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第18話 皇と皇座の破片
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リアとフランの親子喧嘩というか、言い争いが一段落着いた後、俺達はリアに連れられ自身の城の自室へと招かれていた。
豪華絢爛と言って良いほど豪勢な部屋だったが、決して下品ではない洗練された作りの部屋に瞬間移動で案内された俺達は、今までの経緯や俺を招いた目的等、色々と聞く為に同じテーブルに着いていた。
テーブルの上には、三人分の飲み物が用意され、凰華やラゴウはテーブルの脇でのんびりしている。
「さて、何から話そうか……」
そう言って、飲んでいたティーカップを置くリア。
「……先ずは、あのダンジョンから説明しろ。何で俺をあんな所に放り込んだ?」
「アキラの事だから、察しは付いているのだろう?」
「それでも、リアの口から説明を聞きたい」
リアとフランの親子喧嘩というか、言い争いが一段落着いた後、俺達はリアに連れられ自身の城の自室へと招かれていた。
豪華絢爛と言って良いほど豪勢な部屋だったが、決して下品ではない洗練された作りの部屋に瞬間移動で案内された俺達は、今までの経緯や俺を招いた目的等、色々と聞く為に同じテーブルに着いていた。
テーブルの上には、三人分の飲み物が用意され、凰華やラゴウはテーブルの脇でのんびりしている。
「さて、何から話そうか……」
そう言って、飲んでいたティーカップを置くリア。
「……先ずは、あのダンジョンから説明しろ。何で俺をあんな所に放り込んだ?」
「アキラの事だから、察しは付いているのだろう?」
「それでも、リアの口から説明を聞きたい」
「ふむ……では説明するが、あのダンジョンは元々は『皇核』を守る為に作った物だ」
「『皇核』……あの赤い結晶体の事だったか?」
「そうだ。あれはこの島の要であり、『皇』の力の根源でもある。まさに超重要な最上級アイテムだな」
「な!?」
そんなアイテムを気軽に説明するリア。大胆なんだか大雑把なんだか……。
「で? そんな重要アイテムと俺を接触させるのが目的だった、と?」
「ああ、アキラは私の皇座の破片だからな。アレに触れれば自ずと覚醒する。そうすれば、私が何者で、己が何者なのかもすぐに思い出す事になる」
だから、いきなりダンジョンのラストフロアに放り込んだという事か……。しかし――
「その割には、肝心の入り口が塞がっていたんだが?」
と、不信感を前面に押し出した表情で指摘する。
「その文句はラゴウに言え。入り口を壊したのはそやつだ」
「え?」
そう言って、足元にいるラゴウを見る。ラゴウは、頭に凰華を乗せた状態で我関せずと伏せて、目を閉じていた。
「あ~……ラゴウ、そうなのか?」
ラゴウに話し掛けると、伏せていた顔を上げて答える。
「ガウ?」
と、よく分かっていない返事が返ってくる。
「こう言っているが?」
「何も言っておらんだろうが!」
「お母様、言い訳ならもっと上手いものを用意するべきですよ?」
フランも呆れた声で指摘するが、それを聞いたリアは、立ち上がって自身の言い分を述べる。
「言い訳ではない! 私はラゴウに侵入者を階段下に行かせるなと命じてアキラを迎えに行った。それなのにそやつは変な知恵を働かせて階段周りの祭壇を壊して塞いでしまいおったんだ! 私とて焦った……アキラを飛ばして帰ってきた時には塞がれていたんだからな! 最初にあそこに逃げ込ませる筈だったというのに……」
そう言ってラゴウを睨みつける。どうやら嘘を言っている訳ではないらしい。
「ですが、それでしたら直接あの部屋に主様を転移させたら良かったのでは?」
フランが俺の疑問を代弁してくれる。もっともな意見だ。早々に俺を覚醒させたかったのなら、そうした方が手っ取り早い。
「あの部屋は、『皇核』を守る要の部屋だ。外敵の侵入を容易に許さぬ様、転移を阻害する結界を張ってある。よって私でも直接あの中への転移は出来ん」
なるほど、筋は通っている。
「だが、何の説明も無しに放り込む説明にはなってないぞ?」
そのせいで何度死に掛けたか……目的は理解したが、何の説明も無しに放り込む意図が分からん。だが――
