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第15話 お前が言うなっ
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三時間後、俺たちは村民館に集まった。
フサエとヨシコが準備してくれたのか、ささやかながらもご馳走が並んでいる。
旅館の宴会場の様な感じだ。座布団が四つ用意してあり、それぞれの前に食事の乗った小さいテーブルが置かれている。
ランジェは既にいるな。
座布団に座ってくつろいでいる。
「よっ」と声をかけランジェの横に座る。
ふと壁に立てかけている大剣に目が行く。
こっちに倒れてこないだろうな……
心配で仕方がない。
そのうちヨシコとフサエが「これで最後だっぺ」と料理を持ってきて、テーブルに置いてくれた。
そしてヨシコが座り、続いてフサエも座った。
「それでは」
とフサエが話し始めた。
「まずはヨースケ、ランジェさん。ヒュドラを倒してくれて本当にありがとう。改めてお礼を言わせて」
「俺は何もしてないよ」
「いやヨースケがあれだけ弱らせたおかげだよ。僕は止めをさしただけさ」
「あの時のヨースケカッコよかっただ~」
「そうそう『ほかほかーーー』ってね」
「やめてくれよぉ~主任」
「ヨースケとヨシコさんお似合いですよ」
「やぁだぁ~おら人妻だっぺ~」
あはは。
うふふ。
おほほ。
みんなわかっている。本題に入るのが怖いのだ。
サッカーゴールは目の前にあるのに、ひたすらパスを繋げて誰かがシュートするのを待っている。
「で、話って何だっぺ? 主任」
ヨシコ、ナイスシュート!!
「工場を閉鎖するわ」
おふぅ。オウンゴールだった。
「あくまで一旦閉鎖よ。工場長はしばらく安静にしてなきゃいけないし、工場もとても稼働できる状態じゃないしね。ヨシコさん達社員やパートの方は、閉鎖中もある程度の保証を考えてはいるけど、冒険者のヨースケは契約終了とさせて頂きたいの」
仕方ないだろう。本来なら社員やパートの保証も厳しいはずだ。
もともと俺は期間限定で雇われた身だしな。俺は快く頷いた。
「本当にごめんなさいね。これは今日までのお給金。ちょっと色付けといたから」
「やりっ! ありがとうございます」
俺は満面の笑みで受け取った。
最初は日当で貰ってたが、生活が安定してからは月給制にしていたのだ。
なかなかの厚みの給料袋である。
「ヨシコさんもしばらくは自宅待機だけどいいかしら」
「ありがとうございますだ~。なんでも手伝うから遠慮せんで声かけてくれっぺよ」
フサエとヨシコは手を取り合っている。
俺はと言うと、テーブルの上の料理に手を付けている。
この村では当たり前のペク芋料理の数々だ。
何気にペク芋は高級食材なので、知る人が見たら泣いて喜ぶだろう。
ペク芋の煮っころがしをはじめ、焼きペク芋、スイートペクト、ペクモンブラン、ペク芋パイ…………
うむ。甘いのばっかりで胸やけがしてきた。まぁ煮っころがし以外の料理は俺が開発したのだが。
ランジェは大喜びで食べている。
「なにこれ。おいしーい。」
こいつマジで女性なのではと疑ってしまう。
「それにしても何でヒュドラが村に来たのかしら」
「それに関しては推測ですが……」
ランジェが話し始める。
レーベルのギルドでヒュドラ討伐の依頼を受け、目撃情報の多発していた場所に向かったがヒュドラはいなかった事。
ヒュドラは冬眠前には、主食が肉類から栄養が豊富な芋類へと切り替わる習性があるという事。
森の中は至る所、土が掘り返されたような跡があった事。
そしてそれはヒュドラの生息地域にまで広く及んでいた事。
そうか。ヒュドラは俺たちがあいつの生息地域内のペク芋をとり尽した為に、冬眠に向けて十分な栄養を蓄える事が出来なかったんだ。それで必死に匂いを辿ってペクトロ村、工場に辿り着いたんだ。
しん、とする一同。
「俺のせいだ」
俺は調子に乗って、工場の生産量をどんどん増やしていった。
ペク芋は無限に有るかの様に勘違いしていたんだ。
でもそうじゃなかった。
ペク芋をどんどん採取して、それが周りにどんな影響を与えるのかなんて微塵も考えていなかった。
結果、ヒュドラを村に招き入れ、工場を半壊させ、工場長にけがを負わせてしまったのだ。
「あなたはよくやってくれたわ」
「んだんだ」
ランジェは何も言わず俺の事を優しく見つめている。
俺は何も返事を返す事が出来ないでいた。
ヒュドラは偶然村に辿り着き、偶然工場に侵入したと思っていた。
それが俺のせいだったなんて……
事の重大さに気づき、罪の意識に飲み込まれそうになっていた。
「誰のせいでもないっぺよ」
「ヒュドラからみんなを守ったのはヨースケよ」
いかん。みんなに余計迷惑をかけている。
ここは嘘でも元気を出さなければ。
落ち込むのは一人の時にしよう。
いひひ。とひきつった笑顔を作る。
だめだ。うまく笑えない。
そんな俺をみたランジェが
「あははははっ! ひどい顔っ!」
大げさに笑い声をあげた。
つられてみんなも笑いだす。
「ぷっ。本当ね」
「それじゃあ、おらの旦那にはできないっぺ~」
えへへへと俺もつられて笑いだす。
ありがとうみんな。
本当にいいやつばかりだ。
おかげでほんの少しだけ元気が出てきたよ。
「よしっ。くよくよしても仕方がないな。元気出していこうぜっ!」
俺がそう言うと
「お前が言うなっ」
みんなから総ツッコミを受けるのであった。
フサエとヨシコが準備してくれたのか、ささやかながらもご馳走が並んでいる。
旅館の宴会場の様な感じだ。座布団が四つ用意してあり、それぞれの前に食事の乗った小さいテーブルが置かれている。
ランジェは既にいるな。
座布団に座ってくつろいでいる。
「よっ」と声をかけランジェの横に座る。
ふと壁に立てかけている大剣に目が行く。
こっちに倒れてこないだろうな……
心配で仕方がない。
そのうちヨシコとフサエが「これで最後だっぺ」と料理を持ってきて、テーブルに置いてくれた。
そしてヨシコが座り、続いてフサエも座った。
「それでは」
とフサエが話し始めた。
「まずはヨースケ、ランジェさん。ヒュドラを倒してくれて本当にありがとう。改めてお礼を言わせて」
「俺は何もしてないよ」
「いやヨースケがあれだけ弱らせたおかげだよ。僕は止めをさしただけさ」
「あの時のヨースケカッコよかっただ~」
「そうそう『ほかほかーーー』ってね」
「やめてくれよぉ~主任」
「ヨースケとヨシコさんお似合いですよ」
「やぁだぁ~おら人妻だっぺ~」
あはは。
うふふ。
おほほ。
みんなわかっている。本題に入るのが怖いのだ。
サッカーゴールは目の前にあるのに、ひたすらパスを繋げて誰かがシュートするのを待っている。
「で、話って何だっぺ? 主任」
ヨシコ、ナイスシュート!!
