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さらなる追放2
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不安に駆られたマルガレーテが震える声で神官長に聞く。
すると神官長は、茫然としながらも答えてくれた。
「白は……白は未知の色です。生まれたての赤子の色。すぐに消えてしまう尊い命の一瞬の輝き。この国では成人でこの色を持つ者はおりません。白の魔術を持つものは……みな短命で、そして……魔術を持たない。一切魔術の記録がないのです」
魔術を持たない。
それはまさに、マルガレーテが認識していたことだった。
そしてそれが今、ルトリア王国で明らかになってしまったということでもあった。
無能。そんな言葉が頭に浮かんだ。
「白だと……? まさか、信じられない。この目で見ていなければ、とうてい信じられなかったであろう。しかし、それでは結婚なんて無理ではないか」
王妃が青い顔をして言った。
「どういうことだ! まさかレイテは白と知ってこの女を寄越したのか!? なぜだ!? どうりで詳細を報告してこないわけだ! 前代未聞だ!」
王子が叫んだ。
「魔力は多いようだが……残念だな」
王も言った。
怒りの形相で立ち上がった王子がつかつかとマルガレーテの前まで来て叫んだ。
「お前では私のお飾りの妃にさえもならぬ! よくも何も知らないような顔をして私と結婚しようとしたな! まさか我が国相手に隠し通せるともで思ったか! いくらお前がレイテの王女でも魔力が白では結婚などできぬ。婚約は無かったことにする。その指輪は今すぐ返してもらおう!」
そうして王子は乱暴に、マルガレーテの手から彼女つけていた唯一の装飾品だった指輪を抜き去った。
ただ渡されて指示通りにつけていた指輪だったが、どうやら婚約の印の指輪だったようだ。
「結婚する前にわかってよかったのう。私のかわいい王子が、まさかレイテごときにはめられようとするとは。忌々しいレイテ王め」
王妃様が憎々しげに言った。
その言葉を聞いてマルガレーテは婚約がなくなったことよりも何よりも、母国のためにとはるばるやってきたことの全てが水の泡になっていこうとしていることに、まるで足下から全てが崩れていくかのような恐怖を感じていた。
なんということだろう。私の存在は母国の役には立たなかった……。
むしろ戦争の引き金になろうとしている予感さえして、ただ身動きも出来ずにその場で固まっていた。
王子はマルガレーテから外した指輪を持って王の前に跪いた。
「父上。私に聖女フローラと結婚するお許しをいただきたく存じます。フローラは平民の出ではありますが、その類い希なる癒やしの魔術によって、今では国民たちから聖女と呼ばれるほどの能力を証明しています。将来王妃として国のためになるのがこの女とすでに能力を認められた聖女のどちらなのか、陛下の目にも明らかだと思います。フローラはこの国にとって、そして私にとっても、とても得がたい大切な存在なのです!」
王妃様も言った。
「さすがに無能な上にいつ死ぬかもわからぬ者ではな。妃にした後早々に死なれては、レイテにどんな言いがかりをつけらたことやら。なんて危険な」
それを受けて、王は重々しく答えた。
「……よかろう。ではランベルトとフローラとの結婚を認める。レイテ王女マルガレーテは、代わりにクラウスと婚約するがよい」
王のその言葉にランベルト王子はその場で「ありがとうございます!」と礼を言ったあと、その場の並み居る神官たちの後ろにひっそりと隠れるように立っていた可憐で美しい女性のもとへ駆けていった。
「ああフローラ! 聞いただろう? 僕たち結婚出来るんだよ! もちろん僕と結婚してくれるね? 愛するフローラ!」
そう言って婚約の指輪を捧げ持って跪くランベルト王子を、聖女フローラが涙ぐみながら見つめ、そしてこくりと頷いていた。
「ああ……! フローラ! 最高だ!」
そう言って、感極まって華奢な聖女に勢いよく抱きついたランベルト王子だった。
感動的な場面だった。美しい王子と可憐な聖女の愛の物語。
どこから見てもお似合いの幸せな若者たち。
そんな二人を見て、王妃様が言った。
「まあ良かったこと。そして王女には、ほっほ、なるほどクラウス。そういえばクラウスがおりましたね。一体今はどこにいるかもわかりませんが。しかしそれでレイテの王女と我が国の王子との婚姻という当初の約束はちゃんと守れます。それに元に戻すだけなら本人がいなくても問題もない。さすが王陛下、素晴らしいご判断でございますわ」
王妃様が機嫌良くそう言ったことでマルガレーテは、とりあえずはどうにか丸く収まったのだろうと判断した。
なのでマルガレーテは正直なところ、心から安堵していた。
王妃様の言葉が正しいのなら、レイテとルトリアの当初の約束は反故にはならなかったらしい。
ということは、自分のせいでルトリア王国とレイテ国の関係が悪化する危険もなくなったのだろう。
それならば、私がこの国に来た意味が少しはあったということ。
