推しに“男”だと勘違いされたけど、雑草根性で執着されてます!【全33話完結予定】

ホタカ

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第23話 推しが迫ってきたけど、壁ドンも顎クイもアウトだからな!

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突然の告白からの推しの「本性」バレの翌日。
アキは今日も騎士団の雑用係をしていた。

心配していたクビはなく、むしろ王宮での仕事が宙ぶらりんになったところで。


「おかわり!今日もアキさんのご飯は美味しいっす!」
「嬉しいですヴォルトさん~」
「だろう?おかわりは2回までだからな」


スッとヴォルトが何とも言えない顔で笑う。

分かるよ。
配膳している私の隣にお玉を持ったアレンがいるのだから。

(……ほんとに、俺の嫁感出すのやめて欲しい)

もう、アレンは何も隠す気はないらしい。
何かと隙を見つけては、こうして分かりやすく私の側にやって来る。どうやら外堀を埋めるつもりらしい。
因みに団員達は巻き込まれないように見て見ぬ振りだ。

(……皆、酷くない?)

誰かこの奇行を止めてくれ。
そう思ったが、騎士団長に刃向かえる者はいないだろう。


「あ、いたいた。ちょっと団長、何やってるんです?仕事溜まってるんですが」
「!ジュードさん!」


ガチャリと食堂の扉を入って来たジュードに、アキは思わず目を輝かせた。
いた。1人だけ。
この騎士団で唯一アレンに遠慮なくズケズケ言える救世主が。
チラリとアレンを見るとムッとした表情でジュードを見ていた。しかし、仕事が溜まっている事は事実らしく渋々お玉を置く。


「さっさと終わらせてくる。また来るか…」
「来なくて良いです」


食い気味に即答するアキ。
何とも悲しそうな顔でアキを見つめるが「いい加減にして下さい」と言ったジュードに引きづられていった。


「はぁぁ~」


ため息と共にお玉を見つめるアキ。

昨日の今日でこれである。
この変わりよう、まさに小説で見たアレンの行動パターンと一緒だ。
だとしたら次は行動はライトなストーキングが始まるはず。


「アキさーん、食材買い出しお願いできます?」


厨房から声がかかる。チャンスだ。
今日は商業街で市が立つ日だ。うまく行けば半日は外に出られる。


「任せて下さい!」


そう大声で了承すると、さっさと食器の片付けをし、朝ごはんを済ませると、全力で飛び出した。
言わずもがな、アレンに見つかりたくないからだ。
ーーーが。


「……ん?」


門を抜けた先に、アレンがいた。
どうやら、もうストーキングが始まったようである。
 

「……怖」
「ん?何か言ったか」


何故出掛けるのが分かったのかはこの際置いといて。


「さっき仕事が溜まってると言われてませんでした?」
「終わらせた」
「えっ」


(たったの数十分で?)

アレンは全般的に能力が高いが、有能さをここで発揮しないで欲しい。
ストーキングするためなら特にな!
そんなアキの心の中を知ってか知らずか


「これから市井の見回りがあるから、ついでに一緒に行こう」


と言って手を伸ばした。


「……何ですかその手は」
「迷子防止に」
「ならねぇわ!」


思わず突っ込んだ。
この人、この世界に来たばかりの私に地図を押し付け、さっさと行けと言ったセリフを忘れたのだろうか?
残念なイケメンとは、正しくこの人の事だろう。


「とにかく、私は忙しいので、これで」
「あ、待て…!」


足早に通り過ぎ、門を出たところでアレンに再び腕を掴まれた。


「っ!何…!」
「そんなに分かりやすく避けなくても良いだろう!」
「わ、分かった、分かりましたからっ!痛いんで離して下さい!!」


アレンの力強さはデフォルトのようである。と言っても、昨日よりはだいぶ加減をしてくれているようだ。
アキの了承で直ぐに離してくれたアレンだが、言いたい事はあるようで続けざま口を開いた。


「確かに君に対する今までの態度は、紳士ではなかった。避けたい気持ちも分かる。だが、化粧もせずスカートでもない姿で女だと思う方が無理だろう!」
「おまっ…謝罪が先でしょーが!それに少しは取り繕ってくれません!?」
「今更猫被れるか!それに俺は元々女嫌いなんだ!」


知ってるわ!
そう思ったが、何故か近付いて来たアレンに本能的に逃げるアキ。
そして、ドン!と背中に衝撃を感じる。どうやら門にぶつかったようだ。


「っちょ、これ以上来ないで…」
「ーーー自分でもどうしたら良いか分からんのだ!」


またバン!と音を立てて壁に手を押し付けるアレン。
その整った容姿が直近まで迫り、思わずアキは直視できずに顔を背けた。


「今まで男かと思ってきた奴が苦手な女で、その上苦手な筈なのに気になって仕方ないし、誰かとデートしたと聞いたらイライラするし…こっち向け!」


グイッと顎を掴まれ、無理矢理正面を向かせるアレン。
思わず目を合わせると、その燃えるような瞳は一層赤く染まり、整った容姿の眉間に皺が刻まれていた。

……何とも悩ましいほどの色気だ。
美形の嫉妬姿とは、ここまで破壊力があるものか。

つい、自分でも抑えられない程に心臓が跳ねるアキ。
きっと今の自分は相当顔が赤いはず。
でもーーー忘れてはいけない。この人は私の憧れである推しではなく、残念なイケメン。

(小説では手を握るだけでも「大丈夫ですか?」って聞いてたじゃん!どこの誰だよコイツ!!)


「っまず謝罪!それから告白!全部すっ飛ばしたからやり直し!!」
「は!?」
「それに紳士な人が好きって言ったでしょーが!!こんな力一杯顎クイする紳士いるか!」
「っなら、紳士にすりゃ付き合ってくれるんだろうな!」


しまった。
ついうっかりそんな事を言ってしまってー…そして、ふと、隣にローブ姿の男がポップコーン片手に立っていることに気付いた。


「んー。さすが残念男。そんな横暴な態度、中々治らないと思うよ?」
「………あ」 
「お付き合いは、暫くお預けだね」


でん…
言い終わらない内に近付いてきたウィルが振りかぶりー……スパン!と小気味良い音が辺り一体に響くのであった。


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