かんきん屋さん

翠穂@是非コメントください…!

文字の大きさ
1 / 2
ハンバーグ

「食人鬼は左利き」

しおりを挟む
その日の雨は急に降り出したんだ。
いつだって周りは自分勝手で急過ぎる。もう流行ってないのだとか、少し距離を置きたいだとか
「____今朝までは雨だなんて、一言も言ってなかったじゃないか。」
どうして世界はこんなにボクに優しくないんだろう。

もういいや、ボクが濡れればいい。

いつものことだ。

……そう、いつもならこれで終わりだったんだ。
世間なんてこんなもんだって割り切って、優しさを期待する方がばかばかしい。

誰かがさしてくれる傘なんてあるはずがなかったんだ。

濡れたシャツをまとった白い右腕、ビニール傘。
ボクの視界の左側に映り込んで「ついてないよね。」なんて。

「レイ、さん……?」
「偶然だね、今帰り?」
レイさんの髪も濡れていた。
「傘なんて今さら買っても無意味かなぁと思ったんだけどさ、ちょうど君が歩いて行くところが見えたから、」
「だから買っちゃった。ほら入って。」
傘の白い柄の部分を華奢な指が握り直す。
なんとなくぎこちない指の動き。多分レイさんは右利きではないのだろう。
それでもその手で傘を持つのはボクが右側にいるから?
レイさんの右手はボクに寄り添い、傘を半分分けてくれた。
「この前もさ、最初はついてないなぁって思ったんだよ」
「喫茶店で相席なんてね。」
「でも結局結構楽しかった。ついてなかったことに少しだけ感謝したよ。」
「ふふ、ついてないなぁって思うとなぜか君に会えるみたいだ。それで、そこそこ楽しませてくれる。」
「ね、雨宿りしてかない?俺の家、もうすぐそこなんだ。あったかいものでも飲もうよ。」

レイさんは優しかった。

その優しさにもう少し触れていたかった。だから

椅子もフォークも2つずつの部屋に招かれた。温かい珈琲を作ってもらった。

「砂糖入れるんだったよね?」って、

優しくて心地良い、珈琲も期待通りおいしくて

気がついたら眠ってしまっていた。




【絵本みたいな夢を見た。】
【時の歪んだ部屋の中にレイさんとボクがふたりきり。】
【レイさんは誰かの真っ赤な右腕を持っていた。】
【どうするのって聞いたら別にって返ってきて、】
【まずくなったら嫌だからって。】
【どういうこと?ねえレイさん______】

「………レイさん?」
「あれ…何してるのレイさん…?」

レイさんの白い横顔に話しかけた。
レイさんの奥には天井が見える。さっきまで近くにあった棚も。
ボクは机の上で仰向けになって寝ていた。

すぐに目が合って、レイさんは少し驚いた顔をした。
それからふふふと静かに、楽しいことでも思い出したように笑って言った。
「ついてないなぁ」
「ずっと寝ていてくれたらよかったのに。」

レイさんの右手がそっと伸びてきて
白い指がボクの顔の横、左の指に絡みつく。

「でもそこそこ楽しませてくれる、そうでしょ?」
レイさんの左手の指は慣れた手つきでナイフを握り直していた。
「続けるね。」
ナイフがボクの腹部へと沈んでいく……ように見えた。ボクは今なにをされている?
違和感はあっても痛みはなかった。
「レイさん………?ねえ答えてよ…」
頭がぼんやりする。たくさん血が見えた。
「いやだ…いやだレイさん……」
「離して!!!」

……………。

……あれ?ボクの右腕は?


「……『いやだ』なんて突き飛ばされたら悲しいよ。」
「せっかくの夕食がまずくなる。」
耳元でレイさんの声がした。
左手はずっとレイさんを感じている。
「君のおなかを開けるのに、俺は左手を使うでしょ?」
「そうしたら俺にはあと右手しか残っていないわけなんだけど、」
「俺、前戯は焦らして長いのが好きなんだよね。」
「だから強い毒を使っても大抵みんなこうやって本番中に起きちゃう。」
「さすがの俺も右手ひとつで君のふたつと相手しながら丁寧に内臓を取り出せる自信はないからさ。」
「だから先に取っちゃった。君の利き手。」
「それと俺の利き手じゃない方は右手なんだけど、君のそれは左手でしょ?」
「わかる?ほら、体が上下で重なるとさ…すごく繋ぎやすいんだよ。」












「…………って、もうわからないか。」


ボクの手はきっと冷たかったろうな。
こうしてボクはこの部屋の住人になった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

洒落にならない怖い話【短編集】

鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。 意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。 隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

処理中です...