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四重奏連続殺人事件
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謎が始まる福岡市
事務所、と言っても、自宅の一室だが、に戻った倉科は竹橋に連絡を取り、調査結果のあらましを話し、夢想花音楽事務所の調査報告書を添付してメールで送った。
しばらくして、竹橋から電話があり、
「読んだよ。まあ、表面的にはこんなもんだろう。鈴木氏が本当に望んでいたものとは程遠いけど……」
「それは判っているよ。死亡した最愛の娘が、業務上過失傷害罪の被疑者とされた不名誉は耐え難いだろうからね。極端に言えば、真の調査目的は、娘さんは、事故を偽装して殺害された、との確証が欲しかったのだろうけど……」
倉科の言葉が終わらないうちに、
「そこに重点を置いて、もう少し突っ込んで調べてくれよ」
倉科は調査報告書を基にして、星野遼介に関する自分なりの推論を述べてから、
「なかなか賢い奴だから、そう簡単に済むかどうか……。別件でもいいから警察が奴を引っ張ってくれないかなあ。これまで調べたことをネタに叩けば自供すると思うけどなぁ……」
竹橋が毅然とした声で答えた。まるで法廷における答弁のように。
「卑しくとも、俺は弁護士だよ。そんな人権侵害的な捜査に加担できると思う?」
弁護士の職にある者としては当然の返事だ。
倉科は話の方向を変えて、
「最初から調べてみたいんだ。鈴木正恵さんの件は、榊江利子さんの自殺と何らかの関係があるに違いないと思うから」
「関連があると思うなら調べてみればいいじゃないか? 九州だったかな? そこまでの旅費、滞在費、調査費を出させるとなると、確実な結果が欲しいな」
竹橋は普段の声に戻っている。
「大丈夫。旅費と滞在費は。来週、博多で探偵学校の講義があるから、ついでと言ってはなんだが……」
「オーケー。調査が上手くいったら、費用の方は任せておけ。目一杯、請求しろ。ただし、確実な証拠を見つけないとダメだぜ。直接的な証拠とか有力な状況証拠。俺の言っている意味判るよな」
倉科は調査費用の心配をしてくれる竹橋に感謝しながら、答えた。
「アリバイとか、そんなもんだろう? 星野遼介が事件当日博多に居たとか、誰かに目撃されたとか……」
竹橋は更に、説明するように、
「博多の件と星野遼介が関係あるとしても、名古屋の件を証明したことにはならないけれど、死亡した二人と奴の関係性を考えると状況証拠としては使えるかも知れないな」
「そうだとしたら、警察は捜査を始めるかな?」
意気込むような倉科の声に、竹橋が冷静な声で反応した。
「恐らく駄目だろうよ。一度、事故と断定したのだから、それに反する確実な直接証拠でもない限り望み薄だな。博多の件も自殺として処理されているんだろ。しかし、お前の言う殺人事件?ってのが存在すると話は別だけどね」
竹橋は、否定的見解を示した。探偵の調査能力は警察の捜査能力に到底及ばないだろうとは言わなかったが……。
倉科は鈴木正恵の件と関連があると思っている三村里香殺人事件について尋ねた。
「例の埼玉県警の捜査は進んでいるのかな? 何か情報が入っている?」
竹橋は少し怒ったような声で、
「検察庁のえらいさんにあれ以上聞けると思ってるのか?」
もっともだ。捜査の秘密に関わることをリークしてもらったのだから。
倉科は竹橋の助言を求めるため、大林健吾のアリバイ調査の結果ついて話した。タクシーの広告に行き当たった経緯と数十のタクシー会社と数千台のタクシーを調べた、と誇張を交えての説明ではあったが……。
倉科は、その調査結果を大林の先輩である警察関係者を通して捜査本部に提出することが正しいのかどうか確証を持てなかったのである。
「弁護士を通してとも考えられるけど、警察幹部に知り合いがいるなら、そのほうがいいだろう。普通、警察と弁護士は対立関係にあるからね」
竹橋の言葉を聞いて、倉科は自分の判断が正かったと自信を深めた。
「それにしても、よく調べ上げたものだなあ。タクシー数千台とは恐れ入ったよ」
