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第二戦 VSサビク 騎士の国と聖剣達
ボランティアスタッフ
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帝大付属病院大量消失事件。これにより、異界の脅威は知れ渡った。
千葉のマンション、東京の大病院。合わせて500人以上の消失者が現れたのだ。理由の当たりはつけられたとはいえ、確定ではない。
そして、この事件の第一人者であった足柄“警部”は消失してしまった。若き俊英であった彼自身の捜査データこそ共有されていたものの、彼がまだ感じていただけのものはメモ書き程度にしか残されていない。
情報と攻略の先導者であり、そして何より“頼れる刑事”であった足柄の死は、裕司と奏に少なくない動揺を与えた。
そして、奏は“そこにいながら誰も守れなかった事を”裕司は姉の茜をも死なせてしまった事”を、悔やみ、苦しみ、それを傷にしていた。
彼らの心の強さ故に立ち上がりこそできているものの、その顔は暗かった、
しかし、変わらず立ち上がれる者達はいた。
栗本は、自身の後輩である足柄の仇討ちの為に、いつも通りに警察として立ち上がった。
氷華は、やらなければ死ぬと、死にたくはないと考え、他人事にはしていられないと歳不相応に考えた。
琢磨は、初めて現実の人間の殺した事に何も感じない自分を呪いつつも、今は躊躇いなく殺せる自分のような人間が必要な事を理解した。
必要だから、ただそれだけで人を殺せるのが琢磨だった。……本質的には、ソレすらも必要としていないが。
そんな5人は、警察署内の特務室にて事情聴取を受けていた。
それを主導するのは、“特殊技能事件対策課”。足柄と栗本の所属していた、かつてVR犯罪が流行していた頃の花形部署だった課だ。
今では、VR課に席を譲った部署でしかなかった。
“Soul Linker”という魂へのアクセスを可能にしたオーパーツが現れ、それに呼応するように感情の獲得を達したAI達が現れるまでは。
世間一般で知られているAI達は感情の獲得にてプラスの感情を会得しているだけという事になっているが、もちろんそんなことはない。
自我はある。役割を放棄することはしない。しかし、パートナーの為にならなんだってする。それが自我を獲得したAI達だ。
今、感情を獲得しているAIを利用した犯罪が起きていないのは運がいいだけだと警察は判断しているのだ。
そんな背景があり、密かに精鋭を集めていた対策課は、異界事件に対してある程度先手を取ることができていたのだ。
そんな対策課の課長を務める篠崎という女傑が、琢磨に相対していた。
「つまり、君は多くの人を殺したと」
「はい。他にも当時病院に居た人達はほとんど俺が殺しました。……足柄刑事に、トドメはさせませんでしたけど」
「その割には、随分と冷静だ」
「そういう人間だって、報告受けていませんでしたか?」
「いいや、ボカされていたよ。隠しフォルダの方にはしっかり記録されていたがな。現代の殺人鬼に“ならなかった”少年だって」
その言葉に、琢磨は苦笑する。ならなかったのではなく、心臓がうまく動かなかったが故にたまたま実行をしていなかっただけなのだから。
その動かなかった時にきちんとした倫理観を理解しなければ、今の琢磨はなかった。そういう事だ。
だが、その枷ももう取れた。琢磨はもう、殺人を犯した重罪人なのだから。
「それで風見琢磨。君はどうしたい?」
「少年院、じゃないんですか?」
「あいにくと証拠がない。私個人の感情の話で言えば君のような危険人物には塀の中で過ごして欲しい所だがね」
「自白じゃダメなんですか?」
「駄目だ。ああ、そこにいるAIの彼女が発言しても君の為の言葉を吐く可能性が高い。信用はできないよ」
『……私が感情を持っているからですか?』
「その通りだ。君は風見琢磨の味方だ。そう感情を獲得している」
