四重奏連続殺人事件

エノサンサン

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四重奏連続殺人事件

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シート・ベルトの謎

倉科は次に鈴木正恵の件に話を向けた。
「事故った車両はどうなっているの? まさか、廃棄処分してしまった、なんてことはないだろ?」
「民間の交通事故鑑定人に見せるため事故当時のまま保管してあるそうだ。俺が懇意にしている有能な鑑定人も紹介したよ。調べたいのか?」
「素人が見ても何も判らないと思うけど、もしかしたら、専門家が見落としていることがあるかも知れないから……」
倉科は是非とも事故車を見ておきたいと考えている。三件の事件は何等かの関連があると意識して調べてみれば、何かが浮かんでくるかも知れないとの漠然とした期待が感じられたからだ。
三村里香の事件も合わせた三件の関連を解き明かすには、博多から始めて、名古屋、蕨と進める必要がある。博多の次は名古屋だ。そんな単純な理由からでもあった。
「鈴木正恵さんは、即死で、問題の星野遼介が、入院したとは言っても軽傷だろう? 今までに判明した事実から考えると、何かあるのじゃないかと思うんだけど……」
「娘さんはシート・ベルトをしていなかったんだから、仕方ないだろう」
倉科は鈴木正恵がシート・ベルトを着装していなかったことを竹橋から聞いていたが、改めて問い返した。
「シート・ベルトをしていなかった? ラリーに出場した経験があるのに?」
 「警察も不審に思ったらしいけど、同乗の星野氏が軽傷とはいえ怪我をしているし……。彼に事故の状況を尋ねても、事故発生時には眠っていて記憶にないとのことだから」
 竹橋は淡々と事実を話している。少しの疑問は抱いているようだが……。
 「星野氏はシート・ベルトをしていた……。奇妙な話だなぁ。普通、同乗者がシート・ベルトをしていなかった例はよく聞くけど…。警察は徹底して調べたのかなぁ?」
 「もちろん、その上での結論だろうよ。死人に口なしだからな」
 ドキリとするようなことを平気で言った。この言葉を聞いて。倉科は竹橋も同じような疑問を持っていることが伺えた。
 「博多の帰りに立ち寄るから、事故車を見せてくれるよう手配しておいてくれないか?」
(鈴木正恵はシート・ベルトをしていなかった……。非常に違和感を覚えるな……。興味を引く事項だ。まさか、シート・ベルトが
偶然にはずれるなんて考えられないし……)
竹橋から快諾の返事を聞いて電話を置いた。
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