先程とは違って、探偵の調査能力も捨てたものじゃないと言っているようだった。
事務所、と言っても、自宅の一室だが、に戻った倉科は竹橋に連絡を取り、調査結果のあらましを話し、夢想花音楽事務所の調査報告書を添付してメールで送った。
しばらくして、竹橋から電話があり、
「読んだよ。まあ、表面的にはこんなもんだろう。鈴木氏が本当に望んでいたものとは程遠いけど……」
「それは判っているよ。死亡した最愛の娘が、業務上過失傷害罪の被疑者とされた不名誉は耐え難いだろうからね。極端に言えば、真の調査目的は、娘さんは、事故を偽装して殺害された、との確証が欲しかったのだろうけど……」
倉科の言葉が終わらないうちに、
「そこに重点を置いて、もう少し突っ込んで調べてくれよ」
倉科は調査報告書を基にして、星野遼介に関する自分なりの推論を述べてから、
「なかなか賢い奴だから、そう簡単に済むかどうか……。別件でもいいから警察が奴を引っ張ってくれないかなあ。これまで調べたことをネタに叩けば自供すると思うけどなぁ……」
竹橋が毅然とした声で答えた。まるで法廷における答弁のように。
「卑しくとも、俺は弁護士だよ。そんな人権侵害的な捜査に加担できると思う?」
弁護士の職にある者としては当然の返事だ。
倉科は話の方向を変えて、
「最初から調べてみたいんだ。鈴木正恵さんの件は、榊江利子さんの自殺と何らかの関係があるに違いないと思うから」
「関連があると思うなら調べてみればいいじゃないか? 九州だったかな? そこまでの旅費、滞在費、調査費を出させるとなると、確実な結果が欲しいな」
竹橋は普段の声に戻っている。
「大丈夫。旅費と滞在費は。来週、博多で探偵学校の講義があるから、ついでと言ってはなんだが……」
「オーケー。調査が上手くいったら、費用の方は任せておけ。目一杯、請求しろ。ただし、確実な証拠を見つけないとダメだぜ。直接的な証拠とか有力な状況証拠。俺の言っている意味判るよな」
倉科は調査費用の心配をしてくれる竹橋に感謝しながら、答えた。
「アリバイとか、そんなもんだろう? 星野遼介が事件当日博多に居たとか、誰かに目撃されたとか……」
竹橋は更に、説明するように、
「博多の件と星野遼介が関係あるとしても、名古屋の件を証明したことにはならないけれど、死亡した二人と奴の関係性を考えると状況証拠としては使えるかも知れないな」
「そうだとしたら、警察は捜査を始めるかな?」
意気込むような倉科の声に、竹橋が冷静な声で反応した。
「恐らく駄目だろうよ。一度、事故と断定したのだから、それに反する確実な直接証拠でもない限り望み薄だな。博多の件も自殺として処理されているんだろ。しかし、お前の言う殺人事件?ってのが存在すると話は別だけどね」
竹橋は、否定的見解を示した。探偵の調査能力は警察の捜査能力に到底及ばないだろうとは言わなかったが……。
倉科は鈴木正恵の件と関連があると思っている三村里香殺人事件について尋ねた。
「例の埼玉県警の捜査は進んでいるのかな? 何か情報が入っている?」
竹橋は少し怒ったような声で、
「検察庁のえらいさんにあれ以上聞けると思ってるのか?」
もっともだ。捜査の秘密に関わることをリークしてもらったのだから。
倉科は竹橋の助言を求めるため、大林健吾のアリバイ調査の結果ついて話した。タクシーの広告に行き当たった経緯と数十のタクシー会社と数千台のタクシーを調べた、と誇張を交えての説明ではあったが……。
倉科は、その調査結果を大林の先輩である警察関係者を通して捜査本部に提出することが正しいのかどうか確証を持てなかったのである。
「弁護士を通してとも考えられるけど、警察幹部に知り合いがいるなら、そのほうがいいだろう。普通、警察と弁護士は対立関係にあるからね」
竹橋の言葉を聞いて、倉科は自分の判断が正かったと自信を深めた。
「それにしても、よく調べ上げたものだなあ。タクシー数千台とは恐れ入ったよ」
先程とは違って、探偵の調査能力も捨てたものじゃないと言っているようだった。
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