「一から十まで説明せんと行動出来ん奴に、私の皇座の破片は務まらん」
と偉そうに言い放った。
「それにあまり手を貸しては、国民に示しが付かんしな」
そう言って、ティーカップを手に取って満たされている琥珀色の液体――紅茶を一口飲む。
「国民?」
城下町があったから、他にも人が住んでいる事は予想していたが、『国民』という事は……
「やはり、リアは『皇』なのか?」
「そうだ。私はこの島の主であり、そこに唯一ある国の皇だ。そして、その皇に付き従う皇座の破片は、国の示す模範であり誇りでもある。故に国民皆がアキラを認めねば意味がない」
「だから、ワザと過酷な状況に放り込んだと?」
「そうだ。何処かの獣のせいで、随分と予定が狂ったがな……」
そう言って恨みがましくラゴウを睨む。ラゴウは、相も変わらず顔を伏せて目を瞑っている。先程からこちらが喋る度に耳がピクピク動くので、話を聞いてはいる様だ。
まあ、どこまで理解しているかは怪しいが……。
「じゃあ、あのステータス表示はお前のサービスだった訳か?」
「お! 良く分かったな!」
俺の指摘に嬉しそうな顔をするリア。
「何か違和感があったんだよ、アレは……おまけにダンジョンから出たら見えなくなってるし……」
そう言ってフランの頭の上をチラリと見ると、あのステータス表示は消えていた。あのダンジョン内だけで見える仕様だったという訳だ。
「指標としては役に立っただろう? アレはダンジョン内に入った者にしか見えんから、手を貸していたと国民には分からんしな」
こ、小狡い事を考える……まあ、清廉潔白だけでは皇は成り立たないとは思うが……。
「後は、アキラの知る通りだ。お前は見事に窮地を潜り抜け、私の用意した物を全て手に入れて私の前に来た。この結果に文句を言う国民はいないだろう」
そう言って、「良くやった」とでも言う様な得意気な顔をする。
「(偉そうに……まあ、皇なら偉そうなのは当然か……)」
事情はあらかた分かったが、だからと言っていきなり全てを受け入れる事は難しい。
リアが皇として国を背負っているのは理解したが、いきなり俺もそれを背負う義理はないし、俺にも選ぶ権利はある筈だ。有無を言わさず、無理難題を背負わされる謂れはない。
……だが、そんな事を言ってもリアは引かないんだろうな~、と思う。
「……俺に皇座の破片にはならないという選択肢はないのか?」
そう念の為に聞くが……
「ない! お前の運命だ、諦めろ!」
そうキッパリと言われた。それを聞かされ、ガクッと首を落とす。それに追い打ちをかける様に、更なる宣言をされる。
「それにもう国民達には周知の事だ。今更引くに引けん!」
「ハァ!?」
そう驚きの声を上げた瞬間、外から物凄い歓声が鳴り響き、窓ガラスが震える。
「な、何だ!?」
「気になるなら、そのバルコニーの外を覗いてみる事だ」
そう言って、窓を指差す。その先には確かに窓からせり出したバルコニーがあった。
「……嫌な予感しかしないんだが?」
「いいから出ろ。私もついて行くから」
そう言ってリアは席から立ち、バルコニーがある窓の前まで行く。もう逃げ道はないらしい。
「ハァ~……分かったよ。フラン達はそこにいてくれ」
「はい、畏まりました。主様」
「クルッ」
「ガウッ」
俺は溜息を付いて席を立ち、2人と1匹に見送られながらリアの傍に移動する。
「さて、アキラ。この窓の先は、私とお前の『皇道』への第一歩となる。覚悟は良いな」
「覚悟も何も、拒否権はないんだろうが……」
正直、もはや完全に諦めの境地だ。どうやっても避けられそうもない。そう思って投げやり気味に言うと、リアは今まで見た事もない真剣な表情をして告げる。
「そうだ。皇と皇座の破片……そう生まれた以上、私とお前は同じ運命を歩く様に定められている。でも、これから歩く道は、その様な中途半端な気持ちで歩く事は許さん」
「…………」
そのあまりにも威厳に満ちた顔を見て、改めて思った。リアは間違いなく『皇』なのだと……。
そして、その後ろにとてもつもなく重い重責を背負っている……。
