Lost at sea〜不器用御曹司の密かな蜜愛〜

白山小梅

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5 同行〜残された一週間〜

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 浴室に入った六花はあることに気付いて肩を落とした。下着も替えの服もない上に、ガウンすら持たずにシャワーを浴びようとしていたのだ。

 このドレスは萌音さんに借りたものだし、キレイな状態で返さなければならない。この後も着るなんて出来ない。さてどうしたものか……。

 とりあえずガウンだけでも取ってこようかしら……そう思った時だった。扉がノックされる。

「な、何か用?」
「ちょっと開けてくれないか?」

 さっきまであんなことがあったのに、浴室のドアを開けろですって? とはいえ閉じこもるわけにもいかず、渋々扉を開けた。

「これ」

 宗吾は手に持っていたものを六花に差し出す。ホテルのガウンの他に、見覚えのある物が彼の手の中に見られた。それた彼の部屋にいる時に六花が使っていた下着類だった。

 六花は腕を組むと、不審気に目を細めて宗吾を見やる。

「……なんで私の下着があるの?」
「えっ、だってないだろ?」
「そうじゃなくて、なんで未だに持っているのかってこと!」

 その問いかけに、宗吾はバツが悪そうに目を逸らすと下を向く。何か言い訳を考えているのか、腰に手を当て黙り込む。

「……たまたま残ってた」

 六花は片手で頭を押さえ、大きなため息をつく。

 たまたま残っていたことは甘んじて受け入れたとして、何故今日持っているのよーーそう聞きたかったが、明らかに挙動がおかしな彼を見てると力が抜けてしまう。疲れがどっと押し寄せ、もうどうでも良くなってきた。

「わかったわ。もうこれ以上追求しないから、ガウンと下着をくれる?」
「あぁ、もちろん」
「一応聞いておくけど、私以外の女が付けたりしてないわよね?」
「それは断じてない」
「それならいいわ」
「それにちゃんと洗濯して、袋に入れて保管してたぞ」
「……わざわざありがとう」

 浴室の扉を閉めかけた六花は、自分の言葉が妙な誤解を生んでしまう気がして、慌てて宗吾を呼び止める。

「あのね! 誰かが付けてたら気持ち悪いと思っただけだから! ヤキモチとかじゃないから!」

 必死な様子の六花に、宗吾は始めキョトンとしていたものの、急に吹き出したかと思うと大きな声で笑い出した。

「そんなふうに思うわけないだろ!」
「そ、それなら良いんだけど」
「あはは! 六花は本当に面白すぎる。俺にはそんな相手、六花以外にいないから」
「……わかったわ」
「シャワーで申し訳ないけど、ゆっくり浴びて。明日の温泉で、今日の分の疲れを癒して」

 六花は頷くと、自分の早とちりだったことに気付いて、困惑しながら扉を閉めた。

 シャワーのお湯を出し、浴槽の淵に腰を下ろす。確かに今日の疲れは癒えないだろう。

 久しぶりに会ったからというのもあるけど、なかなかペースが掴めない。こんな感じで一週間も保つのかしら……。

 ドレスを汚さないように脱ぎ、下着も取り去る。どうなるかわからないから、とりあえず洗っておこう。そうして彼が持っていた自分の下着を見て、やはり不思議な感覚になる。

 普通いなくなった女の下着をずっと持ってたりする? 怖い想像をしかけて、慌てて頭から追い出す。いやいや、さすがにそれはないと思いたい。それにしたって、まるで今日こうなることがわかっていたかのような準備の良さよね……。

 シャワーのお湯は温かく六花を包み込み、さっき宗吾が触れた場所は六花の意思に反して熱を帯びている。心と体の奥の方が甘くキュンと疼くのを感じた。

 相変わらず魅力的だった……それに私を煽るのが上手なところも変わってない。もう性欲なんてなくなったと思っていたのに、宗吾はいとも簡単に私のスイッチを押してしまう。それは初めて体を重ねた日も、再会した日も同様だった。

 六花は頭を横に振り、唇をギュッと結ぶ。そんなに気になるなら、たとえ愛がなくたって契約結婚を受け入れたっていいじゃない。

 頭がごちゃごちゃ。もうすでにこんなにも気持ちが揺らいでる。

 ここまで意地を張ろうとするのは、やはり"アサカさん"が気になるから? それとも娘を受け入れてもらえないかもしれない不安からーー?
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