異世界探索記録

土方かなこ

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1章

ブチ切れ

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ひとしきり泣いたあと髪を撫でながら聞いてみる  

「君は父さんの友達だったんだね?」
「っグス うん
ともだち…始めてのともだちっ」
「名前を聞いてもいい?」

「…僕は名前がないの」

「名前がない?」

「うん ぐすっ ヒナタには次に会ったときにもらう約束だったのに」

ええっ!なんで早くあげなかったんだろ?
「だから ないの、名前…」

グスグスと目をこする
あわわわ また泣き出しちゃいそう

膝を地面につけて、目線をあわせる
改めて見ると絵画の中の人物のようだ

紅い瞳に闇夜でも輝く真っ白な髪、ツンと尖った鼻に華奢な体


「ママ?」
唐突な呼び掛けに困惑する
「っん?!ママっ? 僕は男なんだけども」

「だってこんなに僕に話しかけてくれるのヒナタかママくらいな筈だろうなぁって

だからママなんだよねぇっ?僕ずっと待ってたんだよぉ?」
ひしっと体にしがみつかれる
参ったなぁ まだ年は12、3位だろうし、あんまり夢のないことを言いたくはないし

困りつつもゆっくりと背中を抱き込んで、体温をわけあう

うーん暖かい 生きてるなぁ この子も、僕も
「ママぁ」
「…僕は残念ながら君を産んだママじゃないよ」

「っえ!」
ビクリとして抱き締めている体がブルブルと震える
こんなにも一人になるのを恐れている

「っでもっ!今日から僕が君のママになるっ」
あれっ我ながら何を言ってるのだろう
でも、キョトンとした瞳を見ると、もうなんだかなんでもいい気がした

「っダメかな?」

なんだか怖い気持ちで少年の顔を覗きこむ
あれ、涙が止まっている

「…僕のそばにいてくれる?」

「うん 君が望んでくれる限り」

「ずっと?消えちゃわない?死んじゃわない?」
っそれは
「…それはっでも努力するよっ!」
「っ努力じゃダメっ!」

ええっなかなか手厳しいなっ?
そもそも体は弱い方だ 
なぜかこの世界に来てからは平気だけど
そういえばどうしてだ?結構こちらに来てストレスとかあったはずなのに…

「じゃあっ!

ボクがママを守るっ!!」
ん?
「っえぇ?」

「もう一人ぼっちはいやだぁ
だから僕より先に死んじゃわないでぇ」

うるうるした瞳で懇願する
これは断れなさすぎる

「…君が守ってくれるならきっと大丈夫だ」
「ぐすっ 本当に?」

「うん だから泣かないで
君…いややっぱり名前はないと不便だよね…」

ひとまずあだ名的なのをつけておいた方がいいかも知れないかな


「…アンジュ」
「うん?」

「アンジュって呼んでもいい?」
パァッと頬が赤くなる
白い睫毛一本一本がワクワクした瞳をいろどった
「アンジュっ!?」

「そう、アンジュ」
ボーとした様子でアンジュ、アンジュと唱える
やっぱりもう少しちゃんと考えたやつの方がいいかな?
「もう少しちゃんと考えた方がいい?
でもそもそもこれは一時的なあだ名みたいなものだしそんなに…」

あだ名?とキョトンとする
あだ名の意味わからないのかな?

「ママ 僕は今日からアンジュだよ」

月夜に照らされた少年はうっとりするほど可愛らしく微笑んだ







「っぅああ!頭が いてぇ!いてぇ!いてぇ、なあ、おいっ!おいてめえらさっきからぐちゃぐちゃうるっせえんだよ!」

ゆらりとジルが立ち上がり、こちらに罵声を浴びせる
意識が戻ったのか!
血走った目でこちらを睨み付けていた
「ったくよぉ ついてないにもほどがあんぜ
それになんだぁ?ご立派な魔方陣が出てきたとおもいやぁ、こんなクソガキ一匹呼び出すためだったなんてなぁ」

ゴキッと音をならして首を曲げる

「俺様完っ全にブチ切れたぜぇ」


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