180 / 271
波状攻撃爆散
79
しおりを挟む移動って、こんなに大変なんだね。
清牙、よく、スーパーにあんなにホイホイ出没出来たもんだなと感心する。
まず、中心地から空港に移動するのに2時間とか、おかしいだろ。
こっちの空港は、中心地からの利便性を謳ってる空港なのに。
まあ、公共機関使えばねぇ。
だが現在、報道陣が昨日までの比じゃなく、うじゃうじゃなので、公共機関なんざ使える筈もなく。
車の乗り降りの度、待ち構えた報道陣の多さにびっくり。
どんだけ取材要員いるの?
それとも先回り?
あの交通渋滞無視して、どうやって移動してんの?
皆様ご苦労様です。
そんな、マスコミ各社の執拗な張り付き具合に、ミーってば、本気で、新人女優の中ではかなり人気が出てたんだなぁと、改めて認識。
そしてまた、姉ちゃんが、どっからどう見ても鈴鹿の母ちゃんだから、どこに行っても目立つのだ。
報道陣じゃなくても、あの会見見た人が結構いるらしく、姉ちゃん見てぎょっとする。
まあ、一目見てミーの血縁者の顔だからね。
間違っても、報道陣各社が狙ってるのは、一応芸能人な私ではなく、姉ちゃんです。
遅れて、私見て首捻って、ああ、叔母の女優の…となってる模様。
当然全く気付きもせず、女性スタッフだと思ってる人もいるのだろう。
全然、視線向きません。
そんな現実に溜息吐きながら、報道陣引き連れながらの、空港ラウンジに移動。
報道陣に囲まれながらだから、一応2便押さえていたのに、身動き取れずで間に合わず、前のに乗れず。
お金の無駄だよと思いつつ、慌てて搭乗。
だけどまた、目立つ訳よ。
昼過ぎから夜まで、鈴鹿の顔、出っ放し。
こっちでは中心地で18時過ぎ、地元新聞社ではあったけど、号外まで出たらしい。
ネットニュースになってた。
当然、その大元で瓜二つの姉ちゃんの存在が、目立つ目立つ。
何言っても聞き耳立てられてる状態でお喋りなんて出来る状況でもない。
姉ちゃんも、いつもにはない視線集中にぐったりしつつ、移動。
空港から空港移動しても、やっぱり待ち構える報道陣。
空港直結ホテルに移動したと見せかけて、また、どこから持って来たのか分からない車に乗り換えて移動。
やっと、マスコミ撒けるかと思いきや、なぜかすぐ気付かれる。
追い回されて、ホテル入ったの23時過ぎ。
姉ちゃんが何もいらない言うのを無理矢理、どこぞで調達してきたらしいカットフルーツ突っ込んで、交代でシャワーを浴びる。
その間、浩紀も健吾君も付きっ切り。
健吾君は電話で忙しそうだなと思っていたら、塩野君合流。
塩野君が姉ちゃんに挨拶するより先に、浩紀が塩野君へのなぜかの攻撃。
それを簡単に往なして転がして、塩野君が溜息。
「コレも、ですか?」
何、ソレ?
「ウチに今、鈴鹿さんに付いているのも、いきなり攻撃してきて、夏芽が転がしてました」
なにやってんの?
「浅見は、新しい護衛みたいなものだと言ってました。出本も、緊急事態だろうからと出社して来ました、けど」
「出本はマユラさんと拓斗に就く。鈴鹿について夏芽に転がされたのは那智だろう。今転がしたのは浩紀。こいつは楓さんに就く。あと一人、有道がいるが、ソレは希更に就く。と云うか、もう就いてる。浩紀と有道に那智は、基本就いている人間の言う事しか聞かない。邪魔なら、実力で排除しろ」
「了解」
え?
了解しちゃうの?
塩野君を見れば、塩野君が泣きそうな顔で私と姉ちゃんに向かって土下座。
「自分が至らなかったばかりに、希更ちゃんに…」
えっと、それ、ギナちゃんとのちゅーの事言ってる?
「それはもう解決って云うか、複雑怪奇に、裏で面倒臭いの進行中?」
今、希更はどうしてるのか…って?
まだ終わってないならギナちゃんの所だろうし、終わったんなら…どこだろう?