「アキラ……私は我儘な皇だ。お前の言う通り、傲慢で、自己中心的でズルい……未熟者だ。この先もお前に無茶な事ばかり要求すると思う。それでも、私と共に歩いて欲しい。この国を守るには、どうしても必要なのだ。皇の従者となる皇座の破片が……だから、私の手を取って欲しい」
そう言って、こちらに右手を差し出す。俺はその手を見つめ、そして気付く。その指先は、本当に少しだったが震えていた。
俺は目を閉じて上を仰ぎ見て心の中で呟く……「ごめん、父さん、母さん、爺ちゃん、祖母ちゃん……真菜……暫く家には帰れそうにない……」
そう呟いた後、俺はリアの前に跪いた。
「我が皇の御心のままに……」
リアの顔を見てそう告げ、その手を取った。
「うむ! 我と共に皇道を歩け! 神座晃!!」
リアは力強くそう宣言して、俺は手を引かれて立ち上がり、二人手を繋いで窓の前に立つ。
そして、窓が開け放たれ外に響いていた歓声が一気に体に押し寄せる。
二人は一度視線を合わせた後、その歓声の海へと二人で踏み出した。
こうして、俺とリアの長く険しい『皇道』を歩む道の、第一歩が始まった。
「ふむ……では説明するが、あのダンジョンは元々は『皇核』を守る為に作った物だ」
「『皇核』……あの赤い結晶体の事だったか?」
「そうだ。あれはこの島の要であり、『皇』の力の根源でもある。まさに超重要な最上級アイテムだな」
「な!?」
そんなアイテムを気軽に説明するリア。大胆なんだか大雑把なんだか……。
「で? そんな重要アイテムと俺を接触させるのが目的だった、と?」
「ああ、アキラは私の麒麟児だからな。アレに触れれば自ずと覚醒する。そうすれば、私が何者で、己が何者なのかもすぐに思い出す事になる」
だから、いきなりダンジョンのラストフロアに放り込んだという事か……。しかし――
「その割には、肝心の入り口が塞がっていたんだが?」
と、不信感を前面に押し出した表情で指摘する。
「その文句はラゴウに言え。入り口を壊したのはそやつだ」
「え?」
そう言って、足元にいるラゴウを見る。ラゴウは、頭に凰華を乗せた状態で我関せずと伏せて、目を閉じていた。
「あ~……ラゴウ、そうなのか?」
ラゴウに話し掛けると、伏せていた顔を上げて答える。
「ガウ?」
と、よく分かっていない返事が返ってくる。
「こう言っているが?」
「何も言っておらんだろうが!」
「お母様、言い訳ならもっと上手いものを用意するべきですよ?」
フランも呆れた声で指摘するが、それを聞いたリアは、立ち上がって自身の言い分を述べる。
「言い訳ではない! 私はラゴウに侵入者を階段下に行かせるなと命じてアキラを迎えに行った。それなのにそやつは変な知恵を働かせて階段周りの祭壇を壊して塞いでしまいおったんだ! 私とて焦った……アキラを飛ばして帰ってきた時には塞がれていたんだからな! 最初にあそこに逃げ込ませる筈だったというのに……」
そう言ってラゴウを睨みつける。どうやら嘘を言っている訳ではないらしい。
「ですが、それでしたら直接あの部屋に主様を転移させたら良かったのでは?」
フランが俺の疑問を代弁してくれる。もっともな意見だ。早々に俺を覚醒させたかったのなら、そうした方が手っ取り早い。
「あの部屋は、『皇核』を守る要の部屋だ。外敵の侵入を容易に許さぬ様、転移を阻害する結界を張ってある。よって私でも直接あの中への転移は出来ん」
なるほど、筋は通っている。
「だが、何の説明も無しに放り込む説明にはなってないぞ?」
そのせいで何度死に掛けたか……目的は理解したが、何の説明も無しに放り込む意図が分からん。だが――
「一から十まで説明せんと行動出来ん奴に、私の麒麟児は務まらん」
と偉そうに言い放った。
「それにあまり手を貸しては、国民に示しが付かんしな」
そう言って、ティーカップを手に取って満たされている琥珀色の液体――紅茶を一口飲む。
「国民?」
城下町があったから、他にも人が住んでいる事は予想していたが、『国民』という事は……
「やはり、リアは『皇』なのか?」
「そうだ。私はこの島の主であり、そこに唯一ある国の皇だ。そして、その皇に付き従う麒麟児は、国の示す模範であり誇りでもある。故に国民皆がアキラを認めねば意味がない」
「だから、ワザと過酷な状況に放り込んだと?」
「そうだ。何処かの獣のせいで、随分と予定が狂ったがな……」
