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始まり
ビニール傘
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床に蹲っていた那雪はやがて立ち上がり歩き出す。木目の床は所々に傷が入っていてそれなりの年季を感じさせる。
ドアを開き歩いていく。そして窓へと近づいていく。まるで何かに引き寄せられているようで、恐怖する頭と何も考えていない身体がそれぞれ切り離されているようにも思えてくる。
那雪は壊れた家を見てから明らかにおかしかった。謎の力の雰囲気に怯えると共に何故だか魅入られていてその瞳に宿る感情は2つの色が混ざり合っている。
那雪が窓ガラスに触れたその時、那雪は後ろへと吹き飛ばされた。ガラスによって薄く裂かれた指の皮は覆っていた血の飛沫を散らせた。那雪は何も考えていなかった。完全に魔力に魅入られてしまっていたのだった。
「はぁ!? この程度でトランス状態かよ! お前の父親はロクに魔法の訓練の一つもしてくれてないようだな!」
散り行くガラスが夕陽をはね返して光を放つ。そこに立つ男は毛皮のコートを着ていた。今は5月、明らかに季節外れ。しかし、それすらも考えている余裕もない那雪はただ気になる事を訊ねた。
「魔法? そんなものあるの?」
男は小馬鹿にしたように鼻で笑う。
「まさかここまでとはな! こりゃあ殺しがいもない、なぁ! かつて唐津近辺の裏世界を魔法で治めてた唐津一族の子孫さまよぉ!」
男は恨みを込めて吐き捨てるように言う。
「こんな地域にまで来て平和ボケしやがって! 今すぐ殺してやる!!」
「ふふっ」
「あぁ? 何笑ってんだ?」
そんな現実離れした景色と会話を経て那雪は目を見開いて言った。
「じゃあ……殺してよ。どうせ私なんかどこにいても人に不幸を撒き散らすことしか出来ないお荷物なんだから」
予想外の返答に男は肩を竦めて目を閉じ首を左右に振る。
「ダメだこりゃ、壊した家の呪いの余韻だけで完全に堕ちてやがる。呪い一族同士戦いたかったんだが、それも叶わないならせめてお前の望みだけでも叶えてやるとするか」
男の周囲には黒々としたオーラが渦巻き、禍々しい力が周囲を満たした。
ー呆気ない終わり、でもいても迷惑なら……これでいいやー
男は力を練り上げて作り上げた闇色の禍々しい大剣を構えて那雪目掛けて振り下ろすべく、一歩踏み出した。そのまま那雪を睨み付け、振り下ろそうとしたその時、男の身体は右に飛ばされ倒れていた。
「なんだ!」
那雪は外に立つ青年の姿を見た。立ち上がる事すらも忘れたままその青年の姿に魅入っていた。茶髪のくせ毛はあどけなさを残した好青年のような顔の明るさをより一層引き立てている。そんな男が右手に握っているビニール傘は剣のような持ち方であまりにも不釣り合いで不格好。
飛ばされた男は立ち上がり、青年に驚きをぶつける。
「おい! 前原一族の一真! お前死んでなかったのか!」
一真、そう呼ばれた青年は睨み付ける事が似合わぬ瞳で男を睨む。
「あの程度で死ぬと思ったか? 俺の魔法は物質強化だ。呪いが発動したときに咄嗟に傘たちを使って防いでなきゃお前の言った通りだっただろうな」
一真はビニール傘を男に向ける。
「呪い使い! お前だけは許さない! お前のせいだ」
那雪は一真に同情していた。家をも破壊されたのは流石に可愛そうであった。
「お前のせいでな! 父さんの酒コレ全部ぶっ潰れたんだよ!」
ーえぇ!? 家よりお酒?ー
「よくもやってくれたな! あと4ヶ月! あと4ヶ月ではたちだったのに!! 俺のオトナの野望をよくも潰してくれたな飲み物の恨みはお前の呪いの数倍深いぞ」
男は今度は一真を鼻で笑った。