なにしろそのために私はここに来たのだから……。
マルガレーテは本当に良かったと胸をなで下ろしながら、追い出されるようにその部屋を後にしたのだった。
すると神官長は、茫然としながらも答えてくれた。
「白は……白は未知の色です。生まれたての赤子の色。すぐに消えてしまう尊い命の一瞬の輝き。この国では成人でこの色を持つ者はおりません。白の魔術を持つものは……みな短命で、そして……魔術を持たない。一切魔術の記録がないのです」
魔術を持たない。
それはまさに、マルガレーテが認識していたことだった。
そしてそれが今、ルトリア王国で明らかになってしまったということでもあった。
無能。そんな言葉が頭に浮かんだ。
「白だと……? まさか、信じられない。この目で見ていなければ、とうてい信じられなかったであろう。しかし、それでは結婚なんて無理ではないか」
王妃が青い顔をして言った。
「どういうことだ! まさかレイテは白と知ってこの女を寄越したのか!? なぜだ!? どうりで詳細を報告してこないわけだ! 前代未聞だ!」
王子が叫んだ。
「魔力は多いようだが……残念だな」
王も言った。
怒りの形相で立ち上がった王子がつかつかとマルガレーテの前まで来て叫んだ。
「お前では私のお飾りの妃にさえもならぬ! よくも何も知らないような顔をして私と結婚しようとしたな! まさか我が国相手に隠し通せるともで思ったか! いくらお前がレイテの王女でも魔力が白では結婚などできぬ。婚約は無かったことにする。その指輪は今すぐ返してもらおう!」
そうして王子は乱暴に、マルガレーテの手から彼女つけていた唯一の装飾品だった指輪を抜き去った。
ただ渡されて指示通りにつけていた指輪だったが、どうやら婚約の印の指輪だったようだ。
「結婚する前にわかってよかったのう。私のかわいい王子が、まさかレイテごときにはめられようとするとは。忌々しいレイテ王め」
王妃様が憎々しげに言った。
その言葉を聞いてマルガレーテは婚約がなくなったことよりも何よりも、母国のためにとはるばるやってきたことの全てが水の泡になっていこうとしていることに、まるで足下から全てが崩れていくかのような恐怖を感じていた。
なんということだろう。私の存在は母国の役には立たなかった……。
むしろ戦争の引き金になろうとしている予感さえして、ただ身動きも出来ずにその場で固まっていた。
王子はマルガレーテから外した指輪を持って王の前に跪いた。
「父上。私に聖女フローラと結婚するお許しをいただきたく存じます。フローラは平民の出ではありますが、その類い希なる癒やしの魔術によって、今では国民たちから聖女と呼ばれるほどの能力を証明しています。将来王妃として国のためになるのがこの女とすでに能力を認められた聖女のどちらなのか、陛下の目にも明らかだと思います。フローラはこの国にとって、そして私にとっても、とても得がたい大切な存在なのです!」
王妃様も言った。
「さすがに無能な上にいつ死ぬかもわからぬ者ではな。妃にした後早々に死なれては、レイテにどんな言いがかりをつけらたことやら。なんて危険な」
それを受けて、王は重々しく答えた。
「……よかろう。ではランベルトとフローラとの結婚を認める。レイテ王女マルガレーテは、代わりにクラウスと婚約するがよい」
王のその言葉にランベルト王子はその場で「ありがとうございます!」と礼を言ったあと、その場の並み居る神官たちの後ろにひっそりと隠れるように立っていた可憐で美しい女性のもとへ駆けていった。
「ああフローラ! 聞いただろう? 僕たち結婚出来るんだよ! もちろん僕と結婚してくれるね? 愛するフローラ!」
そう言って婚約の指輪を捧げ持って跪くランベルト王子を、聖女フローラが涙ぐみながら見つめ、そしてこくりと頷いていた。
「ああ……! フローラ! 最高だ!」
そう言って、感極まって華奢な聖女に勢いよく抱きついたランベルト王子だった。
感動的な場面だった。美しい王子と可憐な聖女の愛の物語。
どこから見てもお似合いの幸せな若者たち。
そんな二人を見て、王妃様が言った。
「まあ良かったこと。そして王女には、ほっほ、なるほどクラウス。そういえばクラウスがおりましたね。一体今はどこにいるかもわかりませんが。しかしそれでレイテの王女と我が国の王子との婚姻という当初の約束はちゃんと守れます。それに元に戻すだけなら本人がいなくても問題もない。さすが王陛下、素晴らしいご判断でございますわ」
王妃様が機嫌良くそう言ったことでマルガレーテは、とりあえずはどうにか丸く収まったのだろうと判断した。
なのでマルガレーテは正直なところ、心から安堵していた。
王妃様の言葉が正しいのなら、レイテとルトリアの当初の約束は反故にはならなかったらしい。
ということは、自分のせいでルトリア王国とレイテ国の関係が悪化する危険もなくなったのだろう。
それならば、私がこの国に来た意味が少しはあったということ。
なにしろそのために私はここに来たのだから……。
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