そう言って恨みがましくラゴウを睨む。ラゴウは、相も変わらず顔を伏せて目を瞑っている。先程からこちらが喋る度に耳がピクピク動くので、話を聞いてはいる様だ。
まあ、どこまで理解しているかは怪しいが……。
「じゃあ、あのステータス表示はお前のサービスだった訳か?」
「お! 良く分かったな!」
俺の指摘に嬉しそうな顔をするリア。
「何か違和感があったんだよ、アレは……おまけにダンジョンから出たら見えなくなってるし……」
そう言ってフランの頭の上をチラリと見ると、あのステータス表示は消えていた。あのダンジョン内だけで見える仕様だったという訳だ。
「指標としては役に立っただろう? アレはダンジョン内に入った者にしか見えんから、手を貸していたと国民には分からんしな」
こ、小狡い事を考える……まあ、清廉潔白だけでは皇は成り立たないとは思うが……。
「後は、アキラの知る通りだ。お前は見事に窮地を潜り抜け、私の用意した物を全て手に入れて私の前に来た。この結果に文句を言う国民はいないだろう」
そう言って、「良くやった」とでも言う様な得意気な顔をする。
「(偉そうに……まあ、皇なら偉そうなのは当然か……)」
事情はあらかた分かったが、だからと言っていきなり全てを受け入れる事は難しい。
リアが皇として国を背負っているのは理解したが、いきなり俺もそれを背負う義理はないし、俺にも選ぶ権利はある筈だ。有無を言わさず、無理難題を背負わされる謂れはない。
……だが、そんな事を言ってもリアは引かないんだろうな~、と思う。
「……俺に麒麟児にはならないという選択肢はないのか?」
そう念の為に聞くが……
「ない! お前の運命だ、諦めろ!」
そうキッパリと言われた。それを聞かされ、ガクッと首を落とす。それに追い打ちをかける様に、更なる宣言をされる。
「それにもう国民達には周知の事だ。今更引くに引けん!」
「ハァ!?」
そう驚きの声を上げた瞬間、外から物凄い歓声が鳴り響き、窓ガラスが震える。
「な、何だ!?」
「気になるなら、そのバルコニーの外を覗いてみる事だ」
そう言って、窓を指差す。その先には確かに窓からせり出したバルコニーがあった。
「……嫌な予感しかしないんだが?」
「いいから出ろ。私もついて行くから」
そう言ってリアは席から立ち、バルコニーがある窓の前まで行く。もう逃げ道はないらしい。
「ハァ~……分かったよ。フラン達はそこにいてくれ」
「はい、畏まりました。主様」
「クルッ」
「ガウッ」
俺は溜息を付いて席を立ち、2人と1匹に見送られながらリアの傍に移動する。
「さて、アキラ。この窓の先は、私とお前の『皇道』への第一歩となる。覚悟は良いな」
「覚悟も何も、拒否権はないんだろうが……」
正直、もはや完全に諦めの境地だ。どうやっても避けられそうもない。そう思って投げやり気味に言うと、リアは今まで見た事もない真剣な表情をして告げる。
「そうだ。皇と麒麟児……そう生まれた以上、私とお前は同じ運命を歩く様に定められている。でも、これから歩く道は、その様な中途半端な気持ちで歩く事は許さん」
「…………」
そのあまりにも威厳に満ちた顔を見て、改めて思った。リアは間違いなく『皇』なのだと……。
そして、その後ろにとてもつもなく重い重責を背負っている……。
「アキラ……私は我儘な皇だ。お前の言う通り、傲慢で、自己中心的でズルい……未熟者だ。この先もお前に無茶な事ばかり要求すると思う。それでも、私と共に歩いて欲しい。この国を守るには、どうしても必要なのだ。皇の従者となる麒麟児が……だから、私の手を取って欲しい」
そう言って、こちらに右手を差し出す。俺はその手を見つめ、そして気付く。その指先は、本当に少しだったが震えていた。
俺は目を閉じて上を仰ぎ見て心の中で呟く……「ごめん、父さん、母さん、爺ちゃん、祖母ちゃん……真菜……暫く家には帰れそうにない……」
そう呟いた後、俺はリアの前に跪いた。
「我が皇の御心のままに……」
リアの顔を見てそう告げ、その手を取った。
「うむ! 我と共に皇道を歩け! 麟瞳晃!!」
リアは力強くそう宣言して、俺は手を引かれて立ち上がり、二人手を繋いで窓の前に立つ。
そして、窓が開け放たれ外に響いていた歓声が一気に体に押し寄せる。