「家より酒かよアホか! いいぜ! 前原家と唐津家のコンビの子を同時に潰すチャンスだ!」
男は立ち上がり、大剣を構えて一真と向かい合ったのであった。
ドアを開き歩いていく。そして窓へと近づいていく。まるで何かに引き寄せられているようで、恐怖する頭と何も考えていない身体がそれぞれ切り離されているようにも思えてくる。
那雪は壊れた家を見てから明らかにおかしかった。謎の力の雰囲気に怯えると共に何故だか魅入られていてその瞳に宿る感情は2つの色が混ざり合っている。
那雪が窓ガラスに触れたその時、那雪は後ろへと吹き飛ばされた。ガラスによって薄く裂かれた指の皮は覆っていた血の飛沫を散らせた。那雪は何も考えていなかった。完全に魔力に魅入られてしまっていたのだった。
「はぁ!? この程度でトランス状態かよ! お前の父親はロクに魔法の訓練の一つもしてくれてないようだな!」
散り行くガラスが夕陽をはね返して光を放つ。そこに立つ男は毛皮のコートを着ていた。今は5月、明らかに季節外れ。しかし、それすらも考えている余裕もない那雪はただ気になる事を訊ねた。
「魔法? そんなものあるの?」
男は小馬鹿にしたように鼻で笑う。
「まさかここまでとはな! こりゃあ殺しがいもない、なぁ! かつて唐津近辺の裏世界を魔法で治めてた唐津一族の子孫さまよぉ!」
男は恨みを込めて吐き捨てるように言う。
「こんな地域にまで来て平和ボケしやがって! 今すぐ殺してやる!!」
「ふふっ」
「あぁ? 何笑ってんだ?」
そんな現実離れした景色と会話を経て那雪は目を見開いて言った。
「じゃあ……殺してよ。どうせ私なんかどこにいても人に不幸を撒き散らすことしか出来ないお荷物なんだから」
予想外の返答に男は肩を竦めて目を閉じ首を左右に振る。
「ダメだこりゃ、壊した家の呪いの余韻だけで完全に堕ちてやがる。呪い一族同士戦いたかったんだが、それも叶わないならせめてお前の望みだけでも叶えてやるとするか」
男の周囲には黒々としたオーラが渦巻き、禍々しい力が周囲を満たした。
ー呆気ない終わり、でもいても迷惑なら……これでいいやー
男は力を練り上げて作り上げた闇色の禍々しい大剣を構えて那雪目掛けて振り下ろすべく、一歩踏み出した。そのまま那雪を睨み付け、振り下ろそうとしたその時、男の身体は右に飛ばされ倒れていた。
「なんだ!」
那雪は外に立つ青年の姿を見た。立ち上がる事すらも忘れたままその青年の姿に魅入っていた。茶髪のくせ毛はあどけなさを残した好青年のような顔の明るさをより一層引き立てている。そんな男が右手に握っているビニール傘は剣のような持ち方であまりにも不釣り合いで不格好。
飛ばされた男は立ち上がり、青年に驚きをぶつける。
「おい! 前原一族の一真! お前死んでなかったのか!」
一真、そう呼ばれた青年は睨み付ける事が似合わぬ瞳で男を睨む。
「あの程度で死ぬと思ったか? 俺の魔法は物質強化だ。呪いが発動したときに咄嗟に傘たちを使って防いでなきゃお前の言った通りだっただろうな」
一真はビニール傘を男に向ける。
「呪い使い! お前だけは許さない! お前のせいだ」
那雪は一真に同情していた。家をも破壊されたのは流石に可愛そうであった。
「お前のせいでな! 父さんの酒コレ全部ぶっ潰れたんだよ!」
ーえぇ!? 家よりお酒?ー
「よくもやってくれたな! あと4ヶ月! あと4ヶ月ではたちだったのに!! 俺のオトナの野望をよくも潰してくれたな飲み物の恨みはお前の呪いの数倍深いぞ」
男は今度は一真を鼻で笑った。
「家より酒かよアホか! いいぜ! 前原家と唐津家のコンビの子を同時に潰すチャンスだ!」
男は立ち上がり、大剣を構えて一真と向かい合ったのであった。
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