清牙のとこに運ぶと、駆郎君待ち構えてそうだし。
案外、また、ELseed様のトコに戻っていそうで怖い。
いや、違った。
玲央君達の所、ね。
「今、美凉華の護衛がどうのって? そっちこそ、どうなってんの?」
分からない事、結構あるよね。
怒涛の展開過ぎて、状況確認精査が、回ってない訳で。
健吾君に情報集中し過ぎて、こっちに迄回す余裕がないだけ、かもしれないけど。
「自分が出てくる序に、鈴鹿さんは清牙のマンションに移動させました。清牙とその護衛で浅見と、舞人が一緒にいます。美咲さんの所にいる拓斗には出本が。希更はマユラさんと一緒です」
ギナちゃんと一緒に、曲作るの夢中でこの騒ぎ、気が付いてないとか?
まあ、希更だとあり得る。
「健吾君。ミーに連絡とるよ」
「核心の話はしない様に」
はぁ。
良く分からんけど。
そのままLINE通話かけるが繋がらない。
なんでかねと思いつつ清牙にかければ即出た。
美凉華が。
『カエちゃん! ママは!?』
「今、ここにいる」
そのまま姉ちゃんにスマホを渡せば話し出す。
そして塩野君のスマホが鳴り、なぜか私に差し出された。
相手は舞人君。
「どったの?」
『無事だな』
あ、出たの、清牙だった。
「なんかややこしいんだけど?」
『美凉華のスマホに、ワーム仕掛けられてた』
はあ?
『舞人がなんかしたけど、今、専門がいないんで、大丈夫かどうか確証無い。だから電源切らせてた』
なある、と云うか…。
「そっちもなんかあった?」
『そら、マスコミからじゃんじゃん連絡来て、岡野さんが対応追われてたし、別所が駆郎捕まえて、美咲さんの所で拓斗の付けた新人と一緒に、監視してる。それなり、だな』
うん?
「マスコミ対応は分かるけど、駆郎君を実家で監禁する意味は?」
『逃がすと、希更探し回ってウザイ』
はあぁ。
駆郎君、なにやってんのかね?
「えっと、彼女がなんかやってて、そのお世話に翻弄されてるんじゃなかったけ?」
希更が可愛いのも事実なんだろうけどさ。
一応お付き合いって大前提もあるのに、彼女そっちのけ?
『希更の安全な姿見ないと、落ち着かないんだろ』
「つまり、イカレ女放置?」
『知らね』
ですよねぇ。
「それで、当の希更は?」
『行方不明』
「はあああ?」
『こっちにいる、ミーの護衛が言うには、オッサンが護衛と一緒に連れ回してるから、逆に安全だって言ってる』
「オッサンって、健吾君のお父さん?」
『ああ、会ったんだろ? 結構イカレてるが、まあ、希更は間違いなく安全だ』
清牙にイカレ呼ばわりされるオッサンに、何を安心すれば良いかは分からないが、まあ、健吾君のお父さんだし。
私が会った感じでも、悪人ではない。
間違いなく、女だけには、優しそう。
その範疇に希更が含まれる事はないが、子供を犯罪に巻き込む人ではない。
攻撃される子供を見捨てるような人には、見えなかったし。
常識は通用しなさそうだから、ちょっとした悪い事には、自ら率先して巻き込みそうだけど。
普通の大人は、世間一般で未成年がやるには顔を顰める事を、人前ではやらない。
やらせない。
だけど、世界的ロックスターだし。
当然、その辺の信頼は皆無。
その場合、あの人の自己責任なので知らない。
常識的な行動…それが出来るのか、存在するのかも怪しくて…まあ、何しても目立つだろう。
多分報道陣とかファンも注目。
だけどそれが、逆に隠れ蓑になる。
世間様も、あんな有名人と一緒にいる子供を不自然に思っても、こんな渦中の小娘関係者とは思うまい。
すぐに、希更の存在に気が付けるのはうちの関係者…牙くらいか?
だとしたら、鈴鹿の現状も含め、牙が余計な事言うとは考え難いし。
何より、あんな世界的有名人に何かしようって人間は、そうはいない筈だ。
騒ぎはしても、誰も近寄れない。
損害賠償も怖いが、世界的なファンの報復が更に怖い。
ヤクザ関連も尚、心配の必要がなくなる。
あんな有名人に、誰にも知られず秘密裏に近付ける訳も無ければ、暴力沙汰が簡単に遂行出来る相手でもない。
健吾君もその担当者に連絡を入れるって言っていたので、多分、何かあっても、そっちでもフォローしてくれるだろうし。
「ギナちゃんは?」
『そっちはまだ終わってないらしいが、オッサンが飽きて希更とマユラ連れてったって、こっちに連絡あった。概ね出来てるから、後は希更1人でもなんとか出来る筈。疲れた無理って、ギナが喚いてたけど』
ギナちゃんまで疲れさせる希更。
お前がもう、オバチャンには分かりません。
「ん? オッサンが飽きた?」
なんの、話?
