推しに“男”だと勘違いされたけど、雑草根性で執着されてます!【全33話完結予定】

ホタカ

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第18話 推し、嫉妬を指摘されついに自覚する

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昼を少し過ぎた時刻。アレンは通り過ぎる人々を確認しながら足早に歩いて行った。

広場、裏通り、路地。
人通りが一気に増えはじめるこの時間帯でも、あの目立つ黒髪を探すのは本来そこまで難しくないはずだった。
ーーーしかし、どこを探してもいない。
 

「……クソッ」


思わず吐き出した言葉に、周囲の人々が怯えたように距離を取る。
ーーーだが、そんな事はどうでもよかった。

(…なぜ、こんなにもイラつくんだ)

たかが雑用係。たかがデート。
どこに行こうと誰と何をしようと、本来なら気にする必要すらない。
ーーーなのに。

(……何なんだ、あいつは!)

何故俺から逃げる?
何故、俺には笑顔を向けない!

今頃デートの相手には先日見たばかりの笑顔を向けている事だろう。そう思うと一層苛立った。

始めは、俺が目線を向けると「きゃー!」と小声(と本人は思ってる)で叫び、顔を赤らめていた。
その後も「尊!」とどこかから叫び声が聞こえ、周囲を探せば遠くからこちらを見ていてビクリとする程だったのに。

変な男と思いきや、女だと分かった瞬間「だからか」と納得した。
そして、少しの嫌悪感も。

“またか”。
あれは、女だからキャーキャー言ってたのか。
この分じゃまた俺の下着を盗まれる日も近い。

だから何とか辞めさせてやろうと思っていたのに。
ーーー見れば見るほど洗濯・炊事・掃除すべて完璧で団員からも慕われている。しかも、下着は無事だ。
これは…単に奇声を発するだけで実害もないし、むしろ“掘り出し物”なのでは?

そう思っていたのに。
何故か突然俺に対する態度が一変したのだ。

俺が様子を伺いに行けば気配を察知し隠れ、近付けば嫌そうな顔で逃げる。
気づけば視線で探し、所在を確認してまで姿を追うようになった。それでも逃げやがる。

単純に、逃げられると腹が立つ。
あの当初の態度は、一体何だったのだ。

ーーーだが、ようやく理由がわかった。
「男」ができたから、興味が俺から外れたのだ。


「……チッ」


思わず舌打ちしたその時だった。


「ーーーあ、いたいた。ようやく見つけた」


ふわりと現れたローブ姿の男。
通行人が思わず避けるほどの貴族然としたその気配。

(……また抜け出したのか)

アレンは一瞬でチベスナ顔になる。
当の本人は、何故か不穏な笑みを浮かべながら近付いてくる。


「ちょうどよかった。君を探してたんだよ、アレン」
「……殿下。また城を抜け出してーー」
「まあまあ。……ちょっと話がある」


ぐいと腕を取られ、半ば強引に路地裏へと引きずられる。


「……何ですか。今それどころではーー」
「そう、それそれ。アキちゃん探してたんでしょ?」
「……っ」


一瞬で見抜かれたことに、アレンは言葉を詰まらせた。


「ねえアレン。君、彼女に対して何がしたいの?」


穏やかな口調のくせに、ウィルの声は一切の逃げ場を与えない。
アレンは、しばらく黙っていた。


「……一体何の話か」
「え?」
「そもそも、殿下が舞踏会を開くと言ったからでしょう。騎士団全員参加させる俺の身にもなって下さい」
「……だから“採寸”の為に、アキちゃん追い回してるって?」
「そうですよ。従わないなら命令違反です」


それに、ウィルは大きくため息を吐いた。


「全く、本当に君は残念なイケメンだね」
「え」
「アキちゃんのドレスは俺が作る事にしたから」
「ーーーは?」


自分でも信じられない程の冷たい声が出た。
それも、この国の皇太子に向かって。
いくら乳母が同じでほとんど兄弟のような相手でも、相手は王族なのに。
咄嗟にしまったと思ったが、本人は飄々と「困った子だ」と言っただけ。


「いい?アレン。これ以上アキちゃんを怯えさせちゃダメだよ」
「え、俺は別に…」
「そんな形相で追い回したら誰だって怖がるよ。執着は程々にして」
「ーーーは?」


二度目はなかった。
ゴン!と強めに頭を叩かれる。


「とにかく、アキちゃん“仕事をクビにされる”って怯えてたんだから。ーーーま、辞めても今度は俺が雇うけどね」
「っそれは…!」
「それは?何?騎士団にいて欲しいの?」
「………、それ、は…」


口篭ったアレンに、再びため息を吐くウィル。


「君が優しくしないと、俺がアキちゃん貰うから」
「っ!?」
「あんな“良い目”、雑用なんかじゃ勿体ないよ。俺の秘書官にしたいもの」


そう言って、来た時と同じような笑顔になったウィルは踵を返す。


「舞踏会までよく考えると良い。こう見えて俺も忙しいんだよ?……良いね」


そう言ってヒラヒラ手を振って行ってしまった。
後に残されたアレンは呆然とその後ろ姿を見つめる。

(……あいつが……殿下の秘書官に、なる……?)

そう思った瞬間、得体の知れない焦燥感に似た嫉妬心が渦巻いた。

……ここで、ようやくアレンは自分の持て余していた「感情」に気付くのであった。



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