呪う一族の娘は呪われ壊れた家の元住人と共に

焼魚圭

文字の大きさ
3 / 132
始まり

呪いの一族の娘への呪い

しおりを挟む
 禍々しい大剣による攻撃をビニール傘で受け止め左に流す。
「傘だと思って甘く見てたら辛みに舌をやられるぞ大剣使い」
「はっ、俺は呪い使いだ! あとなんだその頭刹菜を感じる言葉の使い方!」
「刹菜の仲間だからな!」
 上に振るわれる大剣を飛び退いて躱し、ビニール傘による一撃を脇腹に放り込む。男は飛ばされ再び地へと叩き付けられる。大剣はその手を離れ、武器は闇に散り消えなくなった。一真はビニール傘を男に突き付けて言った。
「隙を見せたな隙間で魅せろ、と言っても男の隙間なんか見たくないがな」
 男は鋭い笑みを浮かべて言った。
「俺は準備出来てる、後ろ見てみろよ!」
 一真は振り向かずビニール傘でもう一度斬りつける時、それと同時、男は右手から翼を広げる禍々しき闇を放った。その闇を追うように一真が振り向いたその先に立っているその人物はメガネをかけた少女。
「一真ぁ! お前の想定外のお荷物の女に感謝だぜ」
 那雪の慎ましい胸に闇が入り込み、那雪は胸を押さえて蹲る。
「その呪いは死の呪い! そこのそいつは3日後死ぬ」
 一真はもう一度男を斬りつけようとするも男は透けて行き、傘は身体を通り抜ける。次第に消えて行くその姿を見ている事しか出来ないのであった。



 ただ立っているだけの那雪の腕を引いて家に入って一真はかつて窓ガラスが張られていたそのドアを見つめる。
「これは酷いな……でもシャッター閉まるみたいでよかった。俺の家なんか人が住む事を想定してない外気感だからな」
「それ壊れただけだよね」
 シャッターを降ろして一真は冷蔵庫を漁り始めた。
「取り敢えず晩ごはん作るか」
 那雪は一真を見おろして一言、「いらない」とだけ言う。
「何でだよ、男のメシなんか食えるか! みたいな?」
「別にそうじゃない。私は人を不幸にする事しか出来ないし私がいなくなってももうきっと誰も困らないから」
 一真は那雪を睨み付ける。
「誰も困らない? いいや、俺が困るね!」
 那雪の手を優しく包み込み、続きを言う。
「言っとくが俺は味方は誰一人死なせないから! きみは俺の味方だ! 今決めた! 名前は? どこ住み? あっ、ここ住みか」
 那雪は微かに笑い、その名を語る。
「私の名前は唐津 那雪、高校2年生で友だちはいないわ」
「そっか、じゃあ、なゆきち! こう呼んでいいな、なゆきち」
 そして一真は台所に立って包丁を握ったのであった。
 今宵ある人物の元を訪問する為に2人で落ち着いた時間を過ごす為に。
 味噌汁と野菜炒めとご飯、ただそれだけの簡単な料理は那雪にとっては久々の他人の手料理。ただそれだけで嬉しかった。
「なゆきちには言ってなかったな、今夜ある人物のところを訪ねるからな。今のなゆきちはなんていうかめちゃくちゃ危なっかしい」
 軽い呪いに触れただけでも死への願望を抱く程に影響を受けたその少女は放っておけばすぐにでも自殺してしまうかもしれない、そう判断しての事だった。
「あと俺の家をどうにか探す手伝いをしてもらわなきゃいけないな」
 そう言って少しの間、休んでいた2人であった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...