『ギナのトコ、乗り込んできて、横から口挟んで引っ掻き回して、希更がキレて黙らせたけど、あんまもたなかったらしい。希更も面倒になって、言われるがまま食事に行くって連れ回されてる最中らしい』
なに、やってんの?
それって、どっちもどっちじゃね?
「って事は、ミーの事、希更は知らないまま?」
『だろうな。テレビもネットも、確認する余裕なんかなかったって、ギナ、キレてた』
「なんで、ギナちゃんがキレるの?」
『昨日の博人のラジオで、お前と仲が良いってなって、なんか聞かせろって、今、マスコミが、ギナも執拗に追い回してる。こっちに文句きた』
それはまた、ご愁傷様。
「じゃあ、永井君は結構大変かもね」
『知らね』
相変わらず、仲は良いのに、冷たいんだよね。
まあ、お互いに思うところがあるのは、理解出来るけど。
「美凉華は大丈夫そう?」
『泣いてたな』
まあ、泣くよね。
親が、やくざに金借りて、その金の取り立てにヤクザが事務所に来て?
まず、やくざに金を借りてるのがあり得ない。
美凉華の年齢なら、それがどんなに怖い事になるかは、ドラマなんかで見て知ってるし。
それとは別に、祖母ちゃんまで…が、だし。
あの内容は、真面目に聞けば、かなり酷い話だ。
好かれてないのは分かっていても、そこまで…思うのは当然だろ。
受けた心身負担は、相当。
婆父が馬鹿だったのはともかく、そこまで一気に、このタイミングで表に出るか?
絶対、なんかある。
なんかあるにしても…。
「なんか杜撰だよね。何が目的だろう?」
旦那の借金債権をあちらさんが、交友あるヤクザ使って買い取ったって…事、なんだろうけどさぁ。
美凉華に非が無いのは明らかな訳で、公にしてしまえば、美凉華に、手は出せない。
そんなのは、あっちだって分かっている筈だ。
隠れてコソコソ隠滅諮るんなら、脅して有り金徹底的に絞り取るとか、やくざに身売りの話もあるんだろうけど、美凉華が、バラエティほぼ無しの、ドラマ限定での、それなりにテレビ露出高い女優で、未成年だしな。
露見した事件を、秘密裏に隠滅させるのが、まず無理。
隠す必要性が全く…いや、親の犯罪を庇う的な、お涙頂戴の話?
無いとは言い切れないんだけど、ビジネス絡むのに情はいらんしね。
それもあったから、美凉華の事務所は早々に、記者会見開いて事実公表して、立ち位置明確にしている訳だし。
特に、こうなってしまっては注目の的。
暫くは接触なんて出来る筈もないのだから。
こうなる事は予測出来たと思うんだけど。
だからこそ、ヤクザが直接動くには、早い気がするんだよね。
寝かせて、美凉華が二十歳過ぎてから連絡してくるとかならともかく、今、このタイミングで大暴露ってのが…。
「アッチ?」
『知らね。健吾がなんか忙しそうに出て行ったから、何かしらあったんだろうけど、な』
やっぱ、裏工作失敗しそうになってた?
そして…にしても、なんか今日慌ただし過ぎ。
『今は、そこで怒ってんぞ』
「ああ、こっちは姉ちゃんが笑ってる」
多分、色々爆発して、婆様と父親の事喚いているのかも。
そんな喚く元気のある美凉華に、姉ちゃんも、少しはほっとしたのかな?