二人は一度視線を合わせた後、その歓声の海へと二人で踏み出した。
こうして、俺とリアの長く険しい『皇道』を歩む道の、第一歩が始まった。
豪華絢爛と言って良いほど豪勢な部屋だったが、決して下品ではない洗練された作りの部屋に瞬間移動で案内された俺達は、今までの経緯や俺を招いた目的等、色々と聞く為に同じテーブルに着いていた。
テーブルの上には、三人分の飲み物が用意され、凰華やラゴウはテーブルの脇でのんびりしている。
「さて、何から話そうか……」
そう言って、飲んでいたティーカップを置くリア。
「……先ずは、あのダンジョンから説明しろ。何で俺をあんな所に放り込んだ?」
「アキラの事だから、察しは付いているのだろう?」
「それでも、リアの口から説明を聞きたい」
リアとフランの親子喧嘩というか、言い争いが一段落着いた後、俺達はリアに連れられ自身の城の自室へと招かれていた。
豪華絢爛と言って良いほど豪勢な部屋だったが、決して下品ではない洗練された作りの部屋に瞬間移動で案内された俺達は、今までの経緯や俺を招いた目的等、色々と聞く為に同じテーブルに着いていた。
テーブルの上には、三人分の飲み物が用意され、凰華やラゴウはテーブルの脇でのんびりしている。
「さて、何から話そうか……」
そう言って、飲んでいたティーカップを置くリア。
「……先ずは、あのダンジョンから説明しろ。何で俺をあんな所に放り込んだ?」
「アキラの事だから、察しは付いているのだろう?」
「それでも、リアの口から説明を聞きたい」
「ふむ……では説明するが、あのダンジョンは元々は『皇核』を守る為に作った物だ」
「『皇核』……あの赤い結晶体の事だったか?」
「そうだ。あれはこの島の要であり、『皇』の力の根源でもある。まさに超重要な最上級アイテムだな」
「な!?」
そんなアイテムを気軽に説明するリア。大胆なんだか大雑把なんだか……。
「で? そんな重要アイテムと俺を接触させるのが目的だった、と?」
「ああ、アキラは私の皇座の破片だからな。アレに触れれば自ずと覚醒する。そうすれば、私が何者で、己が何者なのかもすぐに思い出す事になる」
だから、いきなりダンジョンのラストフロアに放り込んだという事か……。しかし――
「その割には、肝心の入り口が塞がっていたんだが?」
と、不信感を前面に押し出した表情で指摘する。
「その文句はラゴウに言え。入り口を壊したのはそやつだ」
「え?」
そう言って、足元にいるラゴウを見る。ラゴウは、頭に凰華を乗せた状態で我関せずと伏せて、目を閉じていた。
「あ~……ラゴウ、そうなのか?」
ラゴウに話し掛けると、伏せていた顔を上げて答える。
「ガウ?」
と、よく分かっていない返事が返ってくる。
「こう言っているが?」
「何も言っておらんだろうが!」
「お母様、言い訳ならもっと上手いものを用意するべきですよ?」
フランも呆れた声で指摘するが、それを聞いたリアは、立ち上がって自身の言い分を述べる。
「言い訳ではない! 私はラゴウに侵入者を階段下に行かせるなと命じてアキラを迎えに行った。それなのにそやつは変な知恵を働かせて階段周りの祭壇を壊して塞いでしまいおったんだ! 私とて焦った……アキラを飛ばして帰ってきた時には塞がれていたんだからな! 最初にあそこに逃げ込ませる筈だったというのに……」
そう言ってラゴウを睨みつける。どうやら嘘を言っている訳ではないらしい。
「ですが、それでしたら直接あの部屋に主様を転移させたら良かったのでは?」
フランが俺の疑問を代弁してくれる。もっともな意見だ。早々に俺を覚醒させたかったのなら、そうした方が手っ取り早い。
「あの部屋は、『皇核』を守る要の部屋だ。外敵の侵入を容易に許さぬ様、転移を阻害する結界を張ってある。よって私でも直接あの中への転移は出来ん」
なるほど、筋は通っている。
「だが、何の説明も無しに放り込む説明にはなってないぞ?」
そのせいで何度死に掛けたか……目的は理解したが、何の説明も無しに放り込む意図が分からん。だが――
「一から十まで説明せんと行動出来ん奴に、私の皇座の破片は務まらん」
と偉そうに言い放った。
「それにあまり手を貸しては、国民に示しが付かんしな」
そう言って、ティーカップを手に取って満たされている琥珀色の液体――紅茶を一口飲む。
