灯る透明の染色方法

ナナシマイ

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終章

エピローグ

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 静謐を司る魔女がひとりと、戦火を護る聖人がひとり。夜明けの雪原を歩いていく。
「リヴェレーク、手を」
 両手を出されて苦笑いをしたルフカレドは、自分の側にあるリヴェレークの右手を握った。互い違いに指を絡めれば、そわりと静謐の気配が揺れ、それからゆっくりと力が込められる。
「ルフカレドの手は大きいですね」
「はは、君の手はやわらかい」
 新たに誕生したという聖人は、ふたりの友人である冬の明星黒竜が見下ろす丘から、もう何日も動いていないらしい。
 ヴァヅラが朝靄に紛れて地上へ降りるときを見計らい、リヴェレークたちはようすを見に行くことにしたのだ。
「どちらに似ていると思いますか?」
「どうだろうな。ヴァヅラを熱心に見つめているらしいから、案外星に属する者となったのかもしれない」
「……わたしたちの要素はどこへいったのでしょう」
「死闇の領域が空いたぶんをクァッレが星で確保したと言っていたからな」
「そうでした。もう星に属する者で確定なのでは」
 静謐と戦火の結びによって誕生したのがまったく関係ない要素だなんてと、おかしさが込みあげてくる。
「……ふ、ふふ」
 静かに笑っていると、ふっと目の前に影がおりてきて、リヴェレークは驚きつつ戦火の吐息を受け入れた。
「まあ、俺たちの子であることに変わりはない」
「そうですね」
 深い夜の響きが鳴りを潜め、軽やかに朝が鳴る。
 世界が、陽の色に染まっていく。

 空鏡の洞窟の、寂寞たる泉にひたりと広がる波紋。黄ばんだ魔導書たちの収められた本棚の影。夜明け前、明星黒竜が見下ろす山々の稜線。
 寝静まった人家の暖炉の熾や、役目を終えた落ち葉の切れ端。
 死闇の呼気と、朝露の微笑み。
 沈む思考。
 安らぎ。
 追憶。
 ああ、とリヴェレークは心のなかで嘆息した。
(知らなかった……こんな幸せのなかにも、静謐わたしが在るなんて)





〈灯る透明の染色方法・完〉
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