『ああ、こちでもやっと笑った。俺らも、ミーは悪くない言ったんだけど、納得しなくてな』
まあ、そうだろうね。
頭で自分の責任ではないとは思っていても、それで関係各所迷惑かけてる訳で、色々思う事は次から次と湧き上がってくる。
幾ら清牙に懐いているとはいっても、何がどうなってるのか、どうなるのか、今の美凉華では分からな過ぎて不安で、堪らなかっただろうし。
「健吾君も言ってくれれば、私が残ったのに」
『お前が矢面に立って謝っても、ミーの心証悪いまんまじゃん。あれが一番分かり易い』
「まあ、そうなんだけど。って、清牙まで、記者会見、見たの?」
『こっちも電話じゃんじゃん鳴って、俺らの携帯も鳴りっぱなで、アルバムやら音合わせどころじゃねぇし。まあ、する事ねえぇしでテレビつけたら、アレだろ』
「え? 清牙達も、なんも聞かされてなかったの?」
『健吾、相当急いで、なんかやって出てったからな。岡野さんも聞かされてなかったっぽい』
そらまあ、ご愁傷様。
岡野さん、ごめんなさい。
一番、ウチで矢面に立たされたの、事務所に詰めて仕事していた、岡野さんだよね?
今現在大忙し間違いない上に、本日は徹夜対応ではなかろうか?
「そしてなんで、ミーがそこに送り込まれるかな?」
『スマホのワームあるじゃん』
「ああ」
美凉華のスマホは、現場では、美凉華本人と御園さんと筧さんぐらいしか触らない。
でも、事務所だとどうなるだろう?
それも、今日は急遽、呼び出しの上のホテル待機。
記者会見準備もあり、スタッフはそれなりにいた筈だ。
美凉華は混乱しており、スタッフドタバタする中で、無意識に、スマホを放置した可能性が無いとは言えない。
それを、御園さんや筧さんが完全に管理出来ていたのかも…。
そうなると、セキタプロの中に、それを仕掛けた人間がいる可能性が、極めて高くなる訳で。
あっちの社長としても、本来の家族の元に行きたがる、精神不安定な未成年の美凉華を止める理由も無いしな。
『ここならお前がいると思ったのに、いねぇって、あっちも困ってたけど、乗り込んできたこっちの新人護衛が、ここの方が安全確保にはマシだって、あっちの事務所の奴ら追い払ってた。こいつ、完全に、ミーの安全確保とミーの意向優先だな。ミーも、ここなら、お前か希更が帰ってくるかもって、動きたがらなかったのを聞いたのもあったんだろ』
うわぁ、猶更申し訳ない。
「私だけでもそっち移動出来れば良いんだけど」
「ダメ」
浩紀、声は低いけど、尾てい骨には響かないんだよ。
背骨は震えるけど。
あんまり喋らないのもあるんだけど。
『おい、今の、誰だよ?』
「新しい私専属護衛」
『はあああ?』
「いや、この子もまあ、曲者で、私の云う事なら6割聞く感じ」
『すんげぇ、腹立つ』
いや、そこで不機嫌になられましても。
『清牙、マサさん達から、姐さんに連絡なかったか聞けって』
そこでかかる舞人君の言葉に?
「そう言えば、奴らはどこに?」
トント姿を見ない上に、連絡も来てない。
『健吾も連絡してるみたいだけど、捕まらねぇってよ』
「ゆっ君だけでなく、マー君迄?」
『らしいな』
珍しい。
あっちでも何かあった?
「ゆっ君はなんかしてるかもだけど、マー君は裏工作する性格じゃないんだけど」
『あの2人がなんかがあるとは、思えねぇ。危険もあり得ねぇ。多分、どっかの誰かになんか仕事押し付けられて、逃げらんねぇんだろ』
まあ、ゆっ君はともかく、マー君はそんな感じだと思われる。
ゆっ君は悪魔ではあるが、清牙と同じく好き嫌いがはっきりしているので、一度友好示した相手を裏切る事はまず無い。
裏切られたら基本千倍返しだし、裏切ってるっぽく見えて、引っ掻き回して遊んだ挙句に、助けるような事は、誰にも告げず勝手にやるけど。
味方じゃない賑やかしぐらいの認識で、丁度良いと思う。
『あ? なんか、ミーが代われって言ってる』
そう言って、話し相手交代。
スマホは塩野君に戻しました。
泣き笑いの姉ちゃんからスマホが戻ってくる。
『カエちゃん。ママっ、そば、いて、くれてぇ…あり、がと…』
ああ、もう、馬鹿娘が。
「自分の姉ちゃん助けるのに、アンタのお礼はいらない。けど、アンタがキッツい時、傍にいられなかった、ごめん」
『そんなん、イイっ。私、今、へいぎっ…』