「国民?」
城下町があったから、他にも人が住んでいる事は予想していたが、『国民』という事は……
「やはり、リアは『皇』なのか?」
「そうだ。私はこの島の主であり、そこに唯一ある国の皇だ。そして、その皇に付き従う皇座の破片は、国の示す模範であり誇りでもある。故に国民皆がアキラを認めねば意味がない」
「だから、ワザと過酷な状況に放り込んだと?」
「そうだ。何処かの獣のせいで、随分と予定が狂ったがな……」
そう言って恨みがましくラゴウを睨む。ラゴウは、相も変わらず顔を伏せて目を瞑っている。先程からこちらが喋る度に耳がピクピク動くので、話を聞いてはいる様だ。
まあ、どこまで理解しているかは怪しいが……。
「じゃあ、あのステータス表示はお前のサービスだった訳か?」
「お! 良く分かったな!」
俺の指摘に嬉しそうな顔をするリア。
「何か違和感があったんだよ、アレは……おまけにダンジョンから出たら見えなくなってるし……」
そう言ってフランの頭の上をチラリと見ると、あのステータス表示は消えていた。あのダンジョン内だけで見える仕様だったという訳だ。
「指標としては役に立っただろう? アレはダンジョン内に入った者にしか見えんから、手を貸していたと国民には分からんしな」
こ、小狡い事を考える……まあ、清廉潔白だけでは皇は成り立たないとは思うが……。
「後は、アキラの知る通りだ。お前は見事に窮地を潜り抜け、私の用意した物を全て手に入れて私の前に来た。この結果に文句を言う国民はいないだろう」
そう言って、「良くやった」とでも言う様な得意気な顔をする。
「(偉そうに……まあ、皇なら偉そうなのは当然か……)」
事情はあらかた分かったが、だからと言っていきなり全てを受け入れる事は難しい。
リアが皇として国を背負っているのは理解したが、いきなり俺もそれを背負う義理はないし、俺にも選ぶ権利はある筈だ。有無を言わさず、無理難題を背負わされる謂れはない。
……だが、そんな事を言ってもリアは引かないんだろうな~、と思う。
「……俺に皇座の破片にはならないという選択肢はないのか?」
そう念の為に聞くが……
「ない! お前の運命だ、諦めろ!」
そうキッパリと言われた。それを聞かされ、ガクッと首を落とす。それに追い打ちをかける様に、更なる宣言をされる。
「それにもう国民達には周知の事だ。今更引くに引けん!」
「ハァ!?」
そう驚きの声を上げた瞬間、外から物凄い歓声が鳴り響き、窓ガラスが震える。
「な、何だ!?」
「気になるなら、そのバルコニーの外を覗いてみる事だ」
そう言って、窓を指差す。その先には確かに窓からせり出したバルコニーがあった。
「……嫌な予感しかしないんだが?」
「いいから出ろ。私もついて行くから」
そう言ってリアは席から立ち、バルコニーがある窓の前まで行く。もう逃げ道はないらしい。
「ハァ~……分かったよ。フラン達はそこにいてくれ」
「はい、畏まりました。主様」
「クルッ」
「ガウッ」
俺は溜息を付いて席を立ち、2人と1匹に見送られながらリアの傍に移動する。
「さて、アキラ。この窓の先は、私とお前の『皇道』への第一歩となる。覚悟は良いな」
「覚悟も何も、拒否権はないんだろうが……」
正直、もはや完全に諦めの境地だ。どうやっても避けられそうもない。そう思って投げやり気味に言うと、リアは今まで見た事もない真剣な表情をして告げる。
「そうだ。皇と皇座の破片……そう生まれた以上、私とお前は同じ運命を歩く様に定められている。でも、これから歩く道は、その様な中途半端な気持ちで歩く事は許さん」
「…………」
そのあまりにも威厳に満ちた顔を見て、改めて思った。リアは間違いなく『皇』なのだと……。
そして、その後ろにとてもつもなく重い重責を背負っている……。
「アキラ……私は我儘な皇だ。お前の言う通り、傲慢で、自己中心的でズルい……未熟者だ。この先もお前に無茶な事ばかり要求すると思う。それでも、私と共に歩いて欲しい。この国を守るには、どうしても必要なのだ。皇の従者となる皇座の破片が……だから、私の手を取って欲しい」
そう言って、こちらに右手を差し出す。俺はその手を見つめ、そして気付く。その指先は、本当に少しだったが震えていた。