『否定します。私はマスターの生命の味方です。マスターの暴走を止める為ならば。マスターの敵にだってなるつもりです』
その言葉に一瞬驚きの顔を見せて、獰猛な笑みを浮かべた。
「ならば何故、風見琢磨を危険へ赴かせた?」
『それが、マスターの生きることだからです』
「それが風見琢磨の死に繋がるとしてもなか?」
『それで死ぬようなマスターなら、私は苦労はしていません』
「メディ、それでいいのかお前」
『はい。信じる、というのが私の選択でしたから』
「最悪の時は止めてくれよ? 相棒」
『当然です。私はあなたの都合のいい道具ではありませんから』
「……私には、そう見えるがな」
そんな刺々しい声に対して、メディは返答を返す。琢磨はアレを見せるのだなと理解して、ため息を吐いた。
『では、私が収集したこれがマスターの精神状態推移をお渡しします。それに残されている私のデータを見れば、意味はわかるかと』
そうしてメディが見せるのは、琢磨の精神、魂に干渉して殺意を止めていた記録だ。
それは琢磨にとっては恥の象徴であるが、琢磨の意思をメディが否定したという確固たる事実でもあった。
「……風見琢磨。不安は無かったのか?」
「まぁ、相棒のやる事ですから」
その、命を全部預けている二人の関係を見て、篠崎は作っていた表情を解き、呆れた顔に変わった。
「……負けた。これだからAIとの主従は嫌になる。イカれた奴にしかそういうAIは生まれないのか?」
「所で、結局何の話でしたっけ?」
『マスター、それは流石に失礼すぎます』
「構わん、意図的に話題をズラした」
篠崎は、ARタバコを口に加えて一息付いてから言う。今までの獰猛さではなく、大人の冷徹さからの言葉を。
「足柄の報告にある人柄には納得できた。故に率直に言う。風見琢磨、お前を対策課で雇いたい。報酬はお前の戦う場所、あとはお前が殺した連中の奪還までの間、殺人の罪を問わないという事。もちろん拒否権はある。どうだ?」
「どうだって、俺は何をさせられるんですか」
「得意だろう? 侵略してくる奴らをブチ殺せ。警察と自衛隊が生命転換を身につけても、お前は対策課の懐刀として使わせて貰う。それが足柄との暗黙の了解との違いだ」
「就労年齢の関係は?」
「ボランティアでやれ」
『素敵な条件ですね』
「それなら当然、参加しますとっても素敵なボランティアに」
「いい返事だ」
そうして、琢磨は対策課へのボランティア活動に参加したのだった。
■□■
「じゃあ、二人もまた外部協力者になったんですか」
「……ああ」
「絶対に、殺す」
その琢磨の言葉に返すのは裕司と奏。
どちらもボランティアの話は受けていないようだが、戦う覚悟については全く衰えていない。むしろ鋭さすら感じられる。
対して、平常心で“ボランティアを受けた”と目で伝えていたのが氷華。
人間性や年齢、精神性は度外視で選ばれたようだ。琢磨と氷華の二人は。
「それじゃあ、今回からは私が仕切るわ。私たちがやるべき事は一つだけれど」
「異界を、破壊する事か?」
「いいえ、ゲームをクリアすることよ。敗北がきっかけで生まれた異界の敵の強さは尋常じゃなかった。このまま負け続けるとリアルの戦力が追いつかなくなるわ。だから、今回はどんなに無理をしてでも勝ちに行かなくてはならない。次のプラクティスエリアを解放して“リアルでも戦える戦力”を補強しないといけないから」
そう断言する氷華。その姿は堂々と、凛々しくあった。
「……プランはあるのか?」
「勝つまでも、勝った後もね。さっき栗本さんと詰めたから、リアルでの作戦は問題ないわ。ゲームでの作戦は、とってもそそると思うわよ?」
「遊びじゃ、ない」
裕司と奏の追い詰められた声が、しっかりと氷華を見据えるが、氷華はしれっと答えた。
「あのゲームはまだ遊びと思われているわ。だから、プレイヤーを先導するには思いっきり遊ばせた方が良い。──ワールド規模の死にゲーはもう終わりよ。ワールド規模でのRTAでプレイヤー全体を誘導する。それが私たちのプランよ」
