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第二章

26.

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 俺は,父上の顔を見て笑った。
 否、笑わない奴は,いるのだろうか。
 と言うほど傑作な顔をしていた。

「そ、それは,どうゆうことだ……」
「それはですね、話すと長くなるのですが、俺、彼女のこと好きじゃないんですよ。だからですね、演技をして騙せたら、ラッキーなんて感じで初めまして、嫉妬させて嫌いになってもらえたら、婚約破棄してもらえるんじゃないんじゃないかなーと思いまして、始めただけですが?」
「な、それは,誠か?」
「ここで嘘ついてどうするんですか?誰も得しませんよ?」

 俺は,そう言って、父上の事務作業をしている机に手をついて、笑った。

「しかし、折れないぞ。ここで婚約すれば、家に利益もあるし、お前にも得があるじゃないか」
「総合学院の入学試験が楽になるって話ですか?」
「そうだ」

 俺は,その瞬間大きな笑い声に包まれた。
 俺の心の中が。
 しかし、その笑いは,とうとう堪えられずに吹き出してしまった。

「父上って、案外、バカ、です、ねっ」

 俺は,笑いながらそう言った。

「何をっ!」

 父上が怒った顔を見て俺は,大爆笑してしまった。
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