推しに“男”だと勘違いされたけど、雑草根性で執着されてます!【全33話完結予定】

ホタカ

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第33話 推しが本気を出してきた。だから、しばらく逃げる事にしました

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王宮での告白の翌日。

アキは予定通り騎士団に帰っていた。
だが、その隣には何故か終始ご機嫌そうなアレンがいる。

どうやら、アレンは警護対象であるミアを放置したという事でウィルに“公私混同しすぎ”と呆れられ、3日間の謹慎処分になったらしい。

なのに本人はどこか嬉しそうである。


「さて、暇を貰ったし、どこに行く?」
「え?何言ってんですか。私は仕事ですけど」
「休暇申請なら代わりに出すが」
「職権濫用ですよ。それに、働かないとお給料貰えませんからね」
「……そんなに生活が心配なら、俺の嫁になれ」


(ーーーえ?)

思わずポカンとアレンを見上げる。
そして……ようやく言われた意味が分かり、思わず顔が赤くなったところで。
ニヤリとした顔のアレンが「いい案だろ?」と笑った。

(ーーーっこの人っ……!)

絶対に、私の反応を見て楽しんでいる。その顔が絶妙にウザい!
そう思ったところで。


「アキ様!」


騎士団の門へ向かって、走ってくる者がいた。
町娘のような格好をしているが、その美しさを隠しきれないミアだ。


「っあれっ!?どうしたの?」
「ウィルフレッド殿下に頼んで、街の視察に来たのですわ」


アキの近くに来たミアがニッコリと笑う。
奥を見れば、ローブを被ったウィルがヒラヒラ手を振っていた。そして、その隣にはカインが。
どうやら、アレンにかわってカインが警護を引き継いでいるらしい。


「街の事なら、騎士団の方に聞くのが1番と殿下に聞きましたの。……もし良ければ…お願いしても、宜しいでしょうか?」


ミアが眉尻を下げながらアキを見つめる。


(……うーわ、可愛過ぎる…)

やはり主人公の破壊力は凄い。思わず鼻血が出そうになりながらも、「良いよ、私で良ければ」と答えた。


「まあ!」
「!ちょ……ミア嬢!」


焦るアレン。まさか了承するとは思ってなかったのだろう。
その時だった。騒ぎが気になったのか駐屯地から書類を抱えた眼鏡の男が姿を現した。


「あれ団長?もう王宮から帰ったんですか?」
「あ、ジュードさん」
「ちょうど良かった。仕事溜まってるんですよ」


これ幸いとジュードが近付き、アレンを駐屯地へと引っ張っていく。


「っジュード、今それどころでは!」
「こっちはそれどころですよ。さっさと仕事片付けて下さい。アキさんにはヴォルトを付けますから」
「!駄目だ、あいつとは仲がいいから」


何言ってんだこいつ
という顔をして、ジュードは有無を言わさずアレンを引き摺っていく。


「…と!忘れるところだった…ジュードさん、待って下さい」


ふと、アキは用事を思い出し、アレンに近付く。
そして着古した騎士団服のポケットから、綺麗な紅い石の付いたお守りを出した。


「これ、団長の目の色と一緒だなって。……ずっと持ってるのもアレなんで、お渡ししますね」
「っ……!」


「さすが、俺の婚約者」
と言いながらアキの腰を引いて自分に近付けようとするアレンにくるりと回転し避ける。


「指輪が何かと思ってます?お土産ですよ。お・み・や・げ!それに婚約者って勝手に決めないでくれません?」
「そうですわ。それに…強引な殿方に愛想を尽かす、なんて話、我が国ではよく聞きますし」
「っなっ…!」
「ふふ、その通りだよアレン」


「今度は、ミア嬢の国へ視察に行かないとね?」なんて続けて言うウィルに、ミアは「まあ!それはぜひ、アキ様も!」と言った。

めんどくさそうな…と思ったが、ウィルが柔和に(口元だけ)笑っていたので、断る事などできないのだろう。


「姫君に言われたら、行くしかないよね?」
「お給金貰えるなら」
「ブレないね、アキちゃんは」


楽しそうに笑うウィル。
その横で、唯一、焦って動揺しているのはアレンただ1人。


「駄目に決まってんでしょう!この人は俺の婚約者ですよ!」
「だから勝手に決めないでって言ってんじゃん」
「さすがのその鋭いなじり言葉…ときめきますわ」


(……なるほど?ミアってこういうタイプだったんだな…)

アキは何とも言えず薄ら笑いを浮かべミアを見つめる。
アレンだけではなく、ミアも小説とはだいぶ違うようだ。

(……まあ、ライバルじゃないなら、何でも良いや)


「はあ、もう良いですかね?じゃ、そろそろ行きますよ」
「待て、まだ話は……」
「ハイハイ、書類のあとあと」


「アキ!」
初めて呼ばれた名前に、ついドキリとしてアレンを見れば。
眉間に皺を寄せ、何とも情けない顔でジュードに引きずられていて思わずスンと冷静になった。

ーーーだけど……こんなアレンも、好きな自分が本当に困る。


「ーーーじゃ、こっちも仕事しよ。どこから案内しようかな?」
「カフェが良いですわ!」
「あ、ならおすすめあるよー。女の子に人気のケーキがある店」
「さすがカインさん!奢って下さいね!」
「さすがアキちゃん」


「なっ……そこは恋人とデートだろう!」
遠くで聞こえたアレンの声に気付かないふりをして、アキは笑顔で街への歩を進める。

ふと後ろを振り返ると、何とも悔しそうな表情をしたアレンが呆れ顔のジュードと一緒にいる。
あの分じゃ、早々に仕事を片付けて追いかけてくるだろう。

(……そう簡単に落ちるかっての!)

しばらくこのまま逃げていよう。

だってアレンのタイプは「自分から逃げる女」。
だったら、ここで私がすぐに靡けば興味がなくなるかも知れない。

ーーーだったら……完全に私に「執着」するまで、このままでも良くない?

そう思ったアキは、ニコリと笑い、持ち前の行動力で今日もアレンから全力で逃げるのであった。



おわり。

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