「工場を閉鎖するわ」
おふぅ。オウンゴールだった。
「あくまで一旦閉鎖よ。工場長はしばらく安静にしてなきゃいけないし、工場もとても稼働できる状態じゃないしね。ヨシコさん達社員やパートの方は、閉鎖中もある程度の保証を考えてはいるけど、冒険者のヨースケは契約終了とさせて頂きたいの」
仕方ないだろう。本来なら社員やパートの保証も厳しいはずだ。
もともと俺は期間限定で雇われた身だしな。俺は快く頷いた。
「本当にごめんなさいね。これは今日までのお給金。ちょっと色付けといたから」
「やりっ! ありがとうございます」
俺は満面の笑みで受け取った。
最初は日当で貰ってたが、生活が安定してからは月給制にしていたのだ。
なかなかの厚みの給料袋である。
「ヨシコさんもしばらくは自宅待機だけどいいかしら」
「ありがとうございますだ~。なんでも手伝うから遠慮せんで声かけてくれっぺよ」
フサエとヨシコは手を取り合っている。
俺はと言うと、テーブルの上の料理に手を付けている。
この村では当たり前のペク芋料理の数々だ。
何気にペク芋は高級食材なので、知る人が見たら泣いて喜ぶだろう。
ペク芋の煮っころがしをはじめ、焼きペク芋、スイートペクト、ペクモンブラン、ペク芋パイ…………
うむ。甘いのばっかりで胸やけがしてきた。まぁ煮っころがし以外の料理は俺が開発したのだが。
ランジェは大喜びで食べている。
「なにこれ。おいしーい。」
こいつマジで女性なのではと疑ってしまう。
「それにしても何でヒュドラが村に来たのかしら」
「それに関しては推測ですが……」
ランジェが話し始める。
レーベルのギルドでヒュドラ討伐の依頼を受け、目撃情報の多発していた場所に向かったがヒュドラはいなかった事。
ヒュドラは冬眠前には、主食が肉類から栄養が豊富な芋類へと切り替わる習性があるという事。
森の中は至る所、土が掘り返されたような跡があった事。
そしてそれはヒュドラの生息地域にまで広く及んでいた事。
そうか。ヒュドラは俺たちがあいつの生息地域内のペク芋をとり尽した為に、冬眠に向けて十分な栄養を蓄える事が出来なかったんだ。それで必死に匂いを辿ってペクトロ村、工場に辿り着いたんだ。
しん、とする一同。
「俺のせいだ」
俺は調子に乗って、工場の生産量をどんどん増やしていった。
ペク芋は無限に有るかの様に勘違いしていたんだ。
でもそうじゃなかった。
ペク芋をどんどん採取して、それが周りにどんな影響を与えるのかなんて微塵も考えていなかった。
結果、ヒュドラを村に招き入れ、工場を半壊させ、工場長にけがを負わせてしまったのだ。
「あなたはよくやってくれたわ」
「んだんだ」
ランジェは何も言わず俺の事を優しく見つめている。
俺は何も返事を返す事が出来ないでいた。
ヒュドラは偶然村に辿り着き、偶然工場に侵入したと思っていた。
それが俺のせいだったなんて……
事の重大さに気づき、罪の意識に飲み込まれそうになっていた。
「誰のせいでもないっぺよ」
「ヒュドラからみんなを守ったのはヨースケよ」
いかん。みんなに余計迷惑をかけている。
ここは嘘でも元気を出さなければ。
落ち込むのは一人の時にしよう。
いひひ。とひきつった笑顔を作る。
だめだ。うまく笑えない。
そんな俺をみたランジェが
「あははははっ! ひどい顔っ!」
大げさに笑い声をあげた。
つられてみんなも笑いだす。
「ぷっ。本当ね」
「それじゃあ、おらの旦那にはできないっぺ~」
えへへへと俺もつられて笑いだす。
ありがとうみんな。
本当にいいやつばかりだ。
おかげでほんの少しだけ元気が出てきたよ。
「よしっ。くよくよしても仕方がないな。元気出していこうぜっ!」
俺がそう言うと
「お前が言うなっ」
みんなから総ツッコミを受けるのであった。
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