俺は目を閉じて上を仰ぎ見て心の中で呟く……「ごめん、父さん、母さん、爺ちゃん、祖母ちゃん……真菜……暫く家には帰れそうにない……」
そう呟いた後、俺はリアの前に跪いた。
「我が皇の御心のままに……」
リアの顔を見てそう告げ、その手を取った。
「うむ! 我と共に皇道を歩け! 神座晃!!」
リアは力強くそう宣言して、俺は手を引かれて立ち上がり、二人手を繋いで窓の前に立つ。
そして、窓が開け放たれ外に響いていた歓声が一気に体に押し寄せる。
二人は一度視線を合わせた後、その歓声の海へと二人で踏み出した。
こうして、俺とリアの長く険しい『皇道』を歩む道の、第一歩が始まった。
「ふむ……では説明するが、あのダンジョンは元々は『皇核』を守る為に作った物だ」
「『皇核』……あの赤い結晶体の事だったか?」
「そうだ。あれはこの島の要であり、『皇』の力の根源でもある。まさに超重要な最上級アイテムだな」
「な!?」
そんなアイテムを気軽に説明するリア。大胆なんだか大雑把なんだか……。
「で? そんな重要アイテムと俺を接触させるのが目的だった、と?」
「ああ、アキラは私の麒麟児だからな。アレに触れれば自ずと覚醒する。そうすれば、私が何者で、己が何者なのかもすぐに思い出す事になる」
だから、いきなりダンジョンのラストフロアに放り込んだという事か……。しかし――
「その割には、肝心の入り口が塞がっていたんだが?」
と、不信感を前面に押し出した表情で指摘する。
「その文句はラゴウに言え。入り口を壊したのはそやつだ」
「え?」
そう言って、足元にいるラゴウを見る。ラゴウは、頭に凰華を乗せた状態で我関せずと伏せて、目を閉じていた。
「あ~……ラゴウ、そうなのか?」
ラゴウに話し掛けると、伏せていた顔を上げて答える。
「ガウ?」
と、よく分かっていない返事が返ってくる。
「こう言っているが?」
「何も言っておらんだろうが!」
「お母様、言い訳ならもっと上手いものを用意するべきですよ?」
フランも呆れた声で指摘するが、それを聞いたリアは、立ち上がって自身の言い分を述べる。
「言い訳ではない! 私はラゴウに侵入者を階段下に行かせるなと命じてアキラを迎えに行った。それなのにそやつは変な知恵を働かせて階段周りの祭壇を壊して塞いでしまいおったんだ! 私とて焦った……アキラを飛ばして帰ってきた時には塞がれていたんだからな! 最初にあそこに逃げ込ませる筈だったというのに……」
そう言ってラゴウを睨みつける。どうやら嘘を言っている訳ではないらしい。
「ですが、それでしたら直接あの部屋に主様を転移させたら良かったのでは?」
フランが俺の疑問を代弁してくれる。もっともな意見だ。早々に俺を覚醒させたかったのなら、そうした方が手っ取り早い。
「あの部屋は、『皇核』を守る要の部屋だ。外敵の侵入を容易に許さぬ様、転移を阻害する結界を張ってある。よって私でも直接あの中への転移は出来ん」
なるほど、筋は通っている。
「だが、何の説明も無しに放り込む説明にはなってないぞ?」
そのせいで何度死に掛けたか……目的は理解したが、何の説明も無しに放り込む意図が分からん。だが――
「一から十まで説明せんと行動出来ん奴に、私の麒麟児は務まらん」
と偉そうに言い放った。
「それにあまり手を貸しては、国民に示しが付かんしな」
そう言って、ティーカップを手に取って満たされている琥珀色の液体――紅茶を一口飲む。
「国民?」
城下町があったから、他にも人が住んでいる事は予想していたが、『国民』という事は……
「やはり、リアは『皇』なのか?」
「そうだ。私はこの島の主であり、そこに唯一ある国の皇だ。そして、その皇に付き従う麒麟児は、国の示す模範であり誇りでもある。故に国民皆がアキラを認めねば意味がない」
「だから、ワザと過酷な状況に放り込んだと?」
「そうだ。何処かの獣のせいで、随分と予定が狂ったがな……」
そう言って恨みがましくラゴウを睨む。ラゴウは、相も変わらず顔を伏せて目を瞑っている。先程からこちらが喋る度に耳がピクピク動くので、話を聞いてはいる様だ。
まあ、どこまで理解しているかは怪しいが……。
「じゃあ、あのステータス表示はお前のサービスだった訳か?」