ああ、もう。
「今日は無理でも『明日には合流する』だって」
清牙も皆も、私達の為に動いてくれてる。
だから、大丈夫。
『わだじ、良いから、ママ』
「分かってる」
『ぎざら』
「ああ、大丈夫。そっちには、世界のヒーローついてるから」
『あ゛あ、うん』
色々怖いよね。
でも、大丈夫。
「仕事くれた人、関係したところ、一杯迷惑かけたね。だけど、大丈夫。アンタもしばらく仕事無くなるかも…だけど、アンタが悪い訳じゃないって、皆分かってる。だから、次に仕事が来た時に、頑張れるように、今自分が出来る事やりな。いいチャンスじゃん。この機会に、アレ、出来るかもよ?」
『あ゛れ?』
「名刺、貰ったでしょうが」
『……うん?』
相変わらず、脳の記憶量が怪しい娘だ。
「剣太さんに連絡しとく?」
『え、だっで!』
「あっちと云うか、鍛錬だからね。別に咎められる覚えもないでしょ。謹慎中に自己啓発に自己鍛錬は、常識。健吾君にも相談しとくから、楽しみにしてなさい」
『うん! カエちゃん、大好きッ』
『おいっ』
偉く近い場所で声が聞こえたと思ったら、清牙の声が続く。
『寝た』
ああ、泣き疲れて精神限界か。
『寝かせてくる』
「清牙達も寝なよ」
『ああ、お前もな。お休み』
そう言って切れた通話。
そして、姉ちゃんはそのままソファに突っ伏していた。
「姉ちゃん、ベッドで寝なよ」
「私、自分が情けない」
泣いてはないが、顔は上げない。
声も、いつになく皺枯れている。
「別に、姉ちゃんがなんかした訳じゃないでしょうが」
「でも、止められなかった。あの人達がオカシイの分かってて、美凉華があんなに頑張ってるの邪魔して、迷惑掛けるだけ掛けて」
「邪魔してるのはあんたの元旦那とその母親。アンタの男の見る目が無かったのは確かだけど、やらかしたのは張本人で「でも、私は、見抜ける筈だった。あの人達を知ってたのに」」
本当にもう、どうしてそうなるか?
「糞親と、アンタのダメ亭主とその気色悪い母親は別物。見抜くも何も、それぞれがバレないように画策してるんだから、暴くのが、そもそも厳しいの。現状、最悪の事態ではないよ」
「でも、何一つ、悪くない美凉華をあんなに泣かせて、あんなに頑張ってるのに、頭下げさせて…。間違いなく、本当に、あの子の仕事関係で迷惑かけて…」
「御心配なく」
そこに掛かったのは健吾君の声。
「今回の騒動、鈴鹿と事務所には、同情の声しか上がってません」
そう言って見せてくれたPCの画面は、美凉華の出ていたCM、それもあの、ちょい前話していた厚切りポテチの会社広報からの、緊急声明文。
『今回当社で起用した女優の血縁者による詐欺、及び、暴力団との癒着の話が出ておりますが、それは彼女自身と直接関係するモノではなく、彼女には何の罪もないと、現段階では判断しております。起用した女優には一切罪が無く、問題も無い以上、当社のイメージが損なわれる事実もありません。CMは引き続き契約通り放送します。これからも、当社製品を宜しくお願い致します』
逸早く、美凉華を庇う様な声明に、泣きそうになる。
それも、鈴鹿が嬉しそうに話してたCMの会社、だからこそ、猶更。
「美凉華喜ぶよ。昨日、拓斗が、このCMで美凉華を覚えていたらしくて、美凉華もすげえ喜んでたから」
「そうですか。だから、清牙が…」
早速健吾君になんか言ったのか。
無駄に元気だよね。
自虐行為とも言えるんだけど。
「鈴鹿の事は、何も心配ありません。どこを見ても、鈴鹿を責める声はない。このような結果を出したご本人様達は叩かれまくってますが、鈴鹿への同情の言葉の多さに、契約各社が、鈴鹿を切るより、鈴鹿を守る方に、働いたようです」
そっか。
そうなってくれたのなら良かった。
「でもさぁ、アンチはどこにでも出るじゃない」
「それも、ご心配なく。すぐに、それどころじゃなくなります」
うわぁ、健吾君、笑みが黒い。
「あなた方も休んでください。こちらも正式記者会見します。楓さん、貴方には名演技期待します」
止めてくれ。
私にお涙頂戴の演技は出来ません。
そんなこんなで、本日は乗り切ったけれども、また明日はやってくるのです。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる