推しに“男”だと勘違いされたけど、雑草根性で執着されてます!【全33話完結予定】

ホタカ

文字の大きさ
32 / 33

第32話 告白しようとしたら、2人から告白されました

しおりを挟む

着いた先は、庭園だった。
この2日間で常連ばりに来る羽目になった庭園の中を通り、指定されたベンチに並んで座る。


「……その目、どうしたん“ですか”?」


唐突に敬語で話され、思わず恐ろしいモノを見る目で隣のアレンを見上げる。


「な、何ですか急に……」
「泣いたん“ですか”?」


無意識に鳥肌が立ったようで、両腕を摩るアキ。
その姿を、笑ってない目元のアレンが笑いながらアキを見つめた。


「“紳士”がお好きと言ったので、努力してるんですよ。……なのに、その態度は心外ですね」
「いや…確かに言いましたけど」


敬語にすれば良いってもんじゃない。
余計に怖いわ。

(……でも、私の言ったことを覚えて、ちゃんと変えようとしてくれたんだ)

そう思ったら、嬉しくて。
アキは少し顔が熱くなるのを感じた。


「ーーー質問に、答えてくれないんですか?」
「え?……あ、えーと……」


アキは氷嚢を握りしめながら、視線をそらす。
アレンの目が真っ直ぐすぎて、心の奥を見透かされそうで怖い。


「やっぱ、とりあえず気持ち悪いんで敬語なしでお願いします」
「………」


スゥとチベスナ顔になるアレン。
そして、長いため息を付いて、髪を掻き上げた。


「……君はいつもそうだな」
「え?」
「こっちは、君が泣いたんじゃないかと……もしかして、“昨日の事”で君を傷付けたのではと思ったのに。口調なんてどうでも良いだろ」


すぐさま元通りの口の悪さに戻るアレン。
何故だろう、敬語キャラが好きなはずなのに、こっちの方が安心するのは。

(……それより、昨日の事って、やっぱ自覚あるじゃん)


「分かってるなら、聞かなくて良いですよね?」
「はあ?分からないから、聞いたんだ。君は、どうやら色々な男に愛想を振り撒くのが得意らしいからな」
「ーーーは?」


何それ。
ついポカンと口を開ける。


「街で知らない男と2人きりになるし、ヴォルトや団員とは仲良いし、さっきの男とは早速街デートか。そんなに尻軽なら、昨日の件だって傷付かないかも知れないだろ?」


(………え?マジで何言ってんの?)

まさかの嫉妬?それに、軽くディスり入ってんだけど?
自分は……ミアに惹かれてるクセに!
思わずアキは、アレンに告白するのも忘れてくってかかる。


「ーーーそっちこそ、私を好きだって言ったのに、ミアを抱き締めてたじゃん!!」
「……は!?あれはどう見ても事故だろう!何故そうなるんだ!」
「あれを見りゃ誰だってミアを好きだと思うわ!そのせいで泣いてこんな顔になってんのに!!」


ーーーしまった。
変なタイミングで口が滑った。
一気に羞恥心が上がり、咄嗟に赤くなった顔を隠そうとそっぽを向こうとしてー……

視線が空を向いた。


「……へ?」
「ーーーやっぱり、アレが原因で泣いたんじゃないか!」


いつの間にか、アレンがアキをベンチに押し倒していた。
上から見下ろすその目は、いつか見た紅く燃えるような瞳で。


「何を勘違いしてるのか知らないが、俺が好きなのは、君だけだ!」
「えっ……」
「というか何度も好きだと言ってるだろう!何故信じないんだ」


思わず息を飲み込むアキ。


「……だって奇声は上げるし、貧乳だし、髪梳かさないし、お洒落しないし、男に間違われるし」
「………自覚はあるのか…」


少しだけ遠くを見るアレン。しかし、再びアキに視線を合わせる。


「良いか。俺は君の性根が好きなんだ。よく笑って、怒って、俺から逃げて、仕事は妥協しなくて……今まで俺の知ってるどの女とも違う。……そして、気がついたら……いつも君を目で追ってた」
「っ……」


言葉が出ない。心臓が早鐘のように打っている。


「この際貧乳でも良い。本当に君が好きなんだ」
「……っ…言い方…!」


「ほんと、残念野郎だな」そう言ったアキの声にキレがないのは、溢れた涙が邪魔だったからだ。
アキの暴言に苦笑したアレンは、そっとアキの手を取り、その伝った涙を拭いた。


「言ったろう?俺から逃げられんと」
「っ……!」


心臓を鷲掴みにされたような感覚。息が、苦しいほど熱くなっていく。
真剣にアキを見るアレンの顔を見れば、ほんの少しだけ狂気が混じっていた。
それはもう、アキが求めていたアレンそのものだった訳で。

(……何なのよ…!こっちから告白してやろうと思ってたのに!)


「ーーーもう、ずっと前から捕まってるんだけど!」


悔しくて、つい声を上げて答えた。
その瞬間大きく目を見開いたアレン。
暫く硬直していたが、やがて、深い笑みを浮かべると繋いだアキの手の指先にそっと唇を当てた。


「……じゃあ、これで正式に、付き合ってくれるんだな」
「っ!」


アレンの美しい顔がゆっくり近付いてくる。
もう少しで、彼の唇が触れそうになった、その瞬間だった。


「まあ!情熱的な告白ですこと!」


ミアの声が庭園の奥から炸裂した。
驚いたアキは、咄嗟にアレンを頭突きして跳ね除ける。


「っミア、私……」
「それ以上はいけませんわ!!」
「何、それ…」
「アキ様は、私のお姉様になる方よ!決して、アレンハルト様には渡しません!」
「………………」


「ん?」
長い間を置いて、アキが呆けた声を漏らす。
ミアはそのまま走って近寄ると、アキをぎゅっと抱きしめた。


「アキ様!お願いですから兄様と婚約なさって!そして、私のお姉様になってくださいまし!」
「………え?」


なんで?
ふとアレンに視線をやると、彼はおでこを摩りながら、本当に残念なものを見る目でミアを見つめていた。



「………ん?」


あれ、ミアって、私が好きだったの?

遠くで、1人残されたカインが「そうだよ」という顔で、こちらの様子を見つめていた。

どうやら、ミアの好きな人は、まさかの私だったようだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

聖獣の卵を保護するため、騎士団長と契約結婚いたします。仮の妻なのに、なぜか大切にされすぎていて、溺愛されていると勘違いしてしまいそうです

石河 翠
恋愛
騎士団の食堂で働くエリカは、自宅の庭で聖獣の卵を発見する。 聖獣が大好きなエリカは保護を希望するが、領主に卵を預けるようにと言われてしまった。卵の保護主は、魔力や財力、社会的な地位が重要視されるというのだ。 やけになったエリカは場末の酒場で酔っ払ったあげく、通りすがりの騎士団長に契約結婚してほしいと唐突に泣きつく。すると意外にもその場で承諾されてしまった。 女っ気のない堅物な騎士団長だったはずが、妻となったエリカへの態度は甘く優しいもので、彼女は思わずときめいてしまい……。 素直でまっすぐ一生懸命なヒロインと、実はヒロインにずっと片思いしていた真面目な騎士団長の恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID749781)をお借りしております。

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

脅迫して意中の相手と一夜を共にしたところ、逆にとっ捕まった挙げ句に逃げられなくなりました。

石河 翠
恋愛
失恋した女騎士のミリセントは、不眠症に陥っていた。 ある日彼女は、お気に入りの毛布によく似た大型犬を見かけ、偶然隠れ家的酒場を発見する。お目当てのわんこには出会えないものの、話の合う店長との時間は、彼女の心を少しずつ癒していく。 そんなある日、ミリセントは酒場からの帰り道、元カレから復縁を求められる。きっぱりと断るものの、引き下がらない元カレ。大好きな店長さんを巻き込むわけにはいかないと、ミリセントは覚悟を決める。実は店長さんにはとある秘密があって……。 真っ直ぐでちょっと思い込みの激しいヒロインと、わんこ系と見せかけて実は用意周到で腹黒なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:4274932)をお借りしております。

王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~

石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。 食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。 そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。 しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。 何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。 扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

冷徹と噂の辺境伯令嬢ですが、幼なじみ騎士の溺愛が重すぎます

藤原遊
恋愛
冷徹と噂される辺境伯令嬢リシェル。 彼女の隣には、幼い頃から護衛として仕えてきた幼なじみの騎士カイがいた。 直系の“身代わり”として鍛えられたはずの彼は、誰よりも彼女を想い、ただ一途に追い続けてきた。 だが政略婚約、旧婚約者の再来、そして魔物の大規模侵攻――。 責務と愛情、嫉妬と罪悪感が交錯する中で、二人の絆は試される。 「縛られるんじゃない。俺が望んでここにいることを選んでいるんだ」 これは、冷徹と呼ばれた令嬢と、影と呼ばれた騎士が、互いを選び抜く物語。

【完結】ペンギンの着ぐるみ姿で召喚されたら、可愛いもの好きな氷の王子様に溺愛されてます。

櫻野くるみ
恋愛
笠原由美は、総務部で働くごく普通の会社員だった。 ある日、会社のゆるキャラ、ペンギンのペンタンの着ぐるみが納品され、たまたま小柄な由美が試着したタイミングで棚が倒れ、下敷きになってしまう。 気付けば豪華な広間。 着飾る人々の中、ペンタンの着ぐるみ姿の由美。 どうやら、ペンギンの着ぐるみを着たまま、異世界に召喚されてしまったらしい。 え?この状況って、シュール過ぎない? 戸惑う由美だが、更に自分が王子の結婚相手として召喚されたことを知る。 現れた王子はイケメンだったが、冷たい雰囲気で、氷の王子様と呼ばれているらしい。 そんな怖そうな人の相手なんて無理!と思う由美だったが、王子はペンタンを着ている由美を見るなりメロメロになり!? 実は可愛いものに目がない王子様に溺愛されてしまうお話です。 完結しました。

【完結】身分を隠して恋文相談屋をしていたら、子犬系騎士様が毎日通ってくるんですが?

エス
恋愛
前世で日本の文房具好き書店員だった記憶を持つ伯爵令嬢ミリアンヌは、父との約束で、絶対に身分を明かさないことを条件に、変装してオリジナル文具を扱うお店《ことのは堂》を開店することに。  文具の販売はもちろん、手紙の代筆や添削を通して、ささやかながら誰かの想いを届ける手助けをしていた。  そんなある日、イケメン騎士レイが突然来店し、ミリアンヌにいきなり愛の告白!? 聞けば、以前ミリアンヌが代筆したラブレターに感動し、本当の筆者である彼女を探して、告白しに来たのだとか。  もちろんキッパリ断りましたが、それ以来、彼は毎日ミリアンヌ宛ての恋文を抱えてやって来るようになりまして。 「あなた宛の恋文の、添削お願いします!」  ......って言われましても、ねぇ?  レイの一途なアプローチに振り回されつつも、大好きな文房具に囲まれ、店主としての仕事を楽しむ日々。  お客様の相談にのったり、前世の知識を活かして、この世界にはない文房具を開発したり。  気づけば店は、騎士達から、果ては王城の使者までが買いに来る人気店に。お願いだから、身バレだけは勘弁してほしい!!  しかしついに、ミリアンヌの正体を知る者が、店にやって来て......!?  恋文から始まる、秘密だらけの恋とお仕事。果たしてその結末は!? ※ほかサイトで投稿していたものを、少し修正して投稿しています。

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

処理中です...