「お! 良く分かったな!」
俺の指摘に嬉しそうな顔をするリア。
「何か違和感があったんだよ、アレは……おまけにダンジョンから出たら見えなくなってるし……」
そう言ってフランの頭の上をチラリと見ると、あのステータス表示は消えていた。あのダンジョン内だけで見える仕様だったという訳だ。
「指標としては役に立っただろう? アレはダンジョン内に入った者にしか見えんから、手を貸していたと国民には分からんしな」
こ、小狡い事を考える……まあ、清廉潔白だけでは皇は成り立たないとは思うが……。
「後は、アキラの知る通りだ。お前は見事に窮地を潜り抜け、私の用意した物を全て手に入れて私の前に来た。この結果に文句を言う国民はいないだろう」
そう言って、「良くやった」とでも言う様な得意気な顔をする。
「(偉そうに……まあ、皇なら偉そうなのは当然か……)」
事情はあらかた分かったが、だからと言っていきなり全てを受け入れる事は難しい。
リアが皇として国を背負っているのは理解したが、いきなり俺もそれを背負う義理はないし、俺にも選ぶ権利はある筈だ。有無を言わさず、無理難題を背負わされる謂れはない。
……だが、そんな事を言ってもリアは引かないんだろうな~、と思う。
「……俺に麒麟児にはならないという選択肢はないのか?」
そう念の為に聞くが……
「ない! お前の運命だ、諦めろ!」
そうキッパリと言われた。それを聞かされ、ガクッと首を落とす。それに追い打ちをかける様に、更なる宣言をされる。
「それにもう国民達には周知の事だ。今更引くに引けん!」
「ハァ!?」
そう驚きの声を上げた瞬間、外から物凄い歓声が鳴り響き、窓ガラスが震える。
「な、何だ!?」
「気になるなら、そのバルコニーの外を覗いてみる事だ」
そう言って、窓を指差す。その先には確かに窓からせり出したバルコニーがあった。
「……嫌な予感しかしないんだが?」
「いいから出ろ。私もついて行くから」
そう言ってリアは席から立ち、バルコニーがある窓の前まで行く。もう逃げ道はないらしい。
「ハァ~……分かったよ。フラン達はそこにいてくれ」
「はい、畏まりました。主様」
「クルッ」
「ガウッ」
俺は溜息を付いて席を立ち、2人と1匹に見送られながらリアの傍に移動する。
「さて、アキラ。この窓の先は、私とお前の『皇道』への第一歩となる。覚悟は良いな」
「覚悟も何も、拒否権はないんだろうが……」
正直、もはや完全に諦めの境地だ。どうやっても避けられそうもない。そう思って投げやり気味に言うと、リアは今まで見た事もない真剣な表情をして告げる。
「そうだ。皇と麒麟児……そう生まれた以上、私とお前は同じ運命を歩く様に定められている。でも、これから歩く道は、その様な中途半端な気持ちで歩く事は許さん」
「…………」
そのあまりにも威厳に満ちた顔を見て、改めて思った。リアは間違いなく『皇』なのだと……。
そして、その後ろにとてもつもなく重い重責を背負っている……。
「アキラ……私は我儘な皇だ。お前の言う通り、傲慢で、自己中心的でズルい……未熟者だ。この先もお前に無茶な事ばかり要求すると思う。それでも、私と共に歩いて欲しい。この国を守るには、どうしても必要なのだ。皇の従者となる麒麟児が……だから、私の手を取って欲しい」
そう言って、こちらに右手を差し出す。俺はその手を見つめ、そして気付く。その指先は、本当に少しだったが震えていた。
俺は目を閉じて上を仰ぎ見て心の中で呟く……「ごめん、父さん、母さん、爺ちゃん、祖母ちゃん……真菜……暫く家には帰れそうにない……」
そう呟いた後、俺はリアの前に跪いた。
「我が皇の御心のままに……」
リアの顔を見てそう告げ、その手を取った。
「うむ! 我と共に皇道を歩け! 麟瞳晃!!」
リアは力強くそう宣言して、俺は手を引かれて立ち上がり、二人手を繋いで窓の前に立つ。
そして、窓が開け放たれ外に響いていた歓声が一気に体に押し寄せる。
二人は一度視線を合わせた後、その歓声の海へと二人で踏み出した。
こうして、俺とリアの長く険しい『皇道』を歩む道の、第一歩が始まった。
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