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四重奏連続殺人事件
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アドケース広告
突然、大林が倉科にマーケッティングの話を始めた。
「探偵・調査業界の宣伝広告は、どういう具合になっているんですか?」
この唐突な質問に、倉科は訝しげに、
「タクシーのアリバイと何か関係あるの?」
「いゃー。全く違ったことを考えた方が何か思い出すんじゃないかと…」
急がば回れか、と倉科は大林の質問に答え出した。
「ウチの業界は大きく分けて、三分野があるんだ。第一部は企業信用調査、第二部は人事調査、第三部が大衆調査、俺の属している第三部はネット広告が主流だね。タウンページとか、フリーペーパーのような紙媒体も使うし、チラシのポスティングもあるかな」
「企業信用調査は僕らの業界でも活用するけど、人事調査と大衆調査って何ですか?」
「人事調査は雇用調査と覚えておけばいいかな。大衆調査は広く一般から調査依頼を受ける調査で、浮気調査、行方調査が主体だよ」
「ふーん。それじゃもっと一般大衆の目に付くテレビとかラジオの広報活動は、やってないのですか?」
「そこまで資金力のある探偵会社は無いんじゃないかなぁ…。それに広告規定とかなんかがあって、プライバシー侵害に関わるような業種の広告は取り扱わない、とも聞いているけど…」
「それなら、他の媒体を考えればいいじゃないですか? 大衆にもっと訴求効果があるようなものを、例えば、バスのラッピングとかタクシーを利用した広告とか…」
大林は客待ちで列を作っているタクシーを指さした。その瞬間「あっ!」と大声を上げて倉科に向き直った。傘と傘が触れ合って、倉科の顔に雨粒が飛んできた。
「倉さんの教えている探偵学校、タクシー広告を出してないですか?」
「いや、俺は知らないけど…。そんな話を聞いたこともあったかなぁ…」
大林が息せき切って喋り始める。
「思い出しましたよ! 探偵学校の広告ですよ! あの夜、タクシーの中で見たんですよ。バック・シートにぶっ倒れていたので、記憶は曖昧ですが…。運転席の背もたれにある広告。アッ、倉さんが教えている探偵学校だってね」
倉科は大きく眼を剥いて、
「えっ! それが本当なら有力な手掛かりだよ。調べてみる価値は十分にあるぜ」
倉科の頭が調査モードに入り、調べる手順を考え始める。
(こいつの記憶が確かなら、タクシーのアドケース広告に違いない。取り扱っている業者の数は、そんなに多くはないはずだ。その筋に強い奴にやらせよう。探偵学校の広告が、どの会社のタクシーに掲載されているかすぐに分かるだろう…)
倉科は、ニヤッと笑って、雨に濡れた大林の背中を叩きながら、極めて事務的に、
「早速、調査を開始するよ。明日、一番で手付金五十万円を振り込んでおいてくれ。遅くとも一週間以内に君を乗せたタクシーが判明するよ。当然、成功報酬は報告が済んでからで結構」
突然、大林が倉科にマーケッティングの話を始めた。
「探偵・調査業界の宣伝広告は、どういう具合になっているんですか?」
この唐突な質問に、倉科は訝しげに、
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「いゃー。全く違ったことを考えた方が何か思い出すんじゃないかと…」
急がば回れか、と倉科は大林の質問に答え出した。
「ウチの業界は大きく分けて、三分野があるんだ。第一部は企業信用調査、第二部は人事調査、第三部が大衆調査、俺の属している第三部はネット広告が主流だね。タウンページとか、フリーペーパーのような紙媒体も使うし、チラシのポスティングもあるかな」
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「ふーん。それじゃもっと一般大衆の目に付くテレビとかラジオの広報活動は、やってないのですか?」
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「それなら、他の媒体を考えればいいじゃないですか? 大衆にもっと訴求効果があるようなものを、例えば、バスのラッピングとかタクシーを利用した広告とか…」
大林は客待ちで列を作っているタクシーを指さした。その瞬間「あっ!」と大声を上げて倉科に向き直った。傘と傘が触れ合って、倉科の顔に雨粒が飛んできた。
「倉さんの教えている探偵学校、タクシー広告を出してないですか?」
「いや、俺は知らないけど…。そんな話を聞いたこともあったかなぁ…」
大林が息せき切って喋り始める。
「思い出しましたよ! 探偵学校の広告ですよ! あの夜、タクシーの中で見たんですよ。バック・シートにぶっ倒れていたので、記憶は曖昧ですが…。運転席の背もたれにある広告。アッ、倉さんが教えている探偵学校だってね」
倉科は大きく眼を剥いて、
「えっ! それが本当なら有力な手掛かりだよ。調べてみる価値は十分にあるぜ」
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