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第一章

5.

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「あのさ、一つだけ聞くけどさ、俺に勝てると思ってるの?」

 俺は、そう問いかけた。
 すると、男二人は、笑い声を上げた。

「こっちは、三人だぜ?モンスターみたいに馬鹿じゃねぇよ」
「そうだぜ、さっきのモンスターみたいにバカじゃねぇーよ」

 そう言った。
 だから、あえて、俺は、嫌がらせをしたくなった。

「そうか、じゃ,生き返らせても文句言わねでよなぁ?」

 俺は、声を張り上げていった。
 そして、

「さぁ、来いよ、古の魔獣っ!グライオンっ!」

 俺がそう言うと、後ろで死んだはずの魔獣が、起き上がった。
 そして,傷を再生し始める。
 ぐちゃぐちゃの青い血を舐め、血を回復する。
 そして、首から、足から、背中から触手を生やす。
 さらに、一つだった口が二つになり、四つになり、八つになり、十六になった。
 そして,口がもう一つ増える。
 その口の右と左に目がぶちぶちと音を立てて、生える。
 その目の瞳は、赤かった。
 正確には、赤黒かった。
 濁っている様にも見える。
 その目が見ていたのは、言わずともわかるだろう。

「君たちを見てるんだよ。ほら、憎たらしいって言ってるよ。殺したいって」

 俺は、笑いながらそう言った。
 すると、後ろに立っていたグライオンが、

「ガララララララララララー!」

 と思いっきり叫び、その三人に向けて、走り出した。
 その魔獣は、触手を八倍の百六十本にして、彼らを追いかけ回す。
 否、触手が追いかけ回す。
 そして、その触手に捕まり、血祭りにあげられるのだろう。
 三人と魔獣は、百層から九十九層に上がっていった。
 しかし、カラミラを置いて。
 俺は,カラミラに近づいた。
 多分、ただ,気絶してるだけであろう。

「なるほど」

 俺は,少しぷるんと震えそうな胸に手を置いて、心臓の鼓動を感じる。
 しかし、ここまでしたなら、いっそのこと揉み揉みしたいわけだ。
 このムニムニとしている感触がどうしてもたまらない。
 ぷるんっと震えそうな胸。
 誰も見ていない。
 これ以上にない絶好のチャンスだ。
 そして,俺は,その胸を思いっきり、触ろうとして、やめた。
 彼女の目が開いていることに気づいたからだ。
 とても残念だった。
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