平凡OL、突然 “魔王の花嫁” に選ばれる~悪役エリートを更生させて成り上がる方法~

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第七章 山岳の潜伏地へ

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 明け方、薄青い空が王城を包むころ、私たちは出発の準備を終えた。メンバーは魔王と私、そして護衛の兵数名と側近。最小限の隊編成で、山岳地帯へ向かう。
 荷馬車に乗り込み、出立する瞬間、城の門前では一部の兵士や侍女が心配そうに見送ってくれた。彼らの眼差しには「陛下、どうかご無事で……」という願いが宿っている。
 強硬派との直接交渉は、きわめて危険な賭けだ。それでも魔王は“無駄な戦火を広げたくない”一心で、この道を選んだのだ。
「優衣、しっかり掴まっていろ」
「はい、陛下」
 ガタガタと馬車が揺れ始める。車輪が石畳を離れ、やがて荒れた山道へと差しかかるころ、私は自然と顔を上げた。遠くに見える山々は灰色の岩肌を露わにし、ところどころに鬱蒼とした森が広がっている。
 先日、強硬派の連中がこの辺りに拠点を築き、兵をかき集めているとの情報があった。もし彼らが敵対行動を取るなら、こちらは少人数とはいえ魔王本人がいる。簡単にはやられないと思うが、最悪、戦闘は避けられないかもしれない。
 魔王の横で身を固くしていると、彼が低い声で話しかけてきた。
「……緊張しているのか」
「正直、はい。怖いです。でも、陛下も不安なんじゃないですか?」
「もちろんだ。相手がこちらを信用するはずもないからな。だが、俺が引かない以上、直接会うしかない」
 魔王の言葉は淡々としているが、その瞳には決意が宿っている。私は少しでも役に立ちたい一心で、胸の奥を固める。今こそ“社畜スキル”を発揮するとき——なんて言っても、実際には命の危険がつきまとうのだが、逃げるわけにはいかない。
 険しい山道を何時間も揺られた末、昼頃には拠点近くと思しき谷間にたどり着いた。岩壁がそびえ立つ狭い道を抜けると、少し開けた平地が広がっている。木々が生い茂り、奥まった場所には黒い岩肌が覗いていた。
 魔王の側近が地図を確認してから、隊の先頭で声をかける。
「陛下、ここから先は馬車では進めません。徒歩で向かうのが得策かと」
「わかった。馬車はこのあたりに留めて、兵の半数は待機させろ。念のため警戒を怠るな」
 魔王が指示を出し、私や数名の護衛が降り立つ。足元の土は湿り気を含んでいて、長旅の疲労が足に重くのしかかる。
 どうやら強硬派の“隠れ里”は、さらに奥の森を抜けた先にあるらしい。私たちは最低限の装備だけを持ち、深い森の中へと足を踏み入れた。
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