。だが今は服の心配だけでなく、キスマークを隠す必要もあった。
悩みに悩み、リボンタイがついたパフスリーブのシフォンブラウスとくすみブルーのややタイトなレーススカートを選んだ。
これなら体を隠せるし、隙を見せない女にも見えるはず。
その時に高臣の言葉がふと頭を過ぎる。
『心配なら着替え一式とメイク道具を持ってきた方がいいかもね』
昨夜彼に与えられた熱を思い出し、頬が赤くなるのと同時に悔しさが込み上げて唇を噛み締める。
私がまた流されると思っているのかしら。昨日はたまたまそうなってしまったけど、今日は絶対に食事を終えたら家に帰る。もう流されたりしないんだから。
紗理奈と話したことで、少し冷静になって物事を捉えられるようになった。自分自身がこの展開に納得出来ていないのに、心を開くには早すぎる。
大丈夫。ご飯を食べて話をするだけ。食べ終えた後にレストランのドアを開けて外に出たら、猛ダッシュで駅に向かおう--そう自分に言い聞かせながらメイクを済ませると、スマホを手に取り画面を開いた。指でスクロールさせ、表示された高臣の連絡先をしばらく見つめる。
この名前が連絡先に入っているだけでも困惑するのに、今から由利高臣にメッセージを送って迎えに来てもらうだなんて、悪い夢でも見ているようだ。
杏奈は意を決して、『準備が出来ました』とメッセージを打ち込んでから、躊躇いがちに送信ボタンを押す。
するとすぐに既読がつき、『今から向かう。十分くらいで着くと思う』と返事が届く。
それを見た瞬間、急に緊張感に襲われた。それは今までの怖さや嫌悪感とは違い、キュンと胸が苦しくなるような感覚。
杏奈は大きく深呼吸をすると、荷物を持って家を出た。
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