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第29話 え、そっち?俺も驚いた
しおりを挟む「あの……どうなさいました?アレンハルト様」
「は。何か?」
「いえ……。先程から、とても怖い顔をされていたので……」
ふと指摘され、アレンはハッとした。
自覚なく放っていた殺気に気づき、慌てて咳払いをして頭を下げる。
「……申し訳ございません。無意識でした」
その様子に、ミアは少し気まずそうに目を伏せ、「……やはり、先程の件が……原因でしょうか?」と呟いた。
アレンの眉がわずかに動く。
「いえ、別に」
「分かりますわ。好きな方が、他の殿方と一緒にいらしたのですもの」
アレンは思わず視線を逸らす。
「……舞踏会でのお姿を拝見しましたから。分かっておりますわ」
「っ……」
「やはりアレンハルト様は、アキ様のような女性がお好みなのですね?」
「っえ」
思わずギクリとした。
タイプ……と言うなら、目の前にいるミア嬢の方が余程タイプだ。
白い肌、大きな瞳、か弱そうな身体。遠慮がちに、怯えるように喋る姿は、小動物を思わせる。思わず守ってやりたくなる姿だ。
ーーーなのに。
『尊ッ!!』
遠くの廊下から、勢いよく叫ぶアキの姿が脳裏に浮かんだ。
あの奇妙なテンション、意味不明な言動。
何故か、クリアに脳内再生されていく。
「くっ……」
(……何故だ…。何故、よりにもよってあんな姿ばかりしか浮かばんのだ……)
そして、そんな奇怪な女が好きな己の趣味を自覚したくない。
だが、事実として胸の内にある想いを否定しきれず、拳に力がこもる。
「……認めたくはありませんが」
「……そう、ですの……」
分かりやすくミアの顔が曇り、その大きな瞳が伏せられる。
アレンは思わず何か言おうとして。
「ならば、私達はライバルですわね」
「え」
顔を上げたミアの瞳には、涙ではなく意志が宿っていた。
「先日お会いした時から、アキ様の姿が……忘れられませんの」
「え」
「はしたないと思いつつ、気になって会話を聞いていました。殿方にあんなに啖呵を切る女性、初めてで……スカッとしましたわ!ぜひ、我が国に来て頂きたくて」
「………………」
「それは、困ります」
長い間を置いて言ったアレンは、チベスナ顔になっていた。
(……やめていただきたい)
本当に、やめてくれ。
心の中で呟いたアレンは、こうして思わぬ形で「恋のライバル」が増えたのであった。
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