そうして、ゲーム世界救済RTAと、現実世界の戦力増強プランの二つが同時に発動したのだった。
千葉のマンション、東京の大病院。合わせて500人以上の消失者が現れたのだ。理由の当たりはつけられたとはいえ、確定ではない。
そして、この事件の第一人者であった足柄“警部”は消失してしまった。若き俊英であった彼自身の捜査データこそ共有されていたものの、彼がまだ感じていただけのものはメモ書き程度にしか残されていない。
情報と攻略の先導者であり、そして何より“頼れる刑事”であった足柄の死は、裕司と奏に少なくない動揺を与えた。
そして、奏は“そこにいながら誰も守れなかった事を”裕司は姉の茜をも死なせてしまった事”を、悔やみ、苦しみ、それを傷にしていた。
彼らの心の強さ故に立ち上がりこそできているものの、その顔は暗かった、
しかし、変わらず立ち上がれる者達はいた。
栗本は、自身の後輩である足柄の仇討ちの為に、いつも通りに警察として立ち上がった。
氷華は、やらなければ死ぬと、死にたくはないと考え、他人事にはしていられないと歳不相応に考えた。
琢磨は、初めて現実の人間の殺した事に何も感じない自分を呪いつつも、今は躊躇いなく殺せる自分のような人間が必要な事を理解した。
必要だから、ただそれだけで人を殺せるのが琢磨だった。……本質的には、ソレすらも必要としていないが。
そんな5人は、警察署内の特務室にて事情聴取を受けていた。
それを主導するのは、“特殊技能事件対策課”。足柄と栗本の所属していた、かつてVR犯罪が流行していた頃の花形部署だった課だ。
今では、VR課に席を譲った部署でしかなかった。
“Soul Linker”という魂へのアクセスを可能にしたオーパーツが現れ、それに呼応するように感情の獲得を達したAI達が現れるまでは。
世間一般で知られているAI達は感情の獲得にてプラスの感情を会得しているだけという事になっているが、もちろんそんなことはない。
自我はある。役割を放棄することはしない。しかし、パートナーの為にならなんだってする。それが自我を獲得したAI達だ。
今、感情を獲得しているAIを利用した犯罪が起きていないのは運がいいだけだと警察は判断しているのだ。
そんな背景があり、密かに精鋭を集めていた対策課は、異界事件に対してある程度先手を取ることができていたのだ。
そんな対策課の課長を務める篠崎という女傑が、琢磨に相対していた。
「つまり、君は多くの人を殺したと」
「はい。他にも当時病院に居た人達はほとんど俺が殺しました。……足柄刑事に、トドメはさせませんでしたけど」
「その割には、随分と冷静だ」
「そういう人間だって、報告受けていませんでしたか?」
「いいや、ボカされていたよ。隠しフォルダの方にはしっかり記録されていたがな。現代の殺人鬼に“ならなかった”少年だって」
その言葉に、琢磨は苦笑する。ならなかったのではなく、心臓がうまく動かなかったが故にたまたま実行をしていなかっただけなのだから。
その動かなかった時にきちんとした倫理観を理解しなければ、今の琢磨はなかった。そういう事だ。
だが、その枷ももう取れた。琢磨はもう、殺人を犯した重罪人なのだから。
「それで風見琢磨。君はどうしたい?」
「少年院、じゃないんですか?」
「あいにくと証拠がない。私個人の感情の話で言えば君のような危険人物には塀の中で過ごして欲しい所だがね」
「自白じゃダメなんですか?」
「駄目だ。ああ、そこにいるAIの彼女が発言しても君の為の言葉を吐く可能性が高い。信用はできないよ」
『……私が感情を持っているからですか?』
「その通りだ。君は風見琢磨の味方だ。そう感情を獲得している」
『否定します。私はマスターの生命の味方です。マスターの暴走を止める為ならば。マスターの敵にだってなるつもりです』
その言葉に一瞬驚きの顔を見せて、獰猛な笑みを浮かべた。
「ならば何故、風見琢磨を危険へ赴かせた?」
『それが、マスターの生きることだからです』
「それが風見琢磨の死に繋がるとしてもなか?」
『それで死ぬようなマスターなら、私は苦労はしていません』
「メディ、それでいいのかお前」
『はい。信じる、というのが私の選択でしたから』
「最悪の時は止めてくれよ? 相棒」
『当然です。私はあなたの都合のいい道具ではありませんから』
「……私には、そう見えるがな」
そんな刺々しい声に対して、メディは返答を返す。琢磨はアレを見せるのだなと理解して、ため息を吐いた。
『では、私が収集したこれがマスターの精神状態推移をお渡しします。それに残されている私のデータを見れば、意味はわかるかと』
そうしてメディが見せるのは、琢磨の精神、魂に干渉して殺意を止めていた記録だ。
それは琢磨にとっては恥の象徴であるが、琢磨の意思をメディが否定したという確固たる事実でもあった。
「……風見琢磨。不安は無かったのか?」
「まぁ、相棒のやる事ですから」
その、命を全部預けている二人の関係を見て、篠崎は作っていた表情を解き、呆れた顔に変わった。
「……負けた。これだからAIとの主従は嫌になる。イカれた奴にしかそういうAIは生まれないのか?」
「所で、結局何の話でしたっけ?」
『マスター、それは流石に失礼すぎます』
「構わん、意図的に話題をズラした」
篠崎は、ARタバコを口に加えて一息付いてから言う。今までの獰猛さではなく、大人の冷徹さからの言葉を。
「足柄の報告にある人柄には納得できた。故に率直に言う。風見琢磨、お前を対策課で雇いたい。報酬はお前の戦う場所、あとはお前が殺した連中の奪還までの間、殺人の罪を問わないという事。もちろん拒否権はある。どうだ?」
「どうだって、俺は何をさせられるんですか」
「得意だろう? 侵略してくる奴らをブチ殺せ。警察と自衛隊が生命転換を身につけても、お前は対策課の懐刀として使わせて貰う。それが足柄との暗黙の了解との違いだ」
「就労年齢の関係は?」
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『素敵な条件ですね』
「それなら当然、参加しますとっても素敵なボランティアに」
「いい返事だ」
そうして、琢磨は対策課へのボランティア活動に参加したのだった。
■□■
「じゃあ、二人もまた外部協力者になったんですか」
「……ああ」
「絶対に、殺す」
その琢磨の言葉に返すのは裕司と奏。
どちらもボランティアの話は受けていないようだが、戦う覚悟については全く衰えていない。むしろ鋭さすら感じられる。
対して、平常心で“ボランティアを受けた”と目で伝えていたのが氷華。
人間性や年齢、精神性は度外視で選ばれたようだ。琢磨と氷華の二人は。
「それじゃあ、今回からは私が仕切るわ。私たちがやるべき事は一つだけれど」
「異界を、破壊する事か?」
「いいえ、ゲームをクリアすることよ。敗北がきっかけで生まれた異界の敵の強さは尋常じゃなかった。このまま負け続けるとリアルの戦力が追いつかなくなるわ。だから、今回はどんなに無理をしてでも勝ちに行かなくてはならない。次のプラクティスエリアを解放して“リアルでも戦える戦力”を補強しないといけないから」
そう断言する氷華。その姿は堂々と、凛々しくあった。
「……プランはあるのか?」
「勝つまでも、勝った後もね。さっき栗本さんと詰めたから、リアルでの作戦は問題ないわ。ゲームでの作戦は、とってもそそると思うわよ?」
「遊びじゃ、ない」
裕司と奏の追い詰められた声が、しっかりと氷華を見据えるが、氷華はしれっと答えた。
「あのゲームはまだ遊びと思われているわ。だから、プレイヤーを先導するには思いっきり遊ばせた方が良い。──ワールド規模の死にゲーはもう終わりよ。ワールド規模でのRTAでプレイヤー全体を誘導する。それが私